OECD 雇用見通し 2026: 日本
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国別報告書は、OECD雇用見通し2026のデータに基づき、各国の労働市場の状況を概観するものであり、本年は雇用と所得の地域間格差について重点的に取り上げている。
労働市場は引き続き堅調であるものの、弱まりの兆しが一段とみられている
Copy link to 労働市場は引き続き堅調であるものの、弱まりの兆しが一段とみられているOECD加盟国の労働市場は引き続き堅調であり、就業率(2026年第1四半期:72.1%) 及び労働参加率(2026年第1四半期:76.7%) は記録的な高水準となり、失業率(2026年5月:4.9%) は歴史的な低水準となっている。一方で、失業率が多くの加盟国で上昇し、雇用の伸びの鈍化がみられ、人手不足も緩和しつつあるなど、労働市場の弱まりを示す兆候が強まっている。エネルギー価格の新たな高騰を受け、多くの加盟国では実質賃金が低下することが見込まれている。
日本の労働市場は引き続き安定している。失業率はOECD平均を下回っており、過去12か月にわたって概ね横ばいで推移し、2026年5月時点で2.5%となっている。加えて、15~64歳でみた就業率は過去1年でわずかに上昇し、2026年第1四半期で80.2%となった。これはOECD諸国の中でも最も高い水準の一つとなっている。ここ1年における男女別の就業率の変化をみると、男性の就業率はわずかに低下した一方、女性の就業率は0.8%ポイント上昇し、2026年第1四半期には75.7%に達している。
人口減少と高齢化を背景に、日本は引き続き深刻な人手不足に直面している。労働需要は労働供給に比べて依然として強く、引き続き企業は人手確保に苦慮している。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(短観)の2026年6月調査によると、人手不足は幅広くみられ、特に非製造業や中小企業・中堅企業において顕著となっている。人口動態による制約が今後さらに強まることが見込まれるなか、人手不足は引き続き大きな課題となる。時間当たりの名目賃金は2026年4月時点で前年同月比で3年以上連続して上昇している。一方、円安の進行を背景に輸入財・サービス価格の上昇がインフレ圧力を高めており、時間当たりの実質賃金は伸び悩んでいる。2026年第1四半期の実質賃金は前年より1.7%上昇し、OECDの中央値と同水準となっている。、しかし、2021年第1四半期と比較すると0.1%低い水準にとどまっており、OECDの中央値(+1.2%)を下回っている。2026年7月1日時点の春闘の結果をみると、賃上げ率は5%を超える水準となっており、今後も名目賃金の上昇が期待される。なお、OECDでは、中東での紛争に起因する混乱は相当な規模となるものの比較的短期間にとどまるとの前提のもと、2026年の実質賃金は前年比1.3%程度の上昇となると推計している。
労働市場改革は、日本の成長戦略にとって最重要課題の一つとなっている。日本成長戦略会議労働市場改革分科会は、2026年6月に今後の改革の方向性を取りまとめており、リ・スキリングの強化を通じた労働生産性の向上、円滑な労働移動の促進、柔軟な働き方の実現、人材マネジメントへの支援などを通じて、労働供給力を強化するとともに、経済成長を実現していくことを示している。
雇用の展望は居住地によって左右される
Copy link to 雇用の展望は居住地によって左右されるOECD加盟国では、労働市場の状況に大きな地域間格差がみられている。半数以上の加盟国では、就業率の地域間格差が20%ポイントを超えている。こうした労働市場における地域間格差は、居住者の属性だけでなく、居住地の経済的機会の差も反映しており、生活水準の格差に直接結び付いている。
日本においても、就業率の地域間格差は顕著に確認されており、15歳以上人口についてみると、就業率が最も高い都道府県と最も低い都道府県の差は9%ポイントを超えている。2010年代初頭以降、日本では地域間格差の縮小と就業率の低い地域の改善が進んでおり、この傾向はOECD平均と概ね一致している。
日本では、依然として就業率の低い地域から高い地域への労働移動は比較的限定的であり、その傾向は他のOECD諸国と概ね共通している。就業率が継続的に低い地域では約0.17%の純人口流出がみられる一方、就業率が高い地域では国内の他地域から約0.13%の純流入がみられている。
2015年から2025年にかけて、日本では地域別最低賃金が地域間の賃金格差の縮小に一定程度寄与してきた。2015年度時点では、最も低い地域別最低賃金は東京都の最低賃金の76%であったが、2025年度には83%まで上昇している。
地域に根差した政策(place-based policy)は、地域における雇用機会および経済的機会への平等なアクセスを確保する上で、重要な役割を果たしている。日本では2014年以降、東京圏への人口集中を緩和するとともに、地域においてより魅力的な雇用を創出することを目的とした政策に取り組んできた。2026年には、「地域未来戦略」のもと、政府は産業クラスターの戦略的形成を進めるとともに、地域資源の活用を通じて地域産業の成長を促進していくこととしている。
競業避止義務条項は、高度なスキルが求められる職種に限らず広く普及
Copy link to 競業避止義務条項は、高度なスキルが求められる職種に限らず広く普及競業避止義務条項(競合企業への転職制限や競合事業の開始制限を定める契約条項)及び関連する契約上の制約は、OECD加盟国の労働市場において広く普及している。2025年時点では、こうした制約は労働者の約30%に適用されており、その利用は専門性が高い職種にとどまらず拡大している。企業は、営業秘密や投資の保護を目的としてこれらの条項を用いる場合もあるが、その一方で、これらの制約が労働移動や賃金上昇を抑制し、知識の波及を遅らせるとともに、生産性向上を阻害し得ることも示唆されている。
日本では現在、民間の雇用者の22〜31%が競業避止義務契約の適用を受けており、調査対象15か国の平均である20〜30%と同程度の水準となっている。これらの雇用者のうち、13〜36%は機密情報へのアクセスがないほか、14〜32%は低賃金労働者であった。こうした結果は、営業秘密の保護を理由とした競業避止義務の従来の正当化が、日本の一部の労働者には必ずしも当てはまらない可能性を示唆している。
日本では、雇用契約の中で制限的条項の利用が拡大している可能性があり、OECDの調査では、そうした条項の利用を「増やしている」と回答した企業数が「減らしている」と回答した企業数を上回っていた。さらに懸念されることに、調査対象となった日本の企業の3分の2が、自らの業界において人材引き抜き禁止(ノー・ポーチング)や賃金調整、あるいはその両方が行われていることを認識していると回答しており、これは平均の48%を大きく上回っている。
競争政策研究センターが2018年に公表した「人材と競争政策に関する検討会 報告書」では、人材の獲得をめぐる競争に対する独占禁止法の適用に関する考え方の理論的な整理がなされている。同報告書は、一定の役務提供に対する対価や移籍・転職の制限に関する発注者(雇用主)間の共同の取決めは、人材獲得市場における競争を抑制する可能性があり、独占禁止法上の問題となる場合があると述べている。
雇用保護法制を適切に整備することで、労働市場の変化に備えることができる
Copy link to 雇用保護法制を適切に整備することで、労働市場の変化に備えることができる雇用保護法制は、雇用の安定性や労働市場の二重構造、並びに景気変動や構造変化に対する企業の対応能力に影響を与える。更新されたOECDの雇用保護指標は、解雇規制や、とりわけ有期契約に対する規制について、加盟国ごとに大きな違いがあることを示している。
日本の常用雇用に対する雇用保護法制(EPL)の厳格度は、OECD平均をやや下回っている。OECD平均が2019年より大きな変化を示していないのと同様に、日本においても、この期間に解雇保護に関する大きな制度改正が実施されていないことから、大きな変化はみられていない。
日本の臨時雇用に対する雇用保護法制の厳格度はOECD平均を下回っているものの、2019年から2025年にかけて上昇している。これは、2020年より派遣労働者に対する賃金やその他の労働条件に関する均等待遇要件が強化されたことを反映したものである。さらに近年では、使用者に対し、有期契約の期間や更新回数の上限を明示することが求められるようになり、臨時雇用として働く人にとっての透明性と予見可能性が高まっている。
雇用のセーフティネットの適用拡大に向けた政策的な取組が進められている。現在、雇用保険の適用には週所定労働時間が20時間以上あることが要件とされているが、この要件は2028年10月から10時間以上に引き下げられる予定となっている。さらに、医療保険や年金を含む社会保険についても、2035年までに短時間労働者への適用が段階的に拡大される見込みとなっており、これらの改正により、セーフティネットの拡充が期待される。
連絡先
地曵 暁瑛 (✉ akiei.jibiki@oecd.org)
Glenda QUINTINI (✉ glenda.quintini@oecd.org)
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トルコによる脚注 本書で「キプロス」のものとされる情報 は、キプロス島南部に関するものである 。同島のトルコ系およびギリシア系住民 の双方を代表する単一の政府は存在しな い。トルコは北キプロス・トルコ共和国 を承認する。トルコはいわゆる「キプロ ス問題」に関して、国連の枠組みにより 永続的かつ公正な解決策が見出されるま で、その立場を維持する。
OECDに加盟するEU諸国およびEUによ る脚注 キプロス共和国は、トルコを除くすべて の国連加盟国により承認されている。本 書の情報はキプロス共和国政府が実質的 に支配する地域に関するものである。
本書の全文は英語で閲覧可能: OECD (2026), OECD Employment Outlook 2026: Geographic Disparities in Jobs and Incomes, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/7e710f54-en.
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本ライセンスに関して生じる紛争は、2012年の常設仲裁裁判所(PCA)仲裁規則に従い仲裁によって解決される。仲裁地はパリ(フランス)とし、仲裁人は1名とする。