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この国別報告書は、OECD雇用見通し2025のデータに基づいて各国における労働市場の状況を概観するものである。本年は、人口と働き手の高齢化が労働市場及び仕事に与える影響について重点的に取り上げている。
労働市場は引き続き堅調だが、減速の前触れを見せている
Copy link to 労働市場は引き続き堅調だが、減速の前触れを見せている2025年5月時点において、OECD全体の失業率は前年同月から変わらず4.9%であった。しかし、雇用の伸びの減速や、労働需給の逼迫度合いが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック以前の水準に戻るといった、減速の兆候が多くの国で見られる。
日本の労働市場は安定的に推移してきた。2025年5月までの12か月間で、失業率は2.5%にわずかに低下した。2025年及び2026年も変わらず推移するとみられる。就業率は0.8ポイント改善し、62.3%となった。女性の就業率は1%ポイント上昇し、過去最高の55.1%に達した。
パンデミック以降、日本の労働需給の逼迫度合いは悪化している。2025年第2四半期時点で、雇用人員の過不足感を示す日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(短観)の雇用人員判断D.I.は、全産業で-35だった。ここ三十年ほどで最も低い水準であり、人手不足が広範囲にわたっていることを示している。
男性の育児休業を促進し、働く母親の負担を軽減するため、2022年10月より出生時育児休業給付金が導入された。これは追加の短期間の育児休業を可能にするもので、導入後に育児休業をとる男性の割合は、2022年度の17.1%から2023年度には30.1%と大幅に増加した。さらに父親の早期育児参加を促進するため、2025年4月から出生後休業支援給付金が創設された。この給付金は、父親の通常の収入と育児休業中の所得の差を埋めることを目的としている。
実質賃金は上昇しているが、下落した分を取り戻すにはまだ至っていない
Copy link to 実質賃金は上昇しているが、下落した分を取り戻すにはまだ至っていないほぼ全てのOECD加盟国で実質賃金は上昇しているが、パンデミック後のインフレ急騰が顕在化する直前である2021年初めの水準を依然として下回っている国が半数を占めている。
日本では数十年にわたって賃金が停滞していたが、ここ数年間になって、一貫して名目賃金の伸びをみせている。2025年4月、時間当たり名目賃金は前年同月比で3.5%上昇し、過去26か月連続で上昇している。 日本労働組合総連合会(連合)によると、2025年の賃上げ率は5.26%と見込まれており、この成長傾向は当面の間も続くと見込まれる。
2022年以降、高インフレにより、名目賃金の上昇が実質賃金の増加につながらない状況が続いている。日本の消費者物価指数の上昇率は、特に食品価格の影響で2025年5月時点で3.5%とイギリスに次いでG7諸国の中で二番目に高い。2021第1四半期から2025年第1四半期にかけ、実質賃金は累積で2%減少したが、近年では前年同月比0%で安定している (下図参照)。
2024年時点で、日本の法定最低賃金は、常勤労働者の総賃金の中央値に対する割合でみた場合、OECDに加盟する30か国中で5番目に低かった(日本は47%、OECD平均は57%)。2024年には、日本の地域別最低賃金は平均で5%引き上げられ1,055 円となり、過去20年間で最大の引き上げとなった。2025年にも同水準の増加が見込まれ、『経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)』では、最低賃金を1,500 円に引き上げる目標の達成を「2030年代半ばまで」から「2020年代」へと修正された。
ジェンダー・ギャップに関する OECD ダッシュボードによると、日本の男女間賃金格差は2022年の21.3%から2023年の22%へとわずかに拡大した。一方、OECD平均は11%程度で安定している。その結果、日本の男女間賃金格差はOECDに加盟する36 か国中35位となっている。日本政府は労働市場におけるジェンダー格差の是正に向けて継続的に取り組んでおり、その一環として、『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』の改正法が2025年6月に成立した。同法によって2026年4月より、 常時雇用する労働者の数が101人以上の事業主に対し、男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報を公表することが義務付けられた。
高齢化が経済成長に与える影響に対処するには
Copy link to 高齢化が経済成長に与える影響に対処するには私たちは古今東西いままでよりも長く生き、かつ健康に暮らせている。これは目覚ましい偉業であると同時に、出生率の低下を伴った人口構造の大きな変化をもたらしている。2060年までに生産年齢人口一人当たりの高齢者の数は、OECD全体で67%増加すると見込まれる。政策による対処策に変化がなければ、就業率は低下し、一人当たりGDP成長率は年間0.4%ポイント減速するだろう。
日本の生産年齢人口は、ピーク時の1995年の8,730万人から2024年には7,370万人と16%減少し続け、高齢者扶養率は同時期に21%から49%と倍以上になった。高齢者扶養率は、2060年には74%になる見込みである。一方、2024年12月には外国人人口が前年同月比で10%増加し、現在では総人口のおよそ3%を占めている。
過去十年間、就業率は高齢者の間で顕著に上昇している。2023年時点で、日本の45~54歳、55~59歳、60~64歳、65~69歳の就業率は、G7諸国の中で最も高かった。法定年金支給開始年齢が60から65へと段階的に引き上げられている(男性は2025年、女性は2030年に完了予定)ことに加え、『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』による65歳未満の労働者の雇用継続の義務付けに伴い、55~64歳の就業率は2014年から2024年の間に10.5%ポイント上昇し、79.2%となった。 高齢者の間で既に就業率が高いこともあって、2023年から2060年の間の就業率の変化は-0.8%にとどまることが見込まれる(就業率の予測図参照)。
高齢化が日本の経済成長に悪影響を及ぼす兆候は、既に現れている。1990年から2022年にかけて、日本の生産年齢人口は年率で0.46%減少しており、それに伴って日本の実質GDP成長率は年率で0.8%とG7諸国の中で2番目に低い成長率だった。
人口構造による下方圧力があるなかで経済成長を維持する上で検討に値する手段は、労働力を活用しつつ生産性を再活性化させるという合わせ技である。OECDは未活用労働力を活用する予測シナリオを組み立てた。就業者数における男女格差を完全に解消したケースと、現実的に受け入れ可能な移民数を最大限引き上げたケースを組み合わせ、それぞれの最大値の3分の2の値を推計した。日本では一人当たりの年間GDP成長率を0.33%まで引き上げられる可能性があるという推計結果になった(労働力活用の図参照)。
情報処理能力と職業訓練率は高年齢労働者ほど低い結果に
Copy link to 情報処理能力と職業訓練率は高年齢労働者ほど低い結果に昨今仕事の在り方は変わりつつあり、高齢労働者がこれまで以上に長く働き続けられるようになった。しかし、その恩恵も、労働力の高齢化に伴うスキル低下によって相殺される可能性がある。こうした問題に対処するためには、職業訓練に参加している55~65歳の労働者が約3分の1にとどまっている現状から、誰もが生涯にわたって学び続けられるような環境に転換することが急務である。
国際成人力調査 (PIAAC)によると、日本の55歳~65歳の労働者は、情報処理スキルの一つである識字能力において、 同年齢層のOECD平均を9%上回るスコアを記録した。25歳~44歳の労働者では、OECD平均より11%上回った。基幹年齢労働者と高齢労働者の得点差は12%で、OECD平均の10%をわずかに上回った。さらに、55~65歳の労働者の訓練参加率は29%で、OECD平均の35%をわずかに下回った(非公式学習への参加状況の図参照)。
OECDは、労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施したAIが労働力に与える影響に関する調査の内容を分析した(近日公表予定)。それによると、高齢労働者は、雇用主が実施する教育や公的支援を受けた研修を含めた、AI関連のリスキリング(学び直し)やアップスキリング(スキル向上)プログラムへの参加率が低いことが明らかになった。具体的には、AI利用者のうち、企業研修に参加したと回答したのは35歳未満では37%、35~49歳では32%だった一方、50歳以上では25%であった。
同調査では、公的教育訓練給付金の利用率が、高齢労働者において特に低いことも判明した。AI関連のリスキリング(学び直し)やアップスキリング(スキル向上)に参加した労働者のうち、教育訓練給付金を利用したと回答したのは、15~34歳の労働者では57.6%、35~54歳の労働者では53.2%であった一方、55歳以上の労働者では46.7%にとどまった。
『経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025』 において、日本政府は、教育訓練給付金対象講座を拡大する方針を明確に示しており、特にデジタル技術やAI関連スキルに焦点を当てた講座を含むほか、非正規雇用労働者がオンラインで職業訓練を受講することを可能とする取り組みを強調している。
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荒木 恵 (✉ satoshi.araki@oecd.org)
Glenda QUINTINI (✉ glenda.quintini@oecd.org)
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本書の全文は英語で閲覧可能: OECD (2025), OECD Employment Outlook 2025: Can We Get Through the Demographic Crunch?, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/194a947b-en.
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