自然災害後のインフラ復興は、単に被害を受けた資産を復旧するだけではなく、レジリエンスを強化するとともに、将来のリスクを低減し、長期的な開発目標を支えるものであるべきだと、OECDの新しい報告書は指摘している。
OECDの Prevent-React-Rebuild(PRR)フレームワーク を基盤とし、国連仙台防災枠組(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction) と整合した OECD/世界銀行「質の高いインフラに関する優良事例集2026」 は、「Build Back Better (より良い復興:BBB)」は単なる選択肢ではなく、特に開発途上国においては持続可能な開発のための不可欠な条件であると論じている。
災害疫学研究センター(Centre for Research on the Epidemiology of Disasters) のデータによると、自然災害による経済的損失は2015~2024年の間、前の10年間と比べ平均32%増加した。開発途上国が受けた影響は特に大きく、災害関連損失は 小島嶼開発途上国(SIDS) ではGDPの約6%、後発開発途上国(LDCs)では約2%に達した。一方、OECD諸国では約0.3%にとどまる。
本優良事例集は、交通、エネルギー、通信などの 競争力関連のインフラ に焦点を当てている。これは、特定の地域の経済パフォーマンスや競争力に直接影響を与える資産、施設、システムを指す。復興過程の意思決定は、将来世代の生産性、貿易面での統合、社会的包摂に影響を及ぼす。報告書は、復興においては将来想定されるショックへのレジリエンスを高め、長期的な開発戦略と整合させるとともに、当初から公平性と包摂性を組み込むべきであると強調している。
インフラをより強靭にすると、初期費用が嵩むこともあるが、長期的にはより大きな価値を生み出す。例えば、インフラのデザインをより強度にすることで被害の発生確率を大幅に低減しつつ、建設コストの増加を限定的にすることもある。これに対し、レジリエンスの観点を組み込まない場合、ライフサイクルコストの増加、機能停止の頻発、財政負担の拡大につながる可能性がある。
報告書は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの7つの事例研究に基づき、「Build Back Better(より良い復興)」を実現するための3つの重要な要素 を示す。
人を中心とした復興
復興は単なる資産修復ではなく、開発プログラムとして構想されるべきである。地域社会の参加、参加型のリスク評価、能力強化は、復興が不平等を縮小し、地域の人々の意向を反映するための重要な要素である。
的を絞った予測可能な資金調達
BBBの実現には、緊急対応を超えた資金調達メカニズムが必要である。OECDのデータによれば、2020~2023年の間、短期的な緊急対応に対する政府開発援助は、長期的なインフラ投資に対する資金よりも70%多かった。このギャップを埋めることは、レジリエンス目標が後回しにされるのを防ぐうえで不可欠である。開発金融機関や各国の開発銀行は、長期資本を動員し、民間投資を呼び込むうえで重要な役割を果たす。
強固なガバナンス枠組み
効果的な復興には、明確な制度的権限、最新の規制基準、異なる政府のレベル間での連携が必要である。インフラ計画や災害リスク管理システムにレジリエンスを組み込むことは、透明性、説明責任、投資家の信頼を確保するために不可欠である。
災害リスクが高まり、多くの開発途上国でインフラ不足が依然として大きい中、将来を見据えた復興は、レジリエンス戦略であると同時に、経済開発上の重要な課題でもある。
OECDは100以上の国々との協力により活動し、個人の自由を守り、世界中の人々の経済的・社会的ウェルビーイングを向上させるための政策を推進する国際的な政策フォーラムである。
本優良事例集は、OECD開発センター が 世界銀行 の協力により、また日本の 国土交通省(MLIT) の財政的支援により作成した。