2005年に始まった貿易のための援助イニシアチブは、開発途上国の貿易の目標を明確化し援助国のそれと整合させることで、途上国の市場参入を支援する取り組みです。貿易のための援助は、特に支援を最も必要とする国と人々が援助を利用できるようにしています。2020年に貿易のための援助の受取額が最も多かったのはアフリカ(38%)で、続いてアジア(35%)、アメリカ(10%)、欧州(6%)、オセアニア(1%)でした。
貿易のための援助の開始以来、援助国は政府開発援助(ODA)として重要な産業部門と活動に5560億米ドルを支出してきました。優先されたプロジェクトは生産力と経済インフラの構築で、2020年には支出額の98%を占めていました。また経済の多様化に向けた支援も重視されています。
また、貿易のための援助は新たに出現した環境と持続可能性の課題への取り組みも支援しています。2020年には、貿易のための援助のコミットメントのうち51%に、環境関連の目的が含まれていました。これは、2020年の気候関連ODAコミットメントの56%にあたります。こうした問題が新たに重視される理由の一端は、パリ合意のような国際的コミットメントに組み込まれる気候関連の要請が増加していることにあります。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで、金融・財政刺激策を講じる能力に欠けている国々が深刻な打撃を受けたため、貿易のための援助の重要性が危機管理の一つの手段として再確認されました。2020年には貿易のための援助向け支出が過去最高額の487億米ドルに達し、そのうち47億米ドル(貿易のための援助コミットメントの7%)がCOVID-19関連の活動に割り当てられました。貿易のための援助は、製薬といったCOVID-19対応に不可欠な部門にも支援を行いました。
また、COVID-19危機で女性の国際貿易への参入がさらに難しくなりました。2020年に貿易のための二国間援助のコミットメントのうち42%が、ジェンダーに焦点を当てており、この割合は過去10年間で徐々に上昇しています。女性が働く部門にプロジェクトの的を絞ることが、貿易のための援助でジェンダーの平等の成果を最大化するために重要です。
参考資料: Aid for Trade at a Glance 2022: Empowering Connected, Sustainable Trade