
OECD - パリ、2019年9月20日
汚染物質を排出するエネルギー源への課税は、地球環境と人体に悪影響を及ぼす物資の排出を抑える有効な方法の一つで、その税収は被害を受けやすい家計の低炭素への移行を進めるのに利用できます。しかし、OECDの新報告書、「エネルギー利用への課税2019年版 (Taxing Energy Use 2019)」によると、先進及び新興諸国から排出されるエネルギー関連のCO2の70%には全く課税されておらず、クリーンなエネルギーへの移行を進めるインセンティブがほとんど働いていません。
気候対策への人々の関心が高まる中で開催される国連気候変動サミットには、世界中の指導者が集まります。Taxing Energy Use 2019の概要によると、世界全体のエネルギー排出の80%以上を占める44カ国のいずれの国でも、汚染物質を排出するエネルギー源への課税は、気候変動と大気汚染のリスクと影響を引き下げるために必要な水準に達していません。
道路交通燃料に対する税率は比較的高いものの、特に一部の道路交通部門は税率が優遇されているため、環境被害のコストを十分に反映するには遠く及びません。エネルギーからのCO2排出のほぼ半分は石炭によるものですが、石炭への課税は、ほとんどの国々で全くないか、ほぼゼロに近い状態です。それよりクリーンな天然ガスへの税率の方が高い国が多いほどです。国際航空と海運については燃料税はゼロで、頻繁に長距離航空を利用する人々と貨物運送会社は相応な税金を支払っていないことになります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、次のように述べました。「化石燃料の利用を減らす必要があることはわかっているが、最も汚染度が高い燃料への課税がゼロまたはほぼゼロならば、燃料を変えるインセンティブがほとんどなくなる。エネルギー税が唯一の解決策というわけではないが、そうした税がなければ気候変動を抑制することができない。エネルギー税は公平に適用され、環境被害を受けやすい人々の暮らし良さを改善し、エネルギー転換を促進することに活用されるべきである。」
本書の対象となった44カ国のうち、道路交通を除くエネルギー関連のCO2排出量の97%に対する税率は、環境への損害を反映していると言える水準には遠く及びません。
道路交通以外のエネルギーに、炭素排出の気候へのコスト見積もりの最低額とされているCO2排出量1トン当たり30ユーロ以上の税を課している国はわずか4カ国(デンマーク、オランダ、ノルウェー、スイス)です。近年、エネルギー税を引き下げた国すら数カ国あります。
国による助成と投資とともに、税の調整も、低炭素エネルギー、交通、産業、農業への移行を奨励するために不可欠です。OECDの新たな研究では、産業と社会生活を損なうことなく大きな変化を実現することの難しさを考慮して、排出量削減目標と健康の改善、雇用、サービスの入手可能性といった幅広い社会目標との相乗効果とトレードオフを織り込むことで、排出量削減のために素早く行動を起こすインセンティブをいかに高めることができるかを明らかにしています。
来週開催される国連サミット、Accelerating Climate Action: Refocusing Policies through a Well-Being Lensで公表される予定のOECDの新たな分析によると、クリーンな空気、健康な食事、サービスや雇用の利用しやすさ、包摂的な財政改革といった目標に焦点を当てることで、最終的に低炭素への移行を加速し、暮らしの改善につながる変化を取り込むことが比較的容易になる可能性があります。
今年7月、グリア事務総長は各国政府に対して、エネルギーからの排出量が過去最高を記録しているにもかかわらず経済の脱炭素化が一部の国々で後退していることに、特に若者の間で怒りが高まっていることに向き合うよう要請しました。 OECDの2019年化石燃料助成目録によると、調査対象となった44カ国における化石燃料生産及び利用への政府助成は、2017年は1400億米ドルで、一部の国々では助成額が上昇していました。
Taxing Energy Use 2019では、税制を改善して低炭素技術に公平な機会を与えることで、より環境に配慮した選択肢に投資を移行させる一助となると述べています。
本報告書は、燃料税、炭素税、そして発電と熱生産、産業、交通における電力利用税という3種類のエネルギー税について考察しています。それによると、政府は、税制改革の結果として税率を引き上げることで、社会的弱者の家計、企業、労働者が損害を被らないように配慮すべきです。新たに得られる税収は、所得税引き下げ、インフラや医療への支出増加、あるいは家計への直接給付などの社会的目的に用いることができます。
サマリーと主な結論は、こちらからダウンロードできます。
(報告書全文は10月に公表されます。)
報道関係者のお問い合わせは下記までお願いいたします。
Catherine Bremer in the OECD Media Office ([email protected]; +33 1 45 24 97 00).
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