2020年11月13日(ベトナム・ハノイ)
東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済は、新型コロナウイルス危機が地域経済に打撃を与え続ける中、2020年に平均4.3%縮小する見込みであると、OECD 開発センターの新報告で明らかにされました。同報告書は、経済回復を実現し、金融市場の安定を維持するには、財政および金融政策による強力な支援が引き続き不可欠であると指摘しています。

経済活動は過去数十年で最も激しい落ち込みを示しているものの、このような異常な時期において政府や中央銀行が前例のない措置を講じたことで、経済活動の悪化を限定的なものにしています。 ASEAN 諸国の GDPについては、2020年は平均して4.3%減のマイナス成長、2021年には5.4%の成長が予測されています。ASEAN ビジネス投資サミットで本日発表されたOECD 開発センターの『エコノミック・アウトルック-東南アジア、中国、インド2020年版11月アップデート:継続するCOVID-19 の課題(Economic Outlook for Southeast Asia, China and India 2020 - November Update: Ongoing challenges of COVID-19)』によると、ASEAN10カ国に中国とインドを加えた新興アジア諸国については、今年は平均で2%のマイナス成長となり、2021年には8.1%の成長率を示すと見込まれています。
GDP成長率は第2四半期に総じて予想を下回りましたが、今年残りの期間には改善する兆しも見られます。ASEAN ではどの国も景気後退の影響を受けている一方で、今後の見通しはそれぞれの国内状況や公衆衛生の状況によって異なります。ASEAN主要5カ国の中で経済の落ち込みが最も深刻になると予想されるのはフィリピンとタイで、またASEANのCLM諸国では、カンボジアがラオスとミャンマーに大きく後れを取ると見られています。新型コロナウイルス感染症の大流行の進行状況は地域によってばらつきがあり、インドネシアとフィリピンで確認された累積感染者数は現在、35万人を超えています。
景気下降はほぼ全ての経済領域に影響を与えています。労働市場の悪化が進み、実質可処分所得が減少するであろうと思われる中で、特に個人消費に影響が及んでいます。また民間投資については、投資能力の不十分な活用や先行きの不透明感の継続が要因となって、引き続き低調に推移することが見込まれます。同様に、貿易摩擦の中で世界貿易が著しく減少し、グローバル・バリューチェーンが混乱する恐れのあることを考慮すると、輸出は引き続き抑制されると見込まれます。金融市場は現在概ね安定していますが、状況が悪化すれば、ASEAN 地域への資本移動に影響がでる可能性があります。セクターレベルでは、旅行および観光産業の厳しい状況が今後も続く見通しです。
ASEAN諸国の政府当局は果断な政策パッケージでコロナ危機に対応しています。インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイの中央銀行は2019年末以来、政策金利を75~300ベーシスポイント引き下げています。さらに金融政策による支援を補完する形で、 前例のない財政刺激策が実施されました。ただ、経済活動の支援を目的としたこのような大型刺激策は財政的な課題と向き合うこととなります。
政策当局者は非常に大きな経済的課題に直面しています。その一つとしては、コロナ危機対策に割り当てられた追加的なリソースを活用する際に、企業や家計のニーズへの対応が効果的に行われるよう万全を期すことが挙げられます。さらに、財政赤字が拡大する状況の中で、財政の長期的な持続可能性を確保することも課題の一つです。ASEAN諸国はこの二つの課題に取り組むために、地域全体での協力を強化しつつ、より広範な政策オプションを検討する必要があります。
『エコノミック・アウトルック-東南アジア、中国、インド2020年版11月アップデート:継続するCOVID-19 の課題』に関する詳しい情報は、次のウェブサイトをご覧ください: www.oecd.org/dev/asia-pacific.
同報告は、日本、韓国、スイス及び欧州連合の各政府による追加サポートを受けました。
報道関係の方は、OECD開発センターの田中兼介アジアデスク統括([email protected], tel. +33 6 27 19 05 19)、同センター報道担当のBochra Kriout ([email protected], tel. +33 1 45 24 82 96)、またはOECD東京センターの横川友美子([email protected], tel +81 3 5532 0021)までお問い合わせください。
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