OECD、パリ―2018年11月7日
抗菌薬耐性菌を抑える取り組みを強化しないと、スーパー耐性菌による感染症で欧米、オーストラリアでは今後30年間で約240万人が死亡すると見られています。しかし、OECDの新報告書によると、手洗いや、抗生物質をもっと慎重に処方するといった簡単な措置に対して1人当たり年間わずか2米ドルを支出するだけで、4件中3件の死亡を予防することができます。
『スーパー耐性菌の抑止(Stemming the Superbug Tide: Just A Few Dollars More)』によると、薬剤耐性菌(AMR)による合併症対策のコストは、スーパー耐性菌対策を各国が強化しない限り、分析対象となった33カ国平均で年間35億米ドルに上ると見られています。

感染リスクが特に高いのは、南欧諸国です。AMRによる死亡率が最も高いのは、OECD諸国の中ではイタリア、ギリシャ、ポルトガルで、死亡者数が最も多いのは米国、イタリア、フランスです。米国だけでも2050年までに毎年3万人がAMRによって死亡することになります。
スーパー耐性菌の高まりを抑えるための短期的投資により、長期的に人命が救われ、コストが削減されることになります。薬剤耐性菌対策の5本の柱は、次の通りです:衛生状態の改善促進、抗生物質の過剰処方をしない、患者の症状がウイルス性か細菌感染かの早期判断、抗生物質の慎重な処方、マスメディアを使ったキャンペーン。これにより、現代医学に対する最大の脅威の1つに対処することができます。
OECD諸国におけるこうした措置の一部を含む一連の公共医療措置への投資は、1年もしないうちに採算が取れる上、最終的に年間48億米ドルの節減につながるとOECDは述べています。
抗生物質と細菌の8つの代表的な組み合わせで耐性のある割合は、OECD諸国全体で2005年の14%から2015年には17%に上昇しているものの、各国間の違いは顕著でした。トルコ、韓国、ギリシャの平均耐性率(35%)は、最も低いアイスランド、オランダ、ノルウェー(約5%)などの7倍以上でした。
中低所得国では耐性菌の割合はすでに高く、さらに急速に拡大すると予測されています。耐性菌による感染症の割合はOECD諸国では17%ですが、例えばブラジル、インドネシア、ロシアではすでに40~60%に上ります。これらの国々では、AMRの割合の伸びがこれから2050年までに、OECD諸国より4~7倍高くなると予測されています。
耐性菌の平均増加率は鈍化しているように見える一方で、深刻な懸念材料があります。OECD諸国全体で、感染症予防の最先端でありなおかつ最も有効な第2及び第3選択薬への耐性が、2005年の同じ抗生物質と細菌の組み合わせのAMR率と比較して、2030年には70%高くなり、EU諸国では第3選択薬への耐性は2倍になると予測されています。
最も危険にさらされるのは子供と高齢者です。薬剤耐性菌による感染症に罹る可能性は、特に12か月未満の乳児と70歳以上の高齢者で非常に高くなっています。また、男性の方が女性よりも感染しやすいと考えられています。
本報告書に掲載されている分析は、OECDがミクロシミュレーションとアンサンブルモデリング法などの最新の分析アプローチを用いて実施しました。欧州諸国のデータは、欧州疾病予防管理センターから提供されました。
Stemming the Superbug Tide: Just A Few Dollars More は、下記サイトからダウンロードできます。http://www.oecd.org/health/stemming-the-superbug-tide-9789264307599-en.htm
Executive Summary日本語版はこちらです。
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