2021年9月17日
2019年の開発途上国向け気候変動対策資金、796億米ドルに増加
OECDの最新データによると、先進国が開発途上国に提供・動員した気候変動対策資金(climate finance)は、2018年は783億円でしたが、2019年には2%増加して総額796億米ドルになりました。
この小幅な増加は、国際機関による公的気候変動対策資金が増加したことによるものですが、二国間の公的資金のコミットメントと民間からの資金は減少しました。
Climate Finance Provided and Mobilised by Developed Countries: Aggregate trends updated with 2019 dataは、開発途上国の気候変動への対策と適応を支援するために、2020年までに年間1,000億米ドルを動員するというUNFCCCの目標に向けた進捗状況に対する、OECDの第四回の評価報告書です。

マティアス・コーマンOECD事務総長は、次のように述べています。「2019年の気候変動資金は引き続き増加したが、先進国が1,000億米ドルを動員するとした2020年の目標にはまだ200億米ドルが不足している。
2018年から2019年にかけて、気候変動対策資金の総額が限定的にしか増加しなかったことは、特にCOP26を前にして残念である。2020年の適切に検証されたデータが入手できるのは来年初頭になるが、気候変動対策資金が目標を大幅に下回ることは明らかである。もっと対策を強化する必要がある。援助諸国がこの問題を認識していることは理解しており、カナダとドイツは、年間1,000億ドルという目標の達成に必要な追加資金を動員する計画を進めている」
本報告書によると、先進国からの公的気候変動対策資金は2019年は629億米ドルに達しました。二国間の公的対策資金は288億米ドルで、2018年から10%の減少、先進国が拠出している多角的公的対策資金は341億米ドルで、2018年から15%増加しました。民間からの気候変動対策資金の水準は、2018年には146億米ドルでしたが、2019年は4%減少して140億米ドルでした。気候変動関連の輸出信用は26億米ドルと小規模で、気候変動資金全体の3%を占めています。
本報告書によると、2019年の気候変動対策資金のうち、25%が適応策に(2018年は21%)、64%が気候変動の緩和活動に(2019年は70%)、残りが分野横断的活動に充てられました。気候変動対策資金の半分以上は、エネルギーと交通を中心とした経済インフラを対象としており、残りの大部分は農業と社会インフラ、具体的には水と衛生を対象としています。
2016年から19年にかけての気候変動対策資金の主な受益国はアジアで、平均して全体の43%を占めており、次いでアフリカ(26%)、南北アメリカ(17%)となっています。最貧諸国向けの気候変動対策資金は、2019年に大幅に増加(2018年比27%増)しましたが、小島嶼開発途上国向けの資金は、2018年は一時的に増加したものの、2019年は2017年の水準に戻っています(21億米ドルから15億米ドル)。
このデータは、小島嶼開発途上国が気候変動資金の利用において特有の課題を抱えていることを裏付けています。国際社会は、小島嶼開発途上国が抱える課題に適した、分断化していなくて利用しやすい、予測可能で長期的な気候対策資金を検討する必要があります。
コーマン事務総長は次のように強調しています。「先進国が途上国における気候変動対策のための資金提供を強化すること、特に貧しく脆弱な国々が高まる気候変動の影響への危機対応力を強化をできるよう支援することが、これまで以上に急務である」
公的金融手段という点では、2016~2018年は横ばいだった公的助成が、2019年には2018年より30%も急増して167億米ドルに達しました。それに対して、2018年まで大幅に増加していた公的融資額は、2019年には5%減少しました。その結果、2019年の公的気候対策資金全体に占める助成の割合は27%、ローン(譲許的、非譲許的双方を含む)の割合は71%でした。
編集者注
2009年にコペンハーゲンで開催されたUNFCCC第15回締約国会議(COP15)で、先進国は、2020年までに年間1,000億米ドルを途上国の気候変動対策に拠出するという共同目標を掲げました。この目標は、カンクンで開催されたCOP16で正式に決定され、パリで開催されたCOP21で再確認され2025年まで延長されました。
OECDは、援助諸国の要請に応じて、パリ協定の全締約国が資金源と資金調達方法に関して合意したCOP24の成果に沿って、確かな会計枠組みに基づき、この目標に向けた進捗状況を定期的に分析しています。OECDのデータは、先進国が提供・動員する気候対策資金について次の4つの構成要素を捉えています:二国間の公的気候対策資金、先進諸国が拠出する多国間の公的気候対策資金、気候対策に関連して公的に支援される輸出信用、先進諸国が拠出する二国間および多国間の公的気候対策資金によって動員された民間資金。
様々なデータセットの公式の発表時期には時間的なずれがあるため、2020年のデータが入手できるのは2022年に入ってからです。その時点で、2025年までの情報を提供し、新型コロナウイルス危機が気候対策資金のフローにどの程度の影響を与えたかを評価するために徹底的な分析が行われます。一方、2021年の更新版には、2013~18年の時系列に2019年が加えられ、また2018年の米国の二国間公的気候資金のデータが追加されています。このデータはこれまで入手できず、2016~17年にかけての米国の二国間公的気候対策資金の平均水準として推定されていました。2018年の実際の米国二国間の公的気候対策資金額は、この見積もりより6億米ドル少なかったことがわかりました。
二国間および多国間の公的気候対策資金と輸出信用については、2013~9年の時系列に一貫性がありますが、民間からの気候対策資金のデータは、改良された手法を適用した結果2015年の時系列に差が生じており、2013~14年のデータと2016年以降のデータとを直接比較することはできません。
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