OECD-パリ、2019年4月11日
2018年OECD諸国全体の平均的な労働者について、所得税と社会保険料がわずかに下落しました。OECDの新報告書、「賃金課税統計2019 (Taxing Wages 2019)」によると、それは一部の国々で行われた大規模な改革が原因となっています。
本報告書から、「税のくさび」-雇用者と雇用主が支払う労働コストにかかる税の総額から家族給付受取額を差し引いた額が、雇用主が支払う労働コストに占める割合ーは、2018年は36.1%でした。2017年より0.16ポイント下落しており、OECD諸国の平均的な労働者については、税のくさびが4年連続で下落したことになります。
2017年から2018年にかけて税のくさびが下落した4カ国は、エストニア(2.54ポイント)、米国(2.19ポイント)、ハンガリー(1.11ポイント)、ベルギー(1.09ポイント)です。OECD諸国全体の平均的労働者の税のくさびが2017年から2018年に下落したとはいっても、実際には22カ国、OECD諸国のほぼ3分の2にあたる国々ではわずかですが上昇しました。それと同時に、残り10カ国では税のくさびがわずかに下落しました。
税のくさびの平均の下落幅が最も大きかった4カ国とも、その原因は大規模な改革が行われたことにあります。エストニアと米国の場合は所得税改革、ハンガリーとベルギーでは社会保険料の雇用主負担の減少が原因となっています。

本報告書では、正味平均個人税率についても考察しています。これは、雇用者が支払う個人所得税と社会保険料から家族給付受取額を差し引いた額が賃金総額に占める割合で表します。2018年にはOECD平均は25.5%でした。このOECD全体の平均割合は独身者で子供がいない労働者の平均賃金で計算したもので、近年横ばいで推移していますが、国別に平均を見るとチリ、韓国、メキシコの15%未満から、ベルギー、デンマーク、ドイツの35%以上まで幅があります。
本報告書ではさらに、OECD諸国の中央値の賃金を得ている労働者への課税を、平均賃金の労働者への課税と比較した考察を特集しています。全てのOECD諸国で、賃金中央値は賃金平均値より低くなっていますが、それは所得分布の上限の差が大きいことによります。平均すると、賃金中央値は賃金平均値の80.8%で、その結果、税のくさびも平均賃金では36.1%であるのに対して、賃金中央値では34.3%と低くなります。この差は、主に所得税が低くなることによるものです。しかし、本報告書によると、賃金中央値は賃金分布を国際的に比較する代表値ですが、その算出はデータの入手可能性の問題で難しく、その差はほとんどの国でそれほど大きくありません。
主な結論
独身者と子供がいる家族に対する税のくさび
- 2018年に、その国の平均賃金を得ていて子供がいない単身世帯に対する税のくさびの平均が最も高かったのは、ベルギー(52.7%)、ドイツ(49.5%)、イタリア(47.9%)、オーストリアとフランス(47.6%)である。
- 2018年に、働き手が1人で子供が2人いる平均的賃金の世帯の税のくさびが最も高かったのは、フランス(39.4%)である。オーストリア、ベルギー、フィンランド、ギリシャ、イタリア、スウェーデン、トルコも37%を超えた。この世帯構成で、税のくさびが最も低かったのはニュージーランド(1.9%)で、チリ(7.0%)とスイス(9.8%)がそれに続いている。
- 稼ぎ手が1人の夫婦に対する税のくさびのOECD平均は26.6%で、過去2年間横ばいとなっている。2018年にこの世帯構成の税のくさびの上昇幅が最も大きかったのは、ポーランド(10.3ポイント)である。その他には、1ポイント以上上昇した国はなかった。下落幅が最も大きかったのは、ニュージーランド(4.5ポイント)、リトアニア(2.5ポイント)、エストニアと米国(2.4ポイント)である。
- チリとメキシコを除く全てのOECD諸国で、稼ぎ手が1人で子供がいる世帯の税のくさびは、子供がいない単身世帯のそれよりも低かった。チリとメキシコでは、税負担水準はどちらの世帯構成でも同じだった。その差は、ベルギー、カナダ、チェコ、ドイツ、アイルランド、ルクセンブルク、ニュージーランド、スロベニアにおいては労働コストの15%を超えている。
独身者と家族の正味平均個人税率
- 2018年に、平均賃金を得ていて子供がいない独身世帯の正味平均個人税率が最も高かったのは、ベルギー(39.8%)、ドイツ(39.7%)、デンマーク(35.7%)、最も低かったのは、チリ(7%)、メキシコ(10.2%)、韓国(14.9%)だった。OECD平均は0.16ポイント下落して、25.5%だった。
- 働き手が1人で子供がいる世帯の2018年の正味平均個人税率は14.2%だった。平均賃金を稼ぐ働き手が1人で子供が2人いる世帯の正味平均個人税率が最も高かったのはトルコ(26.2%)とデンマーク(25.2%)、最も低かったのは、チェコ(0.2%)、カナダとエストニア(1.8%)だった。
特集
- 賃金中央値とは賃金分布の中央値(50パーセンタイル)のことで、賃金の平均値とはフルタイム労働者の賃金合計を労働者数で割った値である。したがって、平均値は、賃金分布の上限における差の影響をより大きく受ける。
- 2017年の中央値の賃金を得ている労働者に対する税のくさびの平均は、国別に見ると、ベルギーの52.0%からチリの7%まで幅がある。21カ国で、中央値の賃金の労働者の税のくさびは、30%から45%の間にある。
- 賃金中央値の労働者の税のくさびの平均は、2カ国(ハンガリー、チリ)を除く全ての国々で、平均賃金のそれを下回っているが、変化が大きかった国は数カ国に過ぎず(トルコ、ルクセンブルク、ポルトガル、イタリア、イスラエル、アイルランド)、それらの国々では賃金中央値が下がったため給付と雇用主の社会保険料が下落し、個人所得税の限界税率が下がった。
詳細及び国別レポートは下記のウェブサイトをご覧ください。
www.oecd.org/tax/taxing-wages-20725124.htm
日本についてのレポート(日本語)はこちらからご覧ください。
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David Bradbury, Head of the OECD’s Tax Policy and Statistics division (+33 1 4524 1597)
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www.compareyourcountry.org/taxing-wages
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