2014年7月8日
OECD最新報告書Making Mental Health Countによると、精神医療は大変多くの国で資源が不十分で優先順位が低いが、各国政府は精神医療の改善に向けた取組を一層強化する必要があります。これによると、精神疾患の社会的・経済的コストは高く、さらに増加しています。重度の精神疾患を持った人は一般人口よりも20年ほど早く死亡し、失業する可能性も6~7倍高いことが示されました。
人口の2人に1人は、一生涯の中で精神疾患を経験すると推測されており、就職の見込みや賃金、生産性に影響を与えます。精神疾患の直接・間接的コストは、多くのOECD諸国でGDPの4%を超えると予測されています。
また、本報告書によると、全ての国で精神疾患は完治されず、3分の1から2分の1の精神疾患を持った人が治療を受けていません。信頼できるデータの欠如も問題の一端です。少数の国しか精神医療への投資を正確に把握できておらず、コストの推計や限られた資源の配分を困難にさせています。各国は、精神医療サービスが需要にどれだけこたえているか、または良い成果をあげているか把握できないでいるのが現状です。
精神疾患率やコストを把握し、治療の成果や質をモニタリングするためには、詳細かつ最新の情報が不可欠です。
うつ病や不安神経症などの軽・中等度の精神疾患の有病率は高く、常に就業年齢人口の15%が罹患しています。また多くの場合十分な治療を受けられておらず、世界全体でうつ病患者の56.3%が適切な治療を受けていないことが示されます。これらの疾患はOECD諸国で生産性の低下や病気による欠勤、障害、失業に深く関わっています。
一次医療(プライマリー・ケア)への資金投入の増加は、軽・中等度の精神疾患の治療のための費用対効果のある手段の一つと言えます。OECDの多くの国では、一次医療従事者がこれらの疾患を診断・治療・管理することが既に求められているものの、多くの場合、効果的に実施するための資源や時間、専門性が欠如しています。
一次医療の追加支援は以下を含めるべきです。
- 一次医療に関わる全ての医師と看護師への精神医療研修と継続的な専門能力の開発
- 一次医療従事者への精神医療専門医からのより良い支援
- 一次医療従事者が専門医療へ患者を紹介するためのアクセスの改善
一次医療制度だけでは軽・中等度の精神疾患の治療ニーズには対応しきれず、そんな中認知行動療法などの心理療法が効果的だと証明されており、特に就業や生産性、社会保障給付の節減の可能性まで考慮に入れた場合、費用対効果が良いとされています。
報告書の主要な調査結果と政策提言をhttp://www.oecd.org/els/health-systems/mental-health-systems.htmで閲覧可能です。
詳しい情報は、OECD雇用労働社会問題局次長Mark Pearson (電話: + 33 1 45 24 92 69) OECD医療課Emily Hewlett (電話: + 33 1 45 24 75 10)、OECD東京センター・川口(電話:03-5532-0021)まで。
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