バンダルスリブガワン、2021年9月9日 -ASEANとOECDは、 本日開催されたASEAN経済大臣会合において、「OECD競争評価レビュー:ASEANの物流部門(OECD Competition Assessment Reviews: Logistics Sector in ASEAN) 」および 「OECD競争中立レビュー:ASEANにおける小型郵便配達サービス(OECD Competitive Neutrality Reviews: Small-Package Delivery Services in ASEAN)」を発表しました。
この二点の報告書では、ASEAN地域の物流サービス部門の可能性の発揮を妨げる恐れがある法規制の問題を明らかにしています。これらの報告書には、ASEAN諸国の政府に対して、業界全体の成長を促進し、新型コロナ売ウイルスのパンデミックの経済的悪影響からの回復を促進するための、堅実で実用的な拘束力のない政策提言が収録されています。
ASEAN地域のGDPは、2005年のほぼ2倍に増加しました。中産階級が増加し、今では大きな潜在的な消費者グループを形成しています。しかし、規制上の障害によってさらなる成長と繁栄が疎外されています。規制上の障害は、物流業界の競争を阻害し、効率を下げ、企業のコストを増やし、消費者の幸福を最大化させることもなく、地域および国際貿易を阻害します。
OECDの調査・分析は、英国政府のASEAN経済改革プログラム(ASEAN Economic Reform Programme)の支援を受けて行われました。それによると、ASEANの物流業界の規制を改善するために推奨されてる実践的で低コストの政策が導入されれば、既存の事業者の権限が高められ、新規参入業者には全く新しい機会とそれに伴う市場の効率性を見極め、活用することが奨励されることになります。その結果、企業や消費者が恩恵を受け、最終的にはASEAN諸国の成長と発展が加速されます。
成長の原動力
グローバル化と自由貿易のおかげで、ASEAN諸国は大いに発展しましたが、その中で物流業界は大きな役割を果たしています。物流業界は現在、ASEAN地域全体のGDPと雇用の約5%を占め、約1,700万人を雇用しています。
ASEANのDato Lim Jock Hoi事務局長は、ASEAN諸国および広域経済における物流サービス部門の重要性に言及し、開会の挨拶で次のように述べました。「 ASEAN諸国経済は多様ですが、サービス業が地域全体の成長の主な原動力で、2019年にはGDPの約50%を占め ていた。
貿易の観点から見ると、物流部門は2019年にはサービス業の産出に2番目に大きな貢献をしており、ASEAN域内のサービス貿易全体の約24%を占めていた。つまり、ASEAN諸国経済とより広域の経済にとって、物流産業の重要性はどれほど強調してもし過ぎることはない」
経済的機会
いくつかのASEAN諸国では、物流コストが完成品価格の最大20%を占めており、これは世界平均のほぼ2倍にあたります。これは、事実上消費者と企業に課せられているもので、サプライチェーンにおける競争を妨げる障害を解決すれば削減できます。
物流業界における海外直接投資(FDI)に適用される規制を見直すことは、ASEAN諸国の経済成長につながります。貿易障壁やFDI規制を世界平均並みに緩和することで、中長期的にはGDPを最大17%押し上げることができると推定されています。
さらに、競争促進政策にはジェンダーの側面もあります。一部の研究の推定では、物流部門を含む経済のジェンダーバイアスを取り除くことで、地域のGDPが最大30%増加するとされています。
OECDが明らかにしたASEANの物流業界における競争規制の多くが解除された場合、ASEAN諸国の経済は年間45億米ドル以上の利益を得ることができます。これでも非常に控えめな試算で、雇用の増加、中小企業の市場参入障壁の緩和、国際取引の改善といった波及効果は考慮していません。
政策提言
OECD Competition Assessment Reviews: Logistics Sector in ASEAN とOECD Competitive Neutrality Reviews: Small-Package Delivery Services in AASEANは、ASEAN全10カ国の物流業界における競争を阻害する規制と法律についてOECDが3年間にわたって独自に行った調査の集大成で、ASEAN事務局の協力を得て作成されました。
調査の過程で、OECDはASEAN域内の700以上の法律を分析し、280人以上のASEAN関係者と面会し、域内の多くの公的関係者と緊密に協力しました。これらの報告書には、物流事業者間の競争の障害を取り除き、業界の競争条件を整えて成長と雇用を促進し、新型コロナウイルス危機によってもたらされた経済的苦境からASEANが脱出できるようにするための提言が数多く収録されています。
マティアス・コーマンOECD事務総長は、次のように述べました。「復興の強さと質を最適化するためには、開放性を向上させ競争を促進する改革が、新企業、特に中小企業の成長を刺激する上で不可欠な要素であろう。こうした中小企業は、ASEAN地域全体の全企業のほぼ90%、雇用全体のほぼ半数を占めている」
競争力の育成
OECD Competition Assessment Reviews: Logistics Sector in ASEANでは、規制が物流部門の競争に与える影響を評価しています。本報告書は、(1) 道路交通、内陸水路、海上輸送による貨物運送、(2) 貨物輸送、(3) 倉庫、(4) 小口配送サービス、(5) 付加価値サービスという物流市場の5つの主要サブセクターを取り上げています。
また、OECD Competitive Neutrality Reviews: Small-Package Delivery Services in ASEAN では、国有企業がASEAN地域のの小口配送市場の競争に与える影響を検証しています。この小口配送の市場は、新型コロナウイルスによって加速した電子商取引の拡大に一役買っており、物流業界にとって重要な位置を占めています。
AEM会合の議長であり、ブルネイ・ダルサラーム国の首相府大臣兼財務・経済II担当大臣であるDato Dr. Amin Liew Abdullah氏は、次のように述べています。「この調査は、ASEAN市場を新規参入者に開かれた状態にし、反競争的行動が公正な競争を歪めないようにするためのASEANの取り組みを補完している」
これら二点の報告書は、OECDのFostering Competition in ASEAN プロジェクトの一環として作成されました。同プロジェクトはOECDとASEANのパートナーシップによるもので、英国政府のASEAN経済改革プログラムの支援を受けています。市場の効率的な機能を妨げ、企業と消費者の不利益となる不公平な競争環境をもたらす規制を特定するために、ASEAN加盟国10カ国の競争を阻害する規制を見直しています。
この会合には、英国政府を代表して、グレッグ・ハンズ貿易・政策担当大臣が出席しました。
同氏は次のように述べています。「英国とASEAN諸国の貿易総額は、2020年には338億ポンドに上り、EUを除くとASEANは英国にとって4番目に大きな貿易のパートナーである。今回、英国は新たにASEAN対話パートナーの地位(ASEAN Dialogue Partner Status)を得て、ASEAN諸国との関係を深め、雇用を支援し、包括的な経済成長を促進するために、より一層尽力する。競争を強化し企業のために公平な競争環境を促進することは英国政府の優先事項であり、本日発表された報告書は、より公平な競争を支援し、国際貿易を促進することに大きく寄与するだろう」
本報告書の詳細は、報道関係者は下記までお問い合わせください。
OECD Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).
OECDは、世界100か国以上と協力して、個人の自由を保護し世界中の人々の経済・社会的幸福を向上させる政策を推進する、グローバルな政策フォーラムの役割を担っています。
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