2015年7月9日
最新のOECD報告書によると、雇用は緩やかな回復傾向に入ったが、多くの国(特に欧州)では2016年末まで就業率は依然として危機前を下回るレベルであることが予測されます。
雇用アウトルック2015年版によると、現在4,200万人が失業中であり、これは2014年の4,500万人よりは減少したものの、危機前と比べると依然として1,000万人多い状態です。
OECD34加盟国における失業率は、今後18ヶ月で引き続き減少し、2016年の第4四半期には6.5%にまで下がることが予測されます。しかし、ギリシャやスペインでは、引き続き20%を超えたままと予測されます。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、「危機により経済階層の底辺に陥れられてしまった何百万人もの労働者が傷つくのを防ぐための時間は限られている。防げなかった場合、既に高すぎるレベルに達している格差を、更にもう一段階上のレベルに上げてしまうことになる。各国政府は、長期的失業から抜け出せない、または、失業と低賃金労働を行き来しているような労働者の人数が恒久的に増加することを避けるため、今行動を起こすべきである」と述べました。
本報告書によると、長期的失業率は悪化しています。3人に1人以上の就職活動者、つまり1,570万人が12ヶ月以上失職しています。これは、2007年末以降で77.2%の増加であり、彼らの半数以上は2年以上失職しており、結果、再就職の展望はどんどん暗くなっています。
若者の失職率は、引き続き高く、大きな懸念となっています。本報告書は、長期的キャリア展望は、就業人生の最初の10年でほとんど決まってしまうという確証を得ました。つまり、危機の間に学校を修了したことで就職が困難だった人は、その後のキャリア展望も限られたものであるということです。
若者の失業率は、最も危機の影響を受けた南欧諸国でピークに達したが、ほぼ全てのOECD諸国において若者失業率は危機前を上回るレベルのままです。2007年以降、NEETの割合は、20-24歳だとOECDの4分の3以上の国々で増加し、25-29歳だとOECDの約3分の2の国々で増加しました。
報告書によると、雇用形態は、パート労働がより多くなってきました。パート労働の割合は、危機前の18.6%から現在は20.6%に増加しました。特にパート労働が多いのは、オランダ(51.7%)、スイス(36.8%)、そのほかオーストリア、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、イギリスでも25%以上です。ほとんどの国におけるパート労働者は個人が選択した上でのものですが、ギリシャ、イタリア、スペイン等ではパート労働者はフルタイム労働を探している状態です。
対照的に、雇用市場における派遣労働の割合は、危機後ほとんど変化していません。不況下では大幅に減少しましたが、危機後の回復段階では多くの雇用主が派遣契約をとおした労働力拡大を希望したため増加しました。
賃金上昇は遅くなり、2000-2007年の間に年率1.8%の伸びだったのが、2007年以降は0.5%の伸びと、ペースが下がりました。危機の際には賃金上昇の抑制のおかげで失職を制限することができ、結果雇用の回復を後押ししましたが、賃金上昇のペースが遅くなったこと、またいくつかの国では減少したことにより、多くの家計の所得を減少させることになり、更なる経済的困難を招きました。
OECDによると、政策決定者は、就職活動者、特に長期失職者が再就職できるよう支援する取組みを拡大すべきです。いくつかの国では再就職・再研修プログラムが財政健全化の大きな割合を占めてしまっており、更なるリソースが必要です。失職者一人当たりに充てる労働市場における積極的なプログラムに対する実質支出は2007年から2013年の間で(アイルランド、イタリア、スペイン、イギリスで50%以上減少。オーストラリアで40%以上減少)減少しました。
就職活動者に対する再就職や研修における効果的な官民パートナーシップ等といった効果的で効率的な労働市場の組織や政策が就職活動者の意欲を高めるには必須であり、特に長期失職者が雇用可能性を向上させたり、就職機会を拡大させたり、適切な職に就き続けることを支援できます。
本報告書で提示されている根拠によると、最低賃金は、適切なレベルに設定されれば、雇用にとってはわずかの弊害しか生まず、その一方で低所得者にとっては生活水準を上げるための一助となります。しかし、最低賃金は税・給付制度と密接に連携されていなければなりません。
本報告書に関する詳細やカントリーノートは、www.oecd.org/employment/outlook をご覧ください。
本報告書の埋め込み版も入手可能です。ダウンロード・プリント可能のレポートに関する情報もございます。
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