OECD - 2017年6月13日
『OECD雇用アウトルック2017年版(OECD Employment Outlook 2017)』によると、OECD地域では、雇用市場が引き続き改善しており、雇用率はようやく経済危機前の水準に回復しました。しかし、中・低所得層の人々の賃金は低迷し、中程度の技能を要する雇用が占める割合は下がっており、それによって不平等が拡大し、所得が最も高い人々が経済成長から得られる利潤を不当に手にしているという懸念が高まっています。
本アウトルックによると、15歳から74歳の人口に占める雇用者の割合は、3年連続で上昇しています。雇用率は2018年末までに61.5%に達すると見られており、これは2007年第4四半期のピーク時の60.9%を上回っています。
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職業の二極化が強まっていることが、グローバル化に対する反発を一層強めていますが、本アウトルックは、雇用の二極化は貿易統合以上に技能偏重の技術的変化が広がることでもたらされていることを明らかにしています。1995年から2015年の間に、中程度の技能を要する雇用が占める割合は、OECD地域全体で9.5ポイント下落したのに対して、高技能および低技能を要する職業の割合は、それぞれ7.6ポイント、1.9ポイント上昇しました。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、ドイツの労働社会相Andrea Nahles氏とともにベルリンで行われた発表会見で、次のように述べました。「雇用格差は縮小してきているが、多くの人々が賃金が増えずキャリアの見通しも立たないため、その恩恵を実感できずにいる。我々は経済モデルの恩恵をその中で働く人々に再度結びつける、包摂的な労働市場を構築する必要がある。グローバル化と成長の恩恵が広く共有され、我々の政策を確かに労働者が新たなチャンスを獲得する手助けになると同時に、急速に変化する雇用環境の課題に対処できるよう刷新しなければならない。」
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本アウトルックは、労働市場が今後も少なくとも2018年末までは引き続き改善し、雇用者数は2007年末よりも約4700万人多くなると予測しています。
OECD地域の失業率は、2010年第1四半期のピーク時よりも1200万人減少し、若者の失業者も380万人減少しています。OECD平均失業率は、徐々に下がって2017年第1四半期末は6.1%(失業者数3800万人)ですが、2018年末には5.7%(同3600万人)になると見られています。
それでも重大な問題が残っています。労働市場の回復が非常に不均等だということです。雇用率は2018年末までに金融危機以前の水準を上回りますが、わずか1%程度です。特に南欧諸国では、大幅な雇用不足が続きます。雇用が回復している国々でも、賃金は依然として伸び悩んでいます。
OECD諸国の労働市場に見られる雇用の二極化の約3分の1は、雇用が製造業からサービス業に移行し、仕事を失った工場労働者が、賃金の低いサービス部門の仕事に就かざるを得ない場合が多いことに原因があります。残る3分の2には、産業内の二極化の高まりが反映されています。このような雇用における変化の広がりは、労働力の需要が高技能の職業と低技能の職業に集中して、中程度の技能の仕事が失われていることによるものです。
この問題に対処するために、各国政府は労働者が適切な技能を身につけられるよう支援し、職業人生全体を通じて技能向上、再訓練の機会を与えなければなりません。また、各国は技能のニーズの変化をより良く評価し、カリキュラムをそれに沿ったものにし、生徒が労働市場の機会に開かれた選択ができるように導くべきです。どのOECD加盟国でも、高技能労働者は低技能労働者よりも2~3倍多くの現場研修に参加する機会に恵まれています。
社会保障・労働市場政策は、変化する就労形態にも対応しなければなりません。欧州の個人事業者の半数以上は、失業保険の対象になっていません。あらゆる人に社会保障を提供することが重要です。各国は、転職しても失業保険の受給資格を持ち運べるようにし、複数の仕事からの積立金の合算を容易にするよう、何らかの措置を講じるべきです。
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本アウトルックには、各国の労働市場の実績を雇用の量、質、労働市場の包摂性に基づいて比較できる、新たなスコアボードを収録しています。それによると、この3つの分野全てにおいて良い実績を上げている国は、北欧諸国、ドイツ、オランダ、スイスなど、数カ国に過ぎません。
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OECD Employment Outlook 2017, OECD Publishing, Paris, OECD (2017). DOI: http://dx.doi.org/10.1787/empl_outlook-2017-en
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