OECD - 東京、2016年4月11日
日本は、経済成長の活性化を最優先事項とし、労働生産性を高め、急速に減少している労働力を補うためにより多くの女性と高齢者が仕事に就けるよう奨励する改革を行わなければならないと、OECDは述べています。日本の人口は2010年の1億2800万人をピークに、2050年には1億人にまで減少するとみられています。83.5歳という平均寿命は、高齢者の年金依存率を高めています。この傾向はいずれも農村部で特に深刻です。
OECDの2016年版Territorial Review of Japanによると、人口の変動によって1999年から2011年までに日本の年間経済成長率が0.5ポイント以上も下がりました。人口に占める65歳以上の割合は現在の26%から2050年までに世界で最も高い約40%になるため、年金、医療、長期介護のコスト増という圧力が公的支出にかかると警告しています。

しかし、人口が減少することで土地をもっと柔軟に利用できるようになり、都市に緑地を増やしたり、人口密度が緩和されることでコミュニティ開発プロジェクトを実施したりすることが可能になると本報告書は述べています。交通渋滞も減り、住宅価格の高騰や環境への圧力も緩和されます。高齢人口が増えることで、新たな財・サービスへの需要が創出され、パートタイム雇用、起業あるいはボランティアに経験豊富で柔軟な労働力が供給されると考えられます。
特に、本報告書は2015年に採択された国土形成計画を、人口の変化に対処する第一歩として歓迎しています。都市をもっとコンパクトにして都市間のつながりを改善するよう提案しています。また、都市計画から雇用の分野まで政策を適応させ、人口の急速な減少と高齢化の影響を抑えるよう提言を行っています。正しい政策を導入することで、労働者の在勤期間を伸ばし、都市部の人口過密を緩和することが、イノベーション、成長、そして暮らし良さを実現する機会がもたらされると、本書は述べています。
「Better Policies シリーズ 日本:高齢化社会における成長促進と幸福度の向上」によると、OECDは日本の生産性を高める方法を提案しています。それによると、アベノミクスの第三の矢をさらに推し進めることが必要です。日本は貿易統合に向けたパートナーシップを推進し、コーポレートガバナンスの改善と製品市場改革によって企業部門の活力を高める必要があります。さらに、日本の研究開発は高水準ですが、産学の連携を強化し研究者の流動性を高めることによって、その投資の見返りを向上させることができます。
Better Policies Seriesはさらに、例えば日本の労働文化である長時間労働を改めることなどによって、男性も女性も仕事と家庭生活を両立しやすくする政策の導入を呼びかけています。また、質の高い幼児教育と保育を手ごろな価格で利用できるよう拡大する必要があります。それによって、現在は男性よりも18ポイント低い女性の雇用率を高めることができます。それに加えて、高齢者の雇用の機会も、高齢者のICT技能を高め生涯学習を奨励することで増やす必要があります。このような方策は成長を促進するだけでなく、より包摂的な社会の構築にも貢献します。
本書はまた、日本は財政問題にも早急に取り組む必要があると強調しています。公的債務の対GDP比を引き下げるよう尽力することで、財政状況に対する信頼を醸成することができると述べていますが、そのためには、アベノミクスの三本の矢すべてが連携して作用しなければなりません。年金と長期介護プログラムの受給資格年齢を引き上げることが、公的支出の抑制につながります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、東京で行われた両報告書の発表会見で次のように述べています。「高齢化社会は確かにコストがかかるが、労働者と消費者が長寿であることはもちろん好ましいことであり、経済的資産と考えることができる。日本の経験を、将来的に同様の変遷が起こる他の国々も注目している。」
報道関係者のお問い合わせはOECD東京センター([email protected], 03-5532-0021)またはメディア課 ( OECD’s Media Division , +33 1 45 24 97 00)まで。
OECD Territorial Review Japan 2016
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