OECD –パリ、2021年12月3日
日本は、ワクチン接種率が上昇し輸出が回復していることで、新型コロナウイルスによる打撃から回復しつつありますが、課題は残されています。OECDの新報告書によると、デジタル変革を拡大、促進させるために技術、教育、専門的な訓練に投資することが、生産性の向上と公財政の強化につながります。
最新の「OECD対日経済審査報告書(OECD Economic Survey of Japan)」によると、経済が勢いを取り戻すにつれ、経済対策を緊急支援措置から的を絞った政策と改革へと移行させて労働参加と生産性を高めることが、長期的に成長と生活水準を維持する一助となります。より多くの政府サービスをデジタル化するなど、公的支出の効率を改善し、OECDの標準と比べて低い消費税率を徐々に引き上げることで、公的債務の対GDP比を引き下げ、急速に進む人口高齢化による財政の圧迫を緩和し、財政の持続可能性を確保することができます。また、環境関連の課税を拡大する余地もあります。
マティアス・コーマンOECD事務総長は次のように述べています。「日本は着実な回復に向けて順調に進んでおり、経済支援を徐々に減らし、長期的に成長を維持するための構造改革に再び焦点を当てることができる。デジタル変革をより有効に活用し、企業の活力を向上させることは、以前の不況後に続いたような経済への傷跡が残ることを回避し、この回復を長期的な成長に変える鍵となる」
本報告書によると、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えたことで、GDPが2020年には4.6%縮小しましたが、2021年は1.8%の緩やかな拡大が見られ、その後この感染状況が改善して、2022年のGDP成長率は3.4%になると予測しています。特に東アジアと米国の強力な輸出市場によって回復が支えられてきましたが、賃金の伸びが鈍いことでしばらくの間消費が抑制される可能性があります。新たな緊急事態を引き起こし、若者の就職を遅らせる可能性があるオミクロン株のような新たな変異種の出現に、引き続き注意を払うことが重要です。
このパンデミックにより、日本のデジタル変革を拡大する必要性が浮き彫りになりました。日本では、物理的な文書業務に依存していたため、企業、家庭、政府機関がリモートワークへの移行に苦慮しました。日本には、十分に発達したデジタルインフラと高度なスキルを有する労働力があり、ロボット工学などの技術の最先端にいますが、多くの中小企業ではデジタルツールの採用が遅れています。本報告書では、テクニカル部門のハードウェアと研究への投資を増やし、企業と政府全体に新技術を普及させるための取り組みを強化し、デジタルスキルに関する企業ベースの訓練を増やすことを推奨しています。
また、企業の活力を高めるために、新規参入をしやすくするための行政負担の簡素化、不採算企業を支援し、撤退を妨げている自己破産規則や中小企業支援構造の改善など、取り組むべき課題が数多く残されています。労働力不足という問題を抱える中で、中小企業の合併、買収、売却を奨励して、採算企業への経営資源の統合を促進すべきです。
日本は、雇用を増やすための労働改革に成功しており、それは人口高齢化が労働力の規模に与える影響を相殺する以上の効果をもたらしました。しかし、パンデミックはこの進歩の一部を後退させており、現在失業している人々と新入の労働者の就職を支援するために新たな取り組みが求められています。本報告書では、同一労働同一賃金の確保、柔軟な労働形態の改善、より多くの女性が働けるような育児サービスの提供、などといった将来の改革を集中させるよう提言を行っています。平均寿命を勘案して、定年退職年齢は廃止または引き上げて、より長く働き続けるインセンティブを生み出す必要があります。
本書の主要な結果と図表を含む概要はこちらからご覧になれます。(このリンクはメディア記事でご利用いただけます)
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