パリ、2016年12月15日
世界全体の経済環境には課題が山積していますが、新興アジア諸国(東南アジア、中国、インド)の成長見通しは、中期的には力強い状態が続くと、OECD開発センター発行の「エコノミックアウトルック-東南アジア、中国、インド (Economic Outlook for Southeast Asia, China and India)」最新号は述べています。
新興アジア諸国の実質GDP成長率は、2016年は6.5%、2017~21年は平均6.2%と力強い状態が続くと予測されていますが、それは主に民間消費に牽引されます。中国の経済成長は引き続き鈍化すると見られていますが、インドはこの地域で最も急成長すると予測されています。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の成長率は、2016年は平均4.8%、2017~21年は5.1%になると予測されていますが、これは主にフィリピン、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーに牽引されます。
しかし、国際的要素と国内の要素が、この見通しを押し下げる恐れもあります。持続的な成長を達成するには、新興アジア諸国の政策当局は輸出の伸びの鈍化や先進諸国において低金利が続くことの影響、そして新興アジア地域の生産性の伸びが頭打ちになるといった問題に対処しなければなりません。
本報告書に収録されているエネルギーに関する特集によると、様々な社会経済的要因の中でも、人口の伸びと経済成長が、今後数十年で新興アジア諸国のエネルギー消費を増大させると予測されています。エネルギー需要の大半を満たすのは、相変わらず化石燃料ですが、この地域は再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の展開能力について何らかの目標を設定しています。固定価格買取制度のような政策メカニズムは、再生可能エネルギーの発展を促していますが、再生可能エネルギーは従来型のエネルギー源に対して競争力がないだけでなく、買取価格の設定も課題になります。
マリオ・ペッツィーニOECD開発センター所長兼OECD事務総長特別顧問は、本日パリで開催された本アウトルック発表会見で次のように述べました。「新興アジア諸国が持つ再生可能エネルギーの潜在力を活用することが、気候変動を最小限に抑え低炭素経済への以降を促進する上で不可欠である。また、エネルギー安全保障の拡大、雇用創出、大気汚染の軽減の機会にもなる。」
再生可能エネルギーの設備容量は増加しています。中国とインドは、その規模により、再生可能エネルギーへの世界全体の投資にも大きな貢献をしています。ASEAN諸国の中では、ベトナム、タイ、マレーシア、ラオスが主な貢献をしている国々で、特に水力発電に大きな投資をしています。
再生可能エネルギーへの投資を妨げる障壁に適切な政策を通して対処することが、この地域の代替エネルギー源の発展に必須です。
本報告書によると、環境分野への海外直接投資(FDI)が資本、技術、知見の再生可能エネルギーへの移転を可能にします。インド、中国、インドネシアは最大の投資受入国で、この地域全体の60%以上を占めています。FDIはまた、環境関連の雇用の拡大も支援します。しかし、新興アジア諸国において再生可能エネルギーの発展を促す正しい条件を設定するには、発電網(グリッド)の利用、行政上の障壁、エネルギー価格メカニズムといった課題に対処する必要があります。
報道関係者のお問い合わせは、OECD開発センターの田中兼介([email protected]; Tel: +336 27 19 05 19)までお寄せください。
「エコノミックアウトルック-東南アジア、中国、インド2017年版」の国別政策フォーカスなど、詳しい情報は、下記のウェブサイトをご覧ください。 http://www.oecd.org/dev/asia-pacific/
本報告書について、
2017年版の「エコノミックアウトルック-東南アジア、中国、インド」は、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)と東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)との協力で作成されました。この2017年版アウトルックには、12の主要政策分野における地域統合の最近の動向に対する分析と、ASEAN10か国の国内の構造改革の優先事項を取り上げたカントリーノートが収録されています。
本アウトルックは、東南アジアおよびOECD諸国の政策当局同士が互いの教訓から学び優良慣行を交換することを目的とした、OECD東南アジア地域プログラムに寄与するものです。
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