OECD – 2016年2月10日
多くの国々では過去10年間、最も成績の悪い生徒の読解力、数学、科学の学力がほとんど改善していません。OECD最新レポートによると、これはつまり、今日の社会と職場で必要とされる基礎的技能を修得することなく学校を出ている若者の数が未だにあまりにも多いということで、それは彼らの将来と長期的にみた経済成長に悪影響を及ぼします。
「Low Performing Students: Why they fall behind and how to help them succeed(低成績の生徒:何故成績が下がるのか、支援する方策は?)」によると、OECD加盟国の15歳の生徒約450万人(4人に1人以上)が、読解力、数学、科学において最も基礎的なレベルにも達していません。OECD加盟国以外の国々では、この割合はさらに大きくなります。

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2003~2012年までのOECDのPISA調査の結果を分析すると、成績が悪い生徒の学力を改善できた国はほとんどなく、逆に成績が悪い生徒の割合が増えている国もあります。
しかし、経済的にも文化的にも多様なブラジル、ドイツ、イタリア、メキシコ、ポーランド、ポルトガル、ロシア、チュニジア、トルコといった国々では、2003~2012年にかけて数学の成績が悪い生徒の割合が減少しました。これらの例から見て、適切な政策とそれを実行する意志があれば、どの国でも学力が低い生徒の割合を減らせるということがわかるとOECDは述べています。
アンドレアス・シュライヒャーOECD教育スキル局長は、「生徒の低学力に対処することから得られる社会・経済的利益に比べると、学力向上にかかるコストは取るに足らない。教育政策とその実施によって、この問題を乗り越えることができる。学力向上を優先課題とし、それに必要な資源も与えて、すべての子供が学校で学力を身につけられるようにする必要がある」と述べました。
成績が悪い生徒は、我慢強く、目的意識と自信を持って数学の学習に取り組む姿勢が欠けている傾向があり、そのため成績のより良い生徒よりも頻繁に授業や学校をさぼっています。教師が生徒をよく励まし、教師の士気が高い学校ほど成績の悪い生徒が少なく、反対に教師の生徒に対する期待が低く教師自身が欠勤しがちな学校では、成績の悪い生徒が多くなる傾向があります。
学校制度を比較して教育資源の質が同程度であっても、教育資源がすべての生徒により公平に分配されている国々では、数学の成績が悪い生徒の割合が低く、成績のよい生徒の割合が高い傾向が見られます。
また環境に恵まれた生徒と恵まれない生徒とがどの程度同じ学校に通っているかということが、成績のよい生徒の割合が高くなるというよりも、成績の悪い生徒の割合が低くなるという傾向と強く関連していることも、分析からわかります。このことは、教育資源と生徒とをよりは公平に配分する教育制度は、成績のよい生徒に不利に働くことなく、成績の悪い生徒に恩恵をもたらすことになるということを示唆しています。
成績が悪いために学校から離脱するという悪循環を断ち切るために、本レポートは以下のとおり一連の提言をしています。
- 学力が低い生徒を特定し、彼らに合った政策戦略を立てる
- 早期教育の受けやすさにおける不平等を縮小する。
- 可能な限り早い段階で補習などの支援を行う。
- 保護者や地域社会の関与を奨励する。
- 社会経済的に恵まれない学校や家庭に焦点を絞った支援を提供する。
- 移民、言語的少数派、地方の生徒に特別プログラムを提供する。
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部(OECD Media division (tel. + 33 1 45 24 97 00))、OECD東京センターまで。
報道関係者へのお知らせ:
成績の悪い生徒とは、PISA調査でレベル2に達していない生徒と定義されています。これは、明確に指示され、情報源と情報の結合が一つしかない問題には答えることができるけれども、より複雑な情報を用いたり、理由付けをしたりできないということです。例えば、尺度をみてもタンクにどのくらいの石油が残っているかを推計できない、または鎮痛剤のビンに書かれている説明を理解できないというレベルです。レベル2は若者が今日の職場と社会で効果的に働くために必要な最低ラインと考えられています。
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