2015年11月4日
最新のOECD報告書によると、近年見られる医療および医薬品支出の急速な増大を受け、日本にとっての優先事項の一つは、この増大する支出が効果的に使われるよう推進すべきです。近年、日本の医療支出の伸び率は他の多くのOECD加盟国より急速で、GDP成長率をも上回っています。日本の医療費の対GDP比は現在、OECD平均を大幅に上回っており、2013年にはOECD平均が8.9%だったのに対して日本は10.2%でした。
医療支出の大幅な増加は、主に医薬品支出の大幅な増加が背景にあります。日本の医薬品への公的支出の伸び率は2009年以降、実質ベースで毎年ほぼ5%に達していますが、他の多くのOECD諸国では対照的に経済危機の影響から医薬品への公的支出は低下しています。日本の国民1人当たりの医薬品支出は現在、OECD諸国の中で米国に次ぐ2番目の高さとなっており、OECDの平均を45%上回っています。全てのOECD諸国が、ジェネリック医薬品市場の発展が医薬品支出の効率化を図る好機であるとみなしています。日本もジェネリック市場の拡大に向けて多くの対策を導入していますが、ジェネリックの市場シェアは医薬品市場総額のわずか11%で依然きわめて低く、OECD平均の半分にも満たない水準です。
>> 一人当たりの医薬品に対する支出の各国比較
医療の質
「図表で見る医療2015年版」では、米国のように医療支出がはるかに多い国でさえ、医療の質を測る主要指標になると、常に上位グループに入っている国はないことが明らかになっています。
日本では医療の質は総じて非常に良好ですが、一部の慢性症状のプライマリーケアと急性期医療を改善し、がん対策を強化する余地が残されています。日本のプライマリーケアは、一部の慢性疾患に苦しむ患者の管理と不要な入院の防止という点では成果を上げていますが、糖尿病患者の入院率は依然、OECDの平均をやや上回っています。これは、糖尿病患者に自己管理を促し、日々のモニタリングや食事療法、定期的な運動による血糖値の有効管理を進めることにより、プライマリーケアにおける糖尿病管理を改善する余地があることを示しています。
また、日本の病院における急性期治療の質に関しては評価が分かれます。例えば、脳卒中による入院後の患者の死亡率はOECD諸国の中では最も低くなっていますが、日本の病院は一般に、心臓発作(急性心筋梗塞)で入院した患者の死亡率がOECDの平均を50%上回っており、救命実績が良いとはいえません。これは、より実績が高い国々と比べて、日本では心臓発作を起こした人に対する救急医療、診断、治療のパターンが異なることを反映している可能性があります。
また、日本はがん対策を強化する余地があります。日本では乳がん、子宮頸がん、大腸がんと診断された人の生存率は他の大半のOECD諸国より高くなっていますが、検診の更なる促進により、がん患者の生存率をさらに改善できるとみられます。この数年、日本の子宮頸がんと乳がんの検診受診率は上昇していますが、受診率は、今でも検診推奨年齢層の女性のわずか約40%であり、OECD全体の平均60%前後に比べて低い水準にとどまっています。
「図表で見る医療2015年版」には、内容を理解するための糸口として一連の新たなダッシュボードが掲載されており、特定の指標についてOECD各国の相対パフォーマンスを一目で理解できるようになっています。これらのダッシュボードは、すべての国が医療の質を改善し、喫煙、健康を害する飲酒、肥満などといった健康へのリスク要因にさらに有効に対処できる余地が十分にあることを示しています。
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課(+33 1 45 24 97 00 [email protected])、またはOECD東京センター川口(+81 3 5532 0021, [email protected] )までご連絡ください。
本レポートの内容に関しては直接専門家に伺いたい報道関係者は、OECDパリ本部医療課長Francesca Colombo (tel. 33 1 45 24 93 60 [email protected]) または Gaetan Lafortune (tel. 33 1 45 24 92 67 or [email protected])まで、ご連絡ください。
>> 日本に関する主な結論(日本語)
本レポート詳細 http://www.oecd.org/els/health-systems/health-at-a-glance.htm.
※ 本プレスリリースは日本向けです。下記英文リンクもご参照下さい。
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