OECD -パリ、2019年5月9日
政府は、教育・訓練政策を改善する取り組みを早急に強化して、より多くの人々がデジタルトランスフォーメーションの利益を活用できるようにするとともに、不平等を拡大させ失業を増やすとされている自動化のリスクを削減しなければなりません。
OECDの新報告書、「OECDスキル・アウトルック2019年版(OECD Skills Outlook 2019)」は、OECDの“I am the Future of Work”キャンペーンの一環として発表されました。それによると、テクノロジーの変化に対応して労働市場も進化する中で、その変化に対処する体制が整っている国とそうでない国があり、その違いは国民のスキルレベルの違いから生じています。
本報告書に収録されている新スコアボードによると、ベルギー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンなど少数の国々ではデジタル化が進む世界で活躍するために必要なスキルと有効な生涯学習制度の整備という点で、他国より進んでいます。
しかし、その他の多くの国々は出遅れています。例えば日本と韓国には、実績を向上させる潜在力がありますが、比較的高齢の労働者や成人が取り残されないようにする取り組みを強化しなければなりません。チリ、ギリシャ、イタリア、リトアニア、スロバキア、トルコでは、デジタル化の恩恵を受けるのに必要なスキルを持っていない人が多く、現行の訓練制度では、彼らのスキルを十分に向上させることができません。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで行われた本報告書の発表会見で、次のように述べました。「デジタル化が急速に進む世界で、スキルの有無がデジタル化の波に乗れるか取り残されるかという違いを生んでいる。各国政府は、人々を支援するために、柔軟性、労働力の流動性、雇用の安定性を後押しする政策の間で、正しいバランスを取る必要がある。企業も、雇用者が技能を向上させたり、再訓練を受けたりして労働市場の需要の変化に適応できるようにするという意味で、重要な役割を担っている。スキル制度を改善することで、今日のテクノロジー革命をあらゆる人々の生活の向上につなげることができる。」(スピーチ全文)
従来の教育制度を、生涯学習制度へと進化させる必要があるとOECDは述べています。成人は、労働市場の変化から取り残されないようにするために、その職業人生を通じて再訓練、技能向上に努める必要があります。しかし、今後の変化に最も影響を受けるとみられる低技能の成人では、訓練に参加している人の割合がOECD諸国平均で、高技能の成人のそれを40%ポイントも下回っています。各国は、柔軟かつ短期の学習の機会を創設すべきで、テクノロジーは、オンラインの学習資源の開発を通して役割を果たすことができます。
本報告書によると、成人学習の労働市場妥当性を改善し、人々のスキルレベルを認定する新しい方法を策定することも重要です。動機の欠如が多くの低技能の成人が訓練の機会を利用しない原因とみられていますが、それを克服することが不可欠です。
本報告書では、労働者が転職するために必要な訓練レベルを推定し、その転換を円滑にするためにどの程度の訓練が必要かを試算しています。その結果から、自動化のリスクが高い職業の半数以上(54%)で、労働者がより良質かつ安定した職業に転職するためには、1年未満の中程度の訓練、または1年以上の強度の訓練が必要だということがわかりました。
生涯学習制度は成人に対してその職業人生全般にわたって訓練の機会を提供する必要があり、それによって彼らは自動化の進展によって転職できたり、仕事が変化することで失職するのを防ぐことができたりすることを考えると、その課題の大きさは相当なものです。政府には、雇用主、社会的パートナー、その他利害関係者が訓練のコストを分担するように、正しい動機と仕組みを整備することが求められています。
各国は、生涯にわたる学習機会の不平等に対処し、学校のカリキュラムを求められるスキルの変化に適応させ、教師に効果的な訓練を施すことで生涯学習を促進することができます。テクノロジーは、教育・訓練制度の効率、柔軟性、個人のニーズへの適合性を高める上で、大きな役割を果たすことができます。この目標を達成するためには、教師が生徒の成果を向上させるためにテクノロジーを利用するにあたって、必要な支援を受けられるようにすることが重要です。
テクノロジーは、取り残された地域の人々をその地域では出会えない教師や学習機会と結びつけることで、そうした地域が遅れを取り戻すのを助けることができます。
本報告書とカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、メキシコ、スペイン、英国、米国のカントリーノートは、以下のサイトからダウンロードできます。
http://www.oecd.org/skills/oecd-skills-outlook-2019-df80bc12-en.htm.
日本語サマリーはこちらからお読みいただけます。
日本のスコアボードはこちらからご覧いただけます。
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Spencer Wilson (tel. + 33 1 45 24 81 18) in the OECD Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).
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