OECD -パリ、2018年5月24日
プラスチックのリサイクルは、廃プラスチックの回収率の低さ、リサイクル製品の質の低さ、価格インセンティブの欠如などの要因により、その潜在力を生かすにはほど遠い状態にあります。OECDの新報告書、「リサイクルプラスチック市場の改善:傾向、見通し、政策対応 (Improving Markets for Recycled Plastics: Trends, Prospects and Policy Responses)」は、プラスチックによる汚染に対する人々の関心が高まっている中、各国政府はより多くのプラスチックをより良い方法でリサイクルすることを早急に奨励すべきだと述べています。
本報告書は、異なるポリマープラスチックを分別する難しさが一因となって、リサイクルよりもよりも新しいプラスチック製品を作る方が安価になっていることが、プラスチックのリサイクルが進まない原因だと考察しています。さらに、原料から作る一次プラスチック(primary plastic)の方が再生プラスチックよりも遙かに良質である場合が多いため、前者の価格を後者より大幅に高く設定することもできます。再生プラスチックに残留する可能性がある有害な化学添加物の問題も、リサイクル市場の重い負担になっています。世界全体で製造される新しいプラスチックの量は、再生プラスチックの約8倍です。
本報告書は、プラスチック製品のデザインを改善してリサイクルを容易にするインセンティブを強化するとともに、廃棄物収集のためのインフラと、異なる種類のプラスチックを廃棄するときに正しく分別できるようにする仕組みへの投資を呼びかけています。また、再生プラスチックを使っていることがわかる製品ラベルを導入して、再生プラスチックへの消費者の自発的な需要を創出することも提案しています。産業部門によっては、再生材含有量の必須レベルを設定できる場合もあります。
さらに本書は、例えば、使い捨てのビニール袋、プラスチック製のスプーンやフォーク、ストローを有料化するなど、新しいプラスチックの製造または使用に課す税をより重くすることも提案しています。
幅広い用途に使われているプラスチックは多くの便益をもたらしてきました。しかし、使用量の増加や不適切な廃棄が、環境に深刻な影響を及ぼしています。プラスチックの製造は非常に多くの資源を消費するもので、世界全体の石油とガスの消費量の4~8%に相当します。廃棄されたプラスチックは生態系に留まり、野生動物や海洋生物に何世紀にもわたって危害を及ぼします。それにもかかわらず、回収されてリサイクルされるプラスチックは、世界全体で出される廃プラスチックの約15%に過ぎません。4分の1は焼却されます。残りは埋め立てられたり、屋外で焼却され汚染物質と温室効果ガスを放出したり、自然界に捨てられたりしています。多くは最終的には海に流れていきます。
様々なポリマーのリサイクル率は、国ごとに大きな差があります。ほとんどのパッケージに使われているPET(テレフタル酸ポリエチレン)とHDPE(高密度ポリエチレン)は、比較的リサイクル率が高い(19~85%)のに対して、ポリプロピレンとポリスチレンのリサイクル率はそれを大幅に下回っています(1%~21%)。全体的なプラスチックのリサイクル率は、EU諸国では30%程度ですが米国では10%と差があります。多くの開発途上国では、廃棄物収集と処理が野放しの状態が依然として蔓延しています。
再生プラスチック市場の適切な発展のために乗り越えるべき障壁は、次の通りです。
- 一次プラスチックと再生プラスチックを代替可能なものとして扱い、再生プラスチックの需要を区別していない。そのため、一次プラスチック市場の動向に左右される。
- 再生プラスチックの価格が、廃プラスチックの収集、分別、処理にかかるコストではなく、原油価格と連動する新プラスチックの価格に左右されている。そのため、再生プラスチックの生産者には、コストの下落を調整するための選択肢がほとんどない。
- プラスチックのリサイクル部門が、一次プラスチック産業よりも小さくより断片化されているため、規模の経済と、原油価格の変動といった市場の衝撃を吸収する能力という点で不利な状態にある。
- 廃プラスチックの市場が、少数の国に集中している。そのため再生プラスチック市場は、例えば最近中国が導入した輸入規制のような需要の衝撃への対応が遅い。中国はそれまでプラスチック廃棄物輸入の3分の2を占めていた。
- 使われるポリマーと添加物の種類の多さ、消費後の廃プラスチックの深刻な汚染状態、廃プラスチックの収集という現実的な課題(特に低所得諸国における)などから生じる技術的な課題がある。
本報告書は、5月29~30日にコペンハーゲンで開催されるGlobal forum on Environment: Sustainable Plastic Design で発表されます。
本報告書はこちらからダウンロードできます。(PDF)
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課のCatherine Bremer([email protected] tel. +33 1 45 24 97 00)までお寄せください。
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