OECD―2019年4月10日
各国政府は、中産階級世帯への支援を手厚くする必要があります。中産階級の人々は、所得が低迷して住宅費や教育費の上昇に追いつけないため、自分たちの経済的影響力とライフスタイルを維持するのに苦闘しています。
OECDの新報告書、「圧迫される中産階級(Under Pressure: The Squeezed Middle Class)」によると、中産階級がほとんどのOECD諸国で減少しています。中産階級は、世帯所得が国の所得中央値の75%から200%の範囲内にある世帯と定義されています。各国で中産階級が減少しているのは、若い世代がその階級になることが次第に難しくなっているためです。ベビーブーム世代のほぼ70%は、20歳代で中産階級世帯の仲間入りをしましたが、ミレニアル世代の場合その割合は60%です。

中産階級の経済的影響力も急激に下落しました。OECD地域全体で、中所得層の所得が10年前より増加した国は数カ国を除いてほとんどなく、年間の所得上昇率もわずか0.3%で、最も裕福な10%の人々の平均所得より3分の1も少なくなっています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、ニューヨークで行われた本報告書の発表会見で次のように述べました。「今日、中産階級は岩だらけの川をボートでこぎわたっているような状態である。政府は人々の懸念に耳をかたむけ、中産階級の生活水準を保護、向上させなければならない。それが、包摂的で持続可能な成長を促進し、社会的団結と安定を生み出すことにつながる。」
中産階級の生活スタイルを維持するのにかかるコストは、インフレ率よりも急速に上昇しています。例えば、住宅費は中産階級世帯にとって単独の支出項目としては最大で、現在の可処分所得の約3分の1を占めていますが、これは1990年代は4分の1でした。住宅価格は過去20年間、世帯所得中央値の3倍のスピードで上昇しています。
中産階級の5世帯に1世帯以上が所得を上回る支出をしており、過剰負債に陥っている世帯の割合は低所得及び高所得世帯を上回っています。さらに、労働市場の見通しは、次第に不透明さを増しています。中所得層の労働者の6人に1人が自動化のリスクが高い仕事に就いていますが、この割合は低所得層では5人に1人、高所得層では10人に1人です。
中産階級の人々を支援するには、包括的な行動計画が必要です。政府は、良質な公共サービスを利用しすくし、より良い社会保障を行うべきです。生活費の問題に対処するためには、政策によって安価な住宅の供給を奨励すべきです。的を絞った助成、住宅ローンに対する財政支援と住宅購入者に対する税金控除は、低中所得層への支援になります。住宅関連の負債が深刻な水準にまで高まっている国々では、住宅ローンの控除が高負債に陥った世帯を正常な状態に戻すのに有効 な方策です。
臨時または非正規の雇用-多くは賃金が低く雇用保障も少ない-が、これまで中流階級の人々が就いていた仕事に取って代わりつつあるので、職業教育・訓練制度への投資を増やす必要があります。パートタイムや非正規雇用者、自営業者といった非標準的労働者を対象とした社会保障と団体交渉の範囲を、拡大すべきです。
最後に、社会経済制度の公平性を確保するために、課税対象を労働所得から資本所得または譲渡所得、不動産、相続財産へと移行するとともに、所得税の累進性を高め公平にする政策を検討する必要があります。
本報告書は、過去10年で不平等が我々の社会でどのように高まり、多くの人々が生活の収支を合わせるのが難しくなっていることを明らかにするOECDの一連の研究報告の最新版です。
オーストラリア、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、メキシコ、スペイン、スウェーデン、英国、米国のカントリーノートを含む詳細は、下記のウェブサイトをご覧ください。
http://www.oecd.org/social/under-pressure-the-squeezed-middle-class-689afed1-en.htm
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