OECD -パリ、2020年10月19日
過去10年間に移民のフローが増加し、移民先の国における社会統合は部分的に改善してきました。しかし、こうした変化の一部は、新型コロナウイルスのパンデミックとそれによる経済低迷によって相殺されている可能性があります。政府は、生活に必須の活動に従事する全ての労働者の健康と安全を確保し、移民が引き続き社会経済に寄与できるようにするための社会統合支出を維持する必要があります。

『OECD国際移民アウトルック2020年版(OECD International Migration Outlook 2020)』によると、新型コロナウイルス危機は移民のフローにかつてないほどの影響を及ぼしています。パンデミック以前の2019年には、OECD諸国への永住型移民の流入は530万人で、2017年、2018年と同程度でした。庇護申請者数は減少しましたが、永住型労働移民は2019年には13%以上増加し、臨時労働移民も増加して、OECD諸国全体で500万人以上の入国が記録されました。
パンデミックが始まると、ほとんど全てのOECD諸国が外国人の入国を制限しました。
その結果、OECD諸国では新規のビザの発行と許可が2020年前半には、2019年同期比で46%落ち込みました。これは記録を取り始めてから最大の落ち込みです。第2四半期にはその減少率は72%になりました。総じて、2020年のOECD地域の国際移民は過去最低になると推定されています。
移民の移動が短期間で過去の水準に戻ることはないと見られています。その理由は、労働需要が薄いこと、依然として旅行規制が厳しいこと、高技能労働者の間で遠隔勤務が、そして学生の間でも遠隔学習が広がっていることにあります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、イルバ・ヨハンソン内務担当欧州委員会委員と共に出席した発表会見で次のように述べました。「移民は急速な労働市場の変化に対応すると同時に経済成長とイノベーションにとって重要な役割を引き続き担うだろう。移民の社会統合を後退させないようにし、移民が我々の生活の重要な一部になっていることを再確認する必要がある」
移民労働者は、今回の危機の最前線で働いています。OECD諸国の医療現場で働く労働者の多くは移民で、医師の4人に1人、看護師の6人に1人を占めています。多くのOECD諸国では、交通、清掃、食料生産、ITサービスといったその他の主要部門の労働者も、3人に1人以上が移民です。
しかし、移民は労働市場で困難に直面しています。移民の雇用率は過去数十年間に大幅に上昇しましたが、今回のパンデミックで帳消しになりました。データが入手できる全ての国々で、移民の失業率の方がその国の出生者のそれよりも高くなりました。移民の失業率が最も大幅に上昇したのはカナダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、米国です。スウェーデンでは、初期の失業者のほぼ60%は移民でした。米国では、パンデミック以前には移民の失業率の方が米国生まれの人々のそれよりほぼ1ポイント低かったのが、現在では2ポイント多くなっています。
移民は、このパンデミックで健康への影響にも多くさらされています。パンデミック期に最前線で働いているだけでなく、例えば住宅の条件や貧困などと結びついた脆弱性がその原因です。いくつかのOECD諸国の調査によると、移民の感染リスクは現居住国生まれの人々のそれより2倍高くなっています。
将来的に、強く真に包摂的な回復を達成しようとするならば、移民の受入れと社会統合の政策を正すことが不可欠です。
報告書は下記のリンクからご覧いただけます。
OECD International Migration Outlook 2020
accompanying report.
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
OECD Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).
Also AvailableEgalement disponible(s)
Follow us
E-mail Alerts Blogs