OECD, Paris - May 18, 2017
OECDが本日発表した『生産性指標総覧(Compendium of Productivity Indicators)』(http://oe.cd/productivity-compendium)によると、生産性の伸びの鈍化は、すでに経済危機の前から始まっていましたが、世界中の多くの国々で近年の投資の低迷と相まって、経済生産と経済的生活水準の向上を継続的に妨げています。

『生産性指標総覧』では、多くの国々における生産性の伸びと実質平均賃金の上昇とのデカップリング(切り離し)にも注目しています。これは、国民所得に占める労働分配率の継続的な減少に繋がります。
さらに本書から、労働力利用率(1人当たりの労働時間数)のGDPの伸びへの寄与度がいくつかの国々、中でも英国と米国で顕著に高まっていることがわかります。しかし、労働力利用率の高まりには、雇用率は上昇しているものの労働者1人当たりの平均労働時間数が少ないという2つの相反する影響、つまり主に生産性の低い職でパートタイム労働が多いことが反映されています。
雇用率の上昇は歓迎すべきですが、それが労働生産性を高めるというよりは、近年は多くの国々で1人当たりのGDPの伸びを高める最も重要な要素となっているという事実は、長期経済見通しにとっての懸念材料です。OECDによると、生産性は最終的には「より賢く働く」ー‘全要素生産性’で測るーという問題であって、「より熱心に働く」ということではありません。それは、新たなアイデア、技術的イノベーションとより良く組み合わせることにより、また新たなビジネスモデルのような工程と組織イノベーションの方法により、より多くのアウトプットを生み出す企業の能力を表しています。
しかし、全要素生産性(MFP)の伸びは、経済危機以前には労働生産性の伸び(一労働時間当たりのGDPで測定)を左右する重要な要素の1つでしたが、これも多くの国々で鈍化し続けています。G7諸国の間では、MFPの伸びは英国と米国では無視できる程度、フランスとイタリアでもほとんど伸びておらず、過去20年間マイナスでした。それに対してカナダ、ドイツ、日本では、MFPの伸びは上向いています。
労働生産性の伸びが広汎にわたって鈍化しているのは、機械・設備への投資が弱まっている結果でもあります。これは経済危機以降、G7諸国全てで鈍化しました。企業の知的所有物、特に研究開発への支出はより早く回復したものの、これもまた経済危機以前の伸び率には至っていません。
近年、労働生産性の伸びの弱まりは、様々な産業部門で広く見られますが、特に製造業、情報通信サービス、金融保険業で最も急落しています。
OECD諸国中、製造業の労働生産性が近年最も顕著に落ち込んだのは、チェコ、フィンランド、韓国です。サービス部門の企業での落ち込みが最も顕著だったのは、エストニア、ギリシャ、ラトビアで、それほどではないものの英国でも大きく落ち込みました。
G7諸国の労働生産性は、米国が最も高く、一労働時間当たりのGDPで2015年は68.3米ドル(名目購買力平価換算)、続いてフランスが67.5米ドル、ドイツが66.6米ドルでした。日本は45.5米ドルでG7諸国中最低で、OECD平均の51.1米ドルを下回っています。
サービス部門では、金融危機以降、小規模企業の方が大企業より総じて高い生産性の伸びを示していますが、大企業は雇用の伸びのペースにおいて、小規模企業を上回っています。製造業では、生産性の伸びは小規模企業でも大企業でも同じような傾向にあります。
本書はOECD加盟各国の生産性のあらゆる側面について、2015年までの比較可能なデータを収録しています。また、長期にわたる生産性の傾向も収録しています。
生産性に関するOECDのその他の文献には、以下のものがあります。
The Productivity-Inclusiveness Nexus
Global Forum on Productivity.
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課([email protected] tel. + 33 1 4524 9700)までお寄せください。
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