2015年10月13日
OECD最新レポートによると、今日の拡大する格差の影響を最も色濃く受けているのは子供です。
最新のOECD How’s Life?は、人生のスタート時点でどれだけ子供の間で格差が生まれているかも示しています。OECD加盟国内では、7人に1人の割合で子供が貧困の影響を受けており、全体の10%の子供が失職中の家庭に属しています。経済危機以降、子供の貧困率は、OECD諸国の3分の2で増加が見られました。大半のOECD諸国では、子供の貧困は全人口の貧困率よりも高くなっています。
今回の報告書は、子供の暮らしに初めて焦点を当てており、裕福な家庭ほど健康状態も良く、学校生活も幸福であることを示しています。裕福でない家庭の子供のほうが、親切なクラスメイトに恵まれることが少なく、学校でいじめに合う確立が高いことがわかります。人生の満足度、読解・問題解決能力、両親とのコミュニケーション、将来の選挙投票意志という点でも、裕福でない子供のほうが低い結果が出ています。両親のレベルで拡大している格差が、子供の機会そのものを結果的に奪ってしまう状況を招いています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、メキシコで開催中の第5回OECD統計知識政策に関する世界フォーラムにおいて本レポートを発表し、「国民全員、特に子供の、ニーズに応えようとしなければ、政策がより良い社会を構築することはできない。格差縮小に向けた闘いは、全ての人が満足した人生を送れるように平等な機会を確実にすることから始まる。特に幼少期からそうである必要がある。」と述べました。

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本レポートは、子供だけでなく人口全体の生活の質に関して最新のエビデンスを提供しています。何年かかけて変わってきた生活の質や、異なるグループで分けて考えた時の生活格差の結果、将来の生活の質を形作る重要な要素などに関する最新のデータも備えています。
How’s Life?は、ボランティア活動の重要性も強調し、社会全体にとってもボランティア活動をする人自身にとっても生活の質向上に特に重要な要素となるという結果を指摘しています。無償で社会的に役立つ仕事は、従来の経済統計では図ることができないモノとサービスを生み出しており、その価値は合計でOECD平均でGDPの約2%に値することがわかりました。
グリア事務総長は、「より良い生活に関するOECDの活動は、我々が果たして、より良く包括的な成長に向けて進めているのかを提示してくれる。本レポートは、人々の生活の質に焦点を当てることで、GDP成長率という観点と違う発展という視点を我々に与えてくれる。」と述べました。
How’s Life? によると、どこに住んでいるか、何歳か、男性か女性か、という要素も人々の暮らしに影響を与えるものの一つであることがわかりました。レポートのデータによると以下の事がわかります。
- 生活の質に関して、国内における地域間格差は、OECD加盟国間の差と同じくらい大きいこともある。例えば、イタリア国内の雇用率は、カンパニア地方の40%からボルツァーノ地方の73%まで幅広く、これはギリシャ(49%)とアイスランド(82%)という国家間の差に匹敵する。
- 世代間格差も深刻である。長期失業率の急増は、2009年以降続いており、特に若者への打撃が大きかった。その一方で、30歳以下の人口は50歳以上の人口と比べて信頼できる友人や困った時に頼れる人がいると感じている確立が高い。
- 個人の安全という観点では、男性と女性は異なったリスクに直面する。大半のOECD諸国では、暴行による死亡リスクは男性のほうが女性よりも高い。その一方で、女性のほうが男性より、夜間に居住地区を一人で歩いていて危険を感じる可能性が高い。
- ワークライフバランスに関する指標では、OECD内で8人に1人が超長時間労働をしている(週50時間以上)。フルタイム労働者で見ると、フランス、スペイン、デンマーク、ベルギー、ノルウェー、ドイツ等では1日最低でも1時間は余暇の時間を確保できており、これはアメリカ、ポーランド、カナダ、オーストラリア等に比べて長い。
- 空気の質も生活の質に関わってくる。OECD諸国内で推計4200万人がWHOとEUの定める空気の質ガイドラインを超えるPM2.5にさらされている。
How’s Life? レポートは、発展度合いをGDPで計測してきた従来の方法と違い、生活の質を見る事に着目しています。これは2011年に開始したOECDより良い暮らし指標の一貫です。本指標のもう一つの要素である幸福度指標は、オンライン上で、ユーザー各々が何で良い生活と感じるか各自の視点を反映することにより他国と比較することができます。
各国のカントリーノート及びHow’s Life? 2015年版の詳細は、www.oecd.org/howslife よりご覧いただけます。
報道関係者のお問い合わせは、OECDメディア課 (news.contact@oecd.org ; tel: + 33 1 4524 9700)までお願いいたします。
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