OECD ― 2019年11月7日

OECDの新たな予測によると、医療費の伸びはほぼすべてのOECD諸国でも今後15年間でGDP成長率を上回ると見られています。1人当たりの医療費は、OECD諸国平均で毎年2.7％ずつ上昇し、2018年は対GDP比8.8％でしたが、2030年までに対GDP比10.2％に達すると、OECDの新報告書「図表で見る医療2019年版(Health at a Glance 2019: OECD Indicators)」は述べています。

本報告書によると、米国の医療費が2018年には対GDP比16.9％で最も多く、スイスがそれに続いて12.2％でした。ドイツ、フランス、スイス、日本の医療費は対GDP比11％程度でした。それに対してメキシコ、ラトビア、ルクセンブルク、トルコなど少数の国々の医療費の対GDP比は6％を下回りました。

本報告書は支出の有効性を高められる領域を明らかにしています。
• ジェネリック医薬品の利用を増やすとコストを節約できますが、今のところ、OECD諸国で販売される医薬品の量の半分程度に過ぎません。ジェネリック医薬品は、チリ、ドイツ、ニュージーランド、英国では販売されている薬剤の4分の3を占めていますが、ルクセンブルクとスイスでは4分の1未満でした（2017年）。
• 医療・社会制度関連職の就業者数が過去最高となり、OECD諸国の雇用の約10件に1件は医療または社会福祉関係です。医師から看護師その他の医療専門家への業務移行を進めることにより、コスト圧力を軽減し、効率を高めることができます。
• 患者の安全性の向上は、医療の改善だけでなくコスト節減にもなります。2015~17年に入院患者のほぼ5%が、院内感染の治療を受けました。
本報告書では健康成果のパターンと不健康な生活習慣への懸念に注目しています。
OECD諸国の平均で、今日生まれた人はこの先ほぼ81年間生きると予想されています。しかし、平均余命の伸びは最近ほとんどのOECD諸国、特に米国、フランス、オランダで減速している。2015年は特に不調で、19カ国で平均余命が低下しました。
その懸念には、心臓病と脳卒中が原因の死亡が減少したことで伸びた余命が、肥満と糖尿病の増加によりその進歩を維持することが困難になっていることが含まれています。ここ数年は、インフルエンザや肺炎などの呼吸器疾患で命を落とすケースも、特に高齢者の間で増加しています。
オピオイド関連の死亡者数は2011年以降OECD諸国全体で約20％増加しており、米国だけでおよそ40万人が命を落としました。オピオイド関連の死亡者数はカナダ、エストニア、スウェーデンでも比較的高い水準にあります。
喫煙、飲酒、肥満が引き続き、早死にと生活の質の低下をもたらす原因となっています。
• 喫煙率は低下していますが、成人の18％が今も毎日喫煙しています。
• アルコール消費量は、OECD諸国全体平均で純アルコールベースで1人当たり年間9リットルであり、これはワインボトルほぼ100本に相当します。成人の4％近くがアルコール依存症です。
• 肥満率は、ほとんどのOECD諸国で上昇し続けており、成人の56％は太りすぎか肥満であり、5歳から9歳の子供のうちほぼ3分の1が太りすぎです。
• 大気汚染による死亡率はOECD諸国全体では10万人当たり約40人です。インドと中国における死亡率はそれより格段に高く、10万人当たり約140人です。
本報告書では、患者が報告する成果と経験にもっと注意を払うべきだと述べています。OECDの患者による報告指標調査（Patient Reported Indicator Surveys）に関する新イニシアチブの速報値によると、人工関節置換手術は人々の生活の質―移動しやすさ、活動、痛み―を約20%改善しています。ステファノ・スカルペッタOECD雇用・労働・社会問題局局長は次のように述べています。「医療制度は、人々の健康を改善するためにまだできることがあるし、それをしなければならない。最も効果のあるところに資源を配分するために、医療制度が人々の生活をどのくらいより良く変化させているかを測ることが不可欠である。」

本報告書と、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、日本、メキシコ、英国、米国のカントリーノートは、下記のウェブサイトからダウンロードできます。
http://www.oecd.org/health/health-at-a-glance-19991312.htm

日本カントリーノート（日本語）はこちらから

本報告書のサマリーはこちらから

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Francesca Colombo, Head of the OECD Health Division, (tel. + 33 1 45 24 93 60)
Chris James, Health Policy Analyst, (tel. + 33 1 45 24 89 69) at the OECD Health Division.