本稿は、Global Forum on Productivity(生産性に関するグローバル・フォーラム)を背景として作成された。また、作成にあたっては同フォーラムのメンバーの方々にお力添えをいただいた。

新型コロナウィルス危機によるロックダウン期間中、多くの企業と労働者にとって、テレワーク(いわゆる「在宅勤務」または「ホームオフィス」)は必要な働き方だった。この出来事で社会は、技術、法律、デジタルセキュリティの分野で必要な条件が整っていることを前提として、産業部門、企業、労働者が物理的に隔離された状態で活動を継続するという大規模な「強制的実験」を経験した。これは、その企業が過去にテレワークを導入していたか否かにかかわらず、あらゆる種類の企業に大きな影響を与える可能性がある(OECD, 2020[1])。また、テレワークによって、特に元々テレワークを利用していた一部の企業と労働者は上手に「嵐を乗り切れる」一方で、危機の際にテレワークを利用する能力を全員が持っているわけではなく、テレワーク導入能力の格差が、すでに存在していた不平等をますます深刻化させる可能性も十分にあることも念頭に置くべきである。例えば、多くの労働者、特に賃金分布の底辺にいる低学歴の若年労働者は、危機の間も物理的に出勤を要する仕事に従事していた (Brussevich, Dabla-Norris and Khalid, 2020[2])1

テレワークは危機の最中に生産を維持するために不可欠だが、それが生産性に与える影響は不明である。短期的に見ると、危機発生前と比べて、テレワーク導入時の異常な状況が、在宅勤務が可能な人々の生産性を押し下げたことは想像に難くない。スタンフォード大学のニック・ブルーム氏は、かつて「平常時にコールセンターの中国人スタッフをテレワークにしたところ、生産性が大幅に向上した」と指摘していた。しかし、同氏は最近のインタビューで(Bloom et al., 2015[3])次のように力説している。「我々は子どもたちを横に、仕事には不向きな空間の中で在宅勤務を続けることになる。そこには選択肢も出勤日もない。企業にとっては生産性の著しい低下となるだろう」(Gorlick, 2020[4])確かに、ロックダウン中に日本のある調査機関が行った調査では、労働者の自己申告で生産性が下がったことが確認された (Morikawa, 2020[5])。それとは反対に、米国の採用担当者を対象に行われた聞き取り調査では、リモートワークによって、生産性の低下よりも、むしろ短期的に生産性が向上したと感じた担当者が多かいという結果が出た (Ozimek, 2020[6])。つまり、危機の間の生産性の低下は決して当然の結論ではないということである。

長期的には、危機をきっかけに効率的なテレワークがより幅広く上手に導入されるようになれば、生産性水準が高まり、労働者の福利と効率が向上し、企業のコストが削減される可能性がある。その結果、「新常態」への移行が加速することもありうる。組織や経営の変革に関わる不確定性とコスト、さらには文化的な消極性や法的制約といった障害の存在を考えると、もし今回の危機が起きなければ新常態への移行はもっと緩やかだったはずである。最新の実証がこの考え方を裏付けている。最近米国で行われた聞き取り調査でインタビューを受けた採用担当者のうち61.9%が、将来的にリモートワークの比重を増やす考えだと回答した(Ozimek, 2020[6])。しかしながら、長期的な生産性向上効果に対し、従業員の空間的距離が大きくなることによって起こりうる悪影響もある。例えば、コミュニケーションが希薄になるためにイノベーションが不活発になったり、仕事と私生活・家庭生活・社会生活の混同により隠れ残業が生じたりすることなどが考えられる。公共政策と社会的パートナー間の対話は、この移行を促進し、生産性と労働者の福利をともに向上させるようなテレワークのあり方の普及拡大に貢献することができる。これらの公共政策と対話により、起こりうるリスクに対応し、より多くの労働者が福利向上につながるテレワークの機会を得ると共に、企業は必要な調整を行うことができる。

こうした働き方が全世界で広がる可能性が高いことから、企業レベルでのテレワークの長期的影響と全体的な生産性を理解することが重要である。今後の調査は「生産性に関するグローバル・フォーラム(Global Forum on Productivity)が「生産性の人的側面(Human Side of Productivity)」プロジェクト2 に関わる活動の一環として実施されるが、詳細データを用いてテレワークと企業の生産性の関係を実験的に調べることを目的としている。第一段階として、今回の概要では、差し迫った健康危機が収まり、テレワークを選択するか否かに関して企業と労働者が大きな裁量を持てるようになったとき、福利向上につながる効率的なテレワークが中・長期的により幅広く取り入れられるよう促すために政策が担う役割について、主に既存のエビデンスを参考にして論じる。この概要は二部構成となっている。第一部では、危機発生後のテレワークの導入拡大の度合いを評価するため、新型コロナウィルス感染拡大前のテレワークの普及度について述べる。第二部では、テレワークの普及拡大により企業と労働者が享受するメリットを政策によって最大化する方法ついて論じる。この目的に向け、テレワークと生産性の関係を簡単に見直し、政策が取り組まなければならない課題について論じる。さらに本稿に基づき、テレワークによる生産性と労働者の福利の向上に貢献するいくつかの重要な政策について述べる。3

危機発生以前に、国・産業・職業・企業ごとに不定期のテレワークの利用状況がどのように異なっていたかは、平常時におけるテレワークの普及拡大の範囲や、テレワークを効率的に利用するために整備しなければならない諸要素、あるいはテレワークの利用を妨げる可能性のある要因を知る上で参考になる。例えば、ICTスキルの欠如、非効率な管理方式、あるいは出勤を要する業務といった要因がテレワークの採用を妨げており、それらの要因が一部の国や企業形態でより多くみられる場合、各国間あるいは企業間におけるテレワーク普及度の差異は、より優れた管理方式と採用拡大を目指す公共政策によってテレワークの普及拡大をどの程度図れるかを判断する際の目安になる。

このように、危機発生前のテレワーク採用に関する情報は、危機発生中のテレワーク導入で得られた洞察を補完してくれる。多くの企業は多数の仕事を在宅で行うことで健康危機に対処した。その迅速な対応は、危機発生前のテレワーク採用が、実際に可能なレベルをはるかに下回っていたことを示している。例えば、米国では2020年4月に調査対象となった1,500人の採用担当者の94%が、危機発生中、社員の一部がテレワークに従事したと答えている(Ozimek, 2020[6])。米国の人口構成に準じた別の調査では、2020年4月に調査対象となった25,000人の回答者のうち4週間前に採用されていた34%の人々が、この期間中、テレワークに切り替えたと回答している (Brynjolfsson et al., 2020[7])。しかしながら、危機発生中にテレワークで行われていた仕事で、「平常時」にもテレワークに移行できるケースはごく一部であると考えられる。外出制限中のテレワークは一般に、職務(occupation)に関係するすべての業務(task)を自宅で行う必要があるが、危機発生前の不定期あるいは定期的なテレワークでは、リモートで行わなければならない業務は部分的である。さらに、通常の場合、労働者は危機発生中、テレワークを強制された。多くの人々が長期間テレワークを継続する可能性がある一方で、テレワークを妨げる規制その他の障害がある限り、他の多くの者はテレワークを望まないかもしれない。

すでに2015年には、多くのOECD加盟国の労働者がかなりの割合で、前年中少なくとも時々はテレワーク形式、すなわちオフィス外の自宅または公共スペースで働いていた(図1)。しかし、テレワーク形式で勤務する人々の割合は国によって大きく異なっており、ポルトガルとイタリアでは25%前後だが、スウェーデンとデンマークはその2倍以上である。

図1に示されたテレワーク経験のある人の割合は、危機発生時にテレワークで遂行可能な職務の範囲を推定した最近の調査結果とは一致しないという点を指摘しておかねばならない(Dingel and Neiman, 2020[8]; Boeri, Caiumi and Paccagnella, 2020[9])。一部の業務を在宅で行える職務でも、テレワークで全業務を行うには適さない可能性がある。例えば、スウェーデンでは、57.2%の人々が2015年に何らかのテレワークに従事したと回答したが、現在の職務の中で厳格な外出制限中に行えるものは30.7%にとどまる (Boeri, Caiumi and Paccagnella, 2020[9])。しかし、興味深いことに、職務上の業務内容(occupational tasks)−仕事の性質に起因するテレワークの障害がここに密接に表れると考えられる−に基づいて、あらゆることを在宅で行える仕事の範囲を各国間で比較すると、その差異は図1に示されたテレワーク導入実績の差より概して小さい。これは、各国の産業構造−各国における職種の構成の違いによって労働者が行う業務の組合せが異なる−のほかに、文化、採用されている経営方式、デジタルインフラ、労働力のスキル習熟度や年齢構成といった要因がこれらの差異を形成している可能性があることを示している。4

加えて、図1に示されている不定期なテレワークは、定期的なテレワークよりはるかに普及しているように見える。例えば、ドイツでは2014年に週1日以上在宅でテレワークに従事した労働者はわずか12%、ハンガリーでは過去4週間で週1日以上在宅でテレワークに従事した労働者はわずか1%であったが、両国とも2015年に不定期なテレワークに従事した労働者は30%近くに達する(Eurofound and International Labour Office, 2017[12])。同じく米国の場合も、2016年に在宅勤務をした雇用者が43%に達するのに対し、2011年から2018年の在宅労働時間は15%にとどまっている(Hensvik, Le Barbanchon and Rathelot, 2020[13])。ここでも、定期的なテレワークと不定期なテレワークの大きな差は、技術的要件はさておき、テレワークには技術以外の大きな障害が存在することを示唆している。少なくとも一部の作業を在宅で行える労働者の多くが、例えば、自宅では適切な労働環境が整っていない、あるいは「非難される」のが怖いなどの理由でテレワークを選ばない可能性がある。「文化」その他の要因が果たしていると思われるこの大きな役割は、特にポルトガルなどの危機発生以前にはテレワーク導入率が低かった国々において、政策がテレワークの普及拡大にどの程度寄与しうるかを示す指標となる。

また、テレワークの普及率は産業部門によって大きなばらつきがある。知識型サービス(例えば、専門サービスやICTサービス)では普及率が最も高く、製造業や知識集約度の低い営利サービス(例えば、卸売、小売、輸送)では最も低かった(図2-さらに細かい産業部門については付属資料の図A1を参照されたい)。こうした差異には、少なくとも部分的に業務の条件が関係していると考えられる。知識型産業の高度技能職の多くがノートパソコンを使ってリモートで行えるのに対し、製造業や例えば宿泊業などの多くの職種では、物理的に出勤が求められる場合が多いとためである。同様に、多くの非営利サービスは、医療従事者やソーシャルワーカーなど、対面での対応が重要な要素となる職種で構成されている。興味深いことに、(上記でその他の産業に区分されている)農業、建設、鉱業、電気、水道供給の分野で働く人々についてはテレワークの導入率が比較的高い。現在のデータでは産業や職種ごとの内訳は出せないが、これらの産業のどの仕事でテレワークが集中的に導入されているかが今後の調査で明らかになるかもしれない。

このように大まかなパターンは見られるものの、図2に示した産業部門全体でみると、産業ごとに大幅な開きがある。例えば、非営利サービスに属する教育や国際機関(OECD、国際通貨基金など)の活動は、テレワークの比率が最も高い産業の一つである。同様に知識集約度の低い営利サービスでは、テレワークを行う人の割合は不動産業で高い。行政においては、かなり多くの割合の職員が不定期にテレワークを行っていたが、類似の業務を行う知識集約型の営利サービス業と比べて、その割合はまだ小さいようである。行政のテレワーク導入率が比較的低いことの一因としては、新しい働き方の導入への抵抗が強いことや導入意欲が少ないことが挙げられるだろう。今回の危機は、特に公共部門がこれらの措置を導入するきっかけとなり、生産性向上の波及効果が営利部門にも広がるかもしれない。

上述の通り、テレワークが可能かどうかは職業によって異なる。そのため、危機発生前の職業別テレワーク導入実績には大きなばらつきがあることが図3で確認できる。技能の内容によって職業をグループ分けすると、テレワークが最もよく採用されていたのは高技能の職業、例えば管理職や専門職で、それは、現在リモートで行われる傾向にある多くの職業では高技能が求められるということである。確かに、デジタル集約型産業には認知能力と非認知能力の高い人が最も多い (Grundke et al., 2018[14])。しかしながら、継続的なデジタル化によって、リモートで行える業務の範囲はさらに広がる可能性がある(Autor, 2014[15])。テレワークの導入率が最も低かったのは低技能・中技能の労働者である。これらの労働者は、介護職、生産労働者、販売員など、物理的な出勤を要する多くの業務に従事している。ただし、一部の中技能・低技能職(特に市場志向型の高技能農業従事者や露店商 )では実際のところテレワークが頻繁に導入されていた。個人事業主のテレワーク導入率が高いことの表れと考えられる。それでもなお、中技能・低技能職と比べて高技能労働者のテレワーク導入率が総じて高いということは、テレワーク対応能力の格差を縮めるための的を絞った対策が講じられない限り、テレワークのさらなる普及拡大は、長期的に労働条件の格差をさらに悪化させる恐れがあるということである。

様々な職業におけるテレワーク実施状況の全体的なパターンは、例えばDingel and Neiman (2020[8])に示されたような、危機発生中の職業別テレワーク導入率ランキングと概ね一致している。これは、特にテレワークに移行しやすい業務が一部の職業に多いことを示す実証と合致している。しかし、危機発生時に、ある職業がテレワークでの業務遂行に適しているかどうかの条件は、一部の業務をテレワークで行うための要件よりも厳しいことを指摘しておかなければならない。職業はさまざまな業務で構成されているため、一部の業務はリモートで行えるが、他の業務は人員が物理的に現場にいなければならない、あるいは人員がいることにメリットがあるという可能性がある。だが、テレワークで全業務を行うことができない多くの職業も、定期的または不定期なテレワークには適している。例えば、販売員や教員は週の何日かを顧客や生徒との対面接触に費やし、管理業務を在宅で行うことができる。また、実験を行わなければならない研究所の研究者は自宅で論文を執筆できる。

国、産業部門、職業間のテレワーク導入状況の差に加え、企業間の差異もまた、どのような要因が生産性に影響しうる形でテレワークに貢献するかを明らかにする可能性がある。(注6)テレワークを導入している企業の特徴に関する実証は、ドイツにおける信頼に基づく労働時間調整(trust-based working time arrangements, TBW)から得られる。TBWはテレワークの前提条件と考えることができる。テレワークと同様に、TBWも労働時間を管理せず、アウトプット(成果)のみに基づいて労働者の実績を評価する(Viete and Erdsiek, 2018[18])。したがって、TBWを取り入れる企業はテレワークを導入する傾向が強い。実際、テレワークとTBWに関するドイツの情報を入手することができた2018年に関しては、実際にTBWと在宅テレワークの導入の間には有意な正の相関関係が見られる(相関係数0.3)。

図4は、最も生産性の高い企業の間でTBW導入が進んでいることを示しており、生産性が最も低い企業と比較するとTBW導入率は2倍近くに達する。ただし重要なのは、これらの結果が、企業がTBWを導入したから生産性が向上したわけではないという点である。生産性の高い企業には、最新の経営方式の採用によって生産性が高まり、TBWを導入しやすくなるといった共通の特性があると考えられる。しかし、結果は確かにTBWの導入が好業績と整合することを示している。

また、TBWは大企業ほどよく見られる。図5は、企業規模以外の特性、つまり生産性、労働力の構成、業種、操業年数が類似している小企業と比較して中・大企業がどの程度TBWを多く導入する傾向にあるかを示したものである。例えば、大企業は小企業と比べて、TBWを導入する傾向が約20ポイント高い。こうした大きな差異 には、例えば、最先端の経営方式など、企業の規模に付随する多数の特徴でモデルには含まれていないものが反映している可能性がある。これらについては、さらなる分析を要する。

生産性と規模に加え、当該企業の労働力構成もTBW導入に関係している。図6は、若年の高技能労働者と管理職がいる企業のほうが、TBWをより多く導入する傾向にあることを示している。例えば、中程度の技能を持つ労働者の10%を高技能労働者と入れ替えることにより、TBW導入の可能性は約2ポイント上昇する。同様に、中年管理職の10%をより高齢の管理職と入れ替えると、TBW導入の可能性は0.7ポイント下がる。技能とTBWの関係は、(例えば、欧州生活労働条件改善財団(Eurofound)や国際労働機関(ILO) (2017[12])などに見られるように) 高技能専門家の間でテレワークがより多く見られるという事実と合致している。これは、平均的に高技能労働者のほうが自立して働く能力に長けていること、あるいは柔軟な労働環境の中で創造な業務に従事しやすいことの表れと考えられる。同様に、高技能の管理職は、例えば、労働者との間に信頼関係を確立することによってTBWを上手く導入できるので、このような取決めを認める傾向にあると考えられる。高齢の労働者の比率が高い企業ではTBWがあまり見られないという事実は、そうした労働者が従来の働き方から逸脱したがらないこと、あるいはテレワークに必要なICTスキルを持たない傾向にあることの表れと考えられる。しかしながら、これは特に若年層及び中年層の労働者の間で、競合する業務間の優先順位の違いや、例えば、幼い子供を家に置いて夫婦で共働きしている場合のようにワークライフバランス改善への要求が強いことを示している可能性もある。

テレワーク導入がさらに拡大すれば、企業の業績や労働者の福利に幅広く影響する可能性がある。政策は、企業と労働者が、テレワークをより幅広く導入することで多くの機会の恩恵を等しく受けられるようにする鍵を握っている。そこから、全体的な生産性と福利だけでなく、気候変動や経済的不平等といった他の政策関連分野にもプラスの影響が生じる可能性もある。本項では、テレワークが企業と労働者に与えるであろう影響を形成する要因について説明し、政策が取り組まなければならない課題について論じるとともに、どのような政策がこれらの要因に働きかけ、生産性向上と労働者の福利改善に寄与できるかを明らかにする。

テレワークは企業の業績を高めることもあれば、阻害することもある。重要なのは、その全体的な効果が2つの大きなチャネルに左右されるという点である。直接的なチャネルは、労働力の効率、意欲、知識創造を変化させることで企業の業績に影響を与える。間接的なチャネルは、テレワークがコスト削減を促進し、生産性向上のための資源が確保され、イノベーションと再編が進む。どちらのチャネルの働きも、十分なICTインフラを前提としている。ICTインフラの役割については以下でさらに詳しく論じる(図7)。

テレワークは、例えば、より良いワークライフバランス、通勤時間の短縮、落ち着いた環境で作業に集中できること、そして欠勤の防止を実現し、労働者の満足度、そして労働者の効率を向上させることによって、企業の業績を高める可能性がある。しかしながら、孤独感、隠れ残業、私生活と仕事の混同、あるいは家庭内の不適切な労働環境等のせいで、テレワークで労働者の満足度が低下することもありうる。次のように、既存の実証は、テレワークが労働者の効率を高める可能性があるという見解を裏付けている。つまり、テレワークという背景を含め、信頼に基づく働き方や労働時間の自己管理を認めているドイツの民間企業においては、製品イノベーションの活発化(Godart, Görg and Hanley, 2017[19])、生産性の向上(Beckmann, 2016[20])、労働者の集中力の向上(Beckmann, Cornelissen and Kräkel, 2017[21])が見られた。ポルトガル企業については、Monteiro, Straume and Valente (2019[22]) を見ると、生産性への効果は企業によって大きく異なるものの、R&Dを行う企業では概してプラス効果があることがわかる。ただし、テレワークと生産性の正の相関は第三の要因によって生じている可能性もある。例えば、経営がしっかりしている企業のほうが、こうした対策を導入する傾向が強い可能性はある(Bloom, Kretschmer and Reenen, 2009[23])。中国のコールセンター・スタッフを対象に、テレワークが労働者の効率に及ぼすプラスの因果効果を分析、検証した(Bloom et al., 2015[3])。また、テレワークのより幅広い導入は、渋滞の緩和、炭素・粒子状物質の排出削減、特に人口密度の高い都市部における住宅価格の下落などによって、労働者の満足度に大きな波及効果を生じる可能性がある。

また、テレワークではコスト削減が進むため、企業の業績が改善する可能性もある。テレワークでは、会社が必要とするオフィススペースと設備が縮小するため、資本コストが直接的に下がる(Bloom et al., 2015[3])。テレワークは、例えば、個人的な理由で特定の場所から動けない高技能労働者を採用することで、企業が選択可能な労働者のプールを拡大することができ、結果として提供される技能が増え、仕事と新規採用者の適確なマッチングが促進されるため、労働コストが下がる(Clancy, 2020[24])。実際のところ、リモートワークへの完全な移行は、必然的に企業が負担するサービス取引コストの大幅な減少につながり、企業は、例えばコールセンターのスタッフから専門のエンジニア、管理職に至るまで、グローバルな人材ベースを利用しやすくなる(Baldwin and Forslid, 2019[25])。さらに、労働者の満足度が上昇することで任意退職・離職が減れば、採用コストも下がる可能性がある。また、テレワークを提供する企業は、特に、フレックスタイム制等のワークライフバランスの改善につながる他の措置と組み合わせた場合、テレワークを提供しない場合より低賃金で労働者を呼び込むことができるかもしれない。ただし、労働者がこれらの恩恵と引き換えに高給与を進んで諦める(これらの恩恵が給与格差を埋め合わせる)ことが条件となる。

テレワークで労働者の効率が下がることもありうる。つまり、テレワークでは対人でのやり取りが少なくなるため、コミュニケーション、知識の流れ、管理職による監視が妨げられる。対面でのコミュニケーションのほうが、Eメール、チャット、電話といったリモート形式よりも有効であることは、様々な実証によって裏付けられている。例えば、対面でのコミュニケーションは、強い説得力を持ち、関心を引き付け、「言外に発せられる情報(social clues)」をよく観察することができる(Bohns, 2017[26]; Roghanizad and Bohns, 2017[27]; Battiston, Blanes and Kirchmaier, 2017[28]; Bonet and Salvadora, 2017[29])。例えば、Eメールでの頻繁なやり取りやオンライン・ミーティングといった斬新なコミュニケーション方法は、対面でのコミュニケーションの欠如を補う可能性がある。最後に、対面でのコミュニケーションの頻度が減ることは、社内業務への影響に加え、重要な関係者(顧客や取引先など)との関係にマイナスの影響を及ぼし、事業の全体的な業績に悪影響が生じる可能性もある (Hovhannisyan and Keller, 2019[30])

対面での交流がなくなることで、雇用者間の知識の流れが減少することもありうる。労働者が同僚との交流を通じて学習している場合は、実践的学習による技能習得が遅くなるかもしれない (Arrow, 1971[31]; Bonet and Salvadora, 2017[29])。重要なのは、イノベーション、ひいては長期的生産性の向上がテレワークによって阻害される恐れがあるということである。イノベーションは知識の共有に大きく依存している。つまり「個々人の知識より、全体としての知識のほうが重要」だということである (Mokyr, 2002, p. 7[32])。一方で、物理的な距離の近さと共同研究の成果の正の相関を実証する研究から、人々が同じ物理的空間を共有するときに起きる「偶然の出会い」が知識の共有には非常に重要であることがわかる(Claudel et al., 2017[33])。他方、リモートワーカー同士の情報共有が一般化するにつれ、テレワークの集約的利用が、デジタル化によって可能になった、より幅広い、効率向上につながりうる企業再編の一端を担う可能性がある(Bloom et al., 2014[34]; Antras, Garicano and Rossi-Hansberg, 2006[35])

最後に、労働者の監督権が対面での交流と物理的な在席で行使される場合、テレワークでは管理職による監督が妨げられ、「責任逃れ(shirking)」などの本人対代理人関係の問題を悪化させる恐れがある(Holmstrom and Milgrom, 1994[36]; Shapiro and Stiglitz, 1984[37]; Bonet and Salvadora, 2017[29])。テレワークにおいては、実績評価の観点をインプット、すなわち労働時間から、アウトプットに変える必要がある。これは、必然的に労働者に対する監督権の一部を捨てることであり、テレワークでは原則として、労働者にとって「緩み(slack)」の機会が増えることになる。しかし、デジタル化によって、管理職は労働者の実績に関してより多くのデータを入手できるようになる可能性があり、最終的には、労働者を効率的に監督するための情報が、従来のオフィス環境で一般的に入手できるよりも多く提供されることになるかもしれない。

したがって、全体として、テレワークで会社レベルの生産性を高めるためには、労働者の満足度を十分に高め、コミュニケーション、知識の流れ、管理職による監視に関する悪影響を相殺することが不可欠である。そして、これらのチャネルの相対的な強みはテレワークの集約度に左右される。5つまり、対面での交流の欠如による悪影響は、テレワークの集約度に応じて強まる傾向にある。これは、対面でのコミュニケーションの機会が薄れるためである。その一方で、軽度のテレワークであれば労働者の満足度は高まるが、例えば、孤独感や私生活と職業生活の混同などが原因の「行き過ぎた」テレワークに悩まされる恐れがある。したがって、軽度のテレワークでは効率が向上するが、「行き過ぎた」テレワークは効率を低下させることになり、中程度のテレワークで、労働者の効率、ひいては生産性が最大になる「スイートスポット」があることがわかる。ただし、この相関関係の正確な形は、産業部門や職業ごとの、これらの要因の相対的な重要性によって変化する可能性が高いという点に注意すべきである。6 図8は、テレワークの量(横軸)と労働者の効率(縦軸)のU字型逆相関で、これらの要因が及ぼすと思われる全体的な影響をまとめたものである。

テレワークの経済的恩恵の最大化を目的とする政策の役割は、テレワークが労働者の生産性と福利にどのように影響しうるかによって決まる。テレワークによる生産性向上を実現する上で労働者の満足感が果たす重要な役割は、このような生産性向上と労働者の福利の向上、改善とが密接に関連していることを意味している。つまり一種の「神聖なる一致」である。政策は、(この曲線に沿って)最適水準に近いテレワーク導入水準の実現を促進することと現在のテレワークの量で労働者の満足度を高めること(または対面での交流が少なくなるという代償を埋め合わせること)で(曲線を上に押し上げ)、この「神聖なる一致」を利用することができる。この目標に向けて、多数の政策課題に取り組む必要がある。

第一に、政策はテレワークが選択肢として確実に残るようにすべきである。これは、リモートワークの取決めの「行き過ぎ」を防ぐ意味がある。特に複雑な業務やイノベーションにおいて対面でのコミュニケーションが重要だということは、過度なテレワークが労働者の効率と長期的な生産性の向上を低下させる恐れがあることを示唆している。確かに、ICT部門におけるベンチャー企業クラスターの重要性やハイテク企業の地理的な密集(例えばシリコンバレー)、学術界における研究所や学部の役割は、同じ物理的空間の共有がきわめて重要であることを示している(Chatterji, Glaeser and Kerr, 2013[38])。また、労働者の個人的嗜好や自律的に働く能力はそれぞれ異なるため、テレワークで得られる満足感は労働者によって高かったり低かったりするだろう(Financial Times, 2020[39])。このような意味で、労働者のテレワーク能力は個人の技能にも依存する可能性がある(Grundke et al., 2018[14])。多様な労働者集団間の技能格差に加え、高度な技能を必要とする職務がテレワークに切り替えられる傾向がすでに強いことは、テレワークのさらなる普及拡大がによってすでにある労働条件の不均衡が悪化する可能性があることを示唆している。低技能労働者、高齢労働者、地方在住労働者などの不利な条件の労働者グループのテレワーク能力を向上させることを目標とする政策は、これらの労働者がさらに後れを取り、テレワークの恩恵から除外されることを防ぐ働きをする可能性がある。もう一つのリスクは、テレワークを行う管理職は基本的に労働時間ではなくアウトプット(成果)を監視するため、テレワークによって労働時間に関する取決めが損なわれ、「隠れ残業」が当たり前の状況になることである。したがって、生産性の向上を実現するためには、テレワークを導入するか否か、どの程度導入するかが重要となる。実際、上述のコールセンター調査(Bloom et al., 2015[3])では、テレワークを自発的に選択した労働者については、労働者一人当たりのアウトプットの改善が、単にテレワークを強制された労働者の2倍近くに達したという結果が出た。ただし、労働者に選択させること自体がテレワークの最適水準を保証するわけではない。労働者が決断を下すとき、長期的なイノベーションへの悪影響を十分考慮するとは考えにくいからである。したがって、例えば、企業がオフィススペースのコストを削減しようとしてテレワークを課したり、最適なレベルを超えて対面での接触の機会を減らしたりすることは避けなければならない。

第二に、政策は、適切な労働環境を労働者に提供するような取決めを後押しすべきである。労働者の適応力、ひいては労働者の満足度改善によって生じる効率向上は、テレワーク中の労働環境(例えば、ICT設備、オフィススペース、保育など)に大きく左右される。(例えば、住宅費や電気料金の上昇分を労働者に補償することが必要な場合に)テレワークの一部費用が会社から支給されず、労働者に転嫁されれば、労働者の満足度は低下し、それに伴って効率も低下する可能性がある。テレワークの普及拡大に合わせ、それを支援するインフラを調整する必要があるだろう。例えば、自宅の近くに保育サービスが必要になるかもしれない。危機発生の結果、パートナーが「生活維持に欠かせない」職務に従事している場合に保育・介護を引き受ける男性の数が増えたとはいえ、実際のところ、危機発生時のテレワーク中は、仕事と家事・育児の二重の負担が女性や一人親に偏る恐れがある(Donadio, 2020[40])。雇用者が在宅で勤務する事例が増えた結果、保育サービスが不行き届きになったり制限されたりすれば、特に女性のキャリアアップが妨げられ、危機発生中の保育・介護に関わる規範の変化に伴って実現されるはずだった機会平等の改善が脅かされる可能性がある (Alon et al., 2020[41])

第三に、政策はテレワークの導入拡大に伴って発達した経営方式のベストプラクティスの普及を促すべきである。管理職は、テレワークがもたらす機会と課題に適応する必要がある。時代遅れの経営方式に固執すれば、管理職はテレワークを導入できず、結果としてテレワーク導入の恩恵を逃すことになりかねない。直接的な監督を削減するには、管理職が出勤を評価する文化から、労働者の業績をアウトプット志向で評価するやり方に移行する必要があるだろう。これは、労働者が周囲に批判されることを恐れてテレワークを控えたり(Eurofound and International Labour Office, 2017[12])、管理職が過剰反応して、オンライン・ミーティングなどによって過度な「監視」を行い、労働者の作業を邪魔したりすることを防ぐためである(Financial Times, 2020[39])。テレワークの増加で職場での交流がなくなることは、労働者の意思表示を一層難しくし、当該企業独自のイノベーションや、労働者と当該企業の目標の一体化を促す企業文化といった目に見えない資産の価値を低下させる可能性がある。経営のしっかりした企業では管理職と部下の信頼に基づく関係を確立しやすいため、そもそも監視はあまり重要でないかもしれない。また、経営陣は知識共有の機会を慎重に形成することにより、テレワークの拡大に起因する「偶然の出会い」の喪失を補完し、テレワークが長期的な生産性の改善に及ぼす可能性のある悪影響を抑えることができる。

最後に、政策は、企業と労働者が高速で信頼性が高く安全なICTインフラにアクセスできるよう支援すべきである。ICTインフラの整備状況は地域によって異なる場合が多く、地方ほど遅れが見られる傾向にある。ICTインフラは、テレワークを可能にするための重要な必要条件であり、その水準がテレワークの効率を大きく左右する。ICTインフラの一番の特徴は、効率的なコミュニケーション手段の提供である。ビデオ会議の利用が望ましいが、そのためには信頼性の高い高速インターネット接続が必要となる。これは、会社と労働者の自宅を結ぶブロードバンドとワイヤレスネットワークの品質のことを指す(OECD, 2020[42]; Andrews, Nicoletti and Timiliotis, 2018[43]; Bajgar et al., 2019[44])。しかし、それに加えて、サイバー攻撃に対する保護から透明性基準の設定、雇用者からのデータ収集に関する透明性まで、セキュリティとプライバシーに関する要件にも対応する必要もある。例えば、在宅勤務では、機密データへの安全なリモートアクセスが必要となる可能性がある(例えば病院や銀行)。業務の振り分けや監視に関する情報を提供する管理支援システムは管理職による監督を容易にする可能性がある一方で(Viete and Erdsiek, 2018[18])、「監視(surveillance)」への危惧につながる恐れがある。また、処理中の収集データはプライバシー保護への要求を提起する。最後に、より多くの業務をリモートで行うためには、より多くの公共サービスがオンラインで提供される必要があるだろう。このため、例えば、公証人がデジタル署名を認証するといった法的枠組みの変更が必要になるかもしれない。

これらの課題に取り組む政策は、効率的なテレワークによって生じる生産性向上を最大化しつつ、労働者をマイナスの副作用から守り、長期的なイノベーションを保証することができる。このような政策は、生産性の向上に加え、男女平等、地方における就業機会の拡大、都市部における過密の緩和と住宅価格の抑制、さらには全体のワークライフバランス改善といった他の幅広い政策分野に関しても追加的な恩恵を確実にもたらす。必要な政策は3つの重要な分野に関係する。それは補完的投資の支援、文化的・法律的障害を克服するための後押し、起こりうる副次的影響の緩和である(表1)。具体的には下記の政策が特に必要である。

  • 通信インフラへの投資を促進し(例えば、プロバイダーのブロードバンド・ネットワークに光ファイバーを浸透させることによって低速のxDSLを段階的に廃止し)、通信インフラの能力と危機対応能力を高め(OECD, 2020[42])、地方では利用しにくい高速ブロードバンドを導入して地理的なデジタル格差の解消に貢献する(De Stefano, Kneller and Timmis, 2014[45])

  • 企業にテレワーク導入を働きかけるため、ICTの改良を目的とする(条件付きの的を絞った)資金援助を通じて、テレワークに必要な通信インフラの普及を加速させる (OECD, 2020[1])

  • テレワークを普及させ、社会的・地域的格差を解消するために、特に現時点においてテレワーク能力が低い労働者による必要な技能習得に投資を促進する。例えば、知識集約型サービスでは、テレワークに必要な技能をすでに習得している労働者の多くは概して都市部に集中しているため、地方在住の労働者の技能向上を図ることにより、技能供給の大幅な拡大が期待できるかもしれない。オンライン教育の促進は、大都市圏の枠を超えて教育訓練の機会を提供する場合に特に適している (Clancy, 2020[24])

  • 情報活動を通じた人材管理のベストプラクティス共有と、人材管理に関する教育訓練への投資を促す。

  • 遠隔通信の質を向上させるため、例えばバーチャルリアリティなどの関連研究に資金を提供する (Atkinson et al., 2020[46])

  • テレワークに適した職業で、少なくとも週に数時間の「テレワーク権」を促進すること、または、例えば東京都が行ったようにテレワークを直接助成することによって、従来型就労形態への固執によるテレワーク導入への抵抗に対処する (The Japan Times, 2020[47])。社会的パートナー間の団体労働協約の一環としてのテレワーク枠組み協定は、テレワーク導入の促進にあたって非常に重要な役割を果たす可能性がある。

  • 例えばフランスとベルギーが結んだような二国間租税協定は、国境を越えた就労を促進し、企業への有効な技能提供が拡大する。退職手当や医療提供に関しても、越境労働者の個別の状況に対応するために同様の調整が必要になるかもしれない。

  • テレワークへの移行が成功した例を伝える情報普及活動や、環境影響の低減やワークライフバランスの改善といった生産性を超えた幅広い社会的便益を強調することで、文化的変革が実現する可能性もある。公共部門をリモートワークに適応させることは、テレワークの利点を周知させることにつながるだろう。また、公務員の負担も軽減されるかもしれない。

  • 法制度・規制制度を変更することにより、テレワークを阻む法的な障害を解消する(例えば、フランスの公証人役場がロックダウンされたときのように、デジタル署名の受入れを拡大する) (Atkinson et al., 2020[46])

  • 重要なのは、今回の危機がきっかけとなって、すでに育児・介護の分担に関して文化的変革が起きていることである。これらの仕事をほぼ全面的に担っていた女性たちが生活に必須のサービスを提供する職業に就く機会が増え、パートナーが代わりを務めざるをえなくなったためである。例えば、働き手が一人だけの世帯を対象に税控除を再検討するなど、給付や税制を変えることで、こうした変化が否応なしに起きる可能性がある(Alon et al., 2020[41])

  • 対面での交流と知識共有の欠如が原因のイノベーション停滞のリスクは、情報交換の機会を意図的に創出することで補完できる。例えば、全国的にシェアオフィスを広げることによって通勤時間を短縮し、地域間格差を減らしつつ、イノベーションを促進できる (Clancy, 2020[24])

  • 「つながらない権利」を推進することによって、テレワークが「隠れ残業」を引き起こすリスクに対処する。例えば、フランスの郵便・通信部門において、社会的パートナー間の団体労働協約で設けられたような制度がそれに相当する。

  • 一般的に言って、企業がオフィススペースとIT設備のコストを労働者に転嫁しないように、また、テレワークをするか否かを労働者が自由に選択できるように、「行き過ぎた」テレワークのリスクに対処する必要がある。例えば、テレワークの強制を制限する方法や、ホームオフィスの設備に関して雇用主による手当支給を促進する方法が考えられる。

  • 国境を越えたテレワークが各国の労働基準や賃金協定を阻害しないようにするための追加的な規制が必要になりうる (Baldwin, 2019[48])

  • テレワークは、労働者の実績と行動を監視するための新技術と深く関係しているため、プライバシー権を保証するためのデータ保護に関する追加的規制が必要と思われる。

  • 例えば保育などの、支援のためのインフラ提供を再検討すべきである。テレワークの増加に伴って企業が提供する保育が縮小されることは望ましくないが、保育は自宅に近い場所で提供する必要があるだろう。支援のためのインフラ改善という補完的な政策を実施せずにテレワークを増やせば、仕事と保育・介護という競合する負担の重荷が特に女性に重くのしかかることになりかねない (Alon et al., 2020[41])

参考文献

[17] Acemoglu, D. and D. Autor (2011), Skills, tasks and technologies: Implications for employment and earnings, http://dx.doi.org/10.1016/S0169-7218(11)02410-5.

[41] Alon, T. et al. (2020), “The Impact of COVID-19 on Gender Equality”, NBER Working Paper, No. 26947, http://www.nber.org/papers/w26947 (accessed on 17 June 2020).

[43] Andrews, D., G. Nicoletti and C. Timiliotis (2018), “Digital technology diffusion: A matter of capabilities, incentives or both?”, OECD Economics Department Working Papers, No. 1476, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/7c542c16-en.

[35] Antras, P., L. Garicano and E. Rossi-Hansberg (2006), “Offshoring in a Knowledge Economy”, The Quarterly Journal of Economics, Vol. 121/1, pp. 31-77, https://academic.oup.com/qje/article/121/1/31/1849025 (accessed on 29 June 2020).

[31] Arrow, K. (1971), “The Economic Implications of Learning by Doing”, in Hahn, F. (ed.), Readings in the Theory of Growth, Palgrave Macmillan UK, London, http://dx.doi.org/10.1007/978-1-349-15430-2_11.

[46] Atkinson, R. et al. (2020), Digital Policy for Physical Distancing: 28 Stimulus Proposals That Will Pay Long-Term Dividends, Information Technology & Innovation Foundation.

[15] Autor, D. (2014), “Polanyi’s Paradox and the Shape of Employment Growth”, NBER Working Paper Series, No. 20485, National Bureau of Economic Research, Cambridge, MA, http://dx.doi.org/10.3386/w20485.

[44] Bajgar, M. et al. (2019), “Bits and bolts: The digital transformation and manufacturing”, OECD Science, Technology and Industry Working Papers, No. 2019/01, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/c917d518-en.

[48] Baldwin, R. (2019), The Globotics Upheaval, Oxford University Press.

[25] Baldwin, R. and R. Forslid (2019), “Globotics and development: When manufacturing is jobless and services tradeable”, WIDER Working Paper, No. 2019/94, http://dx.doi.org/10.35188/UNU-WIDER/2019/730-9.

[28] Battiston, D., J. Blanes and T. Kirchmaier (2017), “Is Distance Dead? Face-to-Face Communication and Productivity in Teams”, CEPR Discussion Paper, No. 11924, http://www.cepr.org.

[20] Beckmann, M. (2016), “Self-managed working time and firm performance: Microeconometric evidence”, WWZ Working Paper, No. 2016/01, Center of Business and Economics, University of Basel.

[21] Beckmann, M., T. Cornelissen and M. Kräkel (2017), “Self-managed working time and employee effort: Theory and evidence”, Journal of Economic Behavior and Organization, Vol. 133, pp. 285-302, http://dx.doi.org/10.1016/j.jebo.2016.11.013.

[34] Bloom, N. et al. (2014), “The Distinct Effects of Information Technology and Communication Technology on Firm Organization”, Management Science, Vol. 60/12, pp. 2859-2885, http://dx.doi.org/10.1287/mnsc.2014.2013.

[23] Bloom, N., T. Kretschmer and J. Reenen (2009), “Work-Life Balance, Management Practices, and Productivity”, in Freeman, R. and K. Shaw (eds.), International Differences in the Business Practices and Productivity of Firms, University of Chicago Press.

[3] Bloom, N. et al. (2015), “Does Working from Home Work? Evidence from a Chinese Experiment”, The Quarterly Journal of Economics, Vol. 122/4, pp. 1351-1408, http://dx.doi.org/10.1093/qje/qju032.

[55] Bloom, N. and J. Van Reenen (2007), Measuring and explaining management practices across firms and countries, http://dx.doi.org/10.1162/qjec.2007.122.4.1351.

[9] Boeri, T., A. Caiumi and M. Paccagnella (2020), “Mitigating the work-safety trade-off”, Covid Economics: Vetted and Real-Time Papers, Vol. 1/2, pp. 60-66.

[26] Bohns, V. (2017), A Face-to-Face Request Is 34 Times More Successful Than an Email, Harvard Business Review, https://hbr.org/2017/04/a-face-to-face-request-is-34-times-more-successful-than-an-email (accessed on 17 June 2020).

[29] Bonet, R. and F. Salvadora (2017), “When the boss is away: Manager-worker separation and worker performance in a multisite software maintenance organization”, Organization Science, Vol. 28/2, pp. 244-261, http://dx.doi.org/10.1287/orsc.2016.1107.

[2] Brussevich, M., E. Dabla-Norris and S. Khalid (2020), “Who will Bear the Brunt of Lockdown Policies? Evidence from Tele-workability Measures Across Countries”, IMF Working Paper, No. WP/20/88.

[7] Brynjolfsson, E. et al. (2020), “COVID-19 and Remote Work: An Early Look at US Data”, NBER Working Paper, No. 27344.

[38] Chatterji, A., E. Glaeser and W. Kerr (2013), “Clusters of Entrepreneurship and Innovation”, in Parker, J. and M. Woodford (eds.), NBER macroeconomics annual.

[24] Clancy, M. (2020), “The Case for Remote Work”, Economics Working Papers, No. 20007, Iowa State University, Department of Economics, https://lib.dr.iastate.edu/econ_workingpapers/102 (accessed on 17 June 2020).

[33] Claudel, M. et al. (2017), “An exploration of collaborative scientific production at MIT through spatial organization and institutional affiliation”, PLOS ONE, Vol. 12/6, p. e0179334, http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0179334.

[45] De Stefano, T., R. Kneller and J. Timmis (2014), “The (Fuzzy) Digital Divide: The Effect of Broadband Internet Use on UK Firm Performance”, Discussion Papers, University of Nottingham, Department of Economics.

[53] di Mauro, F. and C. Syverson (2020), The COVID crisis and productivity growth, VoxEU.org, https://voxeu.org/article/covid-crisis-and-productivity-growth (accessed on 17 June 2020).

[8] Dingel, J. and B. Neiman (2020), “How Many Jobs Can be Done at Home?”, NBER Working Paper, No. 26948, http://dx.doi.org/10.3386/w26948.

[40] Donadio, R. (2020), The Coming Setback for Women in the Workplace, The Atlantic, https://www.theatlantic.com/international/archive/2020/05/france-women-workplace-coronavirus-pandemic/612136/ (accessed on 8 July 2020).

[57] Espinoza, R. and L. Reznikova (2020), “Who can log in? The importance of skills for the feasibility of teleworking arrangements across OECD countries”, OECD Social, Employment and Migration Working Papers, No. 242, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/3f115a10-en.

[12] Eurofound and International Labour Office (2017), Working anytime, anywhere : the effects on the world of work., Publications Office of the European Union, Luxembourg.

[10] European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions (2017), European Working Conditions Survey, 2015. [data collection], UK Data Service. SN: 8098, http://doi.org/10.5255/UKDA-SN-8098-4.

[39] Financial Times (2020), Coronavirus may create lasting workplace change, https://www.ft.com/content/5801a710-597c-11ea-abe5-8e03987b7b20 (accessed on 17 June 2020).

[19] Godart, O., H. Görg and A. Hanley (2017), “Trust-Based Work Time and Innovation: Evidence from Firm-Level Data”, ILR Review, Vol. 70/4, pp. 894-918, http://dx.doi.org/10.1177/0019793916676259.

[16] Goos, M., A. Manning and A. Salomons (2014), “Explaining Job Polarization: Routine-Biased Technological Change and Offshoring”, American Economic Review, Vol. 104/8, pp. 2509–2526.

[4] Gorlick, A. (2020), The productivity pitfalls of working from home in the age of COVID-19, Stanford News, https://news.stanford.edu/2020/03/30/productivity-pitfalls-working-home-age-covid-19/ (accessed on 17 June 2020).

[14] Grundke, R. et al. (2018), “Which skills for the digital era?: Returns to skills analysis”, OECD Science, Technology and Industry Working Papers, No. 2018/09, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/9a9479b5-en.

[13] Hensvik, L., T. Le Barbanchon and R. Rathelot (2020), “Which Jobs Are Done from Home? Evidence from the American Time Use Survey | IZA - Institute of Labor Economics”, IZA Discussion Paper, No. 13138, https://www.iza.org/publications/dp/13138 (accessed on 17 June 2020).

[36] Holmstrom, B. and P. Milgrom (1994), “The firm as an incentive system”, American economic review, Vol. 84/4, pp. 972-991, http://dx.doi.org/10.2307/2118041.

[30] Hovhannisyan, N. and W. Keller (2019), “International Business Travel and Technology Sourcing”, NBER Working Paper, No. 25862, http://dx.doi.org/10.3386/w25862.

[52] Kahn, L., F. Lange and D. Wiczer (2020), Labor Demand in the Time of COVID-19, Econofact, https://econofact.org/labor-demand-in-the-time-of-COVID-19 (accessed on 17 June 2020).

[11] Mann, A. and A. Adkins (2017), America’s Coming Workplace: Home Alone, Gallup, https://news.gallup.com/businessjournal/206033/america-coming-workplace-home-alone.aspx (accessed on 17 June 2020).

[32] Mokyr, J. (2002), The Gifts of Athena: Historical Origins of the Knowledge Economy, Princeton University Press.

[22] Monteiro, N., O. Straume and M. Valente (2019), “Does remote work improve or impair firm labour productivity? Longitudinal evidence from Portugal”, NIPE Working Paper, No. 14/2019, NIPE - Universidade do Minho.

[5] Morikawa, M. (2020), COVID-19, teleworking, and productivity, VoxEU.org, https://voxeu.org/article/covid-19-teleworking-and-productivity (accessed on 17 June 2020).

[56] OECD (2020), “Capacity for remote working can affect lockdown costs differently across places”, OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), http://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/capacity-for-remote-working-can-affect-lockdown-costs-differently-across-places-0e85740e/.

[54] OECD (2020), “Corporate sector vulnerabilities during the Covid-19 outbreak: assessment and policy responses”, OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), http://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/corporate-sector-vulnerabilities-during-the-covid-19-outbreak-assessment-and-policy-responses-a6e670ea/.

[42] OECD (2020), “Keeping the internet up and running in times of crisis”, OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), http://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/keeping-the-internet-up-and-running-in-times-of-crisis-4017c4c9/.

[1] OECD (2020), “Supporting people and companies to deal with the COVID-19 virus: Options for an immediate employment and social-policy response”, OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), http://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/supporting-people-and-companies-to-deal-with-the-covid-19-virus-options-for-an-immediate-employment-and-social-policy-response-d33dffe6/.

[50] OECD (2018), Good Jobs for All in a Changing World of Work: The OECD Jobs Strategy, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/9789264308817-en.

[51] OECD (2014), “The crisis and its aftermath: A stress test for societies and for social policies”, in Society at a Glance 2014: OECD Social Indicators, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/soc_glance-2014-5-en.

[49] OECD (2010), OECD Employment Outlook 2010: Moving beyond the Jobs Crisis, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/empl_outlook-2010-en.

[6] Ozimek, A. (2020), The Future of Remote Work, Upwork, https://www.upwork.com/press/economics/the-future-of-remote-work/ (accessed on 17 June 2020).

[27] Roghanizad, M. and V. Bohns (2017), “Ask in person: You’re less persuasive than you think over email”, Journal of Experimental Social Psychology, Vol. 69, pp. 223-226, http://dx.doi.org/10.1016/j.jesp.2016.10.002.

[37] Shapiro, C. and J. Stiglitz (1984), “Equilibrium Unemployment as a Worker Discipline Device”, The American Economic Review, Vol. 74/3, pp. 433-444, http://dx.doi.org/10.2307/1804018.

[47] The Japan Times (2020), Use of telecommuting in Tokyo surged from 24% to 63% in two months, survey says, https://www.japantimes.co.jp/news/2020/05/16/business/corporate-business/use-telecommuting-tokyo-surged-24-63-two-months-survey-says/#.XuoVqGgzZPY (accessed on 17 June 2020).

[18] Viete, S. and D. Erdsiek (2018), “Trust-Based Work Time and the Productivity Effects of Mobile Information Technologies in the Workplace”, ZEW Discussion Paper, No. 18-013, http://ftp.zew.de/pub/zew-docs/dp/dp18013.pdf (accessed on 17 June 2020).

担当

Chiara CRISCUOLO (✉ chiara.criscuolo@oecd.org)

Giuseppe NICOLETTI (✉ giuseppe.nicoletti@oecd.org)

Peter GAL (✉ peter.gal@oecd.org)

Timo LEIDECKER (✉ timo.leidecker@oecd.org)

本報告書はOECDの事務総長の責任のもとで発行されている。本書で表明されている意見や主張は必ずしもOECDまたはその加盟国政府の公式見解を反映するものではない。

本文書及び掲載のいかなる地図も、領土に関する地位或いは主権、定められた国境及び境界、またいかなる領土、都市、地域の名称を害するものではない。

トルコによる注記:本書に掲載する情報で「キプロス」と表記されているものは、キプロス島の南部を指す。同島のトルコ国籍のキプロス人とギリシャ国籍のキプロス人の双方を代表する単一の統治機構は存在しない。トルコ政府は北キプロス・トルコ共和国(TRNC)を承認している。恒久的かつ公正な解決策が国連において見いだされない限り、トルコは「キプロス問題」についてのこの立場を維持する。

OECDに加盟する全欧州連合加盟校と欧州連合による注記:キプロス共和国は、トルコを除く国連全加盟国によって承認されている。本書に掲載する情報は、キプロス共和国政府の実効支配下にある地域を指す。

本書の利用については、電子版又は印刷版のいずれの場合でも http://www.oecd.org/termsandconditionsに記載された諸条件が適用される。

← 1. これと呼応するように、ロックダウンの初期段階において、テレワークをしにくい職業では失業者数が急増した (Kahn, Lange and Wiczer, 2020[52]) 。また、これらの職業では求人件数の落ち込みが若干大きく、こうした活動の需要減退がより深刻であることを示している可能性がある。

← 3. 新型コロナウィルス危機が生産性に与えるその他の影響(バリューチェーンの混乱と生産拠点を自国内に戻す可能性、産業部門・企業の構造的変化と再配分、労働力の構成・人的資源の構造的変化と再配分等)についてはDi Mauro and Syverson (2020[53])を参照されたい 。金融部門における生産性への影響については OECD (2020[54])を参照されたい。

← 4. Bloom and Van Reenen (2007[55]) は、国による経営方式の著しい違いに関する実証を挙げている (Bloom, Kretschmer and Reenen, 2009[23]) 。また、国ごとのワークライフバランスの違いについても実証を示している。危機発生時のテレワーク能力に関する実証については、Brussevic, Dabla-Norris and Khalid (2020[2]) が各国間の社会経済的差異の役割を検証している。

← 5. テレワークの量を労働者数に占める割合で考えるか、各労働者の労働時間に占める割合で考えるかにかかわらず、重要なパターンとトレードオフはきわめて似通っている。

← 6. 例えば、複雑度の高い職務を行う産業部門と職業はコミュニケーションへの依存度が高いため、テレワークによる効率の改善度が小さくなる可能性がある。これは、テレワークの最適水準が低いということである。

免責事項

本報告書はOECDの事務総長の責任のもとで発行されている。本書で表明されている意見や主張は必ずしもOECDまたはその加盟国政府の公式見解を反映するものではない。

本文書及び掲載のいかなる地図も、領土に関する地位或いは主権、定められた国境及び境界、またいかなる領土、都市、地域の名称を害するものではない。

トルコによる脚注
本書で「キプロス」のものとされる情報 は、キプロス島南部に関するものである 。同島のトルコ系およびギリシア系住民 の双方を代表する単一の政府は存在しな い。トルコは北キプロス・トルコ共和国 を承認する。トルコはいわゆる「キプロ ス問題」に関して、国連の枠組みにより 永続的かつ公正な解決策が見出されるま で、その立場を維持する。

OECDに加盟するEU諸国およびEUによ る脚注
キプロス共和国は、トルコを除くすべて の国連加盟国により承認されている。本 書の情報はキプロス共和国政府が実質的 に支配する地域に関するものである。

[missing text]OECD (2020), Productivity gains from teleworking in the post COVID-19 era, https://read.oecd-ilibrary.org/view/?ref=135_135250-u15liwp4jd.

© OECD 2020

本書の利用については、電子版又は印刷版のいずれの場合でも http://www.oecd.org/termsandconditions に記載された諸条件が適用される。