コロナウイルスのパンデミックは世界中の人々の命と経済に危機を引き起こしている。経済の収縮、予測される対外直接投資(FDI)の落ち込み、広範囲に及ぶ政府の政策変更、そして財政の負担増が、今後OECD加盟国のIPAの事業や活動に影響を及ぼすと予想される分野のいくつかで起こっている。OECD IPAネットワークではIPAの専門家がフォーラムを開催し、課題の討議、ベストプラクティスや画期的な解決策に関する意見交換を行っている(コラム1参照)。

最新のOECD予測によると、2020年の世界のFDIは急激に落ち込むと見込まれている。コロナウイルス危機は健康や社会に劇的な影響を与えているだけでなく、経済に深刻な混乱をもたらしている。IMF(2020)は、世界の経済は3%縮小すると予想しており、OECD(2020a)では、自宅待機の期間が1カ月延びるごとにGDP成長率(年)は2%ポイントずつ失われるとしている。景気低迷により世界のFDIフローにも影響が出てくるだろう。

最も楽観的なシナリオでさえ、2020年のFDIフローは前年比で30%以上落ち込むと予想している。その後、このシナリオでは2021年末には危機前の水準まで回復するとしている(図1)。もっと悲観的なシナリオではFDIフローの落ち込み幅はさらに大きく、この傾向は長期化すると予測している(OECD, 2020b)。危機前もここ5年間FDIフローが着実に減少する傾向にあったが、コロナウイルスによるショックはこれに拍車をかけている。全体として見れば、FDIは今後18カ月で世界的に減少すると見込まれ、IPA機能の中核を成すFDI誘致は、大きく影響を受けることになるだろう。数年かけて準備し、危機前に決定されていたいくつかのFDIプロジェクトは、多少遅れても、実現する可能性はある。しかしながら、IPAに登録している投資家の新たな投資への関心は著しく低下しており、新たなプロジェクトへの資金供給は落ち込むと考えられる。

企業が中長期的にサプライチェーンを再考する可能性も高い。多国籍企業は、コロナウイルスを踏まえ、その事業内容を見直すことが考えられる。企業が方針変更で方向性を決める要因の中でもとりわけ大きいのは、いかにしてリスク軽減とコスト効率のバランスを取るかである。その一方で、混乱によるリスクをこれまで以上に体系的に評価することにより、グローバル・バリューチェーン(GVC)の短縮が促されるかもしれない。他方、企業が地理的な分散を図ることで、地域に固有のショックに対するレジリエンス(強靭性)を高めようとすることも考えられる。リショアリングやニアショアリングが起きる可能性があるが、より影響を受けやすいのは開発途上国である(OECD, 2020b)。1多国籍企業の中で、財務の健全性を回復し、コア事業に集中しようと、いくつかの市場から撤退する動きが出れば、こうした 投資撤退(ダイベストメント)が経済の再配分プロセスを促すことにもなるだろう(Borga, Ibarlucea-Flores and Sztajerowska, 2020)。コロナ禍におけるFDIフローの詳細については以下を参照。www.oecd.org/investment/statistics.htm

世界中で各国政府が、コロナウイルス危機による経済的打撃に対抗するため、幅広い対策を進めている。現在までに公表されている財政パッケージでは、経済活動の落ち込みによる影響を緩和することと、生産能力を維持することが目的とされている(OECD, 2020d)。こうした施策の核となる狙いは、企業のキャッシュフローに対する支援である。具体的には、確定申告の期限延長や納税の据え置き、迅速な税金還付、損益相殺規定の寛大な運用、税金免除などを主眼としている(OECD, 2020d)。また、国によっては、一時的な企業の国有化をすでに実施もしくは予定しているところもあれば、短時間勤務制度や賃金補助により、企業が雇用を維持するための支援策を実施しているところもある。2国による支援プログラムの多くは、その対象から外資系企業の関連会社をあからさまに除外してはいないが、複数国で事業展開をしている企業の資格判定が複雑になっている可能性がある。3

数カ国でFDI審査が厳格化されている。多くの国々では、今回のパンデミックとは関係なく以前から、国家機密に関わる特定資産の買収を警戒し、安全保障上のきわめて重大な利益を保護するためのメカニズムがすでに導入されている。今回の危機は、各国政府がこうした施策の導入を検討するさらなる契機となっており、この政策に対する数年来の関心の高まりを助長している(OECD, 2020c、OECD, 2019)。4中には、審査を発動させる閾値を下げるなどにより、こうした政策を一時的に厳格に運用している国もすでに複数ある(オーストラリア、イタリア、スペインなど)。しかし、FDI審査メカニズムの改正は不確実性やコストを増大させ、取引の遅延をもたらすこともある。審査メカニズムの設計は、何より透明性と無差別の原則を指針とするものでなければならない(OECD, 2020c)。

財政圧力の高まりによりIPAが影響を受ける可能性もある。各国政府が、景気低迷がもたらす様々な課題に取り組む中、国庫の負担はますます大きくなるだろう。これは公的予算の削減や凍結を意味する。すなわち、リソースの再配置や新たな作業の着手などにより、「少ない予算で多くのことを成し遂げる」ことへの圧力が高まっていく。このような状況において、特に各国政府がその軸足を移し、国際貿易や海外投資のアプローチを見直すようになれば、IPAの予算にもしわ寄せが及ぶかもしれない。さらに、各省がIPAに対し、サービスの対象を海外の顧客から国内の企業や他の政府機関(各省や地域機関など)に転換するよう要求してくることも考えられる。しかし、FDIが地域経済に大きな利益をもたらす可能性やそうしたFDIを誘致するIPAの役割を考慮すると、(訳注:海外の顧客と国内へのサービス配分について)適切な均衡を探っていくことが重要である。

FDIを誘致し保持することは解決への糸口であり、経済復興のサポートとなり得る。世界で付加価値をもたらす取引、雇用、研究開発(R&D)の大半を掌握しているのは多国籍企業である(OECD, 2018a、Cadestin et al., 2018)。FDIにより雇用が創出され、海外の資金や物品、サービス、知識のアクセスが容易になれば、地域経済に直接・間接に大きな影響をもたらす可能性もある。5多国籍企業は、純粋な国内企業に比べ、大規模で生産性が高く、R&Dに力を入れていることが多い。6したがって、多国籍企業は政府のパンデミック対策にも力を貸すことができる立場にある。後述するように、IPAの役割はこうした官民の事業提携を促すことにある。

投資政策に対するコロナウイルスの影響についての詳細は OECDノートを参照。

IPAの中核となる機能や活動、事業は、上述した様々な要因により影響を受けることになる。健康に関する諸々の対策によって、IPAの仕事のやり方や顧客の要求するタイプの支援にはすでに変化が現れている。今後のIPA戦略もまた、経済回復のスピードや世界のFBIの推移、各国政府の政策から影響を受けることになるだろう。こうした内容については、以下、OECDの様々なIPAの実例により検討する。経験から何を学ぶかは地域により、また開発の状況により異なるが、OECD加盟国の各IPAが直面している多くの課題は他のIPAも共有しており、他の国々にも関連している(コラム1参照)。

多くのIPAが今回の危機で仕事のやり方に直接的な影響を受けている。他の多くの組織と同じように、IPAもまた一夜にして遠隔労働の形態への切り替えを行わなければならず、組織や情報技術、経営面で様々な課題に直面することとなった。IPAにとり、対面での投資家訪問やイベント、フェア、ミッションの実施は、イメージ作りやリードジェネレーション(lead-generation、訳注:見込み客の獲得や潜在需要発掘のための営業活動)の取り組みの非常に重要な要素であるが、こうした活動が全て中止され、多くの変化を経験した中でも、コロナウイルス関連情報をウェブサイトで定期的に提供するなど、デジタルツールやデジタルソリューションへの切り替えが即時に行われた。

OECD加盟国のIPAのほとんどが、ウェブ上でコロナウイルス特設サイトを設けて、定期的に情報を更新し、政府の支援制度や適用すべき行動規制に関する情報を配信している。OECD加盟国のIPAのうち約3分の2が、英語版の特設サイトを設置し、それを上回る数のIPAが何らかの情報提供を行なっている(詳細なリストについては付録の表1参照)。クリエイティブ・デジタルソリューションを企業支援に用いているIPAもある。例えば、インベスト・イン・エストニアでは投資家にコロナウイルス情報を提供するために、人工知能(AI)を搭載したチャット・アシスタント (SUVE)を導入するとともに、全国ハッカソン・イニシアチブを後援し、必要なソリューションを見極める手伝いをしている。チェコインベストもまた、産業貿易省との提携により、ハッカソンを企画し、 オンライン・プラットフォーム を立ち上げて、危機に直面している企業が相互協力できるようにしている。ポーランド投資・貿易庁(PAIH)とAICEPポルトガル・グローバルは、プロジェクトの定義をしやすくするため、バーチャル・サイトセレクション・ビジットの企画に着手した。この時期を利用し、ビジネスフィンランドやインベスト・イン・スペインなど、スタッフの研修や企業向けのウェビナーを企画しているIPAもあれば、エンタープライズ・ギリシャのように、既存のプラットフォーム上でEラーニングの機会を促進しているIPAもある。ビジネスフランスのような機関では、インタラクティブ・ツールを提供して、企業が様々な市場でコロナウイルスによる状況の変化をモニタリングできるようにしており、ジェトロやドイツ貿易・投資振興機関などのIPAでは、企業へのインパクト評価を改善するためアンケート調査を実施している。全体として、IPAの中でも、優れた設計のウェブサイトがあり、顧客関係管理(CRM)システムがフル稼働し、デジタルツールやデジタルサービスへのアクセスが充実しているところは、そうでないIPAに比べ、コロナ危機に対応した切替えが円滑に行われている。

IPAのサービスの性格は、マーケティングから徹底したアフターケアに軸足を移すことにより、質的変貌を遂げている。IPAではコミュニケーションやマーケティングのキャンペーン・活動を即座に大幅縮小する一方で、現在焦点を当てているのは既存の投資家との関わりであり、投資家との連絡維持を重視している。IPAの当面の優先事項としては、投資家に政府のプログラムに関する情報を発信し、投資家の危機対応を支援し、進行中の投資や事業の活動をサポートすることが挙げられる。事業の継続性と問題解決のアプローチが、IPAの活動の主要な原動力となりつつある。

OECD加盟国のIPAは、コロナウイルス関連の状況推移と政府の支援プログラムについて、迅速かつ定期的に最新の情報を提供することに特に力を入れている。この危機によって深刻な打撃を受けている多くの企業にとって、IPAは現行の景気刺激策パッケージ、税措置、補償制度、その他事業に影響を与える政策に関し、主要な情報源となっている。IPAでは、ウェブサイト上のコロナウイルス特設サイトに加え、上述のようないくつものデジタルツールを通して顧客に働きかけている。それと同時に、顧客向けに総合情報カタログ(例えば、IDAアイルランドの コロナウイルス対応計画)などの作成も行っている。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)、ドイツ貿易・投資振興機関、オーストリア経済振興会社(ABA)などは、投資家向けに毎日更新される最新情報ニュース、コロナウイルスの状況の変化に関する継続的な情報を配信している。オーストラリア貿易投資促進庁(オーストレード)は、オーストラリアの事業者向けに 政府の支援制度について詳細情報を提供するだけでなく、海外スタッフの広範なネットワークを活用し、顧客に海外市場におけるコロナウイルス危機の進展についても情報発信している。

危機による影響を緩和するため新たな規制が導入されており、IPAは急速に変化する法の枠組みの中で行う投資家の舵取りをサポートしていかなければならない。スロバキア投資・貿易開発庁(SARIO)をはじめ、IPAの中には、新しい法律や規制を英語に翻訳し、海外投資家向けに支援と情報を提供するという本来の機能を果たしているところもある。インベスト・チリは、コロナウイルスが経済とFDIに与える影響に関して包括的な報告書を作成した。その中では、この危機が経済に及ぼすと考えられる影響とともに、チリ及び世界の選定された国々の施策について概括したものを情報提供している。特に海外投資に影響を与える規制は多くの場合重大な関心事であり、国際的なビジネスコミュニティに安心感を与えるというIPAの役割はますます重要になっている。例えば、インベスト・イン・スペインやビジネスフランスは海外投資家に対し、FDIに影響を与える可能性のある施策について積極的に情報提供し、注意を喚起している。

IPAはファシリテーターとしても重要な役割を果たし、現在進行している事業やサプライチェーンとの関係について企業支援を行うことが可能である。IDAアイルランドは顧客へのインパクト評価プロセスを開始し、企業がこの危機にどのように対応しているかを理解すると同時に、サプライチェーンや必要不可欠なインフラが継続して機能するよう取り組んでいる。各IPAはファシリテーターとして事業を円滑に進める役割を果たすとともに、それぞれのネットワークを顧客が利用できるようにしている。スウェーデン貿易・投資公団はタスクフォースを立ち上げ、地域のパートナーと共に、外国の企業にサプライチェーン 関係の支援を行っている。インベスト・イン・デンマークは外資系関連会社の輸出再開をサポートし、また雇用の保持を重視している。チェコインベスト、エンタープライズ・ギリシャ、ポーランド投資・貿易庁(PAIH)などのIPAは、既存のマッチングサービスを強化し、バーチャルアプローチを採用している。

IPAは既存のビジネスネットワークを、特に保健分野において活性化させ、政府のコロナウイルス危機との闘いに力を貸している。IPAの活動が顧客のアフターケアや事業を円滑に進めるサービスにシフトする一方で、投資促進専門職は、この危機下にあっても革新性を発揮し有用な役割を果たした。IPAは、特にその幅広いビジネスネットワークに働きかけ、既存の設備を活用して危機対応を支援する方法を模索している。インベスト・イン・カナダとインベスト・イン・デンマークは、それぞれのネットワークを活かし、そのビジネスコンタクトの情報を政府当局に提供して、迅速な医療行為の支援や医療物資の調達を行っている。IDAアイルランドもまた、同国の医療システムが必要とする医療機器--特に人工呼吸器--を企業が製造するだけでなく、欧州や世界の市場にも供給するため、必要な物資を調達できるよう取り計らっている。同様に、CINDEコスタリカやオランダ経済省企業誘致局(NFIA)のようなIPAでは、多国籍企業から政府への寄付に関連して便宜を図っている。その他のIPAでも影響力を行使して政府に働きかけ、効率的な医療サプライチェーンを促進するための対策を応援しているところがある。

OECD加盟国のIPAでは、保健分野以外でも、特に大きな打撃を受けている経済活動に対する取り組みにも焦点を当てている。ドイツ貿易・投資振興機関はそのコンサルタントサービスの対象を、この危機で最も打撃を受け、同時にIPAがその影響力を最大に発揮できる5つの業種に絞った。すでに医療とデジタル化の分野で幅広い強みを発揮しているフィンランドでは、インベスト・イン・フィンランドがそうした強みを活かし、即座に実現できるビジネスチャンスを模索している。ポルトガル投資貿易振興庁(AICEP)のアフターケア・チームは特定の部門(保健、食品、輸送)に関するタスクフォースを立ち上げ、顧客のサプラチェーンの問題解決をサポートし、個人用防護具(PPE)を入手する手助けをしている。OECD加盟国のIPAの過半数が、輸出振興と投資促進という二つの機能を有しているが、そうしたIPAに限らず、海外企業とのサプライチェーンが途絶されたため、IPAの取り組みの多くが輸出企業に傾注する傾向にある。英国の国際通商省(DIT)が刊行した英国の国際貿易事業に関する包括的なガイダンスには、輸出保険の活用などが含まれている。一方、インベスト・イン・デンマークでは、輸出指向の投資家と雇用維持の傾向が強い投資家の優先順位が高い。インベスト・イン・エストニアは国境管理と協力し、貿易フローの円滑化に取り組む一方、ビジネスフランスやイタリア貿易促進機構(ITA)は主に小規模企業の輸出キャパシティに関心を抱いている。いくつかのIPAからは、正式な命令ではないものの、その投資活動において国内企業を援助するよう圧力が高まっていると報告されている。

IPAでは以前からデジタル化を推進しているが、コロナウイルスへの対応でこの傾向が劇的に加速している。まず、対面で行われていたサービスの多くを、中長期的にデジタル化していくことが必要になるだろう。直接訪問が中止となり、従来の方法でリードジェネレーションを行うことはますます難しく、費用もかさむため、デジタル手段を利用し、顧客サービスを継続すれば、将来の顧客の発見も可能になる。このためには、ビデオ会議やバーチャル・サイトビジット設備、強力な顧客関係管理(CRM)システム、通信手段や関連データからAIビジネスソリューションに到るまで広範囲に亘る様々な情報通信技術(ICT)ツールへのアクセスが必要である。例えば、潜在的な見込み客を正しく認識できるデジタル・クライアント・プロスペクティングやサイトビジットのためのバーチャルリアリティ・ソリューション は重要性を帯びてくるだろう。IPAはすでに変革の種を蒔いているか、変革を加速させている。例えば、CINDEコスタリカは、AIに基づくマーケティングなどのデジタル計画を加速化させ、サービスや製品をオンラインで提供している。IDAアイルランドはデジタルソリューションやデジタルサービス(例えば、オンライン会議やウェビナー、その他のオンライン・ソリューション)を拡張するため、その戦略の見直しを検討している。スウェーデン貿易・投資公団やスイス・グローバルエンタープライズもまたデジタルツールやデジタル活動の拡大を計画している。例えば、スウェーデン貿易・投資公団では、すでに投資家が オンライン・インタラクティブ・マップを利用できるようにしており、これにより、投資家は異業種のクラスターや主要なインフラの近さを確認できる。

カスタマイズされしっかりした顧客関係管理(CRM)の重要性がますます高まっている。多くのIPAが仕事も既存の顧客との連絡も遠隔労働で行うという課題に直面して分かったように、関係するスタッフ全員が重要な情報を簡単に入手できる充実した顧客データベースがあれば、IPAの機敏性と競争力に影響を与えることができる。しかし、OECD加盟国のIPA全体を見ると、CRMの活用力には大きな差がある(OECD, 2018b)。優れた高性能システムを所有しているIPAもあれば、システムを導入し始めたばかりのIPAもある(Sztajerowska, 2019)。例えば、CINDEコスタリカは高度なシステムを保有し、2000年以降の全ての支援業務に関する豊富な情報を網羅している。これには提供したサービスの種類やコスト、その他の特徴が記録されており、これにより活動の詳細なインパクト評価を行うことができる。IDAアイルランド、ビジネスフランス、オーストレード、オランダ経済省企業誘致局(NFIA)もまた充実したシステムを所有し、これによって、同様の業務が可能になっている。IPAの予算がさらに逼迫し、各機関の付加価値が入念にモニタリングされる状況において、CRMはIPAのモニタリングと評価 (M&E)システムの重要な構成要素となる。したがって、OECDは、この分野において可能な調整やピアツーピアのやり取りを行い、反映するよう手助けする用意がある。

広義での投資円滑化もまたデジタル時代に突入するに違いない。今回のコロナウイルス危機により、ペーパーレスや自動化された手順の利点が示された。デジタル署名やワンストップショップ、さらに一般的には、わざわざ官公庁まで足を運ばなくても必要な情報や免許証、許可証を入手できるような設備の必要性と価値が強調されている。例えば、インベスト・イン・エストニア、インベスト・イン・イスラエル、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)、ラトビア投資開発公社(LIAA)では投資家向けにワンストップショップを運営している。しかしながら、投資の円滑化とその保持に加え、諸手続きのデジタル化を進歩させることは、IPAの責任領域をはるかに超えている(Novik and de Crombrugghe, 2018)。インベスト・イン・エストニアとエストニア政府全体で取り組む Eエストニア・イニシアチブやスカンジナビアのIPAの多くの例を見てもわかるように、オンライン上での公共サービス提供実現に向け、必要に応じ規制を調整するためには、調和の取れた長期にわたる政府の取り組みを要する。

コロナウイルス危機により各IPAは中長期戦略における優先順位の見直しを余儀なくされるだろう。経済ダイナミクスの変化により各IPAは優先分野リストを見直すことになるだろう。その結果、分野別のリストはもっと的を絞ったものとなり、分野の組み合わせも入れ替えがあると考えられる。一般的に、優先分野リストは数年ごとに改定されるが、ほぼ半数のIPAで毎年見直しが行われている(OECD, 2018b:67)。チェコインベストやインベスト・イン・デンマーク、スウェーデン貿易・投資公団などのIPAでは、コロナウイルス危機の前からすでに選りすぐりの特定分野リストを作成しており、他のIPAもこれに準じると思われる。情報通信技術や生命科学はすでにほとんどのOECD加盟国のIPAにおいて優先順位の高い分野となっている(OECD, 2018b:62、Volpe Martincus and Sztajerowska, 2019:75)。インベスト・イン・イスラエルやインベスト・イン・エストニアなどのIPAはすでにEヘルス(IT医療)の分野に焦点を当てている。医療や遠隔労働、デジタルソリューションなどの新たな分野が開発されているが、こうした分野が今後拡大していけば、そうした活動へのIPAのサポートも強化されることになる。その結果、その他の分野に対するサポートが消極的なもの(質問に回答するなど)になるかもしれない。最後に、IPAによっては、可能なニアショアリングやリショアリング、スタートアップのサポート、多国籍企業と国内企業とのマッチングなどに関連した新たなビジネス機会を模索するところもあるかもしれない。例として、多国籍企業と中小企業がバイヤーとサプライヤーの関係になれば、多国籍企業が、今回の危機で大きな痛手を受けた中小企業の売上回復や新たな市場開拓を支援することも考えられる。このように、IPAは国内の中小企業と多国籍企業との橋渡し役となることができる(OECD加盟国のIPAの65%がコロナウイルス危機以前にこうしたサービスを実施している。OECD, 2018b参照)。

危機前からサービス対象の選定をもっと的を絞った効率的なものにしようという動きがあったが、これがさらに増強される可能性がある。危機以前から複数のIPAで、FDIプロジェクトの判定と支援を向上させるツールを考案し開発しようとする動きがあった。その目的は、地域経済に最も影響力を発揮でき、持続可能でグリーンな成長を支えることのできるFDIプロジェクトをより正確に識別し、支援することだった。例えば、スウェーデン貿易・投資公団は数年にわたり、質的評価システムを活用して、「高品質」プロジェクトを特定している。また、英国の国際通商省(DIT)では、経済分析と機密情報に基づくプロジェクトの優先順位付けによって、最大の経済効果を得ることを基本方針としており、今後の経済回復の過程においてもFDIが確実に効果的な役割を果たすよう継続されるだろう。エビデンスに基づき、持続可能な開発を中心に据えた、より優れた優先順位付けには、他の多くのIPAも強い関心を示している。この傾向は、IPAの予算への圧力が増せば、さらに強まるだろう。経済回復には、雇用創出と雇用保持の調和の取れた取り組みが求められている。7しかし、プロジェクトの効果的な優先順位付けは、M&Eシステムにより様々なサービスの過去の実績と効果を追跡し評価する各IPAの能力にかかっている(IPAのモニタリングと評価に関するOECDノートを参照)。OECDでは、優先順位付けを効果的に行うための調整方法について各IPAが検討する手助けをする用意がある。

IPAは新しい状況に適応する能力に優れており、各国政府のコロナウイルス危機対応においても重要な役割を果たしている。IPAは、民間セクターとの様々な政策分野での緊密な協力活動によって、新しい状況に対する柔軟性や適応性を身につけていることが多い。OECD加盟国のIPAは過去数年間で平均して約2回の組織改革を経験しており(OECD, 2018b)、IPAにとって効率的で徹底的かつ頻繁に行われる組織変革は言わば習慣になっている。IPAの中には、過去の危機的状況の経験を活かし、今回のコロナ禍にうまく対応しているところもある。例えば、インベスト・チリは、同国の既にある社会不安のため、コロナウイルスの大流行以前から遠隔対応に基づき機能していた。このように一足早いスタートを切っていたことで、今後に向けてもうまく対処できている。英国のDITは、EU離脱の状況に備え、より広範な経済政策の立案と英国経済におけるFDIの役割分析により戦略的プランニングを行っていることが確認されており、今回の危機においても現在の制度的仕組みを活用している。

IPAは、その役割が日々進化していることを鑑み、官民両セクターのニーズにうまく対応していくため、戦略的な方向性を再検討している。短期的には当然アフターケア・サービスを提供する役割が最優先されるが、中長期的な投資促進戦略においては、投資家の保持と拡大がさらに重視される傾向にある。いずれの場合も、地域や広域のパートナーとの協調は特に重要な意味を持つ。スイス・グローバル・エンタープライズは広域のIPAと緊密に協力しながら、投資家の保持活動に傾注していく。また、ドイツ貿易・投資振興機関も連邦機関と共同で今後のアフターケア・サービスの計画を進めている。セレクトUSAは引き続き投資家の保持と拡大活動を強化し、既存の投資家や州レベルの経済開発組織のサポートを行っており、今後もこの方向で進めていく計画である。

不確実性や保護主議的な傾向が懸念される中、投資環境改革はIPAの政策擁護活動に支えられ、その重要性は一層高まるだろう。IPAは政策擁護活動において重要な役割を担っており(IPAの政策擁護に関するOECDノート参照)、長期的にこの役割はますます重要になると認識している。FDIが減少する中、健全なビジネス環境は投資家にとりこれまで以上に価値を持つ。ビジネスと公共サービスの交わるところで機能するIPAが、オープンで透明性が高く、規制の整備された市場を擁護することはまさに適任と言えよう。このような状況において、インベスト・イン・スペインはその政策擁護の役割を強化して、貿易や投資の障壁を制限し、投資環境の改善を行っている。同様に、英国DITでは、政策手段が確実に差別なく開かれたものとなるよう、政策擁護の役割強化を図っている。ドイツ貿易・投資振興機関は海外駐在のスタッフから情報を収集し、政策擁護戦略を作成して、ドイツ政府の政策決定に組み入れることを計画している。

IPAは他の政策分野との相乗効果を発揮させる最適な立場にあるものの、今後の組織変更の可能性は否めない。IPAの多くが、包括的かつ効果的な投資家対応のために、政府と実効的に協力関係を築いていくことの重要性を強調している。投資の性質が水平的である場合、特にIPAが異なる機能(投資促進と貿易促進など)を同時に担っている場合には、他の政策分野との相乗効果を高めていくことの価値と必要性についても同等に認識している。政府とIPAは投資促進と投資政策に関するそれぞれのアプローチの見直しを進めており、今後組織変更が行われる可能性は高い。OECDでは、この分野におけるベストプラクティスを探求するIPAに助言を与え、政府全体のビジネス環境変革をサポートしていく用意がある。

  • コロナウイルス関連の新たな状況の変化をモニタリング:短期的にはIPA活動の多くが、業務に関連するコロナウイルスの成り行きをモニタリングし、政策や規制について顧客に情報を提供し、事業継続とトラブル解決に焦点を当てることになるだろう。他国で実施されている対策が海外投資家やIPAに影響を与えることもあるので、OECDでは上記の活動を行っているIPAの助けとなるツールを用意している。例えば、OECD国別政策比較ツール(OECD Country Policy Tracker)はインタラクティブ・マップであり、各国政府が導入した危機対策を追跡できるようになっている。一方、コロナウイルスウォッチはAI搭載ツールで、ウイルス感染の拡大をライブで追跡することを可能にしている。OECDのFDI統計データベースやニュースレターでは、世界、OECD加盟国、G20諸国それぞれのレベルでFDIの最近の展開をモニタリングすることができる。OECDは今後もコロナウイルスがFDIに与える影響について、詳細情報と分析を提供し続けていく。

  • OECD IPAネットワークにおけるピアツーピアの意見交換や洞察力に富んだプランニング:IPAは国境の向こうに目を向け、他のIPAからアイデアを獲得し、学ぶことが多い。短期的対応で迅速な状況適応を必要とし、また中期的対応でその効果を長く持続できるようにするには、経験やそこから学んだ教訓について仲間と意見交換をすることは、非常に重要なものとなり得る。OECDの多分野にわたる専門知識は、投資のみならず、マクロ経済予測、保健医療、中小企業の育成、デジタルやその他の新しいテクノロジー、気候変動など幅広い。こうした知識も、コロナ禍終息後の世界でIPAの将来像を議論する際に重要な洞察力を提供することができる。このような状況のもとで、OECDでは引き続きOECD IPAネットワークの中で、コロナウイルスの影響について対話を進めていく。また、その年間活動を通じ、この危機で重要性が高まったと思われる主要なIPAツールについて詳しく議論する場を提供する。

  • 将来に向けた備え:将来は不確実であり、場合によっては大きな変化を求められるかもしれない。これまで考察してきたように、各IPAは優先分野の調整や戦略の見直し、また制度的解決を試行する必要もあるだろう。各国間の実践に関する最新の情報も重要になるだろう。この情報が有用であることは、OECD 及びその他の地域におけるIPAの徹底したベンチマーキングを見ると分かる。これは、OECD-IDBによるIPA調査によって可能となった。IPAの活動評価への投資により、今後の意思決定に重要な情報を生み出すことができる。OECDでは、個別のIPAに関するそうした情報と分析を提供することが可能である。FDI政策に関する様々な側面、例えばFDIの制限国家安全保障の審査メカニズム、FDI質的指標さらに幅広いビジネス環境の改革などについて分析する作業もまた有益であり、OECD IPAネットワークで共有していくことも考えられる。

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OECD (2019), FDI Qualities Indicators: Measuring the sustainable development impacts of investment, Paris. www.oecd.org/investment/fdi-qualities-indicators.htm.

OECD (2020a), Evaluating the Initial Impact of COVID-19 Containment Measures on Economic Activity. OECD (2020b) FDI Flows During the COVID-19 Crisis: What Can Happen in the Short and Longer Run? OECD (2020c), OECD Investment Policy Responses to COVID-19.

OECD (2020d), Tax and Fiscal Policy in Response to the Coronavirus Crisis: Strengthening Confidence and Resilience.

Refinitiv (2020), S&P 500 Earnings Scorecard, March 30, 2020.

Sztajerowska, M. (2019), Monitoring and Evaluation: A Brief Guide for Investment Promotion Agencies, www.oecd.org/investment/Investment-Insights-Monitoring-and-evaluation-of-IPAs.pdf.

Volpe Martincus, C. and M. Sztajerowska (2019), How to Resolve the Investment Promotion Puzzle: A Mapping of Investment Promotion Agencies in LAC and OECD countries, IDB: Washington D.C. http://dx.doi.org/10.18235/0001767.

Volpe Martincus, C. (2020), “How Effective is Investment Promotion? Firm-Level Evidence”, Integration and Trade Sector, Discussion Paper No. IDB-DP-00741, http://dx.doi.org/10.18235/0002165.

← 1. 現時点でOECDが把握している実証の限りでは、テクノロジーの進歩の助けがあったとしても、現時点までの先進国へのリショアリングは限定的であり(例:de Backer, et al., 2018及び2016)、また、「新たな」新興市場の出現や消費者需要の高まりによって、2030年までにGVCが拡大する可能性が高いことが示唆されている(de Backer and Flaig, 2017)。

← 2. 各国政府のコロナウイルス対策についての詳細はwww.oecd.org/coronavirusから入手できる。

← 3. 例えば、米国のコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES Act)は、外資系企業や個人が米国内に所有する事業や米国内で運営する事業を除外しておらず、米国内の外資系子会社が支援対象となることもあり得る。しかしながら、受給要件では、事業の相当部分が米国内で行われ、かつ従業員の大半が米国に常駐していることとされており、受給資格の有無は、その企業の特性そのものによって判断される。

← 4. 例としては、EU加盟27カ国のうち14カ国で何らかのFDI審査制度を導入しているが、現在の状況下で、欧州委員会は加盟国に対しガイダンスを公表し、審査の厳格化について指示している。FDI審査制度を導入しているEU加盟国のリストについてはこちらを参照:https://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2019/june/tradoc_157946.pdf。

← 5. 政策関連のサマリーについてはAlfaro(2016)またはOECD(2019)、Farole and Winkler(2014)を参照。

← 6. 海外での事業運営においては、流通やサプライヤーのネットワーク構築あるいは相手国の嗜好や条件の取り入れなどによりリスクや固定費が増加するが、これに耐え得るのは生産性の高い企業に限られるという事情がある(例: Helpman, Melitz and Yeaple, 2004、Antràs and Yeaple, 2014)。

← 7. OECD加盟国の大半のIPAでは、投資促進サービスを国内企業よりも外資企業を対象に行っているのに対し、投資と輸出双方を促進する役割を担うIPA(56%)は外資系企業と国内企業の双方にサービス提供をしている。雇用創出やイノベーションは、すでにOECD加盟国のIPAが優先順位を付ける際に用いられる最も一般的な評価基準の1つである(OECD, 2018)。

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