新型コロナウイルス(COVID-19)感染の世界的流行(パンデミック)は、世界の100カ国以上でロックダウン(都市封鎖)が実施される事態を招き、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件と2008年の世界金融危機に次ぐ21世紀で3度目、かつ最大の経済・金融・社会的ショックをもたらした。社会のあらゆる部分に影響を及ぼしたこのショックにより、世界規模で生産が止まり、世界中のサプライチェーンが打撃を受け、消費が急落したのに加え、信用が崩壊し、最終的には特に都市環境において、ロックダウンとソーシャルディスタンシングの結果としてサービスの急速な劣化を招いた。OECDの試算によれば、COVID-19感染の第二波が生じた場合、OECD加盟国の2020年の国内総生産(GDP)は9.5%縮小するとみられる1

過去数カ月にわたり、ウイルスを抑制し、病院や医療インフラにかかる負担を最小限に抑えるため、多くの厳しい措置が適用されてきた。当初の最も喫緊の優先課題は、人命と健康の損失を最小限に抑えることであった。しかし、パンデミックは重大な経済的・社会的危機も引き起こした。多くのOECD加盟国でロックダウン制限が解除されつつある中、当初の短期的対応に加え、長期的回復計画を併せて実施する必要がある。そのためには、政府のあらゆる層とすべてのステークホルダーが協調してこの課題に取り組むことが求められる。危機の脱出に向けた国際協力がかつてなく重要性を増しており、この点において都市には果たすべき重要な役割がある。

OECDは3月初旬から、ウイルス拡大の抑制、居住者と地元経済の保護、経済・社会危機からの回復を目的とした自治体の政策対応の情報を収集している。この政策ノートはこのような対策に関し、ロックダウン制限の段階的解除と長期的回復に関するものも含めた最新情報を掲載している。COVID-19パンデミックによる都市への経済的、社会的、環境的影響の概要と、デジタルツールの使用、都市モビリティ、都市密度、都市設計、協調的ガバナンスに関して得られた教訓も盛り込んでいる。さらに、強靭でコロナ後の世界にも適応できるよりよい都市の再構築に資する一連の行動志向の提言も提示する。

世界の人口のほぼ半数は都市に居住しており、2050年にはこの割合が55%まで上昇すると予想されている2。都市は医療施設が十分に発達しているため、国内の他の地方に比べればCOVID-19危機に対応する備えができているかもしれない。しかし、都市は多くの人が住み、集まる人口密度が高い場所であることから、居住者同士が密に接し、ソーシャルディスタンシングの実践が難しいためにウイルスが蔓延するリスクがある。特に大都市や地方都市は、国境を超えるビジネスや移動の拠点として機能する場合が多く、人と人との接触が増えることでパンデミックを拡大させる可能性がある。例えば、日本では札幌の雪まつりや大阪のライブハウスなどで集まった多くの人にCOVID-19感染が広がり、クラスター(集団感染)が発生したと報告されている3。クアラルンプール4 (マレーシア)や大邱5 (韓国)などでみられたように、都市での宗教上の集会もウイルス蔓延の温床になりうることが分かっている

さらに、格差都市貧困層の集中が著しい都市は、十分な資源があり、密集度が低く、格差の少ない都市に比べて潜在的に影響を受けやすい。研究者らによれば、ウイルスの流行は都市の中心部に広がる前に、都市周辺のコミュニティや交通網を経由して潜伏し、伝播することがしばしばあるため、パンデミックは都市の周縁部から発生する場合が多い6

大気汚染は都市の方が深刻で、肺や心臓の損傷を引き起こすことも知られており7 、年間700万人以上の早期死亡の原因となっている8。喘息や慢性気管支炎などの既往の呼吸器疾患のある居住者は、COVID-19に感染しやすい場合がある。このことは、都市居住者や有毒ガスに曝露されている人に、それ以外の人々より深刻な影響を及ぼすおそれがある9

COVID-19危機は都市の居住者や都市計画立案者にとって、消費、生産、移動のパラダイムを一から大幅に考え直す機会になりうる。ある程度までは、「コロナ後の生活」は「コロナと共にある生活」になる。したがって、様々な異なるニーズをより深く考慮に入れ、モビリティ優先から基本的な施設やサービスへのアクセス性優先へと考え方を転換させる都市空間への新たなアプローチに基づいた、長期的な都市の再構築が必要となる。「循環型経済」「持続可能な開発目標(SDGs)のローカル化」「戦術的都市計画」10、「15分都市」11 といった主要な概念はすべて、生産性や社会的包摂性を維持し、環境を守りながら、生活の質の向上を実現する助けになりうる。

本ノートの第I部には二つの目的がある。第一は、COVID-19パンデミックが都市に及ぼす経済的、社会的、環境的影響についての分析を提示することである。COVID-19の全体的な影響を計るには時期尚早であるが、多くの都市は特に回復戦略との関連において、地域的な行動や意思決定を支援するための予測や影響評価を始めている。第二の目的は、都市政策の設計及び実施とよりよい都市の再構築に関して得られた教訓を、特にi)デジタルツールの使用、ii)都市モビリティと都市の公共交通の将来、iii)都市密度の役割、iv)都市計画と都市設計、v)協調的ガバナンスの観点からまとめることである。このような教訓から、コロナ後の世界における都市と都市政策を再考する上で有益な知見が得られる。

OECDは、2020年にはこれまでに前例がないほど世界経済が縮小すると予想している。第二波が発生した場合、OECD加盟国全体で2020年末までにGDPは9.5%低下すると予測されている。そうなれば、1930年代の大恐慌以来最大の経済の落ち込みとなる12。国によって状況が異なるため程度はそれぞれ大きく違うが、2020年にはほぼすべての国でGDPが縮小するとみられる。経済成長予測が下方修正される中、失業数の上昇が続いている。世界全体で約3億ものフルタイム雇用が失われ、4億5000万社近くの企業が深刻な破綻の危機に直面している13

このような背景の中で、各都市は今回の危機が地元の経済と金融にもたらす結果の予測を始めている。状況はOECD加盟国間で、また各国内でも、各都市の主要産業(観光産業に大きく依存する都市が特に影響を受ける)や収益源によって大きく異なるものの、どの国も一様にGDPと雇用水準が急速に低下している。

  • モントリオール・メトロポリタン・コミュニティ(カナダ)は、パンデミックが大都市圏の経済に及ぼした影響の分析を公表し、COVID-19はグレーター・モントリオール地域の2020年第2四半期の経済に著しいが一時的な縮小をもたらすと予想されることを示した。感染を避け、死者数を抑えるために必要なソーシャルディスタンシングにより、特に小売業、個人向けサービス業、旅客輸送(特に航空と公共交通)といった対人接触がとりわけ顕著な部門の動きが止まることから、経済活動が停滞する。サプライチェーンの遮断と主要な貿易相手国の景気後退により、輸出、投資、観光業が中期的に減退する14

  • パリ(フランス)では3月中旬以降、経済活動が37%減少し、全国の減少率の34%をさらに上回った。今回の危機による市の損失額は4億ユーロと試算されている15

  • バルセロナ(スペイン)はGDPの減少率を、2009年の金融危機時を4倍上回る14%減少と試算している。

  • 英国の中核都市の連携組織コア・シティ(ベルファスト、バーミンガム、ブリストル、カーディフ、グラスゴー、リーズ、リバプール、マンチェスター、ニューカッスル、ノッティンガム、シェフィールド)は、今回の危機により生じたコストは、参加都市のみで2020年5月22日にまでに限っても16億ポンドに上ると試算している16

  • アムステルダム(オランダ)は主要産業が観光業であることから、予想される経済的影響の当初見通しは極めて大きい。数値は確定されていないものの、危機が継続した場合、経済的な悪影響は月間16億ユーロ、成長率は当初予測の2.3%増を大きく下回る1.5~2.8%減と試算されている17

  • マドリード(スペイン)の労働市場への外出制限による影響調査18 によれば、同市では2カ月間の外出制限後、6万500人の直接雇用が失われ、間接雇用も含めると10万8,000人にも達すると推定されている。これは総雇用数の5.4%に当たる。部門別の内訳では、最も影響が大きいのはホスピタリティ産業(31.8%、1万9,227人減)、次いで小売業(11.3%、6,850人減)、個人向けサービス業(5.6%、3,425人減)、文化(2.5%、1,497人減)となっている。

  • ボゴタ(コロンビア)では2カ月の外出制限後、GDPが約4%減少したと試算されており、失業率は18%に達した。外出制限が3カ月続いた後は、減少率は同市史上かつてない-8%に及ぶとみられる。ボゴタのGDPは、ホテル、飲食店、観光、コンサートなど、回復に時間がかかるであろう事業活動に依存しているため、今後も深刻な影響が続くと考えられる。パンデミック前は、同市の2020年の経済成長率は3.5%と予想されていた19

  • ワシントンDC(米国)では、COVID-19とそれに伴う影響により多くの事業が閉鎖に追い込まれたことから、7万人の労働者が失業を申請し、同地区の2020年度の現行予算において7億米ドルの歳入不足が生じている。2021年度と複数年予算の残りの年度は、さらに歳入不足が増える見込みである20

  • サンフランシスコ(米国)では3月の1カ月間に、企業からの一時解雇通知を77件受領し、計5,676人が一時解雇された21 。経済的脆弱性はハイテク産業部門にも存在し、ハイテク企業のリモートワーク制度が「人口流出」につながり、経済消費と市の財源の減少を招くおそれがある22

経済活動と雇用の急減に加え、各都市は深刻な歳入減少にも見舞われている。

  • サンフランシスコ(米国)は、歳入不足により、今年前半に成立した今後2年間の予算の赤字額は11~17億米ドルまで増えると試算している23

  • フィレンツェ(イタリア)もまた、350億ユーロのGDPの15%を観光業が占めることから、壊滅的な経済損失を受けた。通常の予算額8億ユーロのうち、2億ユーロの損失と試算している24

  • レイキャビク(アイスランド)は、今回の危機に関連する市の財政への経済的影響の試算と、市の基本的サービスと地元企業、及び市民の財政的保護のための措置の準備を担当する部署を設置した25

  • 全米都市連盟と全米市長会により4月の最初の7日間に実施された全米各地の自治体の調査で、大多数の自治体が歳入不足を予想していることが分かった。店舗や飲食店での消費が減少すれば、各都市が市のサービスの予算に充当する主要な財源の一つである売上税の税収減につながる。ニューヨーク市(米国)は2財政年度の税収減を74億米ドルと予想しており、ロサンゼルス(米国)の同期間の損失額は4億2,500万~8億2,900万米ドルの範囲と見込まれている26フェニックス(米国)では、市の歳入の30%以上が小売及び観光・娯楽産業関連の売上税である。COVID-19の流行前、同市では翌財政年度は2,800万米ドルの黒字と予測していた。しかし現在は、市の予算へのCOVID-19の影響を楽観的に見積もった場合でも、2,600万米ドルの赤字と予想している。この赤字額は、パンデミックの全面的な影響が続くのは7月までという想定で算出されたものである。影響が10月まで続けば赤字額は5,600万米ドル、12月まで続けば7,900万米ドルまで膨らむとみられる。2021年6月まで続いた場合、赤字額は1億米ドルを上回ると予想される27

  • 欧州自治体・地域協議会(CEMR)が2020年5月に実施した今回の危機の自治体・地域の財政への影響に関する調査で、各自治体は大幅な収入損失に加え、危機対応の前線に立ち、多額の支出増に直面したことから、自治体財政に大きな影響が及んだことが確認されている。この調査によれば、支出増は主として、公務員やウイルス曝露リスクのある作業員用の防護具の購入、ロックダウン及び保護対策の実施費用、最弱者層の支援によるものであった。収入損失については、経済活動の大幅な減速が招いた個人所得税及び法人税の税収の落ち込みが主な原因であった28

OECDノートThe territorial impact of COVID-19: Managing the crisis across levels of governmentCOVID-19の地域的影響:各階層の政府による危機管理)」はさらに、地方政府における予算上の制約は、一様ではないものの、長期にわたって続くと予想されると指摘している。今回の危機は医療・社会関連支出を短期的に圧迫する一方で、その最大の影響は中期的と予想される。同ノートは支出削減による潜在的に危険な影響について警鐘を鳴らし、自治体の収入減と支出増による「はさみ効果」の回避と、公共投資の確保を呼びかけている29

COVID-19の影響は既存の社会経済的脆弱性と複合し、社会的弱者層やマイノリティに偏った影響を及ぼした。貯蓄が少なく、リモートワークができない場合の多い低賃金労働者は、ソーシャルディスタンシングや小売店、交通機関、飲食店その他のサービスの閉鎖などの対策により深刻な打撃を受けた。OECD加盟国全体で推定190万人とされるホームレスの人々は、隔離生活をし、感染から身を守るための手段が全くないか、ごく限られている。高齢者に関しては、独り暮らしや、頼りにできる家族や友人がいない人も多く、感染した場合に合併症のリスクが高いことに加え、COVID-19によって日常生活の自立に深刻な制約がかかり、孤独感などの心理的な影響が生じている。女性は直接的な接客に依存するサービス業(観光、ホテル、飲食店など)に従事する人の割合が高く、COVID-19による経済の悪化の悪影響を受けやすい上、家庭内暴力(DV)のリスクも高まっている30マンチェスター(英国)では、不適切な住宅や不安定雇用が集中している地域はCOVID-19の影響が特に大きかったことから、社会経済的格差を危機からの回復に向けた優先緊急課題とみなしている。このような傾向は地域規模でも顕在化した。6月5日時点で、ロンドンと英国南部ではR値(実効再生産数:一人の感染者が平均で何人に感染させるかを示す値)がすでに1を下回っていたのに対し、北西部地域ではまだ1を超えていた31。マンチェスターは協議と調査を通じて地元コミュニティと協力し、社会的弱者層やマイノリティへの危機の影響評価に取り組んでいる。

ブリストル(英国)でも、COVID-19危機とソーシャルディスタンシングのルールが社会経済的格差の動向を悪化させたことが認識されている。同市はこうした格差に取り組む市民団体による調査を支援し、その提言を考慮に入れている32。一例は、ブリストルを拠点とするブラック・サウス・ウエスト・ネットワーク(BSWN)が実施する、黒人・アジア系・少数民族(BAME)の企業やコミュニティ、団体に対し、助言とBAMEコミュニティへの危機の影響のモニタリングを通じて支援を提供する活動である。地域的対策の参考となるようBSWNが行った調査と報告から、BAMEコミュニティは食品産業や小売業、芸術・文化・創造産業、タクシー運転手その他の低所得の自営業など、COVID-19危機により最も大きな打撃を受けた部門の仕事に従事する人が多い傾向にあり、さらに医療、住宅、ICTへのアクセスの面での既存の格差や、BAMEの草の根団体は国の資金援助を受けることが従来から難しいことが、事態の一層の悪化を招いたことが明らかになっている33

国際エネルギー機関(IEA)によれば、2020年の世界のCO2 排出量は8%減少すると予想されている。4月初旬には、主としてCOVID-19関連のロックダウンに伴う経済活動の減少により、1日当たりのCO2 排出量が世界全体で平均約17%減少した34。例えばニューヨーク市(米国)では、CO2 排出量がパンデミック前の水準から38%の減少がみられた。欧州では、ロックダウン期間中に1日当たりの炭素排出量が58%減少し、自動車やバイクからの排出量は88%低下したと報告されている。しかしながら長期的には、前回の世界経済危機から経済が回復した後、温室効果ガス(GHG)排出量が大幅に増加し、短期的な排出量減少が無になったことを考えれば、対前年比で8%の減少は特に重要ではないかもしれない35。また、協調的で実質的な対応がなされなければ、COVID-19危機によって低炭素投資はリスクにさらされることになる。これには主に二つの理由があり、その第一は、経済不安は企業による投資やイノベーション活動の手控えや先延ばしを誘発する傾向があることである。この点は、エネルギー部門の投資に関しては特に重要である。第二の理由は、化石燃料エネルギーの価格が下がれば、低炭素及びエネルギー効率技術へのあらゆる段階の投資に対する動機が弱くなることである36

世界の多くの都市で外出制限が実施された間、交通の減少により大気の状態が良くなった。ロックダウンが実施された地域では、道路交通活動が50~75%減少し、大都市ではラッシュアワーの交通渋滞が最大で95%減少した。マドリード市(スペイン)では、外出制限が始まって数日後にラッシュアワーの交通量が14%低下した37中国の各都市では、外出制限の結果として大気汚染が10~30%減少した38ニューヨーク(米国)では、ウイルス抑制対策の影響で汚染レベルが2019年と比べて50%近く低下した39。自動車に関連する汚染物質である二酸化窒素については、世界的に低レベルな記録となった。2020年3月13日から4月13日までの間に二酸化窒素レベルは前年と比べて大幅に減少した。ロックダウン措置の影響で、マドリード(スペイン)ミラノ(イタリア)ローマ(イタリア)では約45%の減少、リ(フランス)では54%という劇的な減少がみられた40。欧州50都市の大気汚染を追跡している欧州連合(EU)のコペルニクス大気監視サービスのデータでは、3月には42都市の二酸化窒素レベルが平均を下回ったことが明らかになっている41ニューデリーでは、ロックダウンの最初の数週間の間にラッシュアワーの交通渋滞が95%減少したと同時に、二酸化窒素レベルが66%低下した。インド及び中国の各都市では、産業活動が縮小される中で硫黄酸化物濃度の減少もみられた42

しかしながら、多くの国でCOVID-19関連のロックダウンが解除されるにつれて、二酸化窒素濃度も上昇しつつある。例えば中国では、二酸化窒素濃度が通常の水準に戻っている43。汚染レベルは都市部の方が高く、肺や心臓の損傷を引き起こし、年間700万人以上の早期死亡の原因となっている44。大気汚染の監視を行っている世界の3,000都市では、居住者の80%以上が世界保健機関(WHO)の定める限度を超える大気質レベルにさらされている45。発電所、自動車、その他の産業施設から排出される二酸化窒素は、呼吸器疾患の発症の可能性を高めるなど、人の健康に多大な影響を及ぼしうる。喘息や慢性気管支炎などの既往の呼吸器疾患のある居住者は、COVID-19に感染しやすい場合がある。このことは、都市移住者やWHOの規定を超える地域に居住している人は、それ以外の人よりもCOVID-19の深刻な影響を受けやすいことを示している46

COVID-19危機の間に固形廃棄物の量が増加しており、その中には使い捨てのマスクや手袋などのリサイクル不可能な廃棄物も含まれ、不適切な捨て方が原因で世界各地の海岸に打ち上げられている。北米では、生活廃棄物の量が約30%増えると予想されている47アイルランドでは、家庭廃棄物の量が20~30%増加した48米国の各都市では、2020年3月から4月にかけて、自治体による固形廃棄物及びリサイクル収集量が平均で20%増加し49シカゴ(米国)などの都市では最大50%の増加と推定されている50湖北省(中国)ではCOVID-19感染拡大の間に、感染性医療廃棄物の量が1日当たり40トンから240トンと600%も増加した51カタロニア州(スペイン)の廃棄物局は、3月半ば以降に350%の増加を確認している。同州の通常の発生量は3,300トン(月当たり約275トン)だが、3月の外出制限開始以降は、通常より925トン多い1,200トンに達している52

デジタル化は、各都市のパンデミックへの対応において極めて重要な手段の一つとなっている。感染リスクをモニタリングするツールや、外出制限やソーシャルディスタンシングの尊重を確保するためのツールなどが利用される一方、バーチャルな手段によって特定のサービスや経済活動を継続することも可能になっている。このようなツールやそれに伴う習慣の変化は、各都市の回復段階と今後予想される新たな感染流行の波への備えを拡充するにあたって、恒久的な一要素であり続けると考えられる。そのため、プライバシー権の問題や、インターネットアクセスの普遍性について再考させられることになった。

実際、接触追跡とソーシャルディスタンシング確保の面では、各都市はデータの使用法に関して様々なアプローチを採用している。ニューカッスル(英国)は、スマートシティ技術を活用してソーシャルディスタンシングが尊重されているかどうかを評価している53大邱(韓国)では感染拡大の間の疫学的調査において、患者経路の追跡にスマートシティのデータハブを利用することができた54ソウル(韓国)でも、地理位置情報データ、銀行カードの使用状況、監視カメラを利用していた55。一方、都市データを利用して集団密度や移動パターンを観察するなど、個人を対象とする度合いが比較的低い監視方法を選択した都市もある。例えば、メキシコシティ(メキシコ)はGoogleマップやカーナビアプリWazeとの協力関係を活用して移動傾向のモニタリングを行い56ブダペスト(ハンガリー)は人の密集の高い場所を特定するのにスマートシティツールを利用した57。さらに、政府は「スマートシティ」データベースを拡充し、隔離違反者に追跡用リストバンドの着用を承諾させることを計画している58。このデータベースは当初、交通や汚染などの問題に関する情報を都市間で共有することを目的に設計されたものである。保健当局は、COVID-19感染者の発見と隔離にかかる時間を短縮するのにこのネットワークを活用する計画である。しかし、こうしたツールの利用は感染拡大の抑制にプラスの影響をもたらすものの、プライバシー上の懸念を浮上させている。例えば、欧州委員会は現在、欧州の通信事業者8社と連携し、COVID-19の拡大を追跡する諸措置の協調を図るため、匿名化されたモバイル位置情報の集積データの取得に取り組んでいる。プライバシー上の懸念への対策として、データは危機が収束した時点で消去されることになっている59

各都市がロックダウンやソーシャルディスタンシング対策を実施する中で、リモートワークやリモート学習も多くの人々にとって一般的なものになった。COVID-19危機から、主として「Zoom効果」と「グレタ効果」が重なった影響により得られた重要な教訓は、リモートワークは生産性と両立可能で、負の環境外部性の低減に大きく寄与するということである。

将来はおそらく、多くの従業員や企業がリモートワークの可能性を活用し、適切かつ可能な場合は移動パターンを調整するという「新たな日常」が現れるであろう。事実、世論調査では、交通危機の後、市民は新しい労働習慣や移動習慣を維持することが示されている。例えば、2014年のロンドンの交通ストライキの後、乗客の5%が新しい経路や交通手段を見つけ、それを継続していた60。もっと最近では、ベルギーの世論調査で、最大で90%の労働者が、現在の制限が解除されて誰もが職場に戻れるようになった後もリモートワークを続けたいと答えた61。6月には、ロンドン(英国)の居住者の最大70%が、公共交通機関で通勤するのに抵抗を感じていると報告された62イル=ド=フランス地域圏では5月11日以降、最大31%の人が公共交通機関の利用を減らすか全く利用しなくなり、自家用車かアクティブモビリティ(自転車、電動スクーター、徒歩)に切り替えたと報告されている63

ただしリモートワークに関しては、人や場所による格差がある。リモートワークによって感染リスクへの曝露を抑えたり、予防策の恩恵を受けたりできる労働者がいる一方で、仕事の性質上や、既存の格差、あるいはデジタル格差のためにそれができない労働者も多い。第一に、世界の雇用人口の61%(20億人)はインフォーマル雇用64 にあり、マスクや手指消毒剤などの適切な保護用品を使えず、健康や安全上のリスクにさらされる可能性が高い。第二に、誰もが在宅で仕事ができるわけではない。米国では、仕事の性質上、在宅勤務ができるのは労働者の30%未満で、在宅勤務ができるかどうかは人種や民族によって、また場所によっても大きく異なる65OECDノート「Capacity for remote working can affect lockdown costs differently across placesリモートワークの可能性がロックダウンのコストに与える影響は場所によって異なる)」によれば、OECD加盟国におけるリモートワーク可能な仕事の平均比率には明らかな地域的格差があり、この勤務形態に馴染む雇用はルクセンブルクで50%、フランスで40%、トルコでは21%である66 。第三に、多くの労働者は自宅に安定した広帯域インターネット接続がないか、雇用者側がリモートワークに必要な技術的手段を従業員に提供する手段を持っていない67

デジタル格差は、COVID-19によって明るみに出た数多くの格差の一つである。各都市は当初、この格差を何とかして埋めようと、緊急または一時的な措置を講じた。ボストン(米国)は「1ミリオン・プロジェクト」を通じ、高校生に無料の「携帯電話またはホットスポット(Wi-Fi接続のアクセスポイント)」を提供することで、デジタル格差への対処に取り組んでいる。ボストンの公立学校では、デバイスの必要な生徒にChromebook(グーグルが開発したChromeOSを搭載したノートパソコン)の提供も行っている。ニューヨーク(米国)では、生徒への供与用のChromebook 2万5,000台を市が備蓄しているが、それでもデバイスを利用できない生徒がまだ約30万人いる。横浜市(日本)では、インターネットにアクセスできない生徒がいる可能性があるため、4月20日から一部の授業を地元テレビ局(テレビ神奈川)のサブチャンネルで視聴できるようにした。ミラノ(イタリア)では、リモート学習を始めた学校へのデバイスやインターネット接続の寄付の募集を始めた。トロント市(カナダ)はICT企業と連携し、低所得層居住地区や長期介護施設、シェルターなどに一時的な無料インターネットアクセスを提供した。各都市が緊急対応から長期戦略に移行する中、インターネット接続とデジタル機器の利用機会を強化・拡大することが、回復とレジリエンスのための重要な主眼となっている。

モビリティはCOVID-19パンデミックの影響を強く受け、これを機に都市空間へのアプローチを再考し、別の選択肢を提案する機運が生まれている。例えば、各都市は戦術的都市計画に基づく対応(第III部参照)の一環として、外出制限後の期間の好ましい選択肢の一つとして自転車を奨励している。より長期的で恒久的な戦略へ移行する中で、各都市は現在、アクティブモビリティのためのインフラや、公共交通機関の安全性とアクセス性の向上、電気自動車やスクーターなどの排出量の少ない交通手段への投資を進めている。

公共交通機関へのCOVID-19の影響が大きかった一方で、ほとんどのOECD加盟国ではロックダウンの段階的解除の間に、交通機関が衛生対策やソーシャルディスタンシング対策を実施し、それによって新たな交通関連クラスターの発生を抑制できる顕著な対応能力を示した。実際に、多くの都市公共交通機関はこの先例のない危機に適応し、最低限の運行とメンテナンスの確保と、従業員及び交通利用者の健康を守るための厳格な衛生対策の導入に成功したが、重大な課題が残っている68。世界各地の都市交通当局は、先例のない利用者数の少なさとそれに呼応する運賃収入の損失にも直面しており、これによって財務の安定性が脅かされている。このような現状は、公共交通において物理的距離の確保が求められる状況の中で今後も何カ月にもわたって続くとみられる。

  • 米国公共交通協会(APTAは、米国内の交通当局は2020年第2四半期から2021年末の間に、総計で488億米ドルの資金不足に直面すると試算している。全米平均で、2020年4月の公共交通利用者数は2019年4月と比べて73%、運賃収入は86%減少した。設備投資の減少が雇用喪失につながることも懸念されており、事業計画の遅れや中止により、2020年に3万7,000人、2021年に3万4,000人の建設関係の雇用が失われる可能性がある。経済が回復した場合でも、乗車定員の削減、消毒経費、利用者数の低減、失業率予測などのいくつもの制約により、四半期別の交通収益不足は42億米ドルから81億米ドルの範囲で2021年末まで続くと試算されている69

  • 2020年4月、APTAは会員機関(米国とカナダの1,500以上の公営及び民営交通機関)を対象に、交通機関とその将来計画へのCOVID-19の影響に関する調査を行い、米国の交通機関利用者数の76%を占める121の公共交通機関から回答を受領した。調査結果から、4月には45%の機関で運行率がCOVID-19前の50%以下となり、87%の機関が無料運行を実施するか運賃の強制徴収を止め、52%の機関が投資計画を延期または中断したことが分かった70

  • ワシントン首都圏交通局(WMATA)はCOVID-19前は鉄道駅91カ所とバス停1万カ所以上を運営し、週日平均で約100万人を運んでいた。しかし、COVID-19の影響で利用者数と運行数が劇的に落ち込み、3月最終週までに鉄道利用者数は92%、バス乗客数は75%減少した71

  • ニューヨーク市都市圏交通公社は、受領済みの連邦政府の緊急援助38億米ドルを計算に入れても、年末までに最大85億米ドルの資金不足に直面すると試算されている72。3月末には、地下鉄利用者数が通常の週日500万人の10%にまで落ち込んだ73

  • サンフランシスコ市の交通機関では、駐車料金と罰金による収入が運賃収入の2倍近くに上るが、ロックダウン期間中にはそのどちらの収入も大きく減少した(最も厳しいロックダウンの期間にはバス路線網の70%の運行が停止された)74

  • ロンドン交通局も同様に、英国でのロックダウン措置導入以降、運賃収入が90%減少した75

  • フランスのロックダウン期間中には、パリ交通公団(RATPの交通網の30%のみが運行され、1日の利用者数は平均でわずか50万人(COVID-19前の通常1,200万人の4%)だった76

フランスでは5月9日から6月11日までの間にCOVID-19のクラスターが300件発生したが、その中に公共交通に関連するものはなかった。同様に日本でも、5月下旬に緊急事態宣言が解除された後、感染拡大の間に公共交通が原因とみられる新たなクラスターはなかったと報告された77 (主に原因とされたのはジム、酒類を提供する飲食店、ライブハウス78)。これらの報告やデータは短期間にわたるものに過ぎないが、明らかな交通関連のクラスターが確認されていないのは、利用者数の減少、厳格な衛生対策、クラスターの正確な発生源を直接的に特定することの困難さといった他の要因と並んで、物理的距離確保の効果的な実施やマスク着用の順守によるものと考えられる。しかしいずれにしても、今回のようなパンデミックの間にも公共交通を安全に利用できる可能性を示す心強い兆候である。

コンパクトシティは、長らく高く評価されてきた。例えば、高密度な開発形態、地域サービスや職場までの移動が容易なこと、都市圏内の距離が短く、公共交通機関がインフラ投資の効率性にプラスに寄与していること、エネルギー消費量とCO2 排出量が低く抑えられること、さらに知識が普及しやすいこと、経済効果が地域内に波及しやすいことなどである79。COVID-19との関連においても、高密度な都市環境においては、医療や社会サービスを速やかに利用でき、社会的孤立を防ぐための支援ネットワークの構築や、パンデミックの影響を軽減するための「社会インフラ」(すなわちコミュニティ施設)の活用が可能である。しかしながら、COVID-19の拡大に伴い、人口密度の高い都市の脆弱性と、居住者同士が密に接し、ソーシャルディスタンシング対策の適用が難しいことによるウイルス蔓延の可能性に関する議論が浮上し始めている。

しかし、最近の調査結果では、都市密度は必ずしも感染率の高さと相関しないことが示唆されている。米国都市計画協会の機関誌『Journal of the American Planning Association』に6月18日に発表されたある研究は、米国内の913の大都市圏におけるCOVID-19の感染率と死亡率を分析している。この研究によれば、人種や学歴などの他の因子を調整すると、都市圏の密度は感染率と有意な関連性はなく、しかも密度の高い都市圏の方が、スプロール型の都市圏よりもむしろ死亡率が低い傾向があることがわかった。この死亡率の低さは、医療システムの充実を含めた開発水準の高さにあるとしている。さらに、感染率及び死亡率の高さは、実際には60歳以上の人口比率の高さ、大卒人口比率の低さ、アフリカ系アメリカ人の比率の高さに相関することがわかった80

以上の研究結果は、都市がCOVID-19の影響を受けやすくなる原因は密度だけではなく、構造的な経済・社会状況によって、その都市が効果的な政策対応を実施できる能力が左右されることを示唆している。例えば、格差が存在し、住宅事情が不十分で、都市貧困層の密集度の高い都市は、十分な資源があり、密集度が低く、格差の少ない都市に比べて潜在的に影響を受けやすい。

一部のアジア諸国では、早期対応(リモートワークやロックダウン命令の実施)と早期検査及び徹底した感染者追跡により、香港、ソウル、東京など複数の超過密都市で大規模な感染拡大の回避に成功した。これらの超過密都市では、富裕な地域の多くで住民が自宅に留まり、リモートワークをし、食料品その他の必要品を配達してもらうことでウイルスへの曝露を抑えることができた。中国では、上海、北京、深圳、天津、珠海といった比較的富裕で人口密度の高い都市のエビデンスを見ると、十分な財源を動員でき、高水準の施設やサービスを居住者に提供できたため、確認された感染者数が比較的少なかった81

一方、比較的貧困で密度も高い郊外地域では、複数家族、複数世代の世帯に大勢がひしめいて暮らしていたり、現場のサービス業に従事し、十分なソーシャルディスタンシング対策や防護具もなく他人や一般の人々と密に接していたりする人が多いことから、感染リスクにさらされる度合いが大きい。富裕層と貧困層の密度格差は、ニューヨーク市の感染者数の地域別内訳にも表れている。最も大きな打撃を受けたのは密度の高いマンハッタン地区ではなく、比較的密度の低いブロンクス、クイーンズや、さらに密度の低いスタテン島といった地区であった82。シンガポールでは、直近のCOVID-19感染急増は、何万人もの長期滞在外国人労働者が密集して住む宿舎で発生したと報告されている83。同様にメルボルンでは、建物の条件上、ソーシャルディスタンシングが不可能だとして、公営住宅団地が急遽封鎖されることになった84。さらに、インフォーマルな居住地に住む人々は、より条件の整った場所に住む人と比べて感染するリスクが高い。このことはエクアドルのグアヤキルの状況に如実に表れており、この都市では非効率な都市計画と不十分な住宅事情が原因で、危機への対応が困難になっている85

各都市は居住者の安全と健康を確保しながら、都市計画を改良し、市民のための公共空間を改善し、都市のサービスや施設を利用しやすくなるように不可欠な都市機能の立地を再考している。COVID-19の流行を背景に、カルロス・モレノが考案した15分都市のような構想が、住む、働く、買い物する、医療やケアを受ける、学ぶ、楽しむという6つの必須機能に短い移動距離でアクセスできるようにすることで、都市生活の質と持続可能性を高める手段として注目を集めている86

  • ミラノ(イタリア)の「適応計画2020」はこの構想を採用し、サービスの利用しやすさに加え、例えば夏季に学校の校舎を一般の人々に開放したり、構内の緑地を利用できるようにしたりするなど、既存のインフラや施設の柔軟な利用の促進も伴うようにしている87

  • パリ(フランス)では6月28日の市議会議員選挙の第2回投票の後、イダルゴ市長が15分都市を専任で担当する副市長を任命した。

  • モントリオール(カナダ)ではCOVID-19危機を契機に、都市形態の将来と市中心部における都市利用を再考しており、ロックダウン中にリモートワークを導入した大学や企業と協議しながら、リモートワークと引き続き必要とされる物理空間の利用を融合させた新たなシステムの定義に取り組んでいる。公共空間はこの両立において重要な役割を果たすことになり、歩道沿いのテラスの拡張や街路の歩行者専用道路化を通じてソーシャルディスタンシングを可能にしながら、市民にとって魅力的な場所であり続けるように整備される。モントリオールにはすでに、容易にアクセスできる公共サービスや施設のある複数の地区が並存しており、今回の施策は、このような「ヒューマン・スケール」(人間尺度:人間の感覚や行動に適合した空間の規模や物の大きさ)のメリットをさらに裏付けるものである。

また、今回の危機は、多くの都市とその居住者にとってのアクセスしやすい緑地の重要性も際立たせた。

  • 例えば米国では、ロックダウンが施行された3月に国内の公園の入園者数が大きく増加した。ダラスにある人気の遊歩道の利用率は30%から35%に上昇し、ミネアポリスでは遊歩道の利用率が夏季と同程度の水準に増加、ペンシルベニア州のプレスクアイル州立公園では3月第3週に入園者数が対前年比で165%増加した88

  • パリ(フランス)では、緑地は気候変動対応力のためだけでなく、危機の際の「避難所」として、またソーシャルディスタンシングを尊重しながら集会を行える公共空間としても重要だと認識されている89。同市は、食品が生産地からパリの消費者に届くまでの平均移動距離(現在は660 km)を短縮するため、一部の食料生産地の移転も計画している。これは環境的影響に関する問題であるが、ショックや輸送遮断が生じた場合の食料不足のリスクにも関連する90

  • モントリオール(カナダ)も、すべての居住者の徒歩圏内に緑地を確保するため、緑地数を増やすことを計画している91

  • 同様にバレンシア(スペイン)でも、危機によって市内の緑地帯に対する居住者の評価が高まった。緑地帯は、長期的な気候変動適応策としてだけでなく、市民への生鮮食料品の緊急の直接的な供給源としても、レジリエンス戦略の不可欠な一部として保護されている92

今回の危機により、医療施設のリソース不足と過飽和のリスクに対する意識が高まり、各都市は特定の必須サービスやリソース生産の確保、拡充、移転に乗り出した。ソウル(韓国)は公共医療への大規模投資を決定し、パンデミック監視システムの設置と、公立医科大学、感染症研究センター、疫学研究所を含む市営施設の新設を計画している93

各都市は、COVID-19危機の複数の側面への緊急、短期、及び長期の対応を策定し、実施するため、国や地方の政府、都市のステークホルダー、市民を含む広範囲の関係者と協調を図ってきた。各国内や、OECD包摂的な成長を実現するチャンピオンメイヤーズなどの国際的な都市ネットワークは、相互学習や知識と経験の共有に積極的に取り組んでいる。また、緊急支援や、ロックダウン中及びその後の協調行動、長期的な都市の回復とレジリエンスへの包摂的な統合型アプローチを呼びかけるための地域レベルや国レベルとの、あるいは国際舞台での対話においても、こうしたネットワークが重要な役割を果たしている。多くの国では、優先課題の違いや政治的背景により、政府の各層の間に何らかの緊張がしばしば生じている。そうした緊張を緩和し、厳しい状況に対応するには、効果的な多層的対話と調整メカニズムが不可欠である。

国と地方レベル政府との対話は、都市がパンデミックの早期の段階で緊急事態に効果的に対応する上で、特に医療対応能力の管理において、極めて重要であった。現在もなお、各国が意欲的な経済回復対策を展開しつつある中で、その重要性は変わっていない。国の意思決定者に都市のニーズを理解させ、国の法的及び財政的手段においてそのニーズを考慮してもらう上で、対話が鍵となってきた。

  • メキシコシティ(メキシコ)は域内の病院の対応能力を調整するため、国の政府と密接に協力し始めた。現在は市と国の両レベルの政府が、もう一つの切迫した問題である水不足の状況下での水管理に関しても対話を継続することを期待している94

  • コロンビアでは、国の政府が各市長に対し、市内の緊急対応の調整のため医療部門に介入することを許可した。これにより、例えばボゴタでは、民間診療所の集中治療室(ICU)の病床の90%をあらゆる患者が使えるようにすることができた。また同市は、2,000床の仮設病院を設置し、在宅診療を行う医療チームの数を4つから103に増やした95

  • 英国では、パンデミックへの対応において各都市、自治体当局、国の政府間の調整が極めて重要となり、零細企業支援のための一連の資金援助策が策定された。これらの資金ができるだけ早く企業に届くようにするため、自治体当局経由で資金が提供されている。総額130億ポンド(150億ユーロ余り)が、融資ではなく補助金として交付されることになっている。

  • トルコでは、国の政府が各地域への直接的な財政援助を発表した。自治体当局も、中小企業(SME)やその他関連機関向けの施策の提案や財政支援を行っている。これらの施策をモニターし、必要な場合は追加措置をとるパンデミック委員会が各都市に設置され、自治体公共サービスの継続性を確保している。

  • スペインでは地域政策が改革され、自治体当局がバーチャル会議を開催できるようになり、各自治体が予算の黒字分を特にCOVID-19関連に使えるようになった。各自治体が独自の対応をとれるように与えられた自治権が、市民社会やNGOによるイノベーションを補完している。スペイン市町村・県連盟(FEMP)は今回の危機への対応において重要な役割を果たしており、政府と定期的に会合を持ち、経済関係を含むパンデミック後のための合意の起案に当たっている96

今回の危機に対する革新的な政策対応の策定や推進に都市が率先して当たり、そうした対応が後に全国レベルに拡大された事例もある。英国では、マンチェスターロンドンバーミンガム及びリバプールが国の政府に対して一致して声を上げ、公共交通機関でのマスク着用の義務化やR値モニタリングの地域分割化の推進に成功した97ソウル(韓国)は、危機センターの設置、ソーシャルディスタンシング対策、公共交通機関でのマスク義務化を通じ、緊急危機対応において主導的な役割を担った。これらの対策はその後全国的に採用された98。各都市が緊急段階を脱し、回復戦略の策定を進めつつある中、一部の都市は、各地のニーズに合わせた長期的対応の調整を図り、レジリエンスと持続可能性の向上と格差解消に向けた投資を行うため、政府上層に更なる財政支援と予算の柔軟性拡大を重ねて求めている。

COVID-19への対応と回復のプロセスを通じて、各国内及び国際的な都市ネットワークが、相互学習、知識・経験の共有、及び政策立案の主導において重要な役割を果たしうることが証明された。国際機関やネットワークによるCOVID関連の取り組みの詳細については、追加資料Cに掲載している。

  • OECDの包摂的な成長を実現するチャンピオンメイヤーズは、いかにしてグローバルな公衆衛生の危機に対応し、より強靭かつグリーンで包摂的な、誰一人取り残さない都市を築くかに関する実践を共有する民間の議論の場を創出した。新しいウェビナーシリーズ「格差問題」99 の枠内で実施されたウェビナー「都市のCOVID危機:2つのロックダウンの物語」100 で、チャンピオンメイヤーズの参加市長らは脆弱性の原因を低減するための取り組みを共有し、将来に向けてレジリエンスを強化するための有益な教訓を提示した。本ノートにあげる事例が示すように、参加する市長の多くは、世界規模でも革新的な対応や回復戦略を積極的に主導している。

  • グローバル・レジリエント・シティーズ・ネットワークGRCNはコロナ危機の期間を通じて特に積極的に活動しており、各都市の最高レジリエンス責任者を動員して危機への対応における専門知識や経験の共有を定期的に行っている。また、各都市が知識や教訓を共有し、危機の影響に対処するとともに将来の世界規模の課題に備えて体制をさらに強化するための重要な措置や取り組みを特定するための、参加型、協調型のオープンなプラットフォームを創設した101

  • C40シティーズは「グローバル・メイヤーズCOVID-19リカバリー・タスク・フォース」を設置し、COVID-19からの健全かつ持続可能で公平な経済回復を目指す諸原則に関する声明を発表した。この声明は、回復は摂氏3度の温度上昇に向かっていた従来通りの事業活動に戻るものであってはならないと強く求め、公衆衛生と科学的専門知識に従うこと、公共サービスを保証すること、格差解消に取り組むこと、気候変動危機の緩和と適応のための取り組みを推進することの重要性を強調している。特に、タスクフォースの集団的な発言力を行使し、各国政府に都市及び都市が必要とする投資を支援するよう、国際機関や地域機関には健全かつ公平で持続可能な回復を支援するために各都市に直接的に投資するよう求めていくと表明している102。7月には、これらの原則をさらに具体化した「C40 Mayors Agenda for a Green and Just Recovery,(C40市長連合のグリーンで公平な回復のためのアジェンダ)」で、グリーン雇用の創出、重要性の高い公共サービスへの投資、公共交通機関の保護、エッセンシャルワーカー(社会機能を維持するために必要不可欠な労働者)の支援、及び公共空間の人々と自然への返還に重点を置いた対策を提示した103

  • 欧州の都市ネットワーク、ユーロシティーズも、共同宣言「都市が推進するEUの回復」を発表し、欧州委員会に対し、EUの回復プログラムに都市を一層関与させることと、都市が欧州の資金援助を直接利用できるようにすることを求めた104

多分野間の政策調整は、社会経済状況のモニタリング、時宜にかなった政策対応の形成、回復へ向けた行動計画の調整において不可欠となっている。

  • バルセロナ(スペイン)は、危機の経済的影響の評価と予測、及び調整された対応の策定に当たる経済対応調整センター(CECORE)を設置した105

  • 米国の各都市は、タスクフォースなどの分野横断的組織を動員し、回復戦略の策定と助言に専念させている。例えばグレーター・ヒューストン事業回復センターは、企業主導の回復の取り組みに重点を置く106ワシントンDCは地区経済回復チーム107と、健康、機会、繁栄、公平という価値観に沿った回復の方向性を目指す11の部門委員会で構成されるDC再開諮問グループ108を設置した。シカゴは、広範な産業界の専門家、自治体の首長、地域に根差したパートナー、政策立案者を動員し、i)政策・経済刺激委員会、ii)精神衛生委員会、iii)マーケティング及び事業開発委員会、iv)地域調整委員会、v)経済社会変革委員会の5つの中核委員会を軸に構成されるCOVID-19回復タスクフォースを立ち上げた109ロサンゼルス郡は経済レジリエンシー・タスクフォースを設置し、「事業」「医療」「労働」「飲食店・レジャー・ホスピタリティ」など13の部門別作業部会を設けた110デンバーは、COVID-19による更なるマイナス影響の緩和と防止についての提言を行う諮問グループの役割を担う経済救済・回復協議会を設置した111

もう一つの重要な教訓は、COVID-19危機からの回復戦略の策定に都市ステークホルダーと市民を関与させることの重要性である。多分野の専門家と市民が、戦略をより包摂的で多部門的なものにするためだけでなく、合意形成における包摂性と当事者意識を高めるプロセスを策定する上でも重要な役割を果たしている。GRCNが47都市の最高レジリエンス責任者を対象に実施した調査では、94%が回復計画の立案にステークホルダーを関与させていると回答し、83%が計画立案と実施のパートナーに複数のステークホルダーを挙げた。ステークホルダーは、分野上も職階上も様々な層の政府関係者、研究・学術機関、多国間の諸機関や金融機関、慈善基金や出資機関、地域社会レベルのステークホルダーなど多岐にわたる112

  • ブリストル(英国)は、数千に及ぶ企業やボランティア団体、コミュニティ組織、専門家、学術関係者、パートナー組織との一連のウェビナーや調査、インタラクティブなワークショップを通じた関与の成果を踏まえ、「ワンシティ経済委員会」を通じて「ワンシティ経済回復計画」を策定している。これは、新しい形で全市を一致団結させるためのメカニズムとして確立された「ワンシティ・アプローチ」に沿い、都市はシステムであり、一つの機関の決定は全市に影響を及ぼすという考え方を反映したものである。企業、ボランティア・コミュニティ活動・社会事業(VCSE)、保健医療、法定サービス、教育、交通、住宅、環境及び市内の大学のパートナー数百人を集めたリーダーシップ体制により支えられている113

  • バルセロナ(スペイン)は、危機への最適な対応法を検討するため、社会、文化、スポーツの各分野及び政党のステークホルダーとの都市協定の策定に取り組んでいる114

  • トロント(カナダ)は、エンゲージメントと調査の調整、市の回復戦略の立案、市のプログラムやサービスの実施方法の再考・再構築に向けた対策の提言を担う、トロント回復・再建局(TORR)を設置した。各コミュニティや社会・経済インフラの復旧を成功させる上で、居住者、企業、コミュニティが重要な役割を果たすことになる。同市は今後も各機関やコミュニティ、パートナーとの関与を続け、回復と再建に関連する市の対策の形成に資する意見を取り入れていく。また、2020年7月15日までに実施した調査で、どうすればトロントは回復・再建できるかについて市民の意見を求めた115

  • モントリオール(カナダ)は大学や企業と協力し、リモートワークやリモート学習と市内での身体活動の継続とのバランスがとれるような、将来のハイブリッドな都市システムの定義に取り組んでいる116

  • シドニー(オーストラリア)は都市回復計画を策定中で、この計画には5月18日から6月3日の間に市民意見公募として実施された調査で収集された意見が取り入れられている。市はこの調査により、地元企業、資産所有者、諸団体、居住者、労働者、学生その他の各層から直接的な意見や提案を受けることができた。これらの意見などは公的報告書として公開される。また同市は、すべての居住者に追加の意見を提出するよう呼びかけており、特に聴覚や言語の障害のある人や通訳を必要とする人に支援を提供している117

  • メルボルン(オーストラリア)も、居住者が参加し、今回の危機によって自身の優先事項や市の将来についての考え方がどう変わったかを共有できるオンラインプラットフォームを開設した。収集された意見は市の長期的回復計画の参考にされる118

  • ヴァルミエラ(ラトビア)では観光業の回復支援策として、ラトビア及びエストニアの観光客を市に取り戻すためのアイディアやプロジェクトを創出し、資金提供するためのハッカソン(プログラム開発イベント)を企画した119

今後は、COVID-19と共生する暮らしになるだろう。ウイルスの流行を抑制し市民の健康を守るための公衆衛生上の緊急事態を経て、今回のパンデミックとその影響により都市は、サービス提供、空間計画の策定、経済成長再開の方法の見直しを迫られている。一部の都市は既に、危機の先にあるCOVID-19発生後に必要となる回復の取り組みに目を向けている。これまで都市は常に創造性とイノベーションにあふれる場所だった。自治体のリーダーは、今回もそうなるよう努力しようとしている。

現在は疑いなく、政治的なコストを伴う可能性はあるが、数カ月前より社会的に容認できる大胆な勇気ある決定に向けて弾みがついている。デジタルソリューションの活用拡大や、物不足に対応した生産の分散化、製造再開、サプライチェーンの再構築など、パンデミック後の取り組みを、人々の生活を向上させイノベーションを促す機会に変えられる。社会的弱者を守るため、個人の利益より市民の義務とコミュニティの関与が優先されている。これにより持続的な行動変容を促し、物の製造、エネルギー消費、輸送編成の方法といった点で、都市のレジリエンス及び農村部との接続効率を高めることができる。

コロナ後の回復を通じて都市に「新たな日常を確立し、経済、社会、環境システムの脆弱性を軽減できる可能性がある。一般的に、人口動態の変化や都市化、気候変動が都市に与える影響の予測によって、現在及び将来の世代の社会福祉と経済成長が脅かされることがある。こうしたメガトレンドに直面して、都市は次の危機が訪れる前に、レジリエンスと循環性を高め、よりグリーンでスマートな都市になるための措置を実施すべく取り組みを加速することができる。

持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定などのグローバル課題は、国家、地域及び地方政府が、持続可能な開発という新たなパラダイムの推進だけでなく、パンデミックからの回復に投資と資源を優先的に投入するための重要な機会を提供する。グローバル課題は、民間セクターと市民社会を含む現地のステークホルダーを、「新たな日常」の共創と確立に参加させるための共通のロードマップやビジョンも提供してくれる。.

都市のレジリエンスに関して得られた重要な教訓から、効果的なリスク管理の導入には、準備、予防、対応という3つのステップが必要であることが示される。本書は対応に重点を置いているが、準備と予防を通じ将来的な行動を導かねばならない。危機に対応するだけでなく、未来の危機に備えそれを防止することで、都市のレジリエンスを達成できる。準備は、危機からの回復に必要な時間とコストを考慮しつつ、損害を限定し管理するための基盤になる。予防は、規制、財政的手段、及びレジリエントな都市インフラへの投資を通じて、社会経済面及び環境面の危機への曝露を長期的に軽減する事前対応的な手段である。

COVID-19による危機とそれへの対応は、都市が回復への取り組みにおいて、より包摂的(インクルーシブ)グリーンかつスマートに行動するための長期的戦略、及び変革実現の土台となるガバナンスと資金調達に対するニーズの重要性や可能性を明確に示すものだ(図1)。

パンデミックが世界の多くの地域で拡大を続け、今も数々の都市が封鎖中であったり、段階的な緩和を進めていたり、あるいは「第二波」の到来を受けて厳しい規制を再導入している一方、多くの都市がパンデミックによる甚大な経済的影響から立ち直り、よりレジリエントな未来に向け回復するため、既に長期的な戦略の策定を始めている。社会的弱者を支援し、コロナ後の社会の包摂性を高めるため、教育とスキル育成に投資している都市もある。環境にやさしい都市、環境にやさしい経済を実現する機会として、独自の景気刺激策の追求を目指している都市もある。重要な点として、こうした新たな戦略の多くは、パンデミックの幅広い影響や、持続可能性の多面的な推進を目指す都市の目標を反映して、部門別ではなく全体的なものになっている。また政策立案プロセス自体を確実に包摂的なものにするため、これらの戦略は、市民や企業、市民社会と連携して策定されている。

こうした背景に基づき、本書パートⅡでは、パンデミックからの回復と今後のショックに備えたレジリエンスに向けた、都市の長期的な戦略の最新動向をまとめている。33都市から集めた事例を、5つのカテゴリーに分けて示す。分野横断的な3つのセクションでは、i)包摂的回復ii)グリーンな回復iii)スマートな回復に関わる戦略に注目し、他の2つのセクションでは、iv)観光・文化・創造産業回復戦略、v)都市のレジリエンスに向けた総合的戦略を掘り下げる。以下で紹介する個々のイニシアチブの詳細及び参考資料については、追加資料Aを参照。

今回の危機は、以前から存在する社会的不公平への対処の重要性を浮き彫りにしている。ロックダウンは幅広い企業に影響を与えたが、最も困難な状況に置かれたのは対面でのやりとりが欠かせない中小企業だった。今回の危機は社会の全ての層に影響を及ぼしたものの、女性、子ども、ホームレス、高齢者などの社会的弱者は不釣り合いに大きな影響を受けた120。格差を解消し、パンデミックからの回復に伴う構造的不平等に対処するため、各都市は、特に地元企業支援・地域雇用、安価な住宅の整備改修、社会的弱者の支援のため、回復の取り組みのなかで様々な措置を講じている。

パンデミックは世界の雇用市場に大きな影響を与え、数百万人が失業と貧困に直面している。世界各国の政府が、COVID-19危機による甚大な経済的影響から自国経済を守るための措置を発表したが、市当局も、自治体に応じた回復戦略の策定、公共投資を通じた地元経済の活性化、中小企業支援において一定の役割を果たさねばならない。多くの都市が、インフラ投資や減税、経済的支援を含む幅広い刺激策を用いた回復ビジョンや回復計画を策定している。

  • シカゴ(米国)は6月17日、経済再開に向けたビジョンとガイドラインを定めた。同市商工会議所の「COVID-19経済回復作業部会」の取り組みには、インフラ投資など多面的な活動項目が含まれる。オヘア空港の近代化に85億ドルが投入される予定である。加えてシカゴは、オバマ大統領センター、ワン・セントラル、リンカーン・ヤード、マイケル・リース病院敷地開発などの大型プロジェクトや、データセンターの現地構築を目指す企業のゾーニング及び計画策定について、承認の前倒しを推進している121

  • ヒューストン(米国)は、企業主導の回復イニシアチブを構築するため「ヒューストン都市圏事業回復センター」を設置した。このセンターは、回復事業に関わる政策や資金調達についてアドバイスを提供する122

  • マドリード(スペイン)市議会は5月29日、商業・娯楽・ホスピタリティ・文化の回復を推進するための減税を発表した。この減税により事業税収入は6600万ユーロ以上減少するだろう。加えて、全ての経済活動を維持し回復を加速させるため、2020年までに雇用維持要件を撤廃するが、雇用維持要件を守る企業は経済活動税(IAE)の優遇措置が2021年まで延長される123124

  • バルセロナ(スペイン)は、経済回復事業「Barcelona Never Stops」を策定し、経済・社会組織の再生と市の経済刺激を目的とする一連の措置を実施している。2021年の夏まで続くこの計画は、バルセロナをより強靭性ある都市に変え、地元消費を促し、雇用を保護・拡大し、市の国際的な評判を再び高めるための新たなビジネスモデルの推進を目指している。この目標を達成するため、同市は助成金・資金調達、能力構築、PR・コミュニケーション、経済的手段、既存法規の修正といった分野の措置を実行していく125

  • ビルバオ(スペイン)は5月8日、50以上の措置を含む社会的結束、経済回復、雇用、文化のための計画(Bilbao Aurrera )を承認した。市議会が直接拠出する1500万ユーロの総予算を用いて、次の3つの具体的分野に対処する。すなわち社会的結束に220万ユーロ以上、経済と雇用に1140万ユーロ以上、文化に130万ユーロ以上を投じる。経済分野では、2つの方向に沿って主な措置を策定した。他方で財政分野では、例えばテラス(75%)、ごみ(95%)、タクシーなどに関わる特定の税金と利用料について、総額300万ユーロ相当の引き下げが行われる。また商業・ホテル・観光業の消費を刺激するため、市が250万ユーロの市債を発行する126

  • サンフランシスコ(米国)は、経済回復に向けた取り組みの指針となる戦略を立案するため「COVID-19経済回復作業部会」を開催した。この作業部会は、i)雇用と事業支援(特に中小企業)、ii)社会的弱者、iii)経済発展の3つの主要分野を軸として組織される。30人以上のメンバーが、インタビュー、フォーカスグループ、集会、アンケートを通じて調査を実施し、1000人以上から話を聞いて総合的な経済回復に関する最終的な提言を作成した。この提言は、8月に発表される予定127

  • マリンガ(ブラジル)は6月29日に作業部会を設置し、市政府とSebrae(ブラジル零細・小企業支援サービス機関)の協力に基づき「経済社会開発回復計画」を策定した。この計画は、景気浮揚に向けた他の取り組みと並び、雇用創出、新規投資、能力構築、法改革・給付金交付・融資アクセスの促進を目指している。市民の積極的な関与を基盤とする計画であり、学術界や市民社会、民間セクターも参加している128

  • パラティ(ブラジル)は、COVID-19経済回復計画を立ち上げた。この計画には、路上販売向け特別事業を盛り込んだ自治体によるインフォーマルワーカー支援プログラムや、官民パートナーシップに基づく文化奨励プログラムが含まれる。同市の経済は観光と美食に依存しているため、中期的には、観光部門の分散に重点を置いた措置になっている。長期的には、歴史地区や桟橋などの公共空間の改修・改装、及び衛生インフラがないエリアにある歴史地区の下水網整備などの措置が含まれる129

各都市は、財政支援やPR・キャンペーンを含む次のような多様な措置を用いて、中小企業を中心とする地元企業を支援する独自のプログラムも策定しており、市民に対し地元企業の支援や、リモートワーク、公共空間の柔軟な活用、職業訓練への協力を推奨している。

  • ボストン(米国)は、従業員同士や従業員と顧客が近い距離で接する零細企業を支援するため「ボストン営業再開基金(Reopen Boston Fund)」を設置した130

  • 経済支援事業の一環として、フランクフルト(ドイツ)は地元店舗を宣伝するキャンペーンを行っている。ポスターや、紙またはオンラインの広告を活用して地元の企業や飲食店を宣伝したり、市民に様々なデリバリーの利用を促している。狙いは、市民と顧客に地元企業を応援してもらうことにある131

  • ニース(フランス)は5月29日、コロナ後の経済回復を支援する雇用協定を発足させた。クリスチャン・エストロジ市長は、地元の弱小起業家や公共企業、戦略的な中小企業を対象とする350万ユーロの追加予算を発表した。この事業は、観光・貿易など最も大きな影響を受けた部門に加え、経済的な魅力を高めるための産業やイノベーションも対象としている132

  • パリ(フランス)は、企業及び文化関係者・文化協会に対する支援計画を策定した。この計画に基づき市は、今後5年かけて以下に取り組む。市のサービス事業者の9割を中小企業にする、企業・職人・文化事業・革新的な新興企業に600万ユーロの投資を行う、観光産業支援に500万ユーロを投じる、社会経済と社会連帯経済の担い手に400万ユーロの支援を行う133

  • 東京都(日本)は、事業者向け感染拡大防止ガイドラインを含め、COVID-19感染症を乗り越えるためのロードマップを作成するとともに134、適切な機械設備を購入する中小企業への助成金制度を導入した135。並行してホテル業界を支援するため、都はバリアフリー化支援事業を含め、リモートワークの場を提供する宿泊施設と、自宅でリモートワークすることが難しい社員をマッチングする事業も立ち上げた136

  • ミラノ(イタリア)は、サービス・生産・物流のデジタル化の推進、地元での生産及び資源管理の強化、建設部門の回復支援、社会的イノベーションとスタートアップ企業の支援を含む包摂的な回復戦略「ミラノ2020: 適応戦略」を策定した137

  • ホーボーケン(米国)は、COVID-19零細企業回復戦略を策定した。この戦略は、歩道での営業を許可し、道路脇の駐車スペースを路上レストランやパークレットとして共用の野外飲食スペースに転用し、通行止めの時間帯に企業が路上で営業する枠組みを作りだしている138

  • 佐賀県(日本)では、歩道を活用した新たな形の飲食店・バーが試験的に運営されている。この事業は「SAGAナイトテラスチャレンジ」として、佐賀市と地元商店街振興組合の協力のもとで市中心のビジネス街で試行運営されており、利用者に安全に飲食できる場を提供するとともに地元企業を支援している139

  • 横浜市(日本)は、テイクアウトやデリバリーを行っている飲食店を紹介し支援するためのウェブサイト「テイクアウト&デリバリー横浜」を開設した140。市が店舗に登録を依頼し、居住者が地図上で近所の店を検索できるようになっている。

COVDI-19危機は、低所得世帯向けの安価で安定的な住宅の不足、及び貧困地区の劣悪な住居環境に伴う感染リスクも浮き彫りにした。失業者支援や所得支援、ホームレスへのシェルター提供などの短期的な措置に加えて、劣悪な住宅事情を改善し公衆衛生の危機に及ぼす悪影響を軽減するため、政府による長期的な対応が必要である141。一部の都市は、安価で適切な住宅の供給を拡大し、貧困地区を改善するための公共投資や政策措置を開始している。

  • ウィーン(オーストリア)は、今後数年内に1,000戸のアパートから成る市営住宅を新たに7カ所に建設すると発表した。この新たな住宅を市内全域に展開し、魅力的な居住環境のなかで高品質で手頃な価格の物件を開発する。この住宅事業では、新たな住宅地区に歩行者専用区域と緑地、さらに徒歩圏内にスポーツ文化施設を設けることを目指している。2022年に着工を予定している142

  • メキシコシティ(メキシコ)は、10億ドルを投資して建設部門に約100万件の新規雇用を創出する。投資は、公共インフラと公営住宅を対象とする。この計画は、主に住宅改修や交通の便のよい地域への公営住宅新設といった住宅整備事業を通じて、13の都市回廊の再開発に貢献すると見込まれる。相乗効果と間接雇用を生み出すことから、市政府にとってインフラ・公営住宅への投資は回復戦略に不可欠である143。この戦略では、新たな高速バス路線や2本の「ケーブルバス」(ケーブルカー)路線など、パンデミック前に既に発表されていたモビリティ事業のリソースも活用する144

  • リバプール(英国)は、14億ポンドの回復計画を策定した。これには、200戸以上の組立式住宅及びコミュニティセンターの新規開発、COVID -19によるリスクが最も大きい最貧困地区の社会的弱者世帯4,000戸を対象とした住宅改修が含まれる。この計画により、建設部門の新規雇用12,000件を含め計25,6000件の雇用が創出されると推定される145

  • 横浜市(日本)は、家賃補助付きセーフティネット住宅のオーナーに対する家賃減額補助の上限額を引き上げ、パンデミックにより収入が大幅に減少した入居者の家賃負担を軽減している146

  • ボゴタ(コロンビア)は、COVID-19がもたらす様々な危機に対応するため開発計画を見直した。新たな計画は、雇用水準の維持と中小企業支援、デジタル貿易の発展、労働市場における新たな能力、リモートワーク、グリーン雇用の創出を目指すものである。この開発計画を補うものとして、市政府は、雇用創出と経済活動促進のため都市・不動産開発事業を実施する。これには環境面の持続可能性の維持、技術転換基金の設置、都市農業・近郊農業の促進、環境面の持続可能性の維持が含まれる。起業家の育成と女性の雇用可能性の推進に、特に重点が置かれる予定である147

COVID-19は社会的弱者に最も深刻な打撃を与える可能性が高いとの認識から、各都市は、社会のなかの弱者への影響を緩和するための措置を講じてきた。都市は市民との距離が近く、地域の実情を深く理解できるため、社会的弱者への影響を緩和する効果的な措置が可能である。社会的弱者には、物理的、経済的にパンデミックにさらされやすい人々が含まれる。カウンセリング、食料提供、シェルターなどの短期的措置に加えて(詳細はパートⅢ参照)、市当局は、子どもやホームレス、移民、若者を含む地域の弱者支援に的を絞って、次のような長期的な戦略と投資計画を策定している。

  • ナント(フランス)は、社会的弱者に食料を提供するため巨大な菜園に姿を変えつつある。同市は、緑地や温室、共同庭園、空いている緑地を菜園に転換している。約50区画(総面積25,000 m2 )に旬の野菜や果物を育てる予定だ。合計25トンの野菜を収穫し、Secours populaireRestos du cœur町内会などのフードバンクを通じて約1,000の弱者世帯に支給したいと考えている148。この戦略は、都市緑化の共通便益を活用して社会的弱者を支援する格好の例といえ、困窮家庭への食糧支援と公共空間の緑化を効果的に組み合わせている。

  • ロッテルダム(オランダ)は、学童とホームレスの支援に投資している。予算240万ユーロを投じて貧困家庭・貧困地域の学童6,000人を対象とする夏期補習講座を支援し、落ちこぼれを防ぐ。感染防止緊急対策として、150のホームレス用シェルターをソーシャルディスタンスに配慮して改修するのに加えて、2000万ユーロのホームレス支援パッケージを通じて、独立した住居、生活環境の改善、カウンセリングの提供を支援していく149。この取り組みは、外出制限期間に策定した緊急対策を土台としこれを強化することにより、都市がパンデミックへの緊急対策フェーズを脱し長期的な戦略を実施する方法を示すものである。

  • ミラノ(イタリア)は回復戦略において、デジタルツールの利用拡大や、食料・支援・食料品配達などの分野で非営利団体や篤志家との連携を通じた社会的弱者への適切な措置の実施を通じて、地方機関、地方議会議員、非営利団体、市民団体、自営業を含む全ての人を確実に参加させる計画を立てている150

  • ニューオーリンズ(米国)は、COVID-19危機により深刻な影響を受けた移民労働者への緊急経済援助に750,000ドルを投じる151。この資金は最終的には、直接経済支援として約500世帯に交付される。連邦緊急事態管理庁(FEMA)と連携して、社会的弱者に食事を提供する大規模給食プログラムも開始した152

  • イスタンブール都市圏(トルコ)は2020年6月現在、現金給付と特別ショッピングカードの配布を通じて、計860,000世帯を支援している153

  • マドリー(スペイン)は、地方政府からの助成金900万ユーロ及び大学からの助成金300万ユーロの一部を用いて、大学生への奨学金を設置するCOVID-19回復計画154 を発表した。これにより、パンデミックにより最も大きな影響を受けた層が公立大学で学業を継続できる。同様に、COVID-19の治療・診断を目的とする研究事業にも800万ユーロが交付される。

  • ウィーン(オーストリア)は、労働市場への打撃が原因でCOVID-19により深刻な被害を受けた若年層の支援を試みている。同市は、現在失業中の若者16,000人以上を支援するため1700万ユーロを投資している。このパッケージには、若者世代を対象とした企業内職業訓練、資格パスポート、休業期間中の遅れを取り戻すための支援、医療・介護・IT業界への参入支援が含まれる155

COVID-19からの復興は、都市にとって、より環境にやさしい経済を作りだす明確なチャンスである。都市の環境対策への投資は、雇用を創出し長期的な経済成長に向けた地域的な環境を用意するだけでなく、炭素排出量を削減し、将来的な気候関連リスク(洪水、異常な高温など)に対し地域社会を備えさせ、都市環境の質(大気汚染、生物多様性など)を改善するものでもある。政策立案者らは2008年の世界金融危機後に、再生可能エネルギーの利用拡大に重点を置くものを含む、グリーンな回復パッケージを既に策定している。以来、再生可能エネルギーや他のグリーン技術のコストが大幅に減少しているため、COVID-19からの回復は、環境にやさしい経済政策を打ち出す上でよい機会である。156。OECDの先日の分析では、グリーンな回復を推進する上で各国政府が重要な役割を果たしているが、現在提案されている最新の国家経済回復対策は十分に「グリーン」ではないか、または「ブラウン(環境汚染をもたらす)」な活動(化石燃料補助など)への継続的な支援がグリーンな対策を上回っていることが示された157。都市レベルでは、次第に多くのグリーンな回復取り組みが登場しており、都市の高い意欲に加えて、画期的な解決策を試す能力が証明されている。世界各地の都市は既に、持続可能な都市モビリティとエネルギー効率に特に重点を置いて、経済回復と環境面の持続可能性を達成するため多様な投資を行い、コロナ後の暮らしを見据えて計画を作成している。

ほとんどの都市では、ロックダウン中に車の交通量が激減した結果、大気汚染と炭素排出量が減少した。前述のように、ロックダウンを行った地域では大都市の道路交通量が50~75%、ラッシュ時の渋滞が最大95%減少したが、こうした減少は一時的なもので、封鎖が解除された多くの都市で既に元に戻っている。

ロックダウン時の制限が緩和されるに伴い、大部分の都市では急激に以前の状態に戻りつつあるが、交通量と大気汚染が減少した経験に刺激されて、多くの都市のリーダーがよりクリーンで持続可能な都市モビリティを追求しようとしている。都市が提案する最も一般的な持続可能な都市モビリティ対策として、自転車専用レーンなどのアクティブモビリティ・インフラへの投資、衛生対策の強化や非接触型決済での運賃支払、サービス提供エリアの拡大といった公共交通機関の安全性とアクセス可能性の改善、電気自動車や電動スクーターなどの低排出な移動手段などがあげられる。インフラ投資は雇用機会を創出し、多様な経済部門(建設、自動車、ICTなど)への民間投資を促すこと、また効果的な都市モビリティシステムは都市の生産性に不可欠であることから、こうした投資の選択肢は経済回復という全般的な目標に沿うものである。

世界各地の都市が、主に自転車インフラへの投資を通じて、アクティブモビリティを広く推進している。各都市は、都市の大気の質を改善させるとともに、主として自家用車使用と公共交通機関への需要を減少させる手段として、この戦略を推進してきた。短期的な措置とみなされがちだが、アクティブモビリティの重視は、都市での自動車利用に長期的な影響を与えるだろう。都市は最近、インフラに重点を置いて大規模な投資を進めており、こうした投資が多くの都市景観を作り変えると考えられるためである。

  • ボゴタ(コロンビア)のクラウディア・ロペス市長は先日、1970年代以降の先見性ある野心的な政策を通じて既に設置済みの550kmの自転車用道路に加えて、新たに35kmの自転車専用道路を設置すると発表した158

  • ミラノ(イタリア)のジュゼッペ・サーラ市長も、コロナ後に歩行者がサイクリングやウォーキングに使用できるよう、全長22マイルの道路を今年の夏に改修すると発表した159。ロンバルディア州は欧州で最も大気汚染が深刻な地域のひとつであるため、これは特に歓迎すべき動きである。クリーンな小型都市モビリティを推進するこうした大胆な取り組みが、世界の他の多くの都市に刺激を与えている。

  • パリ(フランス)市長は、普段は自動車が走行する50km(30マイル)の道路を将来的に自転車専用にすると発表した。これにはポルテ・ドルレアン通り、ルクレール将軍通り(南側のセクション)、エトワール地下道、ポルト・マイヨが含まれる。加えて歩道に人が密集するのを避けるため、学校周辺を中心に30本の通りを歩行者専用道路に指定する。首都パリの中心部を東西に走るリヴォリ通りは、5月11日時点で自転車専用になっている。この通りの走行を認められるのは、バス、タクシー、配送トラック、さらには緊急車両や障害者用車両など一部の車に限られる160161

アクティブモビリティの推進を補足する手段として、多くの都市は公共空間の配置や既存の公共交通機関の最適化も長期的に見直している。今後何カ月にもわたり、ソーシャルディスタンシングが必要とされるためである。この目的に向けて、各都市は既に、道路の恒久的な封鎖、カーシェアリングや電気自動車向けの公共空間の確保、需要削減と運行範囲の拡大を目指した公共交通機関の再編・調整、スマートなグリーンモビリティの試験導入など、長期的な戦略とビジョンにおける都市計画策定の重点課題を大幅に修正し始めている。

  • シアトル(米国)は、20マイルの区間について車両交通を恒久的に禁止する。この決定は、ロックダウン中に市民がソーシャルディスタンシングを確保しながら運動できるよう、臨時措置として4月に導入された取り組み「Stay Healthy Streets」の続行を示すものだ162

  • マドリード(スペイン)は5月末、カーシェアリング専用の駐車場を新設した。この駐車場は キャピタル・デ・エスパーニャ通りから25メートル、地下鉄のフェリア・デ・マドリード駅の出口のひとつと隣接した場所にある。この試験事業は、毎日10,000台の自家用車が流入するこの商業地区で持続可能なモビリティ及びインターモダリティの推進を試みるものである163。同市は、公共交通機関を活用したい市民を支援するため45kmのバス専用レーンも新たに設置する。これは、現在のバス交通網の30%に相当する164

  • メデリン(コロンビア)は、交通に重点を置いて2030年までに炭素排出量の20%削減を目指しつつ、コロナ後の経済回復の準備を進めている。特に、3年以内に自転車専用レーンを145kmへと約50%拡大し、電車、トラム、ケーブルカーを含む相互に接続した交通機関の路線数を2030年までに2倍以上に増やす計画である。さらに、市民が低価格でレンタルできる電動自転車50,000台の提供に取り組み、10年後を目途に全ての公共交通機関の電動化に力を注いでいる165

  • ソウル(韓国)は、自動運転車、ロボットを使った配送、スマート駐車場の導入を通じて今後も様々なスマートグリーンモビリティの開拓を続けていく。こうした措置に加えて、2030年に自転車のモーダルシェア15%を達成することを目標に、自転車専用高速道路の整備を急ピッチで進めている166

  • ローマ(イタリア)は、サービス事業者2社を通じて数千台のスクーター導入を実現するため、電動スクーターシェアサービスの指針を承認した167

  • 2020年7月4日に電動スクーターレンタルサービスが法律で認められたのを受け、ミドルズブラ(英国)は、公共交通機関の混雑や環境を汚染する自家用車の復活を防ぐ取り組みとして、英国全土での体系的な実施の基盤を築くために、市全域での電動スクーターレンタル事業を都市として初めて試験的に立ち上げた168

  • ロッテルダム(オランダ)は、新たな交通手段を提供するため、公営交通企業RET(ロッテルダム電鉄)、及び自転車・電動自転車・スクーターを提供する企業4社と連携してモビリティ計画を策定した。この計画に伴いRETのアプリケーション上でサービスを提供し、利用者が最も便利に最短時間で目的地にたどり着く方法を探せるようにしている169

  • ダブリン(アイルランド)は5月初め、国家交通局と共にモビリティ提案の「現実的な」枠組み策定に着手した。この計画では、歩行者区域と安全なサイクリング施設に充てる空間を新たに設置し、堅固な公共交通網を維持しつつ自転車や徒歩などの手段を可能にするために必要な、様々なバスの路線変更を実施することを提案している170

  • ミラノ(イタリア)は、移動需要の削減(スマートワークやリモートワークの促進など)、移動手段の改善と多様化(自転車、電動スクーター、カーシェアリングの推進など)、公共交通機関の安全性向上(バスや地下鉄の乗車人数制限、ソーシャルディスタンシングを通じたバス停や駅での混雑軽減など)、歩道からの障害物の撤去、公共交通機関と他の移動システムの連動、乗車チケット・駐車チケット・駐車許可証の自動化推進、一時的な駐車スペース整備への投資(医療・緊急サービス用の必需物資の配送など)を行うための包括的な措置を定めた、適応戦略 を発表した171。この計画では、都市のタイミング、スケジュール、リズムを見直し、柔軟性を高めて移動需要を分散させ、学校や企業に柔軟な時間設定を促し、各種事業やサービス、文化公演の営業時間を延長することも目指している。また公園やスポーツ施設の段階的な再開に伴い、健康、娯楽、運動を目的とした公共空間の再利用も計画している。さらに、巧みな都市計画と歩行者専用道路化を通じて、全ての地区に Piazze Aperte(開放広場)を確保する取り組みを進め、駐車場の上にテラスを設置する一方で、市全域に時速30kmの速度制限を課している172

  • 米国では、67以上の交通機関がコロナ後の復旧計画または回復計画を策定したとされる。交通機関は、運航路線の統合または拡大(44機関)、スタッフの配置転換(42機関)、時差勤務の活用(31機関)など、いくつかの運用変更も検討している173

  • ワシントンDC(米国)の「ReOpen DC」は、COVID-19が今後もたらす状況を踏まえて交通機関の利用に着目したロードマップを定めている174。公共空間の方向性を見直すための具体的な措置として、歩道拡大への重点的取り組み、自転車専用レーンの増設、幹線道路を運行するバス路線へのレーン割当拡充などが含まれる。ワシントン首都圏交通局(WMATA)も、低い乗車率を利用して建設・修復作業を広く展開する夏場の安定運行と、9月以降の段階的な再開に重点を置いた計画を作成した。再開時は混雑を避けるため、バスの運行ルートを見直し地下鉄の時刻表に合わせる。WMATAは、異なる交通手段の運賃をセット販売し、まとめて非接触型決済を展開する取り組みにも力を入れている175

  • 米国とカナダの1,500以上の官民部門の会員から構成される米国公共交通協会(APTAは、パンデミック中の公共交通サービス復旧に向けたチェックリスト、交通機関消毒の指針、公共交通機関の従業員及び利用者の安全対策に関する白書を含む幅広い文書を発表している176。APTAは4月に「モビリティ復旧回復作業部会」を新たに設置した。この作業部会は、COVID-19パンデミック後の世界における公共交通サービス用ロードマップを作成している。作業部会の成果には、従業員と利用者の安全対策、市民と利用者からの信頼、顧客重視の運行、レジリエンシー、公平性、社会的ニーズなど、公共交通機関の今後の成功に不可欠な幅広い課題を扱った一連の提言が含まれる予定である177

各都市は、この機会を活かして都市整備に投資している。都市整備を通じて、コロナ後に建物の省エネ効率を最大化し電気代を節約することができる。過去のグリーン経済刺激策パッケージから学んだ教訓から、省エネと改修工事への投資といった特定の分野が、排出量を削減しつつ、建設部門の雇用創出と経済活動に大きく貢献することが示されている178

例えば、建物の近代化を通じて多くの雇用を創出でき、中小企業が多くを占める地方のバリューチェーンに資金が注入される可能性がある。一例としてリール都市圏(フランス)は6月1日、公営住宅3,000戸、3,600戸以上の個人住宅、学生寮600戸の省エネリフォームへの今後3年間の投資を含む、6,600万ユーロの回復計画を発表した。この事業は、建設部門の雇用創出と低炭素経済への移行の両方を促進することを目指している179コペンハーゲン(デンマーク)は、急ピッチで公共工事事業を実施しており、これにより市当局に50~100の新規雇用を創出すると推定される。公的調達への資本支出制限の解除を通じて、この事業を促進している180

リール(フランス)は、各種の企業支援制度を通じて地元経済に約3,200万ユーロを注入している。「再生基金」は、商店経営者、職人、農家などの零細事業者に2,000万ユーロを支給する。基金を利用する事業者は、エコ設計への移行やエネルギー転換を約束しなければならない。従業員数10人未満の零細企業や小規模団体を対象とする融資制度が新たに設置され、返済期間3~5年で最高660万ユーロの融資を行う予定となっている181

省エネ措置と並行して、各都市は再生可能エネルギー事業にも投資している。例えばソウル(韓国)は、2018~2022年に全ての市営建築物と住宅100万戸へのソーラーパネルの設置を目指す野心的な太陽光発電計画を策定した。これにより4,500件の雇用創出が見込まれる。同市は現在までに市営建築物に98メガワット相当の太陽光発電設備を設置、13,125世帯以上がソーラーパネルの提供を受け、大気汚染物質PM2.5の排出量が8.7トン減少した182。加えて3月、ソウル市は韓国の都市として初めて、新規商業建築・住宅建築への建材一体型太陽光発電設備導入に対し助成計画(2020年は予算10億ウォン)を発表した183スウォンジーベイ(英国)は6月、コロナ後のペンブルックシャー州の経済再生と気候変動への対処を目指す、6,000万ポンドの海洋エネルギー事業「Pembroke Dock Marine」を発表した。この事業は、ペンブルックシャー州議会の支援を受けて民間セクターが指揮している。今後15年間で1,800件以上の雇用創出が見込まれる。この事業は、ウェイブハブ社が運営する、未来の発電技術の整備を実現する面積90km2のペンブルックシャー実証実験地区、及びオフショア再生可能エネルギー(ORE)カタパルトが運営する技術革新研究拠点である「海洋エネルギー工学研究所」を含む、4つの事業から構成されている184

デジタル化は、パンデミックへの都市の緊急対策に重要な役割を果たしてきた。多くの都市がロックダウンを解除しつつある今、各都市は依然としてソーシャルディスタンシングが求められるなかで、感染リスクの監視と警戒を続けつつ新たな生活リズムや習慣を推進し定着させるため、スマートシティツールの活用を強化し拡大している。自治体のサービスや情報提供、参加手段、文化資源のデジタル化に伴い、バーチャル空間は都市の公共空間に一層欠かせないものになっている。従って、適切なネット接続が不可欠なサービスとなっており、インフラ全体で普遍的なネットアクセスを保証する必要がある。

パンデミックにより多くの都市は、ロックダウン中だけでなく、回復計画の策定への参加プロセスの一貫として長期的にも、デジタルソリューションの追求を加速するよう迫られた。

  • タリン(エストニア)はハッカソン(プログラム開発イベント)を開催し、アントワープ(ベルギー)、ケルン(ドイツ)、マドリード(スペイン)は、スタートアップ企業に対しCOVID-19関連課題を克服する新しい画期的な方法を提案するよう要請した。スタートアップ企業や革新的な中小企業に「常態への復帰」を求める中で、マドリードは、パンデミック後の経済的現実への対処、新たな対人関係モデルの必要性を受けた都市という概念の見直し、特別なニーズを持つ層の解決策の模索という3つの課題への解決策を追求した。ニース(フランス)は、 緊急時の新たなデジタル物流管理ツールを開発した。マイクロソフト社は、これにヒントを得て他の地域も支援する予定である185

世界の各地で唐突にロックダウンが実施された結果、多くの子どもが自宅で学習を続けることになった。この時期の教訓をもとに、各都市は短期的にも長期的にもよりスムーズな遠隔学習体験を保証するため、プラットフォームを開発し支援措置を策定した。

  • リガ(ラトビア)では、市の教育文化スポーツ局が、生徒にバーチャル授業を行えるようデジタルプラットフォームを導入した。バンベルク(ドイツ)、イスタンブール(トルコ)、ティラナ(アルバニア)もデジタル学習プラットフォームを開発し、ティラナは全ての授業を無料プラットフォーム上にアップロードして、全国テレビで放送した186。リガ市開発局も週1日をリモートワークデイに指定し、対面会議の代わりに都市計画作成の事務文書に関するウェビナーを開催した187

  • 東京都(日本)は、デジタル変革の推進に向けた取り組みの加速に力を入れ、オンライン学習、遠隔医療、リモートワーク、公共サービスのデジタル化を推進した。「スマート・スクール・プロジェクト」は、都立学校に通う全ての子どもと学生がオンラインで学習できるようにすることを目指している188

COVID-19により、都市居住者が急遽自宅にとどまり接触を減らすよう求められた想定外の経験に基づき、各市政府は公共サービスのデジタル化に向けて次のような取り組みを推進している。

  • ミラノ(イタリア)の「適応戦略2020」には、デジタルサービスに関するセクションが含まれており、市民へのデジタルサービス提供の拡大、簡素化、推進、及びこれをサポートするICTネットワークの強化を計画している。デジタルツールを活用して、公共部門と公的イニシアチブの支援や補足を行う。この計画では例えば、感染監視システムの開発を目指している。文化へのアクセスを拡大する取り組みとして、オンライン図書目録の拡充、オンライン文化事業及び「従来型」ライブイベントの推進を行う。最後に、配送物流を見直し地場消費を促すため、ミラノ市独自のデジタルプラットフォームを開発していく189

  • フィレンツェ(イタリア)も公共サービスの完全デジタル化に取り組んでおり、現在の85%から市民へのサービスの100%デジタル化を目指している。これには建築造園施工管理のデジタル化も含まれ、承認手続きの簡素化を目指している。同市は、適切なサービス・設備と安全な環境の確実な提供を通じて、リモートワークやアジャイルワークの推進にも取り組んでいる。リモートワークに必要なネット接続への普遍的なアクセス、いわゆる「ネットワーク接続の権利」の確保を目指して、フィレンツェは、サービス改善が必要なエリアを特定するため、光ファイバー接続の有無と回線の質をマップ化している190

  • ソウル(韓国)など他の都市も、デジタル格差を解消し万人による技術アクセスを拡大するには、公的な介入を通じたデジタル化への取り組みが必要だと認識している191

観光は多くの都市に欠かせない部門であり、雇用、企業、サービスを支えている。国内観光と国際観光の両部門合わせて、平均してOECD諸国のGDPの4.4%、サービス輸出の21.5%に直接貢献している。OECDの修正版シナリオによると、パンデミックの期間や旅行・観光の回復速度によるが、今回の衝撃により2020年の国際観光経済は60~80%落ち込むと考えられる192。観光客は少なくとも当面は自然が豊かな農村部に足を運ぶ可能性が高いため、農村と比べ都市はより大きな影響を受けるだろう193

国内観光は2021年に回復すると予想されるが、国際観光の回復には2年以上かかる見込みが高い194。国際観光に大きく依存するいくつかの都市は、先を見越して海外からの観光客を誘致する戦略を策定している。例えばレイキャビク(アイスランド)は、事態が正常化した後の目的地としてレイキャビクを宣伝するマーケティングキャンペーンを含む、観光措置パッケージを発表した195ミラノ(イタリア)の適応戦略にも、衛生プロトコルを遵守した「安全な都市」ミラノのPRが盛り込まれており、安全が確認され次第、創造的な文化活動をまずは地元居住者、その後に海外観光客を対象として段階的に再開する計画を立てている196

他方で、一部の都市はパンデミックを、より持続可能なビジネスモデルを目指し観光振興を見直す機会と捉えた。なかには文化と都市の機能を改めて振り返った結果、場合によっては社会構造に悪影響をもたらす大規模な観光事業からの転換を決めた都市もある。フィレンツェ(イタリア)は、大規模な観光事業は実施せず年末までに観光活動を30%回復させることを目指している。これまで居住者は、市中心部を団体観光客に奪われたように感じていた。新たな「Rinasce Firenze(フィレンツェ再生)」計画は、市中心部への観光バスの乗り入れを禁止する。いずれバスは同市の周辺部までしか入れなくなる見込みである。この計画では、現地居住者・企業の利用を想定して市中心部への再投資を行う予定であり、従ってホテルや飲食店は新たな営業許可を受けられなくなる197バルセロナ(スペイン)ブダペスト(ハンガリー) も同じく、観光事業をより家族にやさしい文化的なモデルに転換する意向である198

観光と共に、文化・創造産業もCOVID-19発生とその後の危機により最も深刻な影響を受けた部門のひとつである199。そのため多くの都市が、回復戦略でこうした部門の支援を目指した。文化・創造産業に重点を置いた回復戦略の主な例として、以下があげられる。

  • マドリード(スペイン)は、750万ユーロの寄付を受けて文化施設・文化活動を対象とする回復計画「マドリード喝采計画(Plan Aplaude Madrid)」を承認した200。現代美術・パフォーマンス・文化交流に特化した空間は年2回のプログラム助成金を受けられ、市議会が2020年の不動産税と経済活動税の25%減額を決めた。マドリードを象徴する2つの施設、シルコ・プライス劇場とフェルナンゴメス文化センターの改修に、220万ユーロが投じられる予定である。文化センターは約40 年ぶりの改修となる201

  • ロンドン(英国)も、草の根音楽施設、アーティストの工房、独立系映画館などの危機に瀕した文化・創造産業を支援するため、260万ユーロの緊急基金を設置した202

  • ビリニュス(リトアニア)も、回復計画「ビリニュス・プラン4×3」を策定している。この計画には、個人、企業、文化活動を対象とした支援策が含まれる。計画ではこの部門に100万ユーロを充てているため、ビリニュスにとって文化は重点課題と考えられる203。 計画には、文化・創造産業への財政支援、キャンセルになったイベントの部分的な補償、舞台芸術への1回限りの支援、特定の課税免除、教育機関の文化教育イベントへの参加、地元の作家や演奏家の出演を通じたフェスティバルの活性化が含まれる204

  • 加えて多くの都市が、音楽業界と地元会場を支援するため音楽イベントに力を入れ、居住者に手軽な娯楽を提供している。例えばグローバルな取り組みとして、United We Stream は毎晩、マンチェスター、ベルリン、アムステルダム、パリ、バンコクなど様々な都市の音楽会場からコンサートをライブ配信し、音楽業界の演奏家や主催者を支援するため数千ドルを調達している。同様にニューオーリンズ(米国)も、地元の音楽家や会場を支援するためライブ配信イベント「Band Together」を開催した。コロンバス(米国)の音楽委員会は、自宅から出られない高齢者のため街頭コンサートを開催している205

各都市は回復を、より持続可能で公平でレジリエントな社会に向けた抜本的な変化の機会と捉えている206。ひとつにはCOVID-19危機が現在の脆弱性と不平等を際立って露呈させたため、このような飛躍が促されている。加えて、ロックダウン中に経験した日常生活の寸断により、市民の側に行動を変容させ、さらに根本的な変化を受け入れる準備が整った207。例えばミラノ(イタリア)は「適応計画2020」において、今回の危機からの脱却を利用して都市とその規模に関する基本的な特徴や想定に疑問を投げ、健康的な生活の必要性を問いかけている。ミラノは回復へのアプローチとして、「コロナ後にどんな社会でありたいか、どんなコミュニティを築きたいか? “以前”の状態に極力早く戻すことが、我々の最大の目標なのか? 今回の危機がもたらした”恩恵“に目を向け、都市と生活の質を高めるため前進しようとしているか?」といった重要な疑問を提起している208

都市開発に総合的なレジリエンスの視点を導入する必要性を認識したため、多くの都市は、次のように全般的なレジリエンス戦略の策定または見直しを試みている。

  • マルメ(スウェーデン)は、洪水被害を防ぐための緑地の拡大、食料安全保障に向けた取り組みの強化など、過去の危機やショックが既にレジリエンスの強化に寄与してきたと指摘した。同市は現在、開発・調達プロセスの計画策定にレジリエンス基準を追加している209

  • ミラノ(イタリア)も、当初のレジリエンス評価ではパンデミックのリスクを考慮していなかったため、レジリエンス戦略を見直している。この戦略では、異常値に伴うリスクへの備えを強化するため、都市計画に最悪の事態を想定したシナリオを盛り込む必要があることも確認された210

  • パリ(フランス)では、今回の危機を契機として、政府のあらゆる部門にレジリエンスの視点を適用することの重要性に目が向けられた。同市の2017年レジリエンス戦略は、市民連帯ネットワーク(Paris volunteers)を活用した高齢者の安否確認、コミュニケーションを活用した感染防止対策に関する意識啓発など、今回のパンデミックでも有用であることが証明された。今回のパンデミックを受けて同市は、危機から学んだ教訓を踏まえて戦略を見直し、今後の危機への備えを強化する方法を検討するよう促された211

  • イズミル(トルコ)は「COVID-19へのレジリエンス行動計画」を作成した。この計画は、災害・危機的状況に対する同市の過去の予防対策を示しつつ、特にCOVID-19流行中とその後の管理のため立案された新たな措置を紹介するものである212

各都市は、長期的な開発戦略の更新版にもコロナ後の回復という背景を盛り込んでいる。例えば、アムステルダム(オランダ)、バルセロナ(スペイン)、タリン(エストニア)、ウィーン(オーストリア)、ユトレヒト(オランダ)は、都市開発戦略(ユトレヒトの「健康な都市生活戦略」、ウィーンの「スマート都市ウィーン」など)のロードマップとして、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダを活用している。これらの戦略はコロナ前から実施されてきたが、各都市は現在、グローバルな政策枠組みを利用し、遵守すべきアジェンダではなく、回復戦略の立案・実施の指針となる政策ツールとしてこうした枠組みを積極的に取り入れている213

こうした都市戦略に基づき、あらゆるレベルの政府が、COVID-19から学んだ教訓を踏まえてよりよい都市の構築に協力するための行動志向の政策提言を以下に示す。この政策提言は、災害リスク管理と都市レジリエンスに関しOECDが以前示した指針、及び2019年3月に採択されたOECD都市政策の原則も基盤としている214

全ての人に機会を与える 包摂的な都市 を構築するため、あらゆるレベルの政府は以下を行うべきである。

  • 大胆な社会イノベーション戦略の立案・実施及び空きビルの転用を通じて、社会的弱者(高齢者、ホームレスなど)に医療、在宅介護などの効率的な社会地域サービスを提供する。

  • 取り残された人々(移民、低賃金労働者など)を対象に、コロナ後の地方労働市場の新たな需要に対応した適応可能で柔軟性のある有意義な独自の雇用活性化プログラムを実施する。

  • 社会的結束及び持続可能な交通手段との統合を推進するため、多様な住宅需要に応じて住宅の量、質、価格を調整するための措置を講じる。

  • コロナ後の回復フェーズで都市モビリティの未来を見直す際は、様々なカテゴリーの人(高齢者、子育て世代、障害者など)の需要を考慮して、ソフトモビリティへのアクセスを改善する(交通手段としての自転車など)。

  • 特に低所得の若者を対象に、質の高い教育へ公平にアクセスできる環境を整備するとともに、オンライン教育の可能性を十分に活用する。高等教育機関、企業、地方自治体、市民社会の連携を促す。

低炭素経済への移行を可能にするグリーンな都市 を構築するため、あらゆるレベルの政府は以下を行うべきである。

  • 渋滞税や一定の免税を認める臨時規制を通じて自家用車の利用を減らし、環境にやさしいアクティブ都市モビリティなどのマルチモーダル交通を改善する(近接性・歩行可能性、供給サイドと需要サイドの交通管理政策の統合など)ことにより、交通渋滞や大気汚染などの負の集積外部性に対処する 。

  • 先見性ある空間計画・土地利用計画の策定を通じて、都市の密集性や都市形態(コンパクトあるいはスプロール)の利点を活用し、例えば環境に配慮した建物や道路の設計・建設、及び可能であれば再生可能エネルギーの生産・調達により、気候変動に強い低炭素都市インフラに重点を置く。

  • 商品・製品の価値を最も高い水準に維持し、廃棄物の発生を防ぎ、廃棄物を再利用、資源に転換するため、循環型経済の推進を通じて、資源のより効率的な利用及び持続可能な消費・生産パターンを推進する。

  • 例えばグリーン投資事業や環境に配慮したビジネス慣行への条件付き助成金、優先的融資、財政的インセンティブの設置を通じて、コロナ後の回復に向けた景気刺激策や投資に、気候変動の影響緩和及び適応策を組み込む一方で、不当に影響を受ける可能性がある社会的弱者への措置を並行して策定する。

  • 短距離輸送の物流を見直しつつ、地方経済を刺激する(地元での食料生産など)。

居住者の幸福度を高めるイノベーションの可能性を存分に活用し、包摂的な成長を推進できるスマートな都市を構築するため、あらゆるレベルの政府は以下を行うべきである。

  • 身体の不自由な人、貧困地域の居住者、技術にアクセスしにくい人を対象とする場合を含め、公共交通分野の新技術(アプリを使った配車サービスなど)の包摂性と持続可能性を確保するとともに、個人のプライバシーを守る。

  • 雇用の安定を推進し、公共の利益と労働者の社会的セーフティネットを守るため、長期的に適用すべきソーシャルディスタンスのルールを考慮しつつ、シェアリングエコノミー、ギグエコノミーに対する適切な規制を導入する。

  • スマートシティの機能、及び居住者の幸福と包摂的な成長への貢献をより正確に評価するため、データ測定に関する計画を推進する。

  • リアルタイムデータ、通行料の電子決済、スマートパーキングシステム、IoTセンサー、スマートコントラクトなどのデジタル化を活用して、地方自治体としてより効率的で持続可能で安価な、包摂的な公共サービスを提供する。

  • イノベーション志向のソリューションを購入するため、都市による公的調達の活用を支援する枠組みを整備する。

包摂的・グリーン・スマートな都市を構築するため、政府は、ステークホルダーとの責任分担に基づき、効果的な戦略・政策を立案し実行する手段として、次のような優れたガバナンスを活用すべきである。

  • 自治体間の連携や国際的な協調、官民パートナーシップを含め、居住者の利益を中心に据えたレジリエンスを高める画期的な連携手段、パートナーシップ、または契約を通じて、アジャイルで柔軟な都市ガバナンスのモデルを推進する。

  • 健康と安全に関する長期的な目標、レジリエンス、持続可能な開発に関連する各地特有のニーズ、国家目標、グローバルなコミットメントを、透明性ある効果的な方法で同時に達成するため、政府のレベルを横断して責任とリソースを調整する

  • 都市の規模の多様性に応じて戦略策定と公共サービス提供を行うため、市民の居住地と勤務地に基づき、政策活動に対し都市レベルで機能的アプローチを採用する。

  • 複雑な課題に応じた強靭で統合的な都市戦略を立案し実施するため、地方自治体職員の戦略的な管理能力とイノベーション能力を強化する 。

  • 回復フェーズの社会、環境、経済面の措置を見直すため、意思決定・実行へのコミュニティの関与や、構造的格差への恒久的な解決策のためのデジタルツールの継続的な活用を通じて、市民の参画を促進する。

  • 画期的な仕組みを活用して、回復フェーズにおいて不動産開発業者、都市計画者、機関投資家、金融セクターなどの民間セクターに加え、規制当局、学術界、市民社会と協働する。

  • 企業や市民と責任を分担して、包摂的でグリーンな成長という視点に基づき地方市場を形成し、生産・消費パターンを変化させ、直線型経済から循環型経済に移行するため、経済、社会、環境面の目標を盛り込んだ持続可能な公的調達と公共インフラを推進する。

  • 公開情報へのアクセス、透明性向上と意思決定者の説明責任の強化、公共政策を共同で策定する場の拡大を推進するため、開かれた政府に向けた取り組みを支援する。

  • 例えば、他都市の画期的な対応から学ぶための都市間協力を通じて、都市のシステムとネットワークをサポートする。

先見性ある総合的なコロナ後の回復措置を実施するため、政府は、包摂的・グリーン・スマートな都市に向けて十分な財政資源を活用すべきである

  • 公共空間、都市インフラ、近隣開発、低価格住宅の整備資金を調達するサステナビリティボンドを含む、画期的な資金調達の仕組みの導入を推進する。

  • 危機や想定外の経済的打撃が発生した場合、危険準備金・積立金、信用枠、家賃猶予など具体的な金融手段の可能性を活用する。

  • 機会を最大限に増やしリスクに対処するため、必要に応じて民間セクターから資金を調達する

  • 企業、特に中小企業に対し、保健上の危機や制度的なショックのリスクも考慮し、柔軟なリモートワークとデジタル化を見据えた事業継続計画を策定するよう促す。

  • 特に包摂的な目標を掲げた事業やインフラ案件に対し、市民が公的資金の使われ方について発言できるよう、画期的な参加型予算の導入を検討する。

  • 分散型再生可能エネルギー、食料生産・流通などの分野で、協同組合や他の社会的企業などの形で市民を巻き込むモデルを含め、社会的経済を推進する財政モデルを促進する。

世界中の都市でCOVID-19が流行し、地域社会と居住者の健康に測り知れない影響を与えたため、多くの地方自治体は感染拡大への対応の最前線に立った。ウイルスの流行を最小限に抑えるため中央政府が主導的な役割を担った一方、多くの国の都市が、新型コロナに係る政策課題への対応を現場で補う上で重要な役割を果たした。数多くの国で、都市は次の2つの役割を果たした。

  • ひとつには都市は、そのリソースや能力(市警察など)あるいは現地での権限(公立公園・庭園の閉鎖など)を利用して、外出制限措置の執行及び現地での支援など、全国的な措置の実施手段としての役割を果たした

  • 他方で都市は、テクノロジーなどの資源を利用するとともに市民に近い独自の立場を利用して、ボトムアップの画期的な対応の指揮を執ってきた(社会的弱者への配慮など)

40以上の都市から集めた事例(追加資料A参照)は、次の6種類の政策対応に分類できる(図2)。これらの政策対応が、パンデミックの進行度合いに応じて様々な程度で展開されている。

  • ソーシャルディスタンシングと外出制限

  • 職場慣行と通勤パターン

  • 社会的弱者を対象とした措置

  • 水道、廃棄物などの自治体公共サービス

  • 事業支援と経済回復

  • 市民向けコミュニケーション・意識啓発・デジタルツール

確認された政策対応から、都市のレジリエンスとショックからの回復能力に関して次のいくつかの考察が得られる。

  • 都市の対応は、その国が初期や後期などパンデミックのどの段階にあるかに応じて解釈し、検討する必要がある。いずれの場合も、学んだ教訓を活用してより巧みに未来に対処し、影響を軽減して回復に向けた計画を策定できる。

  • 国によって、また同じ国内であっても、都市のCOVID-19流行への対応能力は同等ではない。この対応能力のばらつきは、公共サービス提供の配分(医療は集中化する傾向がある)、人口規模(比較的小規模な都市は、包摂性(インクルージョン)により注意を払っているように思われる。)、規制枠組み、財政力、インフラなど様々な要因に左右される。

  • 各都市は、情報提供、市民保護(衛生など)、接触の減少、企業支援(融資など)を目的とする緊急措置や、より長期的な効果を狙う措置(職場改革など)といった地域に根差す幅広い対応を実施している。

  • COVID-19対策の多くの実施に当たり、各都市はイノベーションとオンライン/デジタル・ツールに依存しており、インターネットやスマートフォン・アプリ、テクノロジーが、コミュニケーションや意識啓発やリモートワークだけでなく、学習とスキル開発にも重要な役割を果たしている。

  • 第一段階では大半の対応が短期的だが、一部の都市は、特に市民生活を見直して都市の公共空間の設計と活用法の変化を促し、歩行者や自転車によるマイクロモビリティの空間を拡大するため、より中期的な対応に次第に移行していた。

  • 長年コンパクトシティが称賛されてきたが、居住者同士の近接性、ソーシャルディスタンシングの困難さ、基本的サービスに手軽にアクセスできる安全でコンパクトな都市環境を確保する方法を検討する必要性などから、新型コロナ危機は人口密度が高い都市の脆弱性に関する議論を引き起こした。

  • サプライチェーン途絶、輸出・投資の減少、観光とビジネス双方の渡航制限が、中長期的に都市に影響を与え得る。

  • 多くの都市が、製品の生産やエネルギー消費、交通その他のサービス提供の方法を通じて、今回のパンデミックとその余波を、より強靭で循環性が高く、スマートで農村部との接続性が高い都市を生み出すチャンスに変えられると理解していた。

  • 分権化がどの程度進んでいるかに関わらず、都市は常に、全国的な措置を効果的に実施し、国家的な枠組み・取り組みに沿って地域に根差した対応を策定するため、中央政府と協力する必要がある。

  • パンデミック中の国内及び国際的な都市間の協力が、都市がパンデミックへの対応を成功させる鍵になっている。都市同士の横の交流が結束と連帯感を生み、公開性と透明性を高める一方、都市ネットワークは、経済、社会、環境面の目標を考慮した上で、危機に対応し効果的な回復を遂げるためのベストプラクティスに係る有益な情報を提供してくれる。

パンデミックの初期段階での緊急対応として、次のようなソーシャルディスタンスシングの確保と外出制限措置の実施が行われた。

  • 集会の禁止、イベントの中止または延期。ほとんどの都市が大規模な集会を中止または延期した。例えばオースティン(米国)は、通常は40万人以上が参加し2019年には3億5590万ドルの経済効果をもたらした3月開催予定の毎年恒例の映画音楽祭、South by Southwestを中止した215。大規模な集会を中止または延期できない場合(フランス統一地方選挙の第1回投票など)、手を洗う設備と消毒薬が用意され、頻繁に会場の消毒を行った。多くの都市は、マスクと消毒ジェルの供給も確保した。2020年夏に開催予定だった東京オリンピック(日本)などのスポーツイベントも、中止または延期された。ミラノ(イタリア)とパリ(フランス)は、大人数での外出を制限し、外出制限に係る全国的な措置の実施を支援するため、他の都市に先駆けて全ての公共公園を閉鎖した216

  • 市の文化施設の閉鎖。美術館・博物館、コンサートホール、映画館などの文化施設を閉鎖した。ブエノスアイレス(アルゼンチン)市役所は、200人以上が集まる娯楽、社会、文化活動を禁止する条例を通じてこの決定を下した。禁止期間は当初は30日だったが、のちに延長された217。フランスを含む世界の多くの都市で、デモを禁止し、映画館・劇場・飲食店を閉鎖するため同様の措置がとられた。

  • 学校・大学の休校。これに伴い学期の調整、試験延期、オンライン学習ツールや教育アプリの無料提供拡大などが実施された。福岡(日本)は、公立校の休校により自宅で過ごす子どもたち向けに学習用動画を配信した218。他の例として、モスクワ(ロシア)は、生徒がオンラインで学習を進められるよう「モスクワ電子学校」を立ち上げた219

数カ月のロックダウンを実施した後、欧州の大半の都市はロックダウンを段階的に解除するための措置を支援する計画を立案し実施した。多くの計画は段階的・地域的なアプローチに基づくもので、感染者数に応じて集会制限と経済活動再開が緩和された。国家の制度的な特徴(連邦制、集権的)に応じて、中央政府、及びまたは、地方政府が決定を下した。

  • フランスでは、コロナの流行状況と医療機関の逼迫状況に基づき行政区分(départements)を色分けしたマップ(レッド、オレンジ、グリーン)を作成し、定期的に更新した。「レッド」に色分けされた、流行の広がりが比較的大きく医療体制が逼迫している地域では、「グリーン」に色分けされた地域より慎重に制限緩和措置が実施された。

  • オーストリアは、イースター後に制限を段階的に緩和した。4月14日に小規模店舗を再開した後、5月に他の店舗や飲食店も続いた。4月末まで、移動はやむを得ない場合のみに制限された。学校は5月半ばまで休校が続き、高等教育機関は学年度末までオンライン授業を継続した。5月15日に飲食店、動物園、美術館・博物館、5月29日に宿泊施設、娯楽施設、プール、観光地の再開が認められた。スポーツイベントや文化イベント、大規模な集会全般が認められるのは、早くても7月になる見込み。

都市は市民と政府をつなぐ最も身近な窓口であり、人口密度が高く密集が生じやすい場所であることから、「常態」に復帰しつつソーシャルディスタンシングを維持するため次の措置を実施している。

  • 安全保護具の配布。多くの自治体が、ロックダウン緩和措置を踏まえてマスクなどの保護具を配布している。フランスやスペインなど一部の国では、公共交通機関でのマスク着用が義務付けられている。マドリード(スペイン)は4月、政府と連携して駅などでマスク配布を開始した220パリ(フランス)市長は、区役所や薬局を通じて5月11日から市民に200万枚の布マスクを配布すると約束した221

  • 学校でのソーシャルディスタンシングの確保。無症状の子どもがウイルスを媒介する可能性を示すエビデンスが増加している222。また、子どもにソーシャルディスタンシングを効果的に守らせるのも難しい。そのため政府と地方自治体は、十分な安全衛生対策を確保するため学校再開を慎重に進めている。スペインでは、5月26日から学校が一部再開されたが、全面的な再開は9月以降と見込まれる。これは、イタリアの同様の決定に倣ったものだ223デンマークは4月15日、欧米諸国で初めて小学校を再開した。感染の広がりを防ぐため、保護者は校内に立ち入れず、教員も職員室に集まることはできない。子どもの机は互いに2メートル離さねばならない224パリ市は、5月11日から医療関係者・救急隊員・公務員の子どもに限り小学校で受け入れると発表したが、一部の学校はロックダウン期間中すでに医療関係者をはじめ他の「エッセンシャル」ワーカーの子どもを受け入れていた。5月14日には、「優先受入」の対象が公共交通機関職員の子ども、障害のある子ども、オンライン授業を受けられない貧困家庭の子どもに拡大された225。6月22日には、高校を除く全ての学校が再開された。グリーンゾーン内の15~18歳向けの学校(lycées)は第2フェーズの一環として再開されたが、登校は必須ではない226

全国的な規模で全面的なリモートワークが求められる前に、市当局は、パンデミックの初期段階及び外出制限期間中、まずは市職員にリモートワークを推奨した。各都市は、以下のような措置を実施した。

  • リモートワークや時差出勤の活用。COVID-19により早くから最も深刻な被害を被った都市のひとつ、ミラノ(イタリア)は、3月10日の全国的な外出制限措置の発動に先立ち、2月24日から居住者にリモートワークを推奨し始めた227サンノゼ(米国)では、自治体職員は市民に模範を示すためリモートワークを推奨された228リオデジャネイロ(ブラジル)市長は、自治体の長として初めて時差勤務を推奨したひとりで、交通機関の混雑を避けるため工業は午前6時、商業は午前8時、サービス業は午前10時に第1シフトを開始するよう提案した。市の公共部門も在宅でこれと同じ勤務体制を採用した229日本では首相が企業に対し、人との接触を7割、可能であれば8割減らすため、できる限りリモートワークを推進するよう要請した。政府の専門家委員会が5月4日に発表した提言でも、リモートワークやローテーション勤務、時差通勤、オンライン会議の活用が「新しい生活様式」の実践例としてあげられた。

  • 地元企業にリモートワーク・フレックス制の支援を要請。都職員のリモートワーク推進に加えて、東京都(日本)は、企業に対し柔軟な勤務体系の導入を促し230 、リモートワーク用設備やソフトウェアの導入に必要な経費の助成金支給を通じて、中小企業など企業のリモートワーク移行を支援する措置を講じた。ブラガ(ポルトガル)では、市の経済開発局InvestBragaが、零細企業によるeコマースやリモートワーク、オンライン会議などのデジタルスキル育成を支援するウェビナーを開催した。同局は、デジタル課題に関し無料相談も行っている。

  • 職場の安全性向上に向けた検査実施。流行の発生以降、モスクワ(ロシア)は企業に対し、従業員の検温を実施し、症状がある者(発熱、咳または息苦しさ)は出社させず、帰宅させるか治療を受けさせるよう勧めた231大邱(韓国)は、検査需要の急増に対応するため「ドライブスルー方式」の検査所を開設した。この施設を使えば、市民が車に乗ったままの状態で直接検査を実施できる。パリ(フランス)では3月末、17区の区役所に初のドライブスルー検査所が開設され、医療従事者は予約制で車に乗ったまま検査を実施できるようになった232。車内で検査する方が、患者と医療従事者どちらにとっても、病院や保健所に出向くよりはるかに安全で短時間で済む。検査は約10分で終わり、大邱の場合、結果は3日以内にテキストメッセージで通知される。

  • 交通機関の再編と消毒 。公共交通機関での乗客の接触は、COVID-19の流行に重要な影響を与える可能性がある。ピーク時に混雑した電車やバスに通勤客がすし詰めになる都市では、このリスクが特に大きい。パンデミックの初期段階では、通勤を制限する政府の指令に従って、多くの自治体が段階的に運行本数の削減を進め、市民に対し不要不急の移動を控え、公共交通機関で消毒などの衛生対策を実施するよう促した。サンフランシスコ(米国)では駅やバス車内に消毒液を用意し、消毒の回数を増やしている233ヴェネツィア(イタリア)では、 パンデミックの初期段階でゴンドラの徹底的な消毒が実施された。ナポリ(イタリア)では、電車やバスの座席の清掃・消毒や、利用者に向けた消毒証明書の掲示を通じて、職員と利用者を守るための適切な防護措置を確保した234マドリード(スペイン)では、ほとんどの電車(64%)への自動ドア設置を通じて接触を最小限に抑えている235。また同市は、大学向けの路線や空港までの急行バスを減便する一方で夜間バスは維持するなど、需要の変動に合わせてバス路線も再編した。EMT(サービス事業者)も、車両を毎日徹底的に消毒する計画を維持している236ブラスチラバ(スロバキア)は、欧州で最初に公共交通機関利用時のマスク着用を義務付けた都市のひとつだった。運輸局は、運転手に近い前方のドアからの乗車、降車も禁止した。ドアは自動的に開くため、乗客がボタンを押す必要はない237

パンデミックによって、人々の移動の仕方や働き方が大きく変化した。短期的には、自宅にとどまりウイルスの流行を阻止するため、企業や都市はできる限りリモートワークの方針を採用するよう迫られた。規制緩和後も従業員は、オフィスや交通機関での密集を避けるため、少なくともワクチンができるまで必要に応じてリモートワークを継続できる。国際労働機関(ILO)は、職場に厳格な衛生安全基準を確実に遵守させる規制措置がなければ、感染者数が各国で再び増加に転じるリスクが極めて高いと警告している238。感染の第2波のリスクを軽減するため職場で実施されている対策の例として、以下があげられる。

  • リモートワークと時差出勤の継続。政府と地方自治体は、企業にできる限りリモートワークを継続するよう促している。地方自治体が、交通機関の混雑や職場での密を避けるため、時差出勤を実施し推奨しているケースもある239イル・ド・フランス地域圏(フランス)は、出社・退社時間に時差を設けるよう提案し、企業、労使団体、自治体、公共交通機関と憲章に関わる交渉を進めている。従業員は、午前5:30~6:30、6:30~7:30、7:30~8:30、8:30~9:30、9:30~10:30のシフト制で出社することになる240。6月21日には、Ile-de-France Mobilités(フランス交通政策組合)はリモートワーク推奨と「ラッシュ分散」の要請を延長した。すなわち、従業員を午前6:30~10:30に出社させ、午後3:30~7:00に退社させるよう求めた241

  • 市民の安全な移動。外出制限解除後に職場に戻るエッセンシャルワーカー以外の労働者の移動リスクを減らすため、自転車または徒歩を推奨する交通・モビリティ計画の実施に着手した都市もある。ニューヨーク(米国)は、COVID-19危機中に100マイルの道路を社会的に責任ある娯楽活動のために開放するため尽力した242パリ(フランス)は、数多くの期間限定の「コロナ対策自転車道路」を含め、ロックダウン中及び解除後に50kmの自転車専用レーンの緊急整備に取り組んだ243トロント(カナダ)は、歩行者が安全に車道を歩けるよう外側車線の一部を封鎖し、市内数カ所の歩道を拡張した244。その他の取り組みは、電車とバスの増発を通じ交通機関でのウイルス感染の抑制を目指している。シカゴ(米国)では、交通局が市のバイクシェアリング提携事業者Divvyと協力し、パンデミックが続く期間について会員料金の大幅割引を実施している245ベルリン(ドイツ)では、 フリードリヒスハイン=クロイツベルク区が、やむを得ない外出時に自家用車利用の増加を防ぎつつソーシャルディスタンシングを確保する創造的な解決策として、期間限定の自転車専用レーンを導入した246

OECD加盟国の大都市圏は、OECD加盟地域の総GDPの60%、雇用の59%、OECD総人口 の55%を占めている247。COVID-19危機のため多くの都市が、スーパーや薬局、銀行、保険、郵便を除く経済・商業活動を一時的に停止した。

世界各国の政府がCOVID-19危機の甚大な経済的影響から自国経済を守る措置を発表した一方、市当局も、中小企業支援に一定の役割を果たしており、以下を通じて貧困層への資金援助、及び危機からの回復に向けできる限り強固な準備を整えるための企業支援を実施している。

  • 中小企業向け相談サービス: ビルバオ(スペイン)は3月末以降、市議会が主催する緊急相談サービスを通じて起業家、小規模小売店、中小企業を支援している。このサービスでは、電話とオンラインで支援を提供している248税務手続きの処理は全て延期された。横浜市(日本)は1月30日という早い段階で中小企業向けの特別経営相談窓口を設置した249シアトル(米国)では、デジタルサービス事業者による複数の取り組みを通じ零細企業を支援している250リスボン(ポルトガル)は、危機の影響を軽減し経済回復を促進するため、利用できる全ての支援及び相談に関する情報を確実に企業に届けるため、零細・中小企業支援チームを設置した。チームには、多様な分野の専門家が参加している251パリ(フランス)は、職種別組合、事業者団体、経済パートナーとの1回の意見交換を推進している252

  • 基金の設置: ミラノ(イタリア)市長は、困窮者を援助し都市活動の回復を支援するための互助基金の設立を発表した。既に市議会が承認した300万ユーロの予算に加えて、この基金は個人、企業、団体による経済活動への参加に充てられる。基金は初日(2020年3月14日)に80万ユーロを調達した253キング郡(米国)は、慈善団体と協力して救済基金を設立し、支援を必要とする人と提供できる人を結びつける寄付マッチング用のページを開設した254シアトル(米国)は、大手IT企業が参加する救済基金を設置した255

  • 減税: マドリード(スペイン)市議会は、経済活動税や娯楽・ホスピタリティ・商業施設、旅行代理店、百貨店に対する税金について、年末まで雇用を維持することを条件に6300万ユーロの減税を承認した256モントリオール(カナダ)緊急財政支援を提供し、企業支援策を講じている。支援策には、市町村税の延期、緊急経済支援、元利金の自動的な支払猶予が含まれる257シアトル(米国)は、納税が遅れた企業に延滞金を課さないと発表した258ブラガ(ポルトガル)は、休業した全ての地元企業を対象に公共空間・テラスの利用及び宣伝に係る市税の全額控除を適用した。InvestBragaは、社会保障制度の利用条件、企業奨励金の指針、観光業界への特別支援など経済界に援助を行っている259

  • 融資ニューヨーク市(米国)は、従業員100人未満の企業への返済期間15~20年の無利子融資、25%の売上低下が証明できる場合の最高75,000ドル融資など、中小企業に対する支援を実施している。東京都(日本)は、施設の使用停止など感染拡大防止に協力した中小企業を対象に1感染拡大防止協力金の支給を決定した。加えて、パンデミックの影響を受けた中小企業向けに緊急融資制度と無料相談窓口を設置した260ブエノスアイレス(アルゼンチン)では 公立銀行Banco Ciudadが、中小企業に給与支払の資金を提供するため新規融資制度を発足させた。どの融資制度も、年間名目金利の20~24%と利率を大幅に引き下げている261

  • 付加価値税(VAT)登録事業者への助成金支給と支援東京都(日本)は、リモートワーク推進に必要な設備やソフトウェアの導入費用を支援するため中小企業に助成金を支給した262ミラノ (イタリア)は、VAT登録事業者を経済的に支援して、職業訓練・資材を拡充し(専門機器、装置など)事業発展への投資(ソフトウェアなど)を推進するため、「Partita AttIVA」というプログラムを実施した。263.

  • 家賃支援給付・免除 パリ(フランス)は、休業した企業やNGOの家賃や道路・テラス使用料、他の市税の猶予など、経済主体を支援する制度を策定した264リスボン(ポルトガル)は、休業した市営ビル(市議会または市営企業)内の全ての商業施設、及び市営ビルに設置された全ての社会・文化・スポーツ・娯楽施設の家賃支払を2020年6月30日まで全額免除した265ポルト(ポルトガル)は、倉庫として市営施設または地元施設とリース契約を結んだ商店の家賃支払を免除した266。また文化機関に特別前払金(上限75%)を支払い、現在の困難な状況に対抗し克服できるよう強固な保証を提供した267ヴィアナ・ド・カステロ(ポルトガル)は4月と5月、プライア・ノルテ・ビジネスパークと起業支援センター内にある企業の家賃を免除した。レイキャビク(アイスランド)市議会は3月26日、COVID-19のパンデミックが引き起こした危機への初期対応として、緊急行動計画に満場一致で賛成した。この計画には、料金の支払猶予、家庭・企業への柔軟な対応強化、不動産手数料の引き下げなど13の措置が含まれる268

  • 現地生産・流通の支援ヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカン(ポルトガル)は、経済主体と協力して地元小売業向けの市場と地元産品の消費を推進するプログラムを開発した。また協同組合、企業、流通業者、飲食店、スーパー業界と提携して地元の販売網・供給網も推進した。企業及び地方職業安定所に対する政府の措置に関わる質問に答える、ヘルプラインも開設した269パリ(フランス)は、商品を配送するため個人事業主と物流企業を結びつける支援を行い、地方農業団体(AMAP)に一部の青空市の運営継続を認めることで、農業部門と近距離流通網を支援している270シドニー(オーストラリア)は、特に地域雇用の推奨を通じてコロナ後の回復と今後の生活に貢献するセントラルシドニー計画戦略の草案を発表した271

パンデミックを受けて、各国は自国民と経済を守るため大胆な回復パッケージを発表した。これには、中央・地方のレベルを超えた政府間の協力と連携が求められる。さらに国の意思決定者は、地方当局が作業工程で適度な柔軟性を発揮して効率的に行動できるよう、国の法的特権を活用しなければならない。例えば、

  • 英国では、パンデミックと闘う上で都市や地方当局と中央政府の強力な連携が不可欠であり、零細企業を支援するため一連の財政支援制度が設けられた。援助金をできる限り企業に届けるため、地方当局経由で支給された。130億ポンド(150億ユーロ以上)が、融資ではなく助成金として交付された。

  • スペインでは地域政策が変更され、地方当局によるオンライン会議開催、及びコロナ関連予算剰余金の地方自治体による活用が認められた。地方自治体は、市民社会やNGOが考案したイノベーションを補うため、独自の対応を実施する裁量が与えられた。スペイン地方自治体連盟(FEMP)は、今回の危機管理に重要な役割を果たし、政府と定期的に会議を開催して経済面も含むパンデミック後の合意案を作成した272

  • トルコでは、政府が各地域への直接的な経済援助を発表した。地方自治体が措置を提案し、中小企業やその他の機関に経済的援助を提供した。地方の公共サービスの継続性を確保しつつ、措置を監視し必要に応じて追加措置を講じるため、各都市にパンデミック対策委員会が設置された。

程度の差はあるものの、OECD加盟国は、次第に複雑さを増し膨大なリソースを必要とする機能を、下位レベルの政府に委譲している。そのため各都市は、飲料水の供給、汚水回収、廃水処理、固形廃棄物管理を含む基本的サービスを供給している。ドイツが議長国を務める2020年の欧州評議会では、レジリエンス、デジタル化、共有財(すなわち、公共サービスと基幹インフラへの平等なアクセス、利用可能性、優れた設計)に一層の重点を置いて、パンデミックと危機管理に関する「新ライプチヒ憲章」が採択される見込みである。

世界の多くの地域では、たとえ構造的な理由や不測の理由で供給を継続できない場合でも、水道などの基本的サービスを市民が利用できるよう都市が保証している。地方自治体の長がパンデミックがもたらす公衆衛生上の複雑な脅威への対処に奔走するなか、多くの都市と電気ガス水道会社は、料金未納者への供給停止を見合わせることに合意した。最も重要な感染防止策が手洗いと全般的な衛生管理であることを考慮すると、これは特に重要である。デトロイト(米国)では、公衆衛生に反するとの抗議を受けて、料金未納を理由に給水を停止していた数千世帯への水道用水供給を一時的に再開する予定である273。米国の7州(ウィスコンシン、ニューヨーク、コネチカット、ニュージャージー、ペンシルバニア、イリノイ、ルイジアナ)は、サービス停止の禁止を義務づけた274アロラ(スペイン)の市政府は、州の外出制限措置により閉鎖を続けている施設について、今後3カ月間水道料金を免除した275ランスでは、衛生の必要性が高まっている現在、多くの都市が、市民が確実に水道水を利用できるようにするための措置を実施している276ポルト(ポルトガル)は、政府令により全面的または部分的に休業中で、及びまたは、売上が40%以上急激に減少した非家庭用の利用者を対象に、4月1日から6月30日まで上下水道料金・都市ごみ処理料金を一部免除した277リマ(ペルー)も、タンク10槽分の飲料水の供給をはじめ、最貧困層への飲料水の供給確保を目指している278ブラガ(ポルトガル)では、全ての利用者を対象に上下水道料金を引き下げた279

各都市はごみ回収の継続的な保証にも取り組んでいるが、特定のごみが分別されていない場合もある。 英国などの公衆衛生当局は、感染を防ぐため、自主隔離中の人が触れたごみは全て二重の袋に入れ、口を結ぶよう推奨している280ルクセンブルク281 ニューアーク(米国)282では、通知があるまで予約制のごみ回収(粗大ごみ、庭から出るごみなど)を中止している。ポーランドでは、自治体の廃棄物管理業組織のうち大手5団体が政府に対し、パンデミック発生時の廃棄物管理部門の規制がないと訴えた283キングストン(カナダ)は、家庭用有害廃棄物回収サービスを中止した284リマ(ペルー)では、都心部のごみ回収が保証されており、同市は他の地方自治体に援助を行っている285ブラガ(ポルトガル)の水道・廃棄物管理会社AGEREは、零細企業の都市ごみ収集にかかる基本料金を全額免除し、全ての事業者を対象に25%の料金引き下げを行った286

公的調達のプロセスは、地方自治体が中心的な権限を持つ場合に市民への多くのサービス提供において重要な役割を果たす。今回のパンデミックは、地方自治体の現在及び将来の契約、及びサービス提供に影響を与える。またパンデミックが、地方自治体が満たすべき新たな安全・衛生・デジタル面の需要も生み出している。実際、地方自治体は常に医療提供に責任を負うわけではないが、それ以外のサービスを提供するには、サービス提供に携わる人の安全を確保するため特定の装備を調達する必要がある。例えばコロナ流行中に保安サービスを提供するには、警察はマスクや手袋などの特定の装備が欠かせない。サンフランシスコ(米国)は3月23日、州からN95マスク100万枚を調達したと発表した。このマスクは、最前線で働く人々に役立っている287ローマ(イタリア)などの都市は、”Giardini” Serviceのタンク車7台を使用し適切な製品を調達して、公共空間と街路を消毒している288マドリード(スペイン)は、3月25日時点でエッセンシャルワーカーを対象に1万回分の検査を確保した289

公共サービスの継続性を確保するためCOVID-19危機への早急な対応が求められたことから、多くの国が、公的調達のルールの柔軟性を高めるべく指令や他の法的文書を発行した。各国の行政体制に応じて、全国的な枠組みの場合もあれば州・自治体レベルの枠組みの場合もある。メキシコシティ(メキシコ)は3月30日、直接裁定の可能性を含め、公的調達プロセスに一層柔軟なルールを適用するパンデミック特別対策令を公布した290フランスでは、指令を通じて、通常は審議会が委任する権限を地方自治体に付与している。この権限には、公的調達活動に係る決定が含まれる291

パンデミックは、公共団体と様々なレベルの政府の連携を強化する必要性も浮き彫りにした。多くの国と同様にイタリア米国では、国家、地域、地方レベルの政府が、マスクを含め価格が大幅に上昇した個人防護具の調達をめぐり競い合っている292

地方自治体を含む公共団体への供給業者を支援するため、具体的な措置が導入された。これには前払違約金免除、支払期日の前倒しが含まれる。

  • コペンハーゲン(デンマーク)は、流動性を高めるため供給業者に前倒しで請求額を支払い、支払を30日以内から2週間以内に短縮している293

  • ミラノ(イタリア)は、建設業界の企業を対象に公的調達契約の支払を簡素化した。これには、企業への前払及び支払期日の前倒しが含まれる294

  • バルセロナ(スペイン)は、公共調達中断に関する市長令を公布した。これは公共機関が締結する契約の継続性や中小企業を中心とする供給業者の流動性を確保し、雇用維持に努めるものである295

  • パリ(フランス)では、社会的意識の高い企業30社のネットワークを利用して、フランス規格協会(ANFOR)が発表した技術仕様に基づき布マスク200万枚を生産することを決めた296

COVID-19の流行は脆弱なコミュニティに最も深刻な打撃を与える可能性が高いことを踏まえて、各都市は、社会的弱者への影響を軽減するための措置を講じた。都市は市民との距離が近く、現地のニーズを深く理解できるため、この役割を果たす上でとりわけ適した立場にある。社会的弱者には、身体的、経済的にパンデミックにさらされやすい人々が含まれる。高齢者、基礎疾患がある人、自己隔離できる家や避難所を持たない人は、より感染しやすく重症化しやすい。高齢者、基礎疾患がある人、ホームレス、及び移民など他の社会的弱者を支援するため、市当局は標的を絞った社会政策を通じて、最も恵まれない層を守ろうと努力している。

COVID-19危機がホームレスの状況を悪化させ、避難所、サービス、必需品の提供を含む次の具体的な措置が必要とされた。

  • ニューヨーク市(米国)では、市内460人以上のホームレスが検査で陽性と確認され、27人が COVID-19により死亡した。市長は、6,000人をホテルに移動させると発表した297

  • 推定15万人のホームレスが暮らすカリフォルニア(米国)では、5万人以上にホテルを提供する計画である298

  • トロント(カナダ)では、135人以上のホームレスが感染した299。同市は、検査結果を待つホームレスを安全に隔離できるよう「隔離施設」を設置し、14日間の自己隔離が必要な場合に備えて、普段は避難所で暮らす人が滞在できるようホテルも確保した300

  • モントリオール(カナダ)は、避難所サービス、排せつ物を化学処理するトイレ、衛生用品、食料支援、継続的な冬季支援などのホームレス支援措置を発表した。同市は複数のパートナーと協力して、ホームレスの避難所に利用できそうな場所を探している301

  • ビルバオ(スペイン)では、ホームレス、移民、付添のいない未成年を受け入れる場所が整備された302。必要に応じて宿泊場所を提供するため、市のスポーツ施設にベッドを設置した。

  • オークランド(米国)は、宿泊場所のない居住者への衛生サービスを拡充した303

  • パリ(フランス)は、孤立した弱者の居場所を把握するためマップを作成し304、政府やNGOと協力して体育館14施設をホームレスに開放した。Fabrique de la Solidaritéを通じて、ホームレスを支援するボランティアを募集した。1週間足らずの間に1,000人のパリ市民が、巡回活動や食事パックの調理・配布に参加した。www.jemengage.paris.fr プラットフォームを通じて、ロックダウンや推奨される衛生措置に従いつつ、支援が必要な人と、同じ建物内または近隣に住む支援できる人を結びつける地元援助ネットワークが整備された。

  • ブラスチラバ(スロバキア)は、専門家や医療従事者、福祉関係者の支援を得て、COVID-19危機が続く間にホームレス4,000人が利用できる隔離施設の建設を開始した305

  • 英国政府は、ホームレスをホテルに宿泊させるための資金を各都市・地方当局に提供した。路上生活者の90%以上がこの取り組みにより保護された。ブリストル市議会と市内の様々な業界から成るパートナーは、市が復興を進める中でホームレスを見守る新団体と宿泊施設を設置した。COVID-19への対応を通じて、多くのホームレスが安全確保のためホテルに収容された。多くの地方自治体は、こうした対応を進める間に、避難所や収容所の過密、資金不足、スタッフやボランティアの安全確保、物資不足への対応など様々な障害に直面した。ホームレスは総じて感染防止のための追跡・検査が難しい。そのため多くの都市の職員は、現在把握している支援を必要とするホームレスの人数が実体と乖離しているのではと懸念している。他方でパンデミックを通じて、社会政策によってホームレスに持続的に好影響を与える機会も得られる。

パンデミックが、世界の難民と国内避難民の窮状を悪化させる危険性が高い。渡航禁止、国境閉鎖及び収容施設の生活環境いずれもが、移民のリスクを高めている。今回のパンデミックは、世界に2億7,200万人いる海外出稼ぎ労働者の一部をさらなる苦境に置く傾向にある。国内外を問わず家を追われた避難民は特にリスクが大きい。加えて、全世界で2,590万人の難民と4130万人の国内避難民の大多数が途上国に暮らしている306シンガポールでは、人口の20%以上が外国人労働者であり、その大半が就労許可を得て低賃金で働いている。こうした労働者の多くはバングラデシュインド出身で、建設・造船・製造・家事サービス部門で働いている。確定症例の国籍別内訳を見ると、これらの国出身の労働者の罹患率が不釣り合いに高いことが分る307

欧州や米国の国境に位置する収容所に暮らす移民は、流行国への近接性、狭い生活環境に加え、もともと逼迫している医療体制が相まって、COVID-19大規模流行のおそれに直面している。COVID-19は既に、ヨルダン、レバノン、シリア、バングラデシュなど、多くの難民を抱える国々で多数の命を脅かしている。こうした場合、収容所内での隔離は実施できない。さらに言えば、一部の国のロックダウンが国のサービスに影響を及ぼし、亡命希望者の申請処理や支援提供が遅れている。集会の禁止を理由として、いくつかの重要な移民支援サービスは追って通知があるまで中止されている。

特に移民・難民を対象とした都市の措置には、以下が含まれる。

  • 公共サービスへのアクセス確保ラバト(モロッコ)は、移民の未成年者への教育面でフォローアップを目指している308ミラノ(イタリア)の社会政策局はCOVID-19による緊急事態中に非正規移民に関する報告書を作成し309 、市当局が継続的に提供しているサービスを詳しく紹介した。ニューヨーク市(米国)は、各種サービスへのアクセスを確保するため、移民を含む全居住者に身分証明書を発行した(COVID-19危機以前から実施されていた取り組み)。デュッセルドルフ(ドイツ)は一部の難民に住居を用意し、現在は難民センターを隔離施設として活用している310

  • 住宅の提供サンフランシスコ(米国)のCOVID-19データトラッカーは、社会的弱者と最前線で働く人々に一時的な住居を提供するための市の継続的な取り組みについて情報を掲載し、毎日更新している311。民間ホテルや他の施設に合計2,741床のベッドが用意され、その半数以上はホームレスが対象とされた。ロンドン(英国)では、最初の試行措置としてインターコンチネンタルホテル2施設の客室約300室が、ホームレス支援慈善団体が把握している弱者の避難所に転用された312。客室は割引価格で12週間確保された。ホテル利用者による公共交通機関の利用を避けるため、市はボランティアのタクシー運転手の協力を得て、利用者を支援サービスの提供場所まで移動させた。同様にシュトゥットガルト(ドイツ)は、予防措置として宿泊療養場所を300以上用意した。借り上げた建物は、市内いくつかの区に散らばっている。最初の利用者には難民・移民も含まれた313。ポルトガルの都市オデミラには、8,000~10,000人の外国人農業労働者が居住している。市長は、この集団内での感染防止の必要性を考慮して隔離予防計画を作成した。これには、衛生サービスを備えた公共インフラの提供、最大500人の農業労働者への食事提供が含まれる。

  • パンデミックによる経済的影響の軽減: ニューヨーク市(米国)は、移民を含む全居住者を市全体のCOVID-19対策及び救援活動の対象とするため、オープン・ソサエティ財団と提携してニューヨーク市COVID-19移民緊急救済プログラムを設置すると発表した。世界のいくつかの地域で、COVID-19により経済的打撃を受けた低所得世帯の家賃等の支払を支援するための基金が設置されている。米国のオースティン314 及びワシントン315 が設置した基金は、特に不法移民を優先している。

OECD諸国では、平均して移民の約3分の2が主として人口密集地域である大都市圏に居住している。今回の危機を通じて、OECD諸国がどれほど移民に依存しているかも浮き彫りになった316。国や都市がロックダウンを行う間も、移民は欠かせない業務の最前線に立っている。ロンドンでは、移民出身者がNHS(国民保健サービス)の看護師の50%、ソーシャルワーカーの59%を占めている317ニューヨークでは、最前線で働く人々の半分以上が外国生まれであり、建物清掃業ではその比率が70%に達する318。 最近のOECD報告書のエビデンスよると319、現地居住者の失業率が低い地域ほど移民への態度が肯定的になる傾向がある。しかし、コロナ後は、特に都市で失業率の上昇が顕著になると見込まれる。そのため市長はこの機を捉えて移民への従来の肯定的な印象を活用し、長期的な移民支援策を維持できる可能性がある。移民の統合に関するOECDの調査から得られたもうひとつの教訓は、政策立案者によるこの問題に関する市民向けコミュニケーションの重要性とその困難さである。市長は、パンデミックへの対応における移民・難民の役割に関し調査を実施してエビエンスを集め、市民向けコミュニケーション・キャンペーンに投資し、主に移民が担う仕事(医療、在宅介護、レジ係、配送など)の重要性を明らかにできる。移民の仕事が社会全体に与えるメリットの認識を基盤とするこのアプローチを、差別との闘いに役立て、地方レベルで社会の一体性を高められる。

高齢者は、パンデミックに最も脆弱な層のひとつと考えられる。各都市は、高齢者を守り医療支援を提供し、彼らのニーズに応じて商業活動を見直すための措置を実施してきた。

  • サンノゼ(米国)は、保護また隔離を必要とする、慢性疾患を持つ50歳以上の市民をマップ化するとともに、避難所の収容力を拡充し、普段は季節限定のホームレス用避難所も通年で設置を続けた320

  • ウィーン(オーストリア)は、展示会場を大規模な療養施設に転用した。この施設は、入院の必要はないが自宅で自立した生活が難しい軽症患者が利用している。療養施設では食事と基本的な医療を提供している321

  • ビルバオ(スペイン)は、高齢者を中心とする社会的弱者を守るため市民と連携した。市民に対し、近所に孤立した人や基本的な生活ニーズへの対応が困難な人、家族や社会の支援を受けていない人がいれば、市社会福祉サービスに連絡するよう求めた。ホームレス、移民、付添のいない未成年に対応するための施設も新たに設置された322。必要に応じて宿泊できるよう、市のスポーツホールにベッドを設置した。市議会は、心身の健康状態や生活状況(孤立していないか、自立の程度)を確認し、行政サービスが必要かどうか問い合わせるため、65歳以上の高齢者約27,000人に電話をかけた。

  • 横浜市(日本)は、高齢者・児童福祉施設に備蓄サージカルマスク50万枚を配布した323

  • トゥールーズは、フランスの他の地域と同様に介護施設を面会禁止にした。高齢者向けの飲食店やカフェは閉鎖されたが、高齢者の自宅に直接食事を届ける宅配サービスが実施された324。イル・ド・フランス地域圏のアンジェヴィルなど、フランスの多くの(主に小規模な)自治体では、市職員が65歳以上の高齢者に週3回電話し基本的な支援が必要か確認した325

  • ブラスチラバ(スロバキア)は、食料や医薬品を配達し社会との接点を提供するため、高齢者専用の無料電話窓口を設置した。

  • リマ(ペルー)は、高齢者のためのボランティアのオンライン登録制度に加え、感染予防策に関する情報や医療相談・心理カウンセリングを提供する電話窓口を設置した。

  • レイキャビク(アイスランド)では、多くの店舗が開店を1時間早め、その時間は高齢者やハイリスクな人だけが買い物できるようにした。

  • ヴィアナ・ド・カステロ(ポルトガル)は、一人暮らしの高齢者に食料・医薬品・個人防護具を届けるボランティアを集め、精神科医によるサポート窓口を設置した。

  • スペインでは、午前10~12時と午後7~8時に介護者の付添が必要な人や70歳以上の高齢者の外出が認められた。

  • リュブリャナ(スロバキア)の在宅介護協会は、高齢者とその家族を対象に、自宅での高齢者の自立を促す電話での治療支援・相談支援を無料で行った。月曜から金曜の午前8時から午後3時まで、作業療法士が無料で電話カウンセリングを実施した。

  • スルタンベイリ(トルコ)は、1日2回の温かい食事の配達、自宅の消毒、市場や薬局での買い物や掃除などの基本的ニーズへの対応など、65歳以上の高齢者のための活動を実施した326

  • ブエノスアイレス(アルゼンチン)は、i) 毎日の電話による高齢者への支援提供、ii) 買い物(食料や医薬品)やペットの散歩の手伝いを目的として、市民ボランティアによる70歳以上の高齢者支援ネットワークMayores Cuidadosを設立した。

COVID-19パンデミックがもたらした公衆衛生上の危機は、健康と経済双方に影響を及ぼしている。飲食店、ホスピタリティ、小売、他のサービス業など特定の業界で働く人は、特に所得減少のリスクがある。医療従事者、食料品店スタッフ、配送運転手などCOVID-19 流行中も仕事を続ける人は、人と接触する機会が多いため感染リスクが高まる。こうした労働者の多くが低賃金であり、所得が減少したり、医療費を負担する能力が制限され得る327。調査によると、低所得層は糖尿病や心疾患などの基礎疾患を有する割合が高いため、感染しやすい可能性もある328。従って、低所得層はパンデミックにより経済と健康という二重の脅威にさらされる。

家賃猶予などの措置を通じて、都市は一定の救済を行える。こうした取組の例を以下にまとめる。

  • シカゴ(米国)は、雇用主に対し、COVID-19危機中に外出制限令に従った労働者への報復や解雇を禁じる新たな条例を導入した329

  • ニューヨーク市(米国)は、大幅な値上げは違法とすると一時的に宣言した。これにより低所得層も確実に購入できる330

  • ニューオーリンズ(米国)は、パンデミックが原因で資金を調達できないおそれがある9件の低所得者用賃貸住宅事業に充てるため、州から1,040万ドルの補助金を交付された。同市は、影響を受けた低所得世帯に家賃補助・光熱費補助を提供し、各世帯が負担可能な額と標準的な家賃相場の差額を負担する借家人賃貸補助制度を実施した331

  • サンフランシスコ(米国)は、営業停止、労働時間や賃金の減少、レイオフ、COVID-19による医療費自己負担による所得減少を理由として居住者が退去を迫られるのを防ぐため、COVID-19の経済的影響に関連する住居立ち退きへの猶予令を宣言した332

  • シントラ(ポルトガル)市議会は、公営住宅の居住者及び非営利団体(IPSS、スポーツ文化協会)の家賃支払を2020年6月30日まで猶予した。この措置は併せて約1,700世帯、70団体を保護するものである333

  • パリ(フランス)は4月9日、給食費の負担レートが最も低い家庭に対し月50~150ユーロの特別援助を支給した(第2子、第3子は50ユーロ上乗せ)。28,549世帯(児童数52,000人)が支給を受けた334

  • リスボン(ポルトガル)は、全市営住宅の家賃支払を2020年6月30日まで猶予した。計24,000世帯、7万人がこの措置の対象となる。6月30日以降、未請求額は無利子または延滞金なしで18カ月以内に支払うことができる。各世帯はいつでも、世帯所得の減少、失業または収入減少を理由として家賃の見直しを要請できる。また同市は、家庭及び社会福祉機関を対象とした、この緊急時に必要な物品・サービス・備品の購入を目的とする社会緊急基金を2,500万ユーロ積み増した335

  • ポルト(ポルトガル)は、家賃補助額を見直すため柔軟な措置を導入した。解雇、レイオフ、専門職の業務減少、他の所得減少事由による世帯所得の変動に応じて、所得補助金の額を見直すため直通電話窓口を設置した。要請があれば、所得に応じた補助金の調整が行われるまで、家賃支払が即刻猶予される。また毎月の家賃を支払えない全世帯を対象に、2020年12月31日まで公営住宅の家賃の分割支払も認めた336

  • イスタンブール(トルコ)では、水道ガス料金を払えない市内172,000以上の世帯を支援するため、極めて短期間で350万ドルが調達された。市は専用ウェブサイト経由で、料金を支払えない人と、パンデミック時に連帯を示すため代わりに料金を負担したい人をマッチングした337。5,000人に3食を提供するキッチンも開設した338。社会的支援の強化に加えて、最貧困層を対象に2020年6月時点で約 36,000枚の無料買い物カードと560,000の食品セットが配布された339

  • ヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカン(ポルトガル)は、収入を失った世帯の家賃支払を援助し、水道料金を引き下げ、施設の水道光熱費を免除した。困窮学生に対し、テイクアウトで毎日昼食も提供している。

  • コルル(トルコ)は、収入がない世帯に1日2回温かい食事を提供した。食事は無料フードバンクで調理された後、保健衛生基準に従って各家庭に届けられた。340.

  • リュブリャナ(スロベニア)は、リスクのある家庭の子どもや高齢者への(市バス運転手による)食品配達を実施した。リュブリャナ保健所は、現在のCOVID-19流行状況に苦しむ全ての人への電話またはメールでの心理社会的なサポートを確保した。市は、他都市から通勤する大学医療センター職員が毎日自宅に帰らずにすむよう、消毒済のホテルの空室を提供した341

  • リマ(ペルー)は、市民社会団体やボランティアの協力を得て、社会的弱者への食糧・必需品の配達を手配した。

  • ヘント(ベルギー)は、所得水準に関わらず全居住者への経済的支援を5月1日以降も延長した。追加援助金は、社会的、経済的な調査を実施した後に支給される。

多くの都市で、外出制限措置によりドメスティックバイオレンスDVが増加し、地方自治体が対策を講じている。スペインでは4月最初の2週間だけで、DVヘルプラインへの電話件数が前年同期比47%増加した。サポートサービスは、政府から必要不可欠な業務に指定されているが、メールまたはソーシャルメディアでこのサービスに連絡した女性の数は、700%も増加したと言われる。ブラジルでは、ドメスティックバイオレンスの事例が40~50%増加したと推定される。

一部の都市は、こうしたDVに対抗する具体的なキャンペーンを開始している。例えばマドリード(スペイン)は、外出制限期間中に被害者を支援するため「Tú no te quedes en casa」及び「NoEstásSola」と呼ばれるキャンペーンを立ち上げた。パリ(フランス)では、DV被害者を救出するため、政府の協力を得て、女性が外出制限令を破って警察に訴え出ることが認められた。また緊急番号17を使って、24時間体制で虐待を通報できるようになった。フランスは、自宅が安全でない場合に被害者が滞在できるよう、ホテルの部屋も確保した342。スペインの多くの都市では、薬局に行って「マスク19」という合言葉を口にすれば、家庭内での暴力をこっそり通報できる。この言葉を聞くと薬剤師が当局に連絡してくれる。ュッセルドルフ(ドイツ)など数都市では、DV被害者にホテルや他の避難所を提供している。デュッセルドルフは、必要とする女性・子どものために宿泊施設、避難所、保護サービスを拡充した。イスタンブール(トルコ)では、女性用の避難所にするためいくつかの建物が改修され、緊急事態にある女性への対応を優先するため女性NGOと密接な協力関係を確立した343リマ(ペルー)は、特に隔離期間中の女性と子どもの保護を目的として、暴力被害者への法的・心理的カウンセリングを行う電話相談窓口を強化し、その認知度を広げた。

外出制限期間により、他の形でも男女格差が拡大した。女性は、不安定で低賃金なパートタイムのサービス業に占める割合が高いため、格段に経済的影響を受けやすい。OECDのデータによると、2018年にはOECD諸国の女性が就く仕事の84%はサービス部門であり、こうした業界の多くが外出制限措置により営業を停止した344。必要不可欠なサービス業の最前線に立つため、女性はウイルスにも感染しやすい。世界中で、レジ係、薬剤師、ソーシャルワーカー、清掃係、介護士、医療従事者には女性が多い。米国では、女性が就く仕事の3分の1が、COVID-19危機下で必要不可欠とみなされている345。さらに、ステイホームや在宅勤務を続ける女性も、休校の影響や高齢者介護の必要性から、公平とは言えない量の家事労働や育児・介護を無給で担っている。OECD加盟国では、女性は男性と比べ平均2倍の時間を無給労働に費やしている346。多くの都市が、パンデミックが女性・女児に与える不当に大きな影響を認識し、これを軽減するための措置を実施している。例えばベシクタシュ(トルコ)は、「平等は家庭から始まる」と銘打ったソーシャルメディア・キャンペーンを開始し、夫婦間で家事・育児の平等な分担を促している347パリ(フランス)は、医療従事者や救急救命士が社会から最も必要とされている時期に、育児負担を軽減するため彼らの子どもが学校に通い続けることを認めた。制限緩和を進めるフランスでは、交通機関職員の子どもや年齢が低い子どもから順に登校が再開される予定である348

危機のさなかには、公共機関への信頼や透明性ある市民向けコミュニケーションが、平時以上に重要になる。特に、保健緊急事態は地域社会に不安と疑念を引き起こし、精神衛生上の問題を生んだりこれを悪化させる可能性がある。外出制限・自己隔離の期間も、孤独と抑うつの感情を引き起こすリスクがある。

COVID-19に直面して、数人の市長及び市当局は、市民に情報を提供して安心させ、コミュニケーションを図る画期的な方法を考案した。日々のニーズや衛生課題に対処するため、幅広いデジタルツールも開発した。市民向けの情報提供プログラム、ウェブサイト、ポスター、宣伝、ソーシャルメディアを通じて、都市は様々なアウトリーチの可能性を活用している。自治体リーダーは、流行抑制のため全居住者に各自の役割を果たすよう要請し、20秒手を洗う、咳をする時はひじで口を覆うといった、感染率を大幅に下げる可能性がある基本的な対策を辛抱強く伝え続けている。またオンラインポータル、デジタルプラットフォーム、オープンデータを使って、各都市がパンデミックのどの段階にあるかリアルタイムの情報共有も行っている。多くの場合、有名人や漫画家に働きかける、ソーシャルメディアを使ってライブで質問に答えるなど、様々な創造的な手法を使って、市民に安心を与えるため市長自らが先頭に立っている。

  • ワンストップ・データベース東京都(日本)は、 感染者数、感染状況、感染者の特徴(年齢、性別)、コールセンターへの相談件数、地下鉄利用者数などのCOVID-19のリアルタイムな発生状況を集約したワンストップ・データベースを作成した。さらにサイトのソースコードをオープンデータとして提供し、他の自治体や機関がデータを活用して同様のウェブページを作成できるようにしている349トレント自治県(イタリア)は、信頼できる保証済の情報源のみから集めた指針、知見、参照サイト、最新情報、法令・条例をまとめた公共アプリを開発した350バンクーバー(カナダ)は、COVID-19流行への市の緊急対応を市民に知らせるためオンラインダッシュボードを立ち上げた。市の全てのサービスの概要を紹介し、コンプライアンス教育(市民による規則・指針の遵守を確保する方法)、移動(自動車、自転車、歩行者による移動の推移)、エッセンシャルワーカー向け保育サービス、ホームレス支援、食料確保事業、地域社会への貢献など、幅広いトピックに関する情報を提供している351

  • コールセンター東京都(日本)は4月17日に、外国人からの幅広い問い合わせに対応する電話相談センターも新たに設置した。英語、中国語など14カ国語で対応している。ピエモンテ州(イタリア)は、風邪症状や呼吸器症状がある市民からの報告を受ける無料電話窓口を設置した。デュッセルドルフ(ドイツ)は、COVID-19に関する24時間電話相談窓口を開設し、ホームページ上に感染者数をリアルタイムで表示するテロップを掲載している。ディジョン(フランス)は、OnDijonに、健康に関わるもの以外のあらゆる質問を受け付ける電話番号を掲載している352

  • 情報提供・ボランティア募集活動サンフランシスコ(米国)は、公衆衛生担当者が作成したCOVID-19予防のヒントを紹介した多言語併記のポスターを公共空間に掲示し、できる限り広く地域社会全体へのアウトリーチを確保した353シドニー(オーストラリア)では、市のコミュニティセンター、図書館、保育所で公衆衛生に関する情報を提供した354ブリストル(英国) は、2019年のキャンペーン#WeAreBristolを再活用して、市民に対し互いの違いを乗り越え共通点に目を向けるよう呼びかけた。市議会と地域財団が参加する新たなパートナーシップ、Can Do Bristol は、時間やお金を提供できる人が登録し、支援が必要な人が地元で助けてくれる人を見つける場を提供している。ブリストルで可能な全てのボランティア活動が掲載されたこのウェブサイトは、最も支援が必要な場での活動を推進するため地域団体に活用されている。アテネ(ギリシャ)は、ギリシャ語に加え8カ国語で、情報や予防に役立つメッセージを繰り返し放送する市営ラジオ局を開設した。

  • アウトリーチ活動ラベンナ(イタリア)は、各種協会や翻訳者の協力を得てCOVID-19に関する情報を伝える動画をアラビア語、ウォロフ語、バンバラ語、パシュトー語、フランス語、英語で作成した355。感染予防の指針も14カ国語に翻訳した。モントリオール(カナダ)は、住宅、食料支援、様々な権利及び政府による支援、公衆衛生上の指示に関する重要情報を移民やマイノリティコミュニティに伝えるためのアウトリーチ活動を展開した。公衆衛生上の指示を説明する録音メッセージを、マイノリティコミュニティ向けのラジオ局が数カ国語で放送した。パリ(フランス)セーヌ=サン=ドニ県(パリ首都圏に位置する)は、地元団体と協力して、低所得世帯、ホームレス、亡命希望者、移民コミュニティなど公式な情報源に容易にアクセスできない層を対象とする包摂的な多言語コミュニケーション活動を開始した。この活動の目的は、パンデミックの広がりを抑制する基本的な対策を25カ国語で伝えることである356

  • 市長からのメッセージ: デュッセルドルフ(ドイツ)では、市長が市民宛ての動画メッセージを公開し、基礎疾患がある人や高齢者などリスクがある人を守るよう要請した357ブラスチラバ(スロバキア)では、市長が地元の有名漫画家に感染防止策をイラストにするよう依頼した。市長はFacebookで定期的に動画セッションも開催し、市民からの質問に答えている。さらに俳優や有名人を起用した動画も制作し、市民に責任ある行動を求めた358パリ(フランス)市長は、Instagramへの投稿やライブ動画を通じて、自転車専用レーンの拡大、ロックダウン緩和に合わせた段階的なマスク配布などの新たな対策をめぐる最新情報を市民に届けるメッセージを定期的に発信した。ブリストル(英国)市長は、動画で市民に呼びかけて冷静な態度を見せ、最新の情報を伝えて居住者を安心させた359リマ(ペルー)では、初のオンライン市議会が開催されリアルタイムで採決が実施された360

  • ウェブサイト:エジンバラ(英国)市のウェブサイトは、利用方法に関する市民の疑問に答えるため検査手順を掲載している361ケープタウン(南アフリカ)市のウェブサイトは、ウイルスに関する詳細なファクトシートを掲載している362横浜市(日本)は、関連団体である横浜市国際交流協会(YOKE)を通じて市内在住の外国人へのCOVID-19関連の情報提供を強化した。YOKEはウェブサイトを開設し363、特に英語と中国語で関連情報を収集している(横浜には大きな中華街があるため)。メキシコシティ(メキシコ)は、区別の感染者数と死亡者数を毎日リアルタイムで公表している。このサイトは、多くの「フェイクニュース」に対抗して信頼できる情報を提供する一方、どんな公共サービスを利用できるか、必要な場合どこに支援を求めればよいかも紹介している364

  • デジタルアプリとプラットフォーム:

    • 健康確認アプリ: ブエノスアイレス(アルゼンチン)は、最善の感染防止法をアドバイスするデジタルプラットフォームを開発した365サンパウロ(ブラジル)は、遠隔医療を活用して確定例と疑い例をデジタルで監視しており、自己隔離中の患者用のアプリケーションを立ち上げた366リ(フランス)の l’APHP(パリ公立病院連合)は、自己隔離中の患者を見守るためのデジタルアプリCovidomを使用している367アムステルダム(オランダ)の総合病院OLVGは、「コロナチェック」というモバイルアプリを開発した。ユーザーがこのアプリを使って携帯やタブレットから症状を申告すると、医療関係者が内容を確認し必要に応じて連絡をとる。当初はアムステルダムでのみ利用可能だったが、他の病院や既存の健康確認アプリと連動したため現在は全国で利用されている368ウィーン(オーストリア)は、感染症の流行抑制を支援する感染症管理システム(EMS)の開発と実装をアトス社に依頼した。COVID-19危機に伴い、オーストリア国内の他の都市や州に、患者発生報告の把握・追跡を含め全ての患者データとウイルス関連データをリアルタイムで保管し管理するデジタルプラットフォーム、EpiSYSも提供された369

    • 事業支援アプリ: テルアビブ・ヤフォ(イスラエル)は、居住者に最新の関連情報を適時提供する一方、市も市内の居住者や企業の最新の状況を確実に把握できるよう、プラットフォームを更新した。バルパライソ(チリ)は、居住者が近隣の営業中の店や宅配サービスを行っている店を探しやすいよう、全ての地元店舗、サービス業者、必需品販売店の地理情報を追跡するプラットフォームを開発した。このプラットフォームのもうひとつの目的は、市内の人の移動を制限することにある370ント(ベルギー)は2020年3月に、オンラインショップをひとつのウェブサイトにまとめたプラットフォームを作成した。レーゲンスブルク(ドイツ)は、COVID-19危機のさなかに支援を行うため、贈り物を探している人や地元店舗を応援する人向けの既存の地域ポータルの活用を強化している371。ユーザーはこのプラットフォームを通じて、各種店舗の配達・テイクアウトサービスやオンライン割引クーポンを入手できる。

    • ソーシャルアプリ: オスロ(ノルウェー)は、感染防止対策とソーシャルディスタンシングのルールを実行するためのニーズや対応を理解するため、マイノリティを中心とするNGOと週1回オンライン会議を開催している372トゥールーズ(フランス)は、ボランティアと支援が必要な人を結びつける仕組みを通じてロックダウン中に社会的弱者への支援を実現するオンラインプラットフォームを立ち上げた373アムステルダム(オランダ)では、COVID-19危機においてを通じて市民を支援する目的で、市の取り組みを可視化してオンラインにつなぎ、市内地図に掲載するため、オープンソースソフトウェアを使うプラットフォームWij Amsterdamが開発され、2020年3月に始動した374

  • アラートフィラデルフィアニューヨーク市(米国)は、特別な電話番号からサービスに登録した居住者を対象にCOVID-19アラートメッセージを発信した375ニース(フランス)は、カメラとラウドスピーカーを搭載したドローンを使って、市民に外出制限のルールを知らせている376

  • オンライン教育活動バンベルク(ドイツ)とその周辺地区は、教育機会に関する情報を集めたオンラインプラットフォームを構築した377ウィーン(オーストリア)は現在、ドイツ語、数学、英語の補習が必要な10~14歳の生徒(高等学校低学年に相当)を対象に無料個人指導プロジェクト、Förderung 2.0(サポート2.0)を提供している378ニューヨーク市(米国)では、遠隔学習を支援するため、必要とする生徒に教育局がネット接続可能なタブレット30万台を貸与した。このデバイスを最初に受け取ったのは、ホームレス避難所に暮らす公立校の生徒13,000人だった。タブレットは、ネットやコンピュータを利用できない生徒から順に優先基準に従って支給された379

  • オンライン文化活動ベルガモ(イタリア)は2020年3月以降、10の美術館・博物館を自宅からオンラインで見学するよう促している。バーチャルツアーやオンライン展覧会も用意されている。パリ(フランス)は4月にQue faire à la Maison(自宅で何をするか)という取り組みを開始し、スポーツ、展覧会、コンサート、子ども向けなどバーチャル体験の選択肢を紹介している。ニューオーリンズ(米国)では、文化経済局がオンラインシリーズ「文化を楽しもう(Embrace the Cultuer)」を開始し、料理実演から子どものための朗読まで幅広いトピックを扱っている380

多くの都市は、制限の段階的な緩和を進めながら市民にリアルタイムで確実に情報を提供するようにしている。例えば商業活動に関する情報を市民に公開したり、保健・交通サービスに関する最新情報を提供している。一部の例を以下に紹介する。

  • ヴァーサ(フィンランド)のヴァーサ中央病院は、ウイルスに曝露した人を医療従事者が見つけ出すため開発されたアプリ、Ketjuの試験利用を開始している。このアプリは、アプリを自発的に利用するユーザー間の接触をブルートゥース技術を使って匿名で記録し、感染の連鎖を素早く正確に発見することで、医療関係者の負担を軽減するとともに、COVID-19との闘いに貢献する具体的な手段を市民に提供する。このアプリは、全国的なロックダウンによる制限が4月15日から段階的に緩和され始めた後、COVID-19流行の今後のステージに備える上で重要なツールである381

  • ビルバオ(スペイン)市議会は、ビルバオの商業観光業振興のための官民団体BILBAO DENDAKのメンバーである。Bilbao Dendakは、営業中の店舗や自宅配送サービスを行っている店舗を掲載したインタラクティブな地図を作成した382。この地図は、5月4日以降のスペイン国内でのロックダウン措置の段階的な緩和に応じて更新されている。

  • マドリード(スペイン)の公営バス事業者EMTは、その放送チャネルを積極的に活用して、バスの混雑状況や移動を減らす義務を全利用者に発信している。さらにEMTは、自身が有する全てのデジタルチャネル(ウェブ、アプリ、ソーシャルネットワーク)を利用して、ロックダウン制限緩和中の最新の運行情報をリアルタイムで利用者と市民に通知している383

  • ニューヨーク市(米国)交通局(DOT)は、市民と職員の接触・曝露リスクを減らすためスマートフォンを使った非接触型決済の利用を推奨した。居住者は、ParkNYC (2016年開始、2019年に2200万件以上の取引に使用された)、全国アプリParkMobileという2種類のアプリを利用できる384

都市間でベストプラクティスを容易に共有できるよう、様々な国際機関がイニシアチブを立ち上げた。OECDのイニシアチブと同様、これらのアクションは直接的な体験を収集し世界中で共同の対応を奨励している。

ブルーグバーグ・フィランソロピーズは公衆衛生と都市行政リーダーシップの仮想専門家会議を行っている。ブルームバーグ・フィランソロピーズはジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院(John Hopkins Bloomberg School of Public Health)及びブルームバーグ・ハーバード都市行政リーダーシップ・イニシアチブ(Bloomberg Harvard City Leadership Initiative)と共同で、米国の市長らが刻々と変化するコロナウィルス危機に速やかに対応できるよう、新たなサポートプログラムを立ち上げた。また、ブルームバーグ・フィランソロピーズは全米都市連盟と提携し、COVID-19: Local Action Tracker385を立ち上げた。このトラッカーには、全米の自治体トップがコロナウィルスの感染拡大を抑え、コミュニティへの影響に対処するために行っている政策決定とアクションを詳しく説明した、分類可能な項目リストが用意されている。自治体トップは自身のアクションを提出してトラッカーに掲載し、トラッカーはコロナ危機の刻々と変化する動向を反映して日々アップデートされる。自治体トップが新たな慣行や各都市で何が奏功しているか把握できるよう、検査手順、外出禁止令、募金活動、食糧プログラムといったアクションにスポットを当てる386。ブルームバーグ・フィランソロピーズは全米都市交通局協会と提携し、公共輸送が直面しているCOVID-19に関係した多数の短期的、長期的問題を軽減するため、市長や市の交通局にバーチャルガイダンスと技術支援を提供すべく、公共交通対応センターを創設した387。さらに、ブルームバーグ・フィランソロピーズは米国市長会議と共同で都市財政追跡・連邦償還イニシアチブ(City Fiscal Tracking and Federal Reimbursement Initiative)を立ち上げた。このイニシアチブはベストプラクティスの柱の役割を果たし、米国の各都市がCOVID-19からの回復をサポートするため連邦政府のプログラムと資金調達メカニズムを利用・追跡する方法を案内する予定である388

世界大都市気候先導グループC40は経済回復を進めるため、公衆衛生を改善し格差を緩和し気候変動危機に対処するグローバル・メイヤーズCOVID-19リカバリー・タスク・フォース(Global Mayors COVID-19 Recovery Task Force)を設立した。 同タスクフォースは、気候崩壊が世界経済と世界中の共同体の命と暮らしにとって一層大きな危機にならないように努め、人々が仕事に戻れるよう、COVID-19からの経済回復を図る方法を模索していく。タスクフォースのメンバーは次のとおり。タスクフォース会長:ミラノ(イタリア)市長Giuseppe Sala、フリータウン(シエラレオネ)市長Yvonne Aki Sawyerr、香港特別行政区(中国)環境局長KS Wong、リスボン(ポルトガル)市長Fernando Medina、ロッテルダム(オランダ)市長Ahmed Aboutaleb、メデジン(コロンビア)市長Daniel Quintero Calle、メルボルン(オーストラリア)市長Sally Capp、モントリオール(カナダ)市長Valérie Plante、ニューオーリンズ(米国)市長LaToya Cantrell、シアトル(米国)市長Jenny Durkan、ソウル(韓国)市長Won-soon Park389。5月7日に、タスクフォースはCOVID-19からの健全かつ持続可能で、公平な経済回復を目指す諸原則に関する声明を発表した。この声明は、回復は摂氏3度の温度上昇に向かっていた従来通りの事業活動に戻るものであってはならないと強く求め、公衆衛生と科学的専門知識に従うこと、公共サービスを保証すること、格差解消に取り組むこと、気候変動危機の緩和と適応のための取り組みを推進することの重要性を強調している390。7月には、これらの原則をさらに具体化した「C40 Mayors Agenda for a Green and Just Recovery,(C40市長連合のグリーンで公平な回復のためのアジェンダ)」で、グリーン雇用の創出、重要性の高い公共サービスへの投資、公共交通機関の保護、エッセンシャルワーカー(社会機能を維持するために必要不可欠な労働者)の支援、及び公共空間の人々と自然への回帰に重点を置いた対策を提示した391。さらに、C40はロックダウンが社会経済に及ぼす影響の緩和や対処型の長期政策対応の優先化といった、COVID-19に関係するトピックについて加盟都市からベストプラクティスを共有し合っている392.。

MetropolisCities for Global Healthは、都市・自治体連合が開発しUN-Habitat が支援しているLive Learning Experience: beyond the immediate response to the outbreakの一部である。彼らは知見や戦略、及び世界中の自治体が採用した行動計画へのアクセスを提供する共同のオンラインプラットフォームを開発した。この仮想空間はCOVID-19の大流行と闘うため各都市がそれぞれのイニシアチブやプランで何を行っているかに焦点を当てている393。このプラットフォームには32か国、97都市から600以上のイニシアチブがアップロードされた。同連合は都市とパートナー間の公共サービス提供の役割に関連したトピックについてオンライン上での情報交換も行っている394

Core Cities UK の「コアの強化」(Strengthening the Core)プログラムは、すでに都市部がもたらしている英国経済の26%を保護し、周辺の町や市の経済を守り、できるだけ最強の経済回復を成し遂げようというもの。イングランド内の都市と地方分権政府からなるグループとして、Core Cities UKはただちに責任あるインパクトを与えられる英国全域のネットワークを提供する。短期から中期では、組織は都市及び各都市のエコシステム内で部門ごとにどのように回復が達成されるか、ある程度詳しい提案を描ける。これは地方政府の金融レジリエンスに取り組み、各市において国と地域の経済刺激となりうる大きな触媒的プロジェクトを集め、都市の未来について再考することで達成される。加えて、Core Cities UKは5つの主要政策分野である1)文化とコミュニティ、2)輸送とインフラ、3)雇用、企業、金融支援、4)住宅とホームレス、5)公衆衛生に従って、グループ分けされたネットワークからベストプラクティスを収集した395

Council of Europe Bank CEBは、社会の団結を促し活気に満ち、レジリエントなコミュニティを構築するという使命に即して、加盟国の都市がCOVID-19回復戦略を採用し総合的なレジリエンスを強化するのを手助けするため、柔軟かつ時宜にかなった融資を行う396。CEBは迅速に支援を展開できることで、都市と自治体の企業はCOVID-19パンデミックの経済的影響に対応し、予定していたインフラ投資計画を続行することが可能になる397。CEBは環境の持続可能性を促進し地球温暖化ガスの排出量を減らし、都市の気候変動への適応を手助けする投資に共同投資することで、持続可能でレジリエントな回復を達成しようという都市の努力を支援している。2020年3月にGreen Social Investment Fund (GSIF)を創設し、CEBは出資先の投資プロジェクトにおける気候行動及び環境持続可能性を一層強力に支援できるようになっている。GSIFにより、都市はCOVID-19から回復する際、より持続可能で気候変動に対応しうる地域経済を構築することができる。GSIFは、社会的弱者でも比較的低コストで簡単に気候行動やその他の環境持続可能性対策を講じられるようにしながら、環境の持続可能性を促進し、脱炭素化を拡大し、CEB出資の社会インフラを気候変動に対してよりレジリエントにすることを目的に、各種助成金を提供している。同基金の助成金を取得するプロジェクトが気候関連の社会、環境にプラスの影響を与えることを証明する必要がある398。さらに、CEBの資金供給は高齢者や移民、難民といった低所得、社会から取り残された社会的弱者に対し、COVID-19パンデミックが与える社会的・経済的影響を緩和することを目的としている。CEBはヘルシンキやトゥルク、ティラナ、ジェノアといったヨーロッパの数都市が将来のショックに備えてレジリエンスを高めるために講じている対策を明らかにするとともに、COVID-19からの回復が社会的に包摂的でグリーンなものになるよう、それら都市の市長と一連の対話を開始した399

ユーロシティーズはCOVID-19危機の専用ウェブページに都市の活動例をまとめている400。各項目はいくつかの主要カテゴリー(例: 文化、経済)の1つにグループ分けされ、都市の活動を簡単に要約したのち、その都市(あるいは他の専用)ウェブサイト内の詳細情報へのリンクが貼られている401。2020年6月に、都市ネットワークは「都市が推進するEUの回復」(EU recovery powered by cities)と題した共同宣言を出し、欧州委員会に対しEUの回復プログラムに都市を一層関与させること、都市が欧州の資金援助を直接利用できるようにすることを求めた402

欧州委員会のIntelligent Cities Challengeは、欧州と世界の都市から都市主導の効果的な介入についてベストプラクティスを学び共有できるよう、COVID-19に対する幅広い支援パッケージを立ち上げた403。このイニシアチブの目的は都市が現在の危機を乗り越え適切な対応を実施できるようにすることである。

European Territorial Cooperation Program (URBACT)は現在、欧州の都市におけるパンデミックへの全ての対応を収集・マップ化している404。いくつかのNational URBACT Pointはこのトピックについてより多くの情報を収集し、このページに掲載するためそれらの都市を積極的に関与させている。ほとんどのOECD加盟国の都市は地元企業の支援策に特に大きな関心を持っている。

Global Parliament of Mayors GPMはウェブサイトにMayors Act Now Campaign(ただちに行動する市長のキャンペーン)を立ち上げるとともに、パンデミック中に各市長をオンラインでつなぎ世界中で地域ごとのイニシアチブを共有できるよう仮想議会を創設した405

グローバル・レジリエント・シティーズ・ネットワーク (GRCN)406世界銀行は、各都市がCOVID-19にどう対応しているかについて毎週オンラインでSpeakers Seriesを開催している。このシリーズには危機対応の知識と経験を共有すべく、最高レジリエンス責任者とその他の主要な都市政策決定者が定期的に参加している。GRCNは各都市が知識や教訓を共有し、危機の影響に対処するとともに将来の世界規模の課題に備えて体制をさらに強化するための重要な措置や取り組みを特定するための、参加型、協調型のオープンなプラットフォームを創設した407。Making Cities Resilient Campaign(災害に強い都市の構築キャンペーン)のパートナーとして、特定のセッションを先着順に開講している。

Local 2030はメッセージを作成するためLocal COVID-19 Response and Recoveryを開催。また、地方レベルの能力構築、資金供給、及びSDGの理念(包摂性、持続可能性、誰一人取り残さないという原則)を準備、対応、回復の各段階に継続的に取り込むためのCall for Actionを開催した。当イニシアチブはパートナーがもっと定期的に連絡を取り合い、COVID-19への対応について様々な解決策を意見交換するメカニズムを突き止めることである。Local 2030はショートビデオを通してCOVID-19危機への現地対応に関わるステークホルダー間で知識と経験を容易に共有できるよう、Local 2030 Spotlight Seriesも立ち上げた。コロナウィルス流行と闘うため、世界中のパートナーとステークホルダーが主な問題点に対する見方と地方レベルで開発された革新的ソリューションを紹介する2分間の動画を作成・共有できる408

MetropolisはEuro-Latin-American Alliance of Cooperation among Cities, AL-LAsとの共同イニシアチブCities for Global Health409 を立ち上げ、都市・自治体連合が開発し(上述の)UN-HabitatとMetropolisが支援するLive Learning Experience: beyond the immediate response to the outbreakの一部である410

OPEN IDEO (世界中の人々が協力して今の困難な社会問題に対する解決策を構築できるIDEOのオープンイノベーションプラクティス)は現在、人々がCOVID-19に関する実用的で有益な情報を得られるよう世界の担当当局と調整を図っている。彼らは世界中から多様な経験を共有することを目指している411

国際連合教育科学文化機関UNESCOは、パンデミックへの対応として提供されているサービスに十分アクセスできない社会的弱者の一部に対応するための地域介入と、あらゆる形の差別や汚名と闘うために行われている都市レベルのイニシアチブについて情報を収集するため体験談(call for stories)を呼びかけた。UNESCOは一連のウェビナーを開催するとともに、在宅学習、遠隔学習や文化といったトピックについて、学習者、教師、親、政策立案者向けのベストプラクティスと提言も公開した412

都市・自治体連合(UCLG)はGlobal Network of Local Authorities(地方自治体の世界的ネットワーク)と共同で情報共有に取り組んでいる。Global City Platformはすでに世界中の都市の295以上の経験を収集している。市長がホームレスに対する解決策、病院その他の重要施設を利用できるような交通機関の継続、そして子どもと高齢者に影響するデジタル格差など、主要な問題について意見交換するため、ライブ形式の学習体験というフォーラムが開催された413。また、文化・市民サービス分野の労働者の生活手段に対する解決策として、移民と移住者の権利、食料の安全性、及び文化へのアクセスについても議論されている。このフォーラムでは様々な点について議論するため毎週ディベートが行われ、現在、議論は各都市が回復のプロセスをどのようにこなしていくかに移りつつある。

国連資本開発基金(UNCDF)はCOVID-19対策としての地方自治体の資金調達に関するイニシアチブを立ち上げた。全ての予防・封じ込め策はリソースを必要とし、リソースには金銭的な面もある。地方自治体は感染症対策の資金源としてその自治体の収入、自治体同士での資金のやり取り、及び地方の借入という主として3つの財源に頼っている。UNCDFは即時対応について地方自治体にアドバイスを与え、成功する対応の主な条件を伝授することを目的としている。

国連環境計画 UNEP は、Sustainable Infrastructure Partnership SIPの複数のパートナーと共同で持続可能かつレジリエントなインフラに投資することを主眼に置き、コロナ後の回復に向けて10の原則を策定した。Principles for Recovery(回復の原則)はコロナ後の回復と刺激策のためのインフラ支出に関する意思決定の枠組みとなる。同原則は、コロナ後の回復に向けたインフラ支出について、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030 Agenda for Sustainable Developmen)と気候変動に関するパリ協定に沿う形で戦略立案することを求めている。また、立案に際しては部門間及び時空を超えた体系的なつながりを考慮すべきとしている。将来の危機を避けるため、同原則は計画をシステムレベルで一体化し、柔軟性と余裕を組み入れてレジリエンスを確保するようなインフラを奨励している414

What Works Citiesは地方自治体の長に向け、COVID-19: Local Government Response and Resource Bankをまとめた415。都市の例、リソース、コメントを収集し、整理したこのリストは、地方自治体について有益な知見を提供することを目的としており、1)データツールとリソース、2)地方自治体用のリソース、3)自治体の行動、4)地方自治体を対象とした論説とコメント、及び5)COVID-19のガイドラインとアップデートの5つのセクションに分かれている。

世界経済フォーラム WEFは世界保健機構(WHO)のパートナーとして、COVID-19との闘いにおいて命と暮らしを守るためステークホルダーを動員している。WEFの戦略的インテリジェンスツールでは、プラットフォームに登録されてない人でもCOVID-19の概要にアクセスできる416。WEFが最近立ち上げたCOVID Action Platformは、1)世界のビジネス界が団結して行動するよう促し、2)人々の暮らしを守り事業を継続しやすくし、3)COVID-19への対応として協力と事業サポートを動員するという、3つの優先分野に注力する予定である417

本政策ノートは、OECD起業・中小企業・地域・都市局(Centre for Entrepreneurship, SMEs, Regions and Cities)都市・都市政策・持続可能開発課(Cities, Urban Policies and Sustainable Development Division)の課長であるAziza Akhmouchの監督の下、Aline Matta、Kenza Khachani、Camille Viros、Klara Fritz、Oscar Huerta Melchor、大島敦仁、Jonathan Crook、Elvira Shafikova、菅昌徹治及びClaire Charbitの協力を得て、Soo-Jin Kim、松本忠、Kate Brooks、Oriana Romano、Elisa Elliott Alonso及びLucie CharlesからなるOECD中核チームにより作成された。

連絡先

Aziza AKHMOUCH (✉ Aziza.Akhmouch@oecd.org)

Alexandra TAYLOR (✉ Alexandra.Taylor@oecd.org)

← 1. OECD (2020), OECD Economic Outlook, Volume 2020 Issue 1, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/0d1d1e2e-en.

← 2. OECD/European Commission (2020), Cities in the World: A New Perspective on Urbanisation, OECD Urban Studies, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/d0efcbda-en

← 10. 「長期的な変化を促進するための低コストで拡張可能な短期的介入を用いた地域構築への組織的または市民主導のアプローチ」をいう。詳しくは次を参照。http://tacticalurbanismguide.com/about/

← 11. 「市民が仕事、買い物、医療、文化などのあらゆるニーズを自宅を出てから15分以内に満たすことができる」。

← 12. OECD (2020), OECD Economic Outlook, Volume 2020 Issue 1, No. 107, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/0d1d1e2e-en.

← 17. World Economic Forum, Global Future Council on Cities and Urbanisation 2019-2020 Term: April 2020 Calls, city contributions.

← 36. 注釈36と同上。

← 63. News Tank Cities (2020), "Ile de France: 31% utilisent moins où évitent les transports en commun depuis le 11 mai", News Tank Cities (09.07.2020)

← 74. 同上。

← 82. https://furmancenter.org/thestoop/entry/covid-19-cases-in-new-york-city-a-neighborhood-level-analysis

← 85. https://www.elcomercio.com/actualidad/nigeria-isla-trinitaria-guayaquil-pobreza.html

← 96. http://www.femp.es/

← 101. Global Resilient Cities Network, “Cities for a Resilient Recovery, Emerging Data, Part 1 of 3. https://drive.google.com/file/d/1vRF9KhvyfuNuftZ-LQCmKazg5BVT_am5/viewで閲覧可能。

← 102. https://www.c40.org/press_releases/taskforce-principles

← 182. Ibid.

← 185. ユーロシティーズ(2020)「政策メモ――新型コロナウイルスの社会経済的影響の軽減に向けた都市対策の概要」 、2020年7月1日改訂。

← 186. ユーロシティーズ(2020)「政策メモ――新型コロナウイルスの社会経済的影響の軽減に向けた都市対策の概要」 、2020年7月1日改訂。

← 193. Ibid.

← 194. オックスフォード・エコノミクス、4月1日。 https://resources.oxfordeconomics.com/hubfs/City-Tourism-Outlook-and-Ranking.pdf

← 199. OECD (2020)「COVID-1――文化・創造産業への影響、政策対応、機会(近日刊行)」

← 222. https://www.nytimes.com/2020/05/05/health/coronavirus-children-transmission-school.html

← 225. http://www.leparisien.fr/politique/plan-de-deconfinement-d-anne-hidalgo-seuls-15-des-ecoliers-parisiens-feront-leur-rentree-le-14-mai-04-05-2020-8310747.php

← 242. https://www.theguardian.com/environment/2020/may/01/city-leaders-aim-to-shape-green-recovery-from-coronavirus-crisis

← 243. https://www.paris.fr/pages/deplacements-les-mesures-de-la-ville-pour-le-deconfinement-7788

← 244. https://www.theglobeandmail.com/canada/toronto/article-toronto-introduces-bigger-sidewalks-to-make-room-for-pedestrians-on/

← 247. https://www.oecd-ilibrary.org/sites/reg_cit_glance-2018-35-en/index.html?itemId=/content/component/reg_cit_glance-2018-35-en

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