COVID-19ワクチンの開発は、新たなウイルスゲノム配列の決定から世界中の様々な地域で大規模なワクチン接種が始まるまで1年未満しかかからないという、異例の速さで成し遂げられた。それでも、有効なCOVID-19ワクチンの出現は、この世界的危機の次の章の始まりに過ぎない。ワクチンの製造、供給、普及だけでなく、インフラ構築、ワクチンの普及に必要なロジスティクスの管理などにも大きな課題が残されている。本稿では、これまでの動向を振り返り、集団免疫への進展のペースと健康の回復と経済復興という世界的な目標を決定づける様々な問題に対する政策的アプローチを論じている。

COVID-19ワクチンの開発が迅速に進んだのは、研究開発における空前の国際協力だけでなく、研究開発と製造力強化に対して大規模な公的投資が行われた賜物である(コラム 1参照)。特に、臨床試験が行われたワクチンが承認される可能性は12〜33%程度で、それも開発から約7〜9年かかると事前に予測されていたことを考えると意義深い (OECD, 2020[1])

2021年3月始めの時点で、世界中の厳格な規制当局1 が、いくつかの非常に有効なワクチンを一つ以上承認した2 が、様々な緊急時や条件付きの手続きではあった。3 今後短期間に他のCOVID-19ワクチンも承認される見込みである。少なくとも3つの製品4 が、現在欧州医薬品庁 (European Medicines Agency, EMA)による承認審査または逐次審査の段階にあり、さらに相当数のワクチン候補が開発の終盤にある。さらに、中国とロシアで開発された4つのワクチンは、複数の国々で承認、使用されている(2021年3月初頭に承認されていた、または開発の終盤にある製品の詳細についてはAnnex 1.A 参照。様々なワクチンプラットフォームの詳細については Annex 1.B 参照)。

英国、米国、EUでは、最初のワクチン接種が、承認直後に始まり、介護施設の入所者などリスクが高い高齢者と前線で働く医療関係者が優先された。

2021年3月半ば時点で、世界全体でCOVID-19ワクチン3億8000万回分の接種が行われた。そのうちの29%が米国、13%がEU、7%が英国である。それに対して南米で接種されたワクチンは全体の6%足らずである。少なくとも1回接種を受けた人が各国の人口に占める割合は、イスラエルが60%で( 図 1参照)、英国(36%)、アラブ首長国連邦(35%)、チリ(26%)がそれに続いている。5 イスラエルと英国における最初期のワクチンの有効性についての実証−重症化の予防、入院、死亡についてだけでなく感染の抑制についても−は、有望である( コラム 2参照)。

EUは、2021年8月末までに成人人口の70%にワクチンを接種させるという計画を立てている。2021年3月15日時点で、EUでは5100万回分のワクチンが投与されており、デンマークとスペインが一人当たりのワクチン投与数が最も多いと報告されている(それぞれの人口の10.1%、8.4%が少なくとも1回接種を受けた)。6

2021年3月15日時点で、米国では7100万人(人口の22%)が少なくとも1回、またほぼ4000万人が必要な回数のワクチンを接種していた。合計1億1000万回分のワクチンが投与されたが、Pfizer/BioNTechのものとModernaのものがほぼ半々である。7

ロシアでは、2020年12月5日からモスクワで公的なワクチン接種が始まり、ガマレヤ研究センター(Gameleya Institute)が開発した複製不可能なウイルスベクターワクチンを用いている。2021年2月10日までに、220万人のロシア人(人口のほぼ2%)が2回の接種のうちの1回目を受けており、2回とも接種した人も170万人に上る。保健省は6月末までに人口の60%にワクチンを接種させる計画を公表している。8

中国では、当局がすでに4つのCOVID-19ワクチン(中国の製薬会社3社が開発)の緊急時使用を承認している(Annex 1.A参照)。2021年2月28日時点で、中国は5200万回分、人口の約3.6%分のCOVID-19ワクチンが投与された。9 3月始めに、中国の最上位のCOVID-19医療担当者が、2021年6月末までに中国の総人口140億人の40%にワクチンを接種させる計画を公表した。

アジア・太平洋諸国の一部は、公衆衛生による感染の抑制に比較的成功したため、ワクチン接種の開始を遅らせたと報道された。オーストラリア政府は、Pfizer/BioNTechのワクチンを優先度が最も高い人々に接種させ、より多くの人々には主に国内で製造されるOxford/Astra-Zenecaのワクチンを使用する計画を公表した。10 ニュージーランド政府は、全人口(500万人)に2021年下半期中にワクチンを接種させる計画を公表した。11 韓国は、2021年2月にCOVID-19ワクチンの接種を最初のワクチンが供給されるのに合わせて開始すると公表しており、日本も、医療関係者と高齢者を対象としたワクチン接種を2月半ばに開始すると述べている。12

ほとんどのOECD諸国が、優先すべき人口全員分の供給を受けていない。その結果、英国など一部の国々は、より多くの人々に1回目の接種を受けさせるために、2回目の接種を遅らせる決定をした コラム 3参照)。

ワクチン製造業者は、供給の遅れの理由として製造の問題を挙げることが多い。Pfizerは、2021年9月末までにEUに3億5000万回分を供給すると約束していたが、2021年1月に、将来的に製造量を増やすために一時的に供給を停止すると発表した。同社は、不足分を補い、すでに約束している全量の4分の1の供給を優先すると述べている。それでも、この途絶によってワクチン接種の取り組みが遅れている。ルーマニアは、2月に予定されていた量の50%しか受け取っておらず(残りは3月末までに順次供給されることになっている)、ポーランドも予定の量の50%未満しか受け取れなかった。13

AstraZenecaも、欧州市場で製造問題を抱えている。2021年1月後半に、同社は、細胞培養の製造量が低下したことを理由に、第1四半期のCOVID-19ワクチンのEUへの供給量を減らすと発表した。14 このことは、欧州委員会と加盟国の間に同社がEU域内で製造された製品をEU域外の市場に優先的に提供しているという懸念を引き起こしている。15 最近になって、AstraZenecaは、2021年第2四半期中にEUに契約したワクチンの半分しか納入できない可能性があると述べた。これは、約9000万回分少なくなるということである。16

多くのワクチン製造業者が、製造能力を大幅に拡大しており、独自のワクチン候補を持たない他の大手(時にライバルでもある)医薬品製造業者に製造を委託している。例えば、Johnson & JohnsonとMerck & Coは、最近、Johnson & Johnsonのワクチンを共同で製造すると発表した。Merckは、自社の製造工場2つを新しいワクチンの製造に充てることになっている。17 それでもしばらくの間、需要が供給を上回る状態が続き、最近の副作用の問題で、一部の国々ではワクチン接種の取り組みが引き続き遅れる可能性がある。18

ワクチン接種の取り組みは、多くの先進諸国で本格化しているが、世界的に見ると、ワクチン供給には依然として大きな格差がある。まだ1回分のワクチンも供給されていない国の数は、130に上る。例えばアフリカでは、2021年2月末までに何らかのワクチンを受け取った国は11カ国に過ぎない上、合計でも400万回分にも満たず、その内の大半(97%)がモロッコにあると報告されている。19

ワクチンを使った人命救助には、2つのアプローチがある。1つ目は、弱い人々(例えば高齢者、最前線の医療従事者)に接種を受けさせて、COVID-19の重症化を抑えることで直接的に罹患者と死亡者を減らすという方法、2つ目は、ワクチンが感染を抑えるのに有効だと仮定して、ウイルスを拡散している疑いが最も高い人口グループに接種させることで、弱い人々を間接的に保護し、それと同時に既存のワクチンがあまり効果的でないかも知れない変異株の出現を鈍らせるという方法である。どのアプローチを採るかは、COVID-19ワクチンが様々な人口グループの症状の深刻化と感染拡大を抑えるのにどの程度有効か、ワクチン供給量、人々にどの程度伝播するかといった、いくつもの要因に影響される。

2020年9月、WHOは、「価値観」フレームワーク('values' framework) (WHO, 2020[11]) を発表、それに続いて11月には「ロードマップ」(WHO, 2020[12]) を発表した。それは、各国が次の3つの幅広疫学的シナリオに基づいて特定の人口グループのワクチン接種を優先するのを支持するためのものである:(i) 地域感染;(ii) 散発的またはクラスター感染;(iii) 感染者なし。このロードマップは、ワクチン供給の度合いも考慮している。大規模な地域感染がありワクチン供給が滞っている場合、WHOのロードマップは、リスクの高い人口グループの罹患率、死亡率を直接下げることと必須の基本的サービスの維持にまず注力することを提案している。こうしたグループのワクチン接種が済んだら、ウイルスを拡散する疑いのある人口グループを対象とし、間接的保護に焦点を当てるよう奨励している。このアプローチは、散発的感染またはクラスター感染のシナリオに類似しているが、後者は地域的発生またはクラスターの特定に焦点を当てている。感染者がいない、またはごく少数の場合は、感染を広げる可能性がある人々にワクチンを接種させる戦略へと優先事項が移行する。

しかし、どの戦略を選んでも、量が限られているワクチンの配分は、ニーズが最も高いところ(例えば、高齢者、持病や慢性疾患がある人々、医療従事者)と、変異株が出現するリスクが最も高い場所(地域感染と流行が最も深刻な場所)を優先しさえすれば、地球規模で効率的かつ公平になる。

人々をCOVID-19から守り、罹患率と死亡率を引き下げる最も直接的な方法は、高齢者、持病がある人々、そしてSARS-CoV-2感染の危険性が高い医療介護関係者を含む、弱い人々のワクチン接種を優先することである。ワクチンの第3相臨床試験では、これまでに承認されたワクチンは全て、死亡率と重症化の可能性の双方を引き下げることがわかっている ( Annex 1.A参照)。

ほとんどの国々が、現在このアプローチを採っている。2020年12月にワクチンが承認され始めた頃は、多くのOECD諸国で地域感染が発生しており、当初は供給が大幅に滞った。ほとんどの国々が行ったワクチン接種キャンペーンは、当初、COVID-19による健康リスクが最も大きい人々に絞られていた。

例えば、デンマークとポーランドでは、80歳以上の人口のそれぞれ59%、42%が2021年3月15日までに1回の接種を受けたのに対して、70〜79歳ではそれぞれ13%、26%、その他の年齢層では10%未満であった (ECDC, 2021[13])。英国では、65歳以上の人口の90%以上が、2021年3月11日までに少なくとも1回の接種を受けたと報告された (NHS England, 2021[14])。米国では、65歳以上の人口の26%が2021年3月15日までに2回の接種を受けたが、それ以外の成人人口では8〜19%であると報告されている (CDC, 2021[15])。いくつかのEU諸国も、医療関係者の50%以上にワクチン接種を行ったと報告している。

インドネシアは、高齢者よりも生産年齢の人々のワクチン接種を優先した数少ない国の1つだが、その理由は使用された中国製ワクチンが高齢者に有効というデータが不十分だからだと報告されている。20 このアプローチを採る動機は、人口の生産性を維持することだとも言われている(Lloyd-Sherlock, Muljono and Ebrahim, 2021[16])

もう1つの戦略は、SARS-CoV-2の伝染を抑えるためにワクチンを使用することを優先している。この戦略を採るメリットは2つある。1つは、ウイルスの拡散を抑えることで、偶発的な感染の数と症候性疾患の出現を抑えることで、それが間接的にリスクの高い人口を保護することになる。2つ目のメリットは、恐らく1番目のそれより重要で、伝染を抑えることでウイルス複製を削減し、それによって変異の頻度と新たな変異株が出現する可能性も抑えられる( コラム 4 と 5参照)。既存のワクチンが優勢な新変異株に対してあまり有効ではないということになると、(再)感染率が高くなり、特に新たな変異種の感染率の方が高く深刻化する場合には、ワクチン製造業者が必死で追いつこうとしてもパンデミックの第3、第4の波が襲ってくる可能性がある。したがって、地域感染率が高い場合、ウイルスの拡散と、それによる変異株の出現の可能性を抑えることを優先する戦略を優先的に検討すべきである。

ワクチン接種の伝染を抑える効果は、第3相臨床試験の主要評価項目ではなかったが、最近得られた実証によると、一部のCOVID-19ワクチン、特にPfizer/BioNTechのワクチンは、イスラエル(コラム 2参照)と英国(Weekes et al., 2021[17])の研究によると、無症状を含む新規感染を抑える効果がある。様々なワクチンが感染予防にどの程度有効かを調べるいくつもの研究が、現在進行中である (Mallapaty, 2021[18])。現段階で入手できる実証によると、ウイルス量の低下、つまりウイルス排出量の減少によって症候性のCOVID-19から保護することができ、ある程度の伝染の削減につながる。WHOによると、COVID-19ワクチンの感染または伝染を抑える効果についての実証は依然として限られているが、現段階で「伝染を抑える何らかの効果があると仮定することが妥当である」。21

あらゆる国々が、自国民へのワクチン接種を優先しているのは、政治家は当然自国民への説明責任を最優先するものだからである。しかし、パンデミック下では、限りあるワクチンの供給が豊かな国と貧しい国の間で偏っているのは、不公平であるだけでなく非効率でもある。乏しい資源をニーズに従って医療に配分すること、つまりニーズに沿った公平な利用は、ほとんどのOECD諸国の医療政策によって支持されている基本的な公平性原則である。このような配分が効率的なのは、それが利用可能な資源から生み出される医療の便益全体を最大化するからでもある。

倫理的規範を超えて、効率性の議論は説得力がある。第一に、ニーズに従ってワクチン接種の優先順位を決めることで、COVID-19による死亡者数を世界的に最小化することができる。第二に、地域感染が最も深刻な地域でのワクチン接種を優先することも、パンデミックを抑える上で不可欠である。したがって、優先すべき人口グループにワクチンを接種させた高所得国が、確保済みの供給量の一部を、自国民全体への接種ではなくニーズが高い他国に分け与えることは、高所得国の利益になる。国際的な供給網と人とモノの移動は、新たな変異株が国境を越えて移動するのを促進し、ワクチン接種が完了した人々(と経済)にも更なる損害を与える可能性がある。高所得国が負担する経済的コストは、貧しい国々のワクチン接種を助けるコストを、優に10〜100倍上回ると考えられているが (Bown, de Bolle and Obstfeld, 2021[20])、この推定はまだ控えめな方かも知れない。

最近のモデルの推定によると、パンデミックの終息を早めると、世界の所得が2020年から2025年にわたって累積的に9兆米ドル増加し、先進諸国には約4兆米ドルがもたらされるなどあらゆる国々にメリットがある(Cakmakli et al., 2021[21])。最新のOECD Economic Outlookは、ワクチン接種のペースを早めるために必要なことを全て行うべきで、それができないと長期にわたってパンデミックの経済社会的コストが増加すると強調している (OECD, 2021[22])

ワクチン開発の時に見られた学術協力関係とは異なり、ワクチンの製造と供給に関して最近政府が採っている行動は国際協力や団結の度合いがそれほど高くない。2020年に見られた個人防護具やその他の医療器具の場合と同様に、ワクチンの輸出規制を続けている国もある。より見込みのある動向としては、2021年2月にG7首脳が世界的なCOVID-19対策について、COVAXに対する追加資金の提供を含む国際協力と支援を改善することを約束する共同声明を発表し、国際協調の重要性が強調されるサインとなったことが挙げられる。22

最近の動向、特にSARS-CoV-2の変異株の出現という観点から、各国政府は供給の仕組みを再調整しなければならない。現在の「自国ファースト」アプローチに代わって、より公平かつ有効な、ニーズに基づく国際的な配分を目指すべきである。その一方で、各国政府は、世界中の人々がワクチンを接種できるように供給を拡大し、大規模な予防接種プログラムを実施する取り組みを継続すべきである。その中には次のようなものがある。

  • 自国の全人口に接種させる前に、高いニーズがある多国に供給分を割り当てる。

  • 承認されたワクチンと最終段階にあるワクチン候補だけでなく補助的製品についても、引き続き生産能力を高め供給量を増やす。それには、知的財産の共有と知識移転の促進も含まれる。そうすることで、現在ワクチン製造が行われている国々以外でも供給量を増やすことができる。

  • COVAXへの支援を強化する。COVAXの資金目標の達成を促し、余剰ワクチンを寄付する。

  • 供給の急増を見越して、集団的なワクチン接種のためのロジスティクスとインフラを整える。

  • ワクチンを最も必要としている地域に供給するという拘束力のある公約を含む長期戦略を構築する。ワクチンの製造を加速させるためのライセンス契約の拡大、例えば、WHOの新型コロナウイルス・テクノロジー・アクセス・プール (C‑TAP)への参加、またはWTOの多国間アプローチを通じた知的財産の共有と技術移転のための協調的アプローチなどが含まれる。

  • 医療危機に対処する製品の開発に公的資金を提供するという将来的な契約に、知的財産の共有と技術移転の推進を盛り込む。

自国内でワクチンの研究開発を行い製造能力もあるOECD加盟国は、供給の約束と一定量のワクチンの購入保証の見返りとして、COVID-19ワクチン候補の開発と製造能力の構築の双方に投資を行った。こうした公的資金を後ろ盾に、いくつかのワクチン製造業者がワクチン開発と並行して製造力を構築し、それによって承認直後に大量のワクチンが入手できた。それが、いくつものOECD諸国がその国民に何回も接種させられるに足る量のワクチンを確保できるというシナリオにつながった。

図 2 は、供給合意に関する公的情報に基づいて、いくつかのOECD諸国が確保したワクチンの量(人口比)を示している。2021年3月半ば時点で、高所得国(世界人口の16%)が供給合意の交渉を行い、その量は世界全体のワクチン供給量のほぼ半分に達し23 、「ワクチン・ナショナリズム」という批判につながった。価格に関しては入手できるデータが限られているが、高所得国がワクチン1回分に対して支払う平均価格は低・中所得国より高く、それが先進国が先に供給を受けられたもう1つの理由と考えられる( Annex 1.C参照)。アルゼンチン、ブラジル、インドなどは、臨床試験を誘致し自国内での製造のための「ライセンスイン(技術導入)」のすることで優先的な供給を受けた。24

Gavi COVAXは、有効なワクチン候補を国際的に利用できるようにし政府間で合理的な配分の仕組みを提案するための、今のところ唯一のメカニズムである。これは本来共同購入の仕組みで、参加諸国に代わって製造業者と供給契約の交渉を行う。25 自己資金がある国々(中・高所得国)には、メカニズムへの資金供与額に応じて、人口の10〜50%分のワクチンが割り当てられる。また、援助資金を受けられる低・中所得国92カ国には人口の20%分が供給される。

しかしこれまでのところ、COVAXは依然として資金不足で、政府と製造業者間の二者供給合意との競争を強いられている。2020年の目標は、低・中所得国のために20億米ドルの初期資金を確保することで、これは2020年12月までに達成された。しかし、2021年には、自己資金がある国々向けの資金を除いても、低・中所得国のための資金がさらに50億米ドル必要になると推定されている。2021年2月に開催されたG7首脳サミットでは追加公約が発表されたが26 、COVAXは依然として今年必要な資金として8億米ドル不足している。こうした中で、2021年中に18億回分のワクチンを供給するという目標をCOVAXが達成できるかということには、根強い疑いがある。

2021年3月2日、GaviはCOVAXによる第1回の供給に関する最新情報を公表した (Gavi, 2021[27])。この第1回の供給には、142カ国に対するOxford/Astra-Zenecaのワクチン2億3700万回分が含まれ、2021年5月中に供給が完了する見込みである。さらに、Pfizer/BioNTechのワクチン120万回分を要請があってロジスティクスの条件を満たせる国々に「追加供給」も行っている。第1回供給はすでに始まっており、インド、ガーナ、コートジボワールがOxford/Astra-Zenecaのワクチンを受け取った。ガーナとコートジボワールはそれを使って2021年3月1日にワクチン接種を開始した。

しかし、COVAXによるワクチン供給が加速しても、低・中所得国が中期的に広範囲に及ぶワクチン接種を達成できるかは、依然として疑問である。The Economist Intelligence Unit (2021[28])の最近の報告書は、南米、アフリカ、アジアの一部については2023年までワクチンの広範な接種が達成できないと推定している。

2021年第1四半期には、製造能力と供給が、引き続き各国のワクチン接種のペースを抑える要因となっている。供給契約で規定される供給方法または国内で製造されたワクチンの寄付に関するライセンス契約の規定については、情報がほとんどない。地域生産のライセンスを持つ製造業者の中には、最初は国内市場にしか供給しないところもある。例えばSerum Institute of Indiaは、2020年1月3日にインド政府によって緊急使用許可が承認されたOxford/Astra-Zenecaのワクチンを始めはインド国内のみに供給し、その後他の国々にも供給する予定である。27 Serum Institute は世界最大の生産量を誇るワクチン製造業者で、10億回分のワクチンを製造するライセンスを持っている。Oxford/Astra-Zenecaのワクチンは、オーストラリア、オランダ、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、米国でも製造されている。

短期的な取り組みは、引き続き製造能力の構築と供給量の増加に向ける必要がある。その中には承認されたワクチンと最終段階にある候補の製造能力の大規模な拡大だけでなく、補助的製品(例えば、バイアル瓶、注射器、冷蔵設備)の製造能力の増強も含まれる。そのためには、知的財産の共有を低コストまたは無料で拡大するだけでなく、もっと重要なことは、地域での生産ができるように技術移転を行う必要がある。

製造能力が増強されると、数カ月のうちに、課題がワクチンの供給確保から接種に移行して、非常に異なるシナリオが現れる可能性がある。 3 は、一部のOECD諸国における2021年の供給増加の予測を表している。2021年第3四半期までに、米国とEU加盟国は、各個人が必要なワクチン接種を1セット以上受けられる程度のワクチンを確保できるだろう。したがって、政府は供給量の急増に備えて将来の備蓄と供給を支えるためのロジスティクスとインフラを整え、入手できたワクチンを素早く接種させ無駄にしないようにする必要がある。28 また、十分な人材も確保しなければならず、政府は国民と積極的に関わり、人々が計画通りにワクチンを接種できるようにすべきである。

ロジスティクスと供給に加えて、ワクチン接種キャンペーンの成功は、ワクチンの有効性と安全性、ワクチン供給のシステムの能力と信頼度、政府の決定と行動を支える原則を人々がどの程度信頼しているかに強い影響を受ける (OECD, forthcoming[2])

2021年末までに、高所得国では優先的に接種させるべき人口に必要な数を超えるほど多数のワクチンが確保できると予測されている。その余剰ワクチンは、「 命を救いパンデミックを終わらせるために世界的なワクチン供給を進める」 の項で論じたように、弱い人々を守り、新たな変異株の出現を抑えるために迅速に、世界中のニーズが最も高い地域に転送すべきである。上述の通り、これは倫理的規範であるだけでなく、パンデミックをなるべく早く終わらせあらゆる国々に最良の利益をもたらす唯一の方法である。

政府がすでに購入済みワクチンの余剰分を近隣諸国などに分けることを公表している国もある。例えば、オーストラリアとニュージーランドの政府当局は、ワクチンとロジスティクス支援を近隣の島嶼諸国に提供すると発表した。29 新たな報道によると、カナダとEUは余剰分を寄付する計画があり30 、インドは49カ国向けに「フレンドシップ・プログラム」を開始しており、中国はいくつかのアフリカ諸国、トルコ、アフガニスタンにワクチンを送っている。カナダはCOVAXに寄付する計画だが、欧州委員会は余剰ワクチンを一部の国々に直接提供し、残りをCOVAXに提供すると発表している。依然として不明瞭なのは、どのようにして「余剰分」を決定し、各国のワクチン接種のどの段階で寄付が始まるのか、ということである。31 また、少なくとも公表された購入合意には、製薬会社の事前合意なしで他国に転売したり寄付したりすることをを禁じる規定が含まれている。32 その一方で、英国政府は、英国の全人口へのワクチン接種が終了した後で余剰分を提供すると述べている。33

Gaviは、COVAX自体が交渉を行った契約を通じて確保された供給量を補うために、二者供給合意を行っている国々に対してCOVAXを通してワクチンを共有するよう呼びかけている。その目的のためにCOVAXが策定した原則 (Gavi, 2020[30]) は、より公平かつ効率的な地球規模の供給に寄与することができる。寄付は歓迎されるが、それがワクチン共有の主要手段となるべきではない。WHOは、二国間または選択的なワクチン寄付について、それが低所得国間で更なる不平等を引き起こしかねないと繰り返し警告している。34 また、寄付されたワクチンがそれを受け取った国々で有効活用されていることを確認するためには、様々な問題に対処する必要があろう。その中には、製造業者と政府との契約の限界、寄付を受け取った国の規制当局の必要性、補償と義務に関する規定などが含まれる (Cohen, 2021[31])。したがって協調的な取り組みが鍵を握っている。

COVAXを通じた進歩もあれば、各国間での余剰ワクチンの直接共有もあるが、世界的に効率的かつ公平なワクチン供給を行うには、援助国の善意と単発の解決策だけに頼ることはできない。各国政府は早急に、長期的に持続可能な構造的アプローチを策定し、ワクチンが最も必要とされる地域で接種できるようにする拘束力のあるセーフガードを提供する必要がある。これは特に、COVID-19が季節性のインフルエンザのような風土病になり、ワクチンを定期的に新しいウイルスに適応させ、繰り返し人々に接種させる必要が生じた場合に重要である。

現在のパンデミックという段階では、製造能力と供給を拡大させる更なる取り組みによって、入手可能性は改善する。それにはいくつものアプローチがある。主要ワクチン開発業者は、場合によっては競争相手である他の製薬会社と自発的なライセンス取り決めを行っている。例えば、MerckはJohnson & Johnsonのワクチンも製造することになっている。Sanofi とNovartisは、Pfizer/BioNTechのワクチンを製造するライセンスを取得している。AstraZenecaは、Serum Institute of Indiaによる10億回分のワクチンの製造など、いくつかの国々に自社のワクチンを製造するライセンスを供与している。その結果、現在では生産量は実際に急増しており、今後数カ月で地球規模でワクチンの供給量が大幅に増加すると期待されている。その時点で、課題は供給から患者レベルの接種へと移行すると見られる。

しかし、自発的ライセンス供与は、政府による寄付に似て、供給を制限する強い商業的インセンティブを持つ個々の知的財産権保有者が、自分の資産の使用許可を与えるという意思を持つか否かに依存している。政府が大規模な研究開発資金を知的財産の供与と技術移転を条件として2020年に支出していれば、製造能力はもちろんもっと早く拡大できていただろう。この機会はほとんど捉え損ねたが、将来の政策にとっての重要な教訓とすべきである。

強制的なライセンス供与は、政府が他の製造業者に既存のワクチンの製造を認める合理的なオプションであるが、それだけでは、それを行うために必要な技術移転という同程度に重要な問題に対処することはできない。したがって、これはすでにワクチンを製造するノウハウと十分な能力を持つ国にのみ利益をもたらすことになってしまう。製造設備の規模次第だが、その設備を充填及び最終製剤化の作業能力(fill-and-finish capacity)の拡大に代用し、製造の最終段階で供給網をほぼ終わらせることができる。さらに、一部の国々が強制的ライセンス供与を一方的に調整せずに使用すると、報復的な貿易紛争につながり、国際協力と知的財産が保護される研究開発への民間投資のインセンティブに、どれだけの影響が及ぶか計り知れない。一方的な行動は、将来的な健康危機に対する迅速かつ革新的な対策の開発をも損ねる恐れがある。

したがって、知的財産と技術移転については協調的で多角的なアプローチが望ましい。COVID-19ワクチンの研究開発には多額の公的資金が投入されており、それが民間の知的財産権を制限することを正当化しているが、例えばWHOの新型コロナウイルス・テクノロジー・アクセス・プール(C‑TAP)の利用を広げることで、知的財産へのアクセスを拡大することができる。このメカニズムは、一元的なリポジトリにCOVID-19の医療技術、知的財産、データに関する知識を自発的に共有する公約をまとめることを目的としている。しかし、これまでのところ、C-TAPを支持しているのはごく少数の国々で、その中でも大規模な研究開発と製造拠点を誘致した国々や主要ワクチン製造業者を抱えている国々は、参加に合意していない。35WTOで現在議論が行われているもう1つの提案は、パンデミックの期間中だけ一時的に知的財産権を保留するというものである。どのような成果であっても、多国間アプローチはCOVID-19ワクチンの入手可能性を広げることができ、将来の公衆衛生上の危機において知的財産権の共有と技術移転の促進のアプローチを形作る上で重要である。

参考文献

[33] Baden, L. et al. (2020), “Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine”, New England Journal of Medicine, p. NEJMoa2035389, http://dx.doi.org/10.1056/NEJMoa2035389.

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[22] OECD (2021), OECD Economic Outlook, Interim Report March 2021, OECD Publishing, Paris, https://dx.doi.org/10.1787/34bfd999-en.

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[26] TGA (2021), TGA adopts Access Consortium guidance for fast-tracking authorisations of modified COVID-19 vaccines for variants, Therapeutic Goods Administration, Australia, https://www.tga.gov.au/tga-adopts-access-consortium-guidance-fast-tracking-authorisations-modified-covid-19-vaccines-variants.

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[17] Weekes, M. et al. (2021), Single-dose BNT162b2 vaccine protects against asymptomatic SARS-CoV-2 infection, Authorea, Inc., http://dx.doi.org/10.22541/au.161420511.12987747/v1.

[8] WHO (2021), Interim recommendations for use of the AZD1222 (ChAdOx1-S (recombinant)) vaccine against COVID-19 developed by Oxford University and AstraZeneca, World Health Organization, https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-vaccines-SAGE_recommendation-AZD1222-2021.1.

[12] WHO (2020), WHO SAGE Roadmap For Prioritizing Uses Of COVID-19 Vaccines In The Context Of Limited Supply, WHO, Geneva, https://www.who.int/publications/m/item/who-sage-roadmap-for-prioritizing-uses-of-covid-19-vaccines-in-the-context-of-limited-supply (accessed on 2 March 2021).

[11] WHO (2020), WHO SAGE values framework for the allocation and prioritization of COVID-19 vaccination, 14 September 2020, https://apps.who.int/iris/handle/10665/334299.

[37] Zhang, Y. et al. (2020), “Safety, tolerability, and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine in healthy adults aged 18–59 years: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1/2 clinical trial”, The Lancet Infectious Diseases, Vol. 0/0, http://dx.doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30843-4.

2020年8月に、CanSinoはパキスタン、ロシア、メキシコ、チリなどいくつかの国々で第3相臨床試験を開始した。2月25日、中国当局はCanSinoのワクチンの承認を発表した。同社は、その1回の接種で済むワクチンの症候性のCOVID-19の予防に対する有効性が65.28%と発表した。36

Sinovac Life Sciences は、中国の民間企業で、ヒト及び動物のワクチンを研究開発、製造している。同社はその"CoronaVac"という不活化ワクチン候補についての第2/第3相臨床試験の結果を、Lancet: Infectious Diseases に11月半ばに発表し (Zhang et al., 2020[37])、743人の被験者から得たデータ(第1相は143例、第2相は600例)を公表した。第2相の被験者は、14日の間隔で2回接種したグループ(240人)、28日の間隔で2回接種したグループ(240人)、偽薬(120人)という3つのグループに分けられ、各グループの中でさらに少量のワクチンを投与したグループ(3μg)と高用量のグループ(6μg) に分けられた。中和抗体は、上記4つの処置群(14日または28日の接種スケジュールのグループ、ワクチンの量が少量または高用量のグループ)において被験者の少なくとも92%に検出され、接種スケジュールが28日の被験者はわずかに抗体陽転の程度が高かった。

CoronaVacは2020年8月に中国政府から緊急使用許可を受けており37 、すでに数十万人もの中国市民に接種されたと報道されている。このワクチンはその後インドネシア(2021年1月11日)、トルコ(2021年1月14日)、ブラジル(2021年1月17日)でも承認された。

複数の国々で行われた試験の結果が少しずつ公開され、有効性のレベルが様々であることがわかってきた。2021年初頭に行われたブラジルとトルコの試験によると、CoronaVacはCOVID-19を予防できるが、治験実施計画の違いなどによって非常に異なる結果が出た。ブラジルでは、症候性または無症状のCOVID-19に対する有効性は50%だった。トルコでは、少なくとも1つの症状があるCOVID-19に対する有効性は83.5%だった。38

Sinopharmは中国国有企業で、2つのCOVID-19ワクチンを開発している。同社は12月30日にワクチンの1つの第3相臨床試験の結果、有効性が79%であると発表したが、さらに詳しい臨床データは提供しなかった。中国政府はその翌日にこのワクチンを承認した。中国以外では、ワクチン候補の1つの臨床試験を31000人39 の被験者で実施したアラブ首長国連邦が12月9日に Sinopharmのワクチンを承認し、その数日後にはバーレーンも承認した。

Sinopharmのもう1つのワクチン候補について、第1/第2相臨床試験によるとワクチンは被験者に抗体を作り出したが、被験者の一部に発熱その他の副作用があった。 Sinopharmによると、そのワクチン候補の有効性は72.51%であるため、2月に中国政府が広く使用することを承認した。第3相臨床試験から得られた有効性のデータは、まだ公表されていない。40

2021年2月上旬に、LancetはGam-COVID-Vac(通称スプートニクV)という複製しないウイルスベクターワクチンの第3相臨床試験結果の第1ラウンドの結果についてプレスリリースを発表した。このワクチンは症候性のCOVID-19の予防に安全かつ有効だとされている。臨床試験には約2万人が参加し、無作為に選ばれた75%にワクチンが投与された。研究者は処置群(14964人)の中から16人、偽薬グループ(4902人)の中から62人のCOVID-19患者を選び、COVID-19の予防という点で総合的に見て有効性は91.6%で、Pfizer/BioNTechとModernaのワクチンの結果と同程度だった。具体的には、このワクチンは60歳以上の成人に対しては有効性が91.8%で、ワクチンを接種した患者からは軽症も重症も報告されなかった。ワクチン接種による深刻な副反応は見られなかった。

これは、21日の間隔を開けて2回投与される。保管温度は約-18℃、短期間の保管なら2-8℃である。また、アストラゼネカとの間で、これら2つのワクチンを混合して接種すると有効性が高まるか、という議論が行われている。混合ワクチンの最初の臨床試験はロシアで行われると報道されている。夏以来、ロシアはスプートニクVワクチンを、ブラジル、インド、メキシコ、ベネズエラなど他の国々にも供給するいくつもの契約をまとめている。2020年12月22日に、ベラルーシがロシア以外で初めてこのワクチンを承認した。その翌日、アルゼンチンもこのワクチンの緊急使用を認めた。アルジェリア、ボリビア、パレスチナ自治区、パラグアイ、セルビア、トルクメニスタンは、1月に承認した。欧州医薬品庁(EMA)は現在、このワクチンの評価を行っており、すでにいくつかのEU諸国が承認している。

3つのワクチン候補( CSL/University of QueenslandによるMolecular Clamp Vaccine、IAVI/Merckが開発していたV590、Institut Pasteur/Themis/MerckのV591) の開発は、中止されたこと報告されている。

様々なワクチンプラットフォームがあるが、次の2つのグループに分けられる。

  • 従来型の開発プラットフォーム:その中には、弱毒化生ワクチンまたは不活化ワクチンの他、遺伝子組み換えタンパク質ワクチンが含まれる。(後者の2つは免疫反応を引き起こすためにアジュバント41 が必要となる場合が多い)

  • 新規の開発プラットフォーム:その中には、DNAワクチンとmRNAワクチンの他、複製可能なウイルスベクターワクチンと複製不可能なそれが含まれる。

Annex Table 1.B.1 は、こうした様々なワクチンプラットフォームとその中で承認された、または開発の最終段階にあるCOVID-19ワクチンに用いられているものを収録している。

ワクチン価格について公的に入手できる情報は極めて少ない。 Annex Figure 1.C.1 には、公式に入手可能な情報に基づいて、二者間の購入契約で交渉されたワクチン価格と、Gavi COVAXによるものを収録している。

担当

Stefano SCARPETTA (✉ stefano.scarpetta@oecd.org)

Mark PEARSON (✉ mark.pearson@oecd.org)

Francesca COLOMBO (✉ francesca.colombo@oecd.org)

Ruth LOPERT (✉ ruth.lopert@oecd.org)

Guillaume DEDET (✉ guillaume.dedet@oecd.org)

Martin WENZL (✉ martin.wenzl@oecd.org)

← 1. 厳格な規制当局(stringent regulatory authority)の概念は、WHO事務局と世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が、薬剤調達決定の指針として開発したもので、今では規制当局の国際的な規制・調達コミュニティで広く認められている。

  • 医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use, ICH)のメンバー。欧州委員会、米国食品医薬品局、日本の厚生労働省、医薬品医療機器総合機構など。

  • ICHのオブザーバー。欧州自由貿易連合、スイス医薬品局(Swissmedic)、カナダ保健省(Health Canada)など。

  • ICHのメンバーと法的拘束力がある相互承認協定によって関連がある規制当局。オーストラリア、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーなど。

参考資料:WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparations Fifty-first report (Technical Report Series, No. 1003, 2017)

← 2. これらは、Pfizer/BioNTech、Moderna、Oxford/AstraZeneca、Johnson & Johnsonが製造したワクチンである。

← 3. これらの中には、一般的な承認手続きの他、条件付き、緊急時、臨時の承認手続きがある。

← 4. これらは、Novavax、CureVac、Gameleya Instituteが製造したワクチンである。

← 18. 2021年3月始めに、いくつかの欧州諸国が 、血栓塞栓性の副作用が少数ではあるが報告されたことを受けて、Oxford/ AstraZenecaのワクチンの使用を部分的または完全に停止した。2021年3月15日までに、オーストリア、ブルガリア、エストニア、フランス、ラトビア、オランダ、スウェーデンが少なくとも一部のワクチンの使用を一時的に停止したが、欧州医薬品庁とその他の規制当局は、まだ因果関係を確認できていない。参考資料: https://www.bmj.com/content/372/bmj.n699.

← 19. アルジェリア、コートジボワール、エジプト、ガーナ、モーリシャス、モロッコ、ナイジェリア、セネガル、セイシェル、南アフリカ、ジンバブエ。

← 21. https://globalnews.ca/news/7686306/coronavirus-vaccines-transmission-COVID-19/.

← 22. 下記資料参照 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2021/02/19/g7-february-leaders-statement/.

← 24. 例えば、アルゼンチンとブラジルは、Johnson & Johnson、Oxford/AstraZeneca、Pfizer/BioNTechが開発するワクチン候補の第3相臨床試験を誘致した(LSHTM Vaccine Centre, 2021[40])。インドはOxford/AstraZenecaワクチンの臨床を誘致し、2020年半ばには、Serum Institute of Indiaがそのワクチンの製造と国内市場及び一部の低・中所得国への供給のライセンスを取得した。 https://www.seruminstitute.com/news_gavip_partnership_annoucement.php参照。これはまた、いくつかの高所得国でもライセンスの元で製造されている。

← 25. CEPIの支援を受けて開発された9つのワクチンは、COVAXに加えられる予定だった。CEPIは、感染症を予防し抑え込むための新ワクチンの開発に資金を提供し調整する官民パートナーシップである。9つのdeveloped by Inovio, Moderna, CureVac, Oxford/AstraZeneca, Novavax, Cloveのうち、香港大学が開発している1つはまだ臨床試験が行われておらず、Institut Pasteur/Merck/ThemisとUniversity of Queensland/CSLが開発していた2つは、中止された。残る6つのワクチンは、Inovio、Moderna、CureVac、Oxford/AstraZeneca、Novavax、Cloverが開発しているが、その中でOxford/AstraZenecaのワクチンだけがすでに供給されている。その他、Pfizer/BioNTech、Johnson & Johnson、Sanofi/GSKの供給合意も公表された。

← 28. 問題はすでにフランスで見られる。2月末までに受け取った170万回分のOxford/AstraZenecaワクチンのうち、接種されたのはわずか27万3000回分である。同時期に、ドイツには145万回分が供給されたが、接種されたのは24万回分だけである。これは、接種キャンペーンの適切な事前計画が重要であることを浮き彫りにしている。下記ウェブサイト参照:https://www.euractiv.com/section/coronavirus/news/unused-stocks-of-astrazeneca-vaccine-pile-up-in-france-germany/.

← 31. 32も参照。 ワクチンの配分を公平かつ有効なものにするには、国内で優先すべき人口グループに接種したら、供給分を寄付すべきである。しかし、各国政府は、他の国に譲る前にその全人口へのワクチン接種を優先するかも知れない。

← 32. 欧州委員会とCureVacとの事前購入契約は、下記ウェブサイト参照。 https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/curevac_-_redacted_advance_purchase_agreement_0.pdf.

← 35. 下記資料参照:https://www.who.int/initiatives/COVID-19-technology-access-pool/endorsements-of-the-solidarity-call-to-action

← 41. アジュバントは、一部のワクチンに使われる物質で、免疫反応をより高める。

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