新型コロナウイルスのパンデミックにより、我々の経済社会に対する考え方が変化しています。明日の社会をより環境に優しく包摂的で危機対応能力の高いものに転換できるか否かは、今日政府が選択する政策にかかっています。今こそ、誰もが自信を持って将来と向き合えるよう進むべき道を明らかにするチャンスです。
コロナ禍の前には、遠隔診療はほとんどのOECD諸国で利用が限られていましたが、2020年に、各国政府は提供者支払制度(provider payment systems)の変更など、遠隔診療を推進し始めました。遠隔診療は急増し、治療を継続する上で不可欠なものになりました。
今日、遠隔診療の実施、規制、資金供給などの方法にはOECD加盟国間で大きな違いがあります。遠隔診療を管理する規制が明確であると答えた国は17カ国に過ぎないため、依然として不明確な部分があります。そのことが、医療提供者の遠隔診療を難しくしています。
政策当局は次の点を検討する必要があります:
・遠隔診療が医療制度全体に及ぼす影響をよりよく理解するために、誰がどのような理由で遠隔診療を利用しているか、その利用後の感想や状態を知る。
・支払いと組織的な在り方は最も有効な遠隔診療の利用を促すのか。
・遠隔診療と直接診療をどのように統合するか。
アジア・太平洋諸国27カ国から得た人々の健康状態、健康の決定要因、医療資源とその活用、医療費と資金源、医療の質に関する指標を収録しています。(2022年11月25日)
新型コロナを受けて、回復力と実行力の高い医療制度を構築する上でどのような課題があるでしょうか。パンデミックは若者の心身の健康と、新型コロナ以外の患者にどのような影響を及ぼしているでしょうか。(2022年12月5日)
開発途上国は、2021年にワクチンにかかわるODAとして63億米ドルを受け取りました。国別の支援額はこちらからご覧ください。
新型コロナにより医療従事者の長期にわたり問題となっていた技能不足が浮き彫りになりました。OECDとILOによる共同報告書では、16カ国の取り組みの概要を収録し、各国政府が将来の危機にどのように備えるべきかを考察しています。(2022年12月15日)
本書では、南米諸国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、メキシコ、ペルー)で新型コロナのパンデミックの影響を吸収するために取られた医療政策・行動を考察しています。(2022年12月13日)
OECD諸国の医療と健康、および医療制度に関する統計を包括的に収録した統計データベースです。
新型コロナウイルスで、多くの経済的脆弱性が浮き彫りになりました。しかし、パンデミックからの回復は、経済力を高められるよう資本投資の配分を再考するチャンスでもあります。
国への投資は、年金基金のビジネスの一部です。巨額の資本がすでに株式と社債に割り当てられているからです。しかし、長期的な投資見通しがあるにもかかわらず、これまでは、インフラ(交通、公共事業とエネルギー、通信、社会インフラなど)といった流動性が比較的低い長期資産への配分は少なくなっていました。例えば、非上場のインフラの株式と負債が2017年に管理されていた年金基金の資本全体に占める割合は、わずか1.3%でした。
代替的な投資の障壁を取り除くことで、より多くの資本が長期資本に向けられ、回復力の高い経済への移行が進む可能性があります。
ロシアによるウクライナ侵攻で、特に欧州の長期的なエネルギー安全保障に注目が集まっています。持続可能で安定したエネルギー枠組みに対する投資が、危機からの回復に不可欠です。
技術は学校教育と学習をどのように補完できるでしょうか。出自にかかわらずあらゆる生徒が適切な教育を受け、その恩恵を受けられるようにするにはどのようなステップを踏むべきでしょうか。
パンデミックは働き方と学び方について多くの前提を覆しました。学校閉鎖を余儀なくされたことで、21世紀における教育の様々な機能と課題を幅広く考え直すことにつながりました。
政府の新型コロナ対策の焦点は、学校のインフラと情報技術のノウハウの向上に向けられていました。それは、将来の危機への備えを強化するとともに、教育を支える技術の可能性を再検討する取り組みを支えることができました。しかし、政策当局は、低所得世帯出身の生徒が教育を受けやすくなる方法を考慮しなければなりません。こうした生徒は、コンピュータやタブレット端末を使用できない可能性が高いからです。
パンデミック期に肉体労働や他者に接近する仕事に従事していたエッセンシャルワーカーは、リモートで働ける労働者よりも自分の仕事に不安があると感じていました(リモートワーカー7%に対して、エッセンシャルワーカーは12%)。
また、エッセンシャルワーカーの方が健康状態が一般的に悪く(4% vs 6%)、WHO-5の精神衛生状態を測る尺度(0-100;50未満はうつ病のリスクがあるとみなされる)によると、精神衛生状態もわずかに低くなりました(55 vs 53)。
同様の労働者の比較はパンデミック前に行われなかったためデータがありませんが、この結果から、エッセンシャルワーカーは総じて雇用の質と精神的幸福度が低いという仮説が成り立ちます。エッセンシャルワーカーの職業に就く労働者が減少すれば、回復力のある労働力を構築しようとしている政策当局は課題を抱えることになります。
ロシアのウクライナ侵攻の衝撃で、特に欧州ではエネルギー安全保障に注目が集まっています。寒い冬が来れば、EUのガスの備蓄量は危険なレベルまで激減する可能性があります。
エネルギーショックがさらに深刻化すれば、多くの欧州諸国は不景気に陥る恐れがあります。短期的には、エネルギー消費量を抑え供給を多様化することで信頼を強化することに注力しなければなりません。それがうまくいかなければ、物価はさらに高騰し、企業へのエネルギー供給が配給制になる恐れがあります。
長期的には、政策当局はより幅広いエネルギー安全保障の枠組み、特に持続可能で安全なエネルギーを支持する転換により多くの投資を向ける方法を再考しなければなりません。
新型コロナのワクチン支援として、2021年には開発途上国に対して63億米ドルが拠出されました。これは、ワクチンおよそ8億5700万回分に相当します。この金額は、OECDの開発援助委員会(DAC)加盟国からのODA総額の3.5%にあたり、ODA総額は過去最高の1790億米ドルに達し、2020年と比較すると実質4.4%の増加となりました。新型コロナワクチンを除くと、増加率は0.6%です。
しかし課題もあります。ロシアによるウクライナ侵攻のせいで物価が急騰し、食料不安が高まっています。
エネルギー価格の大幅な高騰と経済成長を停滞させている財政圧力の高まりが同時に発生しており、被害が最も深刻な国々にはODAを追加拠出する必要があります。新型コロナからの強靭な経済回復を目指す政府の取り組みは、一層難しくなっています。
> プレスリリース
2015年、国連加盟国は17の目標からなるSDGsを採択しました。しかし、新型コロナのパンデミック、そして現在はロシアによるウクライナ侵攻の地政学的、経済学的影響により、その目標達成への取り組みは後退しています。
しかし、パンデミックとウクライナ紛争の双方により、より危機対応力のある、持続可能なグローバル経済の基礎を築くことがいかに重要であるかが浮き彫りになったともいえます。
OECDの新報告書では、政策当局が乗り越えなければならない多くの障害、特に誰も取り残されないようにすること、制度への信頼を回復すること、自然環境への圧力を抑えることについて、考察しています。
OECD諸国全体でみると、達成したのは、実績を測れる112のターゲットのうち10項目、ほぼ達成しているのは18項目です。それに対して達成からほど遠いターゲットは21項目です。
OECDは、各国の新型コロナからの復興とより強い再建を支援することを目指し、二つの新しいツールを開発しました。
> The COVID-19 Recovery Dashboard 新型コロナ復興ダッシュボード)は、各国の復興に向けた取り組みを4つのパラメータ(強靭性、包摂性、環境への配慮、危機対応力)で測定する総合的な指標を提供しています。
> The Regional Recovery Platform (地域復興プラットフォーム)は、各国内の復興の不均衡という課題に、国際比較ができる地域別の様々な指標を引用して、取り組んでいます。
OECD Green Recovery Databaseが2022年4月に更新されました。このデータベースは、OECD諸国が採用している環境への影響が明確な復興措置を追跡しています。本稿では、そこから得られた最新の結論と政策的考察を収録しています。
ワクチン、防護、検査に必要な資材は多くの異なる国々で製造されています。本稿では、ワクチン、マスク、検査キットについて、国際市場とグローバルサプライチェーンが果たした役割を論じています。
OECD加盟国政府は、新型コロナのパンデミックの短期的、長期的双方の影響に対処するために、多額の資源を投資しています。パンデミックは、年齢層ごとに異なる影響を及ぼしており、またその余波が今後何十年にもわたって実感されるであろうことを考えると、政府は一貫性のある公的ガバナンスアプローチをとる必要があります。本稿では、世界72カ国の151の青年団体から得た若者の見解を収録しています。
労働者と適した職業を結びつける労働市場活性化政策は、新型コロナ危機からの公平で持続的な復興を促進します。労働需要を喚起する措置は、短期的に雇用を保護する上で必須であり、各国は失業者向けの訓練プログラムに着手しています。
COVID-19パンデミックは、様々な規模であらゆる国々に打撃を与え、危機対応は、ほとんどの政府にとって前例のない課題をもたらしました。この状況において評価は、何が上手くいっていて何が上手くいっていないか、何が役立つ可能性があり誰に効くのかという教訓をリアルタイムで共有するための重要な手段を提供します。この報告書は、政府が自ら行ったCOVID-19対応についての評価から教訓を引き出します。※この翻訳版は京都大学のプロジェクトチームが作成しました。
> OECD policy responsesはこちら
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Frances O'Grady
General Secretary
Trades Union Congress (England & Wales)
Nicol Turner-Lee & Samantha Lai
Center for Technology Innovation
Brookings Institution
Flavia Colonnese
Policy and Advocacy Manager
European Youth Forum
Kyoko Ozawa, Student, former Chief Future Officer, Euglena
OECD Forum Networkは、危機対応力のある復興を実現し新型コロナのパンデミックからより強く立ち上がる方法について、様々な声、意見、アイデアをまとめています。
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