新型コロナウイルスのパンデミックにより、我々の経済社会に対する考え方が変化しています。明日の社会をより環境に優しく包摂的で危機対応能力の高いものに転換できるか否かは、今日政府が選択する政策にかかっています。今こそ、誰もが自信を持って将来と向き合えるよう進むべき道を明らかにするチャンスです。
新型コロナのワクチン支援として、2021年には開発途上国に対して63億米ドルが拠出されました。これは、ワクチンおよそ8億5700万回分に相当します。この金額は、OECDの開発援助委員会(DAC)加盟国からのODA総額の3.5%にあたり、ODA総額は過去最高の1790億米ドルに達し、2020年と比較すると実質4.4%の増加となりました。新型コロナワクチンを除くと、増加率は0.6%です。
しかし課題もあります。ロシアによるウクライナ侵攻のせいで物価が急騰し、食料不安が高まっています。
エネルギー価格の大幅な高騰と経済成長を停滞させている財政圧力の高まりが同時に発生しており、被害が最も深刻な国々にはODAを追加拠出する必要があります。新型コロナからの強靭な経済回復を目指す政府の取り組みは、一層難しくなっています。
> プレスリリース
国際エネルギー機関は即効性のある10の行動を提案しています。その中には、長期的なエネルギーニーズの足場をより持続可能なものにする方法についての提言も含まれています。
2019年だけでも、2200万トンのプラスチックが環境に漏出しました。これは、世界全体のプラスチック廃棄物のごく一部に過ぎません。OECDの新報告書では、プラスチックのライフサイクルをより循環的なものにするための課題と方法について論じています。
OECD諸国の市民の10人に6人以上が、政府は富裕層と貧困層の間の所得格差を削減する対策をもっと行うべきだと考えています。しかし、その対策の度合いや方法については、意見が分かれています。
不安と経済的不安定は、幸福度に悪影響を及ぼします。OECDの新たな研究では、幸福度を中核として政策がいかに社会的弱者を救い、より危機対応力のある経済を構築できるかを考察しています。
ウクライナ紛争によって生じた新たな供給ショックで、新型コロナからの復興は妨げられています。各国政府は危機回復力が高くより持続可能な経済の構築に再び焦点を当てるべきです。
2015年、国連加盟国は17の目標からなるSDGsを採択しました。しかし、新型コロナのパンデミック、そして現在はロシアによるウクライナ侵攻の地政学的、経済学的影響により、その目標達成への取り組みは後退しています。
しかし、パンデミックとウクライナ紛争の双方により、より危機対応力のある、持続可能なグローバル経済の基礎を築くことがいかに重要であるかが浮き彫りになったともいえます。
OECDの新報告書では、政策当局が乗り越えなければならない多くの障害、特に誰も取り残されないようにすること、制度への信頼を回復すること、自然環境への圧力を抑えることについて、考察しています。
OECD諸国全体でみると、達成したのは、実績を測れる112のターゲットのうち10項目、ほぼ達成しているのは18項目です。それに対して達成からほど遠いターゲットは21項目です。
食料の価格がさらに上昇しそうです。ウクライナ紛争によって農作物の供給ショックが発生したことで、小麦と肥料の平均価格は、1月と比較すると、2月24日から3月14日の間にそれぞれ88%、77%急上昇しました。
鉱物の価格も急上昇しています。特に、工業、交通、建物、建築など様々な部門で広く用いられているニッケルの価格は同期間の比較で60%以上も上昇しました。
食料供給に対する不安が、特に低所得国で広がる一方、サプライチェーンがさらに滞るリスクが高まっています。エネルギー価格も高騰する中で、経済回復力を高める各国政府の取り組みは、さらに厳しくなっています。
> War in Ukraine: Economic and social impacts, and implications for policy
グローバルな商品市場への供給が途絶することで生じる新たなショックで、インフレ圧力がさらに高まると見られています。
新型コロナのショックで、世界経済システムの脆弱性が浮き彫りになりました。中でも世界のエネルギー生産・消費は、政策の焦点を当てるべき領域です。
長期的なエネルギー安全保障に突然もたらされた大問題で、政府は、国の回復力を構築する取り組みの一環としてエネルギーの持続可能性目標を実現する方法を新たに考える必要に迫られています。
> War in Ukraine: Economic and social impacts, and implications for policy
OECDは、各国の新型コロナからの復興とより強い再建を支援することを目指し、二つの新しいツールを開発しました。
> The COVID-19 Recovery Dashboard 新型コロナ復興ダッシュボード)は、各国の復興に向けた取り組みを4つのパラメータ(強靭性、包摂性、環境への配慮、危機対応力)で測定する総合的な指標を提供しています。
> The Regional Recovery Platform (地域復興プラットフォーム)は、各国内の復興の不均衡という課題に、国際比較ができる地域別の様々な指標を引用して、取り組んでいます。
OECD Green Recovery Databaseが2022年4月に更新されました。このデータベースは、OECD諸国が採用している環境への影響が明確な復興措置を追跡しています。本稿では、そこから得られた最新の結論と政策的考察を収録しています。
ワクチン、防護、検査に必要な資材は多くの異なる国々で製造されています。本稿では、ワクチン、マスク、検査キットについて、国際市場とグローバルサプライチェーンが果たした役割を論じています。
OECD加盟国政府は、新型コロナのパンデミックの短期的、長期的双方の影響に対処するために、多額の資源を投資しています。パンデミックは、年齢層ごとに異なる影響を及ぼしており、またその余波が今後何十年にもわたって実感されるであろうことを考えると、政府は一貫性のある公的ガバナンスアプローチをとる必要があります。本稿では、世界72カ国の151の青年団体から得た若者の見解を収録しています。
労働者と適した職業を結びつける労働市場活性化政策は、新型コロナ危機からの公平で持続的な復興を促進します。労働需要を喚起する措置は、短期的に雇用を保護する上で必須であり、各国は失業者向けの訓練プログラムに着手しています。
COVID-19パンデミックは、様々な規模であらゆる国々に打撃を与え、危機対応は、ほとんどの政府にとって前例のない課題をもたらしました。この状況において評価は、何が上手くいっていて何が上手くいっていないか、何が役立つ可能性があり誰に効くのかという教訓をリアルタイムで共有するための重要な手段を提供します。この報告書は、政府が自ら行ったCOVID-19対応についての評価から教訓を引き出します。※この翻訳版は京都大学のプロジェクトチームが作成しました。
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Frances O'Grady
General Secretary
Trades Union Congress (England & Wales)
Nicol Turner-Lee & Samantha Lai
Center for Technology Innovation
Brookings Institution
Flavia Colonnese
Policy and Advocacy Manager
European Youth Forum
Kyoko Ozawa, Student, former Chief Future Officer, Euglena
OECD Forum Networkは、危機対応力のある復興を実現し新型コロナのパンデミックからより強く立ち上がる方法について、様々な声、意見、アイデアをまとめています。
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