2013/6/25
経済危機の中、若者のうち、高学歴者と低学歴者の間に見られる雇用ギャップは、引き続き拡大しています。OECDが毎年発表している「図表でみる教育」最新版によると、優れた教育は就労経験の不足に対する最善の保険です。
後期中等教育の学歴を持たない人は、高 等教育修了者に比べ、失業率は約3倍高くなります(OECD平均で前者が13%、後者が5%)。2008年から2011年では、貧しい教育しか受けなかっ た人の失業率は4%ポイント程上昇した一方、高学歴者の失業率は同時期で1.5%ポイントの上昇にとどまりました。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、 「良い学歴を得ることが、これまでになく重要になっている。各国政府は、若者への支援、特に将来低技能で低賃金の仕事しか得られないリスクが最も大きい低 学歴者への支援に注力すべきである。そのために、中退率を減らすこと、教育と就労を繋げる技能志向の教育に投資することを優先すべきである。」と述べまし た。
本年の「図表でみる教育」は、職業にか かわる資格が雇用への道を作るのに大きな価値があるという新しい証拠を示しています。オーストリア、チェコ、ドイツ、ルクセンブルクといった職業プログラ ム修了者の比率が平均(32%)より高い国では、24~35歳人口で見ると、職業プログラム修了者の失業率は普通の後期中等教育修了者と比べてかなり低い か、減少していることがわかります。
経済危機は、収入格差をも拡大させまし た。低学歴者と高学歴者間の雇用収入の格差平均は、2008年の75%から2011年には90%へと拡大しました。平均で、高等教育修了成人の相対的収入 は後期中等教育修了成人の相対的収入の1.5倍を超えており、後期中等教育修了者の収入は、後期中等教育未修了者の収入より平均で25%多くなっていま す。
経済危機の結果の一つとして、就職難が 進んだことが原因で若者の教育機関在籍率が上昇しました。1995年以降、OECD加盟国において後期中等教育修了率は8%ポイント上昇しました。中でも その上昇率が最も高かったのはメキシコで、2000年から2011年までに年間4%上昇しました。
20~29歳人口の教育機関在籍率は、2000年の23%から2011年には29%に増加しました。OECD加盟国では、25~34歳人口の高等教育修了者の比率は、2000年の26%から2011年には39%に増加しました。
しかし、経済危機は、長く続いてきた教 育への投資の上昇傾向に歯止めをかけてしまいました。教育機関に対する公的支出は、OECD加盟諸国では2009年から2010年にかけて平均で対GDP 比2%減少し、加盟諸国の3分の1が2011年及び2012年の教育予算を削減しました。
教育予算を5%以上削減した国は、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ポルトガル、英国ウェールズ、1~5%削減した国はベルギー、チェコ共和国、エストニア、フランス、アイルランド、ポーランド、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スペインです。
高等教育レベルでは、2005年から 2010年にかけて、8か国において高等教育を受ける学生1人当たりの支出が減少しました。これは、支出が学生数の増加に追いつけなかったためです。オー ストリア、アイスランド、イスラエル、英国、米国は、2005年から2010年に学生数が大幅に増加したものの、それに対応して教育支出は増えませんでし た。ニュージーランド、ロシア、スイスでも学生1人当たりの公的教育支出は減少しました。
「図表でみる教育」は、世界各国の教育の現状を測る国際比較可能な統計を収録しています。OECD加盟34か国と、アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を分析しています。
ポイント
学歴
- OECD諸国で、成人の高等教育修了率は2000年以降およそ10%上昇したが、依然として男女共に35%に満たない。
- 全高等教育レベル修了者のほとんどは、博士課程を除けばほとんどが女性である。現在の修了傾向に基づくと、OECD諸国の若者は、平均で女性48%、男性32%が、生涯のうちに高等教育を修了することになる。
- 職業プログラムを修了する若い女 性の数はこれまでになく増加している。その割合は45%で、男性の49%に迫っている。オーストラリア、ベルギー、ブラジル、チリ、中国、フィンランド、 アイスランド、アイルランド、オランダ、ポルトガル、スペインでは、職業プログラム修了率は男性より女性の方が高い。
教育に対する支出
- OECD加盟国は、初等教育から高等教育までに学生1人当たり平均9,313米ドルを支出している。初等教育の生徒1人当たり7,974米ドル、中等教育の生徒1人当たり9,014米ドル、高等教育の学生1人当たり13,528米ドルである。
- 高等教育機関に対する公的助成の割合は徐々に減少してきており、1995年は77%、2000年は76%、2005年は71%、そして2010年には68%となった。
- 最高水準の資格を持つ、給与基準 の最上位に位置する教員の給与は、就業前教育レベルで平均47,243米ドル、初等教育で49,609米ドル、前期中等教育で52,697米ドル、後期中 等教育で53,449米ドルとなっている。2000年から2011年までに教員の給与が減少した国はフランスと日本のみである。
教育と健康
- より教育を受けた人ほど、喫煙者や肥満になりにくい。
- 高等教育修了者は肥満になる確率が、後期中等教育未修了者の半分である。OECD加盟23か国において、高等教育修了者は、後期中等教育未修了者よりも喫煙者になる可能性が平均で16%低い。
学校環境
- OECD加盟国の生徒は、初等教育から前期中等教育の間に、平均7,751時間の授業を受けることになっている。初等教育レベルでは、読み書き、文学、数学、科学が必須授業時間の51%を占めており、前期中等教育レベルでは41%である。
- 公立学校の教員は、就業前教育レベルで平均で年間994時間授業を行い、初等教育では790時間、初期中等教育では709時間、後期中等教育では664時間行っている。
- 授業時間は国ごとに違いがある。 ギリシャとロシアでは公立の初等教育機関の教員は415時間授業をするのに対して、チリとアメリカではその数は1,000時間を超えている。公立の後期中 等教育機関では、デンマークでは369時間の授業が行われているのに対して、アルゼンチンでは1,448時間である。
報道関係者からのご質問は、OECD教育局次長のAndreas Schleicher (tel. + 33 1 45 24 93 66)、またはメディア担当のSpencer Wilsonまでご連絡ください。
「図表でみる教育」に関する詳細情報(カントリーノート、多言語サマリー、主要統計など)は、www.oecd.org/edu/eag.htm にてご覧いただけます。
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