2012/5/21
『OECD技能戦略』によれば、将来的に強力かつ持続的な共有型成長(shared growth)を実現するためには現時点で教育、技能、訓練への投資を増やすことが重要です。
この重要な新たな取り組みは、各国政府による景気回復力の強化、雇用の増加、社会統合の補強を支援することを狙いとしたものです。
『技能戦略』は、5月23日からパリで開催されるOECD閣僚会合に出席する閣僚らの討議に付されますが、財政が圧力にさらされる中で各国政府は厳しい財政上の決断をしなければならないことを認識しています。しかし、教育や技能に関する支出は将来に向けた投資であり、優先しなければなりません。
OECDのアンヘル・グリア事務総長は「技能は21世紀の経済にとって世界通貨となっている。技能は生活を変え、経済を牽引する。各国政府は、人々が明日の職場で必要とする教育や技能により一層効果的に投資しなければならない。各国政府は、これらの投資が雇用の改善と生活の向上に転化するよう、持てる人材をより戦略的に展開する必要がある。これを達成することは全ての人の務めであり、企業と労働組合は中心的な役割を果たさなければならない」と述べました。
現在、OECD諸国では若年層の5人に1人が後期中等教育を修了せずに学校を去っています。そして、多くの国では、成人の3分の1が、学業を継続し、よい仕事に就くために必要とされる最低限の中核的技能を有していません。
その社会的、経済的コストは膨大なものです。OECDの分析によれば、技能のレベルが低い層は失業、貧困、社会給付依存の大きなリスクにさらされています。
『技能戦略』は、各国に特有のニーズに即した勧告を行います。短期的には、大半の国は若年層が労働市場で求められる技能を習得するのを支援することに注力すべきです。
経済危機から特に大きな打撃を受けているのは若年の技能のレベルが低い層です。大半のOECD諸国では若年層の失業率が2ケタ台に達し、成人の失業率より2~3倍高くなっています。
現在の高失業率にもかかわらず、技能労働者が不足しているということは、多くの求人が依然として満たされていないということです。危機のピーク時でも、オーストラリア、日本、メキシコ、米国では企業の40%以上が、適切な技能を有する人材を見つけられないと述べていました。
『OECD技能戦略』は、各国が自国の強みと弱点を分析するための枠組みを提供するとともに、各国が若年層と成人の技能を開発し得る施策を勧告しています。
国の施策に関する主な勧告は以下のとおりです。
- 学歴偏重の教育ではなく技能志向型の学習を最重視することで、学習結果の質を改善する。
- 企業と労働組合を教育/訓練プログラムの設計と実施により密接に関与させる。
- 特に中小企業を中心に、成人の学習継続への投資を奨励する。特定の業種や地域を対象とした、人材訓練への拠出金を増やすための企業課税を検討すべきである。
- 就労が割に合うものになるよう税・給付制度を調整する。
- 企業が従業員の技能をより一層効果的に活用することを支援する。
- 各国によるバリューチェーンの上方移動、起業の促進、より高い技能を要する雇用の創出刺激を支援する。
各国が自国労働力の技能をより正確に把握し、他国と比較することを支援するため、OECDでは成人の技能に関するこれまでで最も包括的な国際調査を行っています。この初の『OECD成人技能調査』は、参加26カ国のそれぞれの国で5,000人以上(16~65歳)の技能を調べるものです。最初の調査結果は2013年10月に『OECD技能アウトルック』で発表されます。
OECDは、ピアソン財団の支援を受け、双方向オンラインポータル
(http://skills.oecd.org)も開発しています。これは、技能の開発、供給、利用に関する30以上の双方向的なデータの視覚化を行っているもので、40カ国に関するデータと分析やOECDの技能関連の活動に対するリンクも提供しています。
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