2018年5月29日-パリ、フランス
OECDの新報告書、「全ての人にチャンスを:包摂的成長に関する政策的取り組みのためのOECD枠組み(Opportunities For All: OECD Framework for Policy Action on Inclusive Growth)」によると、社会のあらゆる人々に恩恵をもたらすより包摂的かつ持続可能な経済成長を推進するために、政府は「緊急の協調的取り組み(urgent and concerted effort) 」を求めています。
本報告書は、不平等対策において進展が見られる国々がいくつかあるものの、低所得層の機会が悪化しているため、更なる取り組みが必要だと述べています。
包摂的成長の達成の度合いを各国が評価できるように、OECDは所得、成長、雇用から教育、環境、ガバナンスまで、様々な問題に関する新たな指標群を作成しました。その指標群によって、各国とその市民は、包摂的成長という目標に向けた進捗状況を時間を追って監視できるようになります。
またOECDは、低所得層が質の高いサービスを利用できるようにすることで、彼らの生産性、成長、暮らし良さの向上への寄与度が高まることを重視した、新たな政策枠組みを開発しました。
OECDの包摂的成長イニシアチブのリーダーを務めるガブリエラ・ラモスOECD首席補佐官兼G20シェルパは、パリで開催中のOECDフォーラムで行われた本報告書発表会見にて、次のように述べました。「各国が経済成長をあらゆる人々の生活水準の向上に変換する取り組みを進めることが、不可欠である。我々は、社会の中で最も貧しい人々でも自分の能力を最大限生かせるように手助けし、政府がそのための手段を得られるようにしなければならない。OECDの分析によると、最も恵まれない人々に的を絞った政策を導入すると、社会全体が繁栄と暮らし良さを享受できる。」
新枠組みで詳述されている数値から、社会的背景が多くのOECD諸国で、人々の人生におけるチャンスを決定し続けることがわかります。一般的に、低所得層の家庭の子供の3人に1人は住宅費に苦慮する過密世帯で暮らしており、貧しい家庭出身の若者が科学分野のキャリアに進むチャンスはわずか18%、さらに彼らの所得の38%は親の状況に決定されると推計されています。そして多くの国々で、より貧しい世帯の子供の15歳時点の学業成績は、より豊かな子供のそれよりも1年遅れていることが、OECDの国際教育調査PISAの結果から明らかになっています。
本報告書は、交通から医療まで、いかに幅広い政策分野が暮らし良さに影響しているかも明らかにしています。例えば、社会的流動性は、低所得層や発展が遅れた地域で暮らす人々がなかなか利用できない質の高い医療、教育、交通サービスの利用が制限されていることによって、依然として妨げられているのです。
こうした問題に対処するために、OECDは、世界経済が回復基調にあるこの時期に諸国が公平性を第一に考えた、より意欲的な構造改革を取り入れるよう提言しています。需要と雇用創出が強いほど、改革によって生じる短期的なコストは低く、短期間で回収できると本報告書は述べています。
この枠組みが強調している、諸国がその取り組みを集中すべき3つの主要分野は下記の通りです。
- 取り残されている人々や地域、特に不安定な状態にある子供達に、以下を通じて投資すること:的を絞った質の高い保育、幼児教育、生涯学習;医療サービス、教育、司法、住居、インフラの有効利用;持続可能な成長にふさわしい天然資源管理。
- 企業のダイナミズムと包摂的労働市場を、以下を通じて支援すること:幅広いイノベーション、素早く深い技術の普及;強い競争力と活気ある起業活動;特に女性と不利な立場にある人々が質のよい仕事に就けること;人々が未来の仕事に適応できるよう取り組みを強化すること。
- 効率的で迅速に対応できる政府を以下を通じて構築する:政府全体で調整された総合的政策;公平性を政策立案の中心に据える;市民を政策策定に関与させる一方で、高潔性、説明責任、国際協調を強化する。
本報告書は、OECDの幅広いプロジェクトと戦略に基づいています。その中には、Productivity-Inclusiveness Nexus、今年後半に発表されるJobs Strategy、Skills Strategy、Innovation Strategy、Going for Growth Strategy、Going Digital プロジェクト、Green Growth Strategyなどが含まれます。OECDは、政府がより包摂的に成長するためのロードマップを実行できるようにする、Inclusive Growthに関する国別研究を試行する予定です。
OECDのInclusive Growth Initiativeについての詳細は、下記のサイトをご覧ください。http://www.oecd.org/inclusive-growth/
報道関係者のお問い合わせ及びガブリエラ・ラモス首席補佐官兼G20シェルパへのインタビューのご希望は、下記までお寄せください。
OECD Media Office (+33 1 45 24 97 00, news.contact@oecd.org).
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