公的研究開発支出の減少と保護主義のリスクがイノベーションを脅かす

 

OECD - ブリュッセル、2016年12月8日

多くの国々で、科学技術研究への政府支出が減少していることは、気候変動や高齢化といった世界共通の問題に解決策が求められている現在、イノベーションにとって脅威となる可能性があります。

  「OECD科学技術イノベーションアウトルック2016 (OECD Science, Technology and Innovation Outlook 2016)」 によると、イノベーションが多国籍企業によって行われケースが増え、有能な科学者、学生、起業家が他国に移動して働くようになっていることから、グローバル化への反発といくつかの国で起きている移民問題も懸念材料となっています。

 OECD諸国で、政府と高等教育機関による研究開発への支出は、1981年にデータを取り始めて以来初めて、2014年に減少に転じました。政府と高等教育機関の研究所のR&D支出は、そのほとんどを政府が提供していますが、過去30年間伸び続けていたものが2010年以降横ばいで推移していました。

 別の指標である政府のR&D支出総額は、そのほとんどが公的機関および公的資金を得ている民間部門によって研究開発が行われているものですが、多くの国々で国民年金、社会医療支出など他の優先すべき問題への支出比率が公的資金の中で高まっていることから、減少傾向にあります。

 2000~2015年のR&Dに充てられた政府予算の割合を見ると、ドイツ、日本、韓国などの国々は2000年よりも現在の方が支出全体に占めるR&Dの割合が高くなっているのに対して、フィンランド、フランス、イタリア、スペイン、英国、米国などはR&Dへの支出を減らしてきたことがわかります。OECD地域全体のR&D向け政府支出総額は、世界金融危機の影響を受けて2009年以降減少し続けています。

 

アンドリュー・ワイコフOECD科学技術イノベーション局長は、次のように述べました。「経済成長はイノベーションに頼っており、イノベーションは、高齢化や認知症から気候変動、格差に至るまで、21世紀の世界の大問題を解決する上で不可欠である。R&D向け公的資金、オープンサイエンス、研究者の国際的な移動を維持することが、将来のイノベーション、そして我々の未来全体にとって、絶対に必要である。」 

本報告書によると、R&D向け政府支出は名目ベースで頭打ちになるか、多くの国々で公財政への圧力がさらに強まり経済成長が停滞することで、さらに減少すると見られています。大学や公的研究機関にR&D資金を提供するよりも、企業にR&D優遇税制を提供する方に注力する政府が増えているという傾向もまた、民間部門の方に秤が傾く原因となっています。これはつまり、資金が新しい製品や利益が生まれやすい場所により多く配分され、予期せぬ大発見の源になることが多い基礎研究に直接向けられる資金は減少するということを意味していると言えます。企業のR&Dは純粋な研究よりも開発の方を好む傾向があります。 

大学と公的研究機関のR&DがOECD地域全体で行われるR&D全体に占める割合は30%に満たないものの、これら機関は基礎研究の4分の3以上を行っています。比較的長期にわたるリスクの高い研究に加え、有形の社会的便益になる可能性がより高いプロジェクトを行っているものです。人工知能やオーダーメード医療は、公的研究によって可能になった科学技術の発展のおかげで実現したイノベーションの例です。

 

本書の主な結論: 

  • 世界全体で政府と高等教育機関の研究所が行っている研究の3分の1以上は、OECD非加盟諸国で行われている。中国の2014年の公的R&D支出は、日本のそれの約2倍に当たる額だった。インド、ロシア、台湾、イラン、アルゼンチンは、世界最大の公的科学制度を有している。 
  • 米国、中国、日本、ドイツ、インドの5か国は、2014年の世界の公的R&Dの59%を計上しており、これら5か国を含む25か国で全体の90%を計上した。このようないくつかの国が優勢であることには、その規模の大きさが反映している。将来的には、アフリカのように人口が急増しGDPも急成長している国々がもっと重要なプレーヤーになる可能性がある。 
  • 慈善事業、基金、慈善活動家は、近年、特に医療分野の大学研究への優れた資金提供者として台頭してきている。これらの慈善事業は、奇病または熱帯病の研究にしばしば資金を提供している。これは、将来の公的研究の課題に何らかの影響を及ぼすと考えられる。 
  • 国によって、現在注力している分野は異なる。例えば、保健医療科学に対する公的R&D支出の割合は、米国では24%、英国は22%。カナダは17%である一方、エネルギー関連のR&Dに対しては、メキシコは19%、日本は11%、韓国は9%を支出している。国の優先分野は変化しており、上述の気候変動や人口といった社会問題の高まりを反映している。

 

 本報告書と50か国の国別概要、40の政策概要は、下記のウェブサイトでご利用いただけます。

www.oecd.org/innovation/oecd-science-technology-and-innovation-outlook-25186167.htm

 

報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。 Catherine Bremer OECD パリ本部メディア課 (+33 1 45 24 97 00)

 

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