2015年7月3日
「慎重な債務ターゲットと財政枠組み(Prudent Debt Targets and Fiscal Frameworks)」は、債務が経済活動にもたらす影響を分析しています。景気安定化政策を推し進めるにあたっての財政政策の効果や債務と公共インフラの見通しとの関連性などといった様々な判断基準を考慮した上で、OECDは、債務総額のGDPに占める割合が80%を超えると経済成長に悪い結果をもたらすと指摘しています。
本レポートは、中長期的に見た慎重な債務ターゲットを設定するための強健な分析枠組みを提供しており、各国政府が目標を達成できるような財政ルールを分析しています。
キャサリン・マンOECDチーフエコノミストは、第15回年次Rencontres Économiques d’Aix-en-Provenceにおいて講演し、「主に脆弱な成長が原因となり、政府債務は近年の金融危機の中、急激に増加し、2013年にはOECD平均の政府債務が111%(対GDP比)にまでなった。これは第二次世界大戦以降で最も高い割合である。OECDの分析によると、このように高い債務レベルは経済にネガティブな影響を与えることが指摘された。中期的な慎重な債務ターゲットを設定すれば、市場を安心させ、リスクプレミアムを無くし、短期的な経済成長と安定化のために積極的な財政政策の活用を許容できるというコミットメント・ツールを提供する」と述べました。
本レポート中にある、実験に基づく国横断的なエビデンスによると、債務がネガティブな影響を与えるようになる「ターニングポイント」あるいは「危険領域」といえるものを3つのグループに分けて定義付けています。
- OECDの中の高所得国:対GDP比で70-90%の政府債務
- ユーロ圏の国々:対GDP比で50-70%の政府債務。これは、金融政策へのコントロールの不在、救済条項の不在、債務調整の不在、外国金融に対する高い依存度、ショックへの適応が困難であること等を勘案した結果である。
- 新興経済:政府債務の限界ラインはさらに低く、対GDP比で30-50%。資本の逆流にさらされていることが勘案された結果。
OECDは、慎重な債務ターゲットを構築する上でのガイダンスを提供しています。これにより、債務限界を大きく上回ることを回避するとともに、短期的な財政余地を与えることができます。この慎重な債務ターゲットは、マクロ経済上の可変性を取り巻く不確定さを考慮に入れており、よって各国特有の分析になっています。
慎重な債務ターゲットは、平均だと債務限界の15%ポイント低く設定されていますが、これは国により大きく違います。
本レポートは、財政規律を推進する財政枠組みを設定しつつ安定化政策を許容できるような政策提案を提供しています。これにより、短期的な不況の可能性を減らすことができます。
特に、本分析は、財政収支ルールと財政支出ルールのコンビネーションがほとんどの国にとって適合するものであることを示しています。
マン氏は、「うまく策定された財政支出ルールこそが財政収支ルールの効果を確実にする鍵であることが示され、同時に、長期的成長を後押しできることもわかった」と述べました。
「慎重な債務ターゲットと財政枠組み(Prudent Debt Targets and Fiscal Frameworks)」の詳細は、OECD Media Office (+33 1 4524 9700)までお問い合わせください。
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