2020年7月31日(パリ) - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)の影響により、 新興アジア諸国経済は、平均でマイナス2.9% の低成長が見込まれています。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、中国、インドの国々では、ほとんどの国で記録的な低成長が予測されています。本日発表されたOECDの「エコノミックアウトルック―東南アジア、中国、インド2020年版アップデート:COVID-19の課題への対処(Economic Outlook for Southeast Asia, China and India 2020–Update: Meeting the Challenges of COVID-19)」によると、特にASEANでは、平均でマイナス2.8%の経済成長率になると予測されています。同地域の総合インフレ率は全体的に、低下傾向にあり、今後数四半期で経常収支も悪化すると予想されています。

新興アジア諸国の中でも、新型コロナウイルスの封じ込めに成功している国々は回復に向かい始めているものの、インドとインドネシア、フィリピンなどでは依然として感染者数の急増に直面しており、経済基盤を取り戻すことに苦戦しています。同ウイルスによる健康危機への対応策としてロックダウンや移動制限が実施されてきましたが、それらは経済活動に大きな打撃を与えています。金融市場と銀行セクターは苦しい状況に立たされ、企業は収益減と負債増に直面し、さらに家計は失業や雇用見通しの悪化によるリスクの増加にさらされています。また、コロナ危機はグローバル・バリューチェーンにこれまでに類のないほどの打撃を受けており、特に輸入に大きく依存している国には大きな影響が及んでいます。
成長浮揚のための経済支援政策が打ち出され、財政出動は比類ない規模となっています。政策金利は2019年末以来、30∼300ベーシスポイント程度も引き下げられており、また一部の国では銀行の預金準備率も緩和されました。財政支援は主に、最も影響を受けている企業および家計を対象にした減税あるいは直接補助金という形で行われました。インドネシアとマレーシア、シンガポール、タイは複数の財政刺激策を発表しています。一方で、新型コロナウイルス関連予算を策定する際に、コロナ危機の前から既に財政基盤が薄かった国では特に、持続可能な財政政策に向けた道筋を維持するよう慎重さが求められます。
世界各地でロックダウン措置が実施される状況で、テレワークやビデオ会議、デジタル教育が記録的に拡大しており、デジタル化の重要性が今回のパンデミックによって実証されました。このようなトレンドを上手く活用するために、新興アジア諸国はインターネットなどのデジタルサービスへのアクセスを改善し、かつデジタルリテラシーを向上させる必要があります。また電子商取引をサポートするには、デジタル決済を促進するべきです。
コロナ危機は、新興アジア諸国にとって重要である旅行・観光セクターに打撃を与えました。緊急支援に加えて、これらのセクターについては、国内観光を奨励し、外国人観光客の回復に備え、さらに再雇用されない可能性のある労働者に訓練を提供するための計画が求められます。同様に、保健セクターは将来の疫病流行に備えた対応策を構築する必要があります。そして、アジア地域での地域協力が成功の重要な要素となるでしょう。
「エコノミックアウトルック―東南アジア、中国、インドのアップデート」に関する詳しい情報は、次のウェブサイトをご覧ください: www.oecd.org/dev/asia-pacific 報道関係の方は、OECD 開発センターの田中兼介アジアデスク統括(Kensuke.Tanaka@oecd.org, tel. +33 6 27 19 05 19)、または同センター報道担当のBochra Kriout (Bochra.Kriout@oecd.org, tel. +33 1 45 24 82 96)までお問い合わせください。
本プロジェクトに対する、日本、韓国、スイス及び欧州連合の各政府からのサポートに対して感謝の意を表します。
Follow us
E-mail Alerts Blogs